ILIAD ~幻影の彼方~
021 三人目の蒼眼者
坑道から出ると、そこに一人の男がやってくるのをセトルは見た。
「あれ? あなたは確か鍛冶屋の――」
「――カザノヴァだ」
彼はそう言うと、ウェスターを見て軽く会釈をした。
「どうしてここに?」サニーが訊く。
「――それについては僕が説明するよ」
カザノヴァの後ろ、ここへ続く道を一人の青年がそう答えながら歩み寄ってきた。何か
の模様が描かれた黒い法服に、右目を隠した長いライトブルーの髪、手には古びた弓を持っているので、背に背負っている筒には矢が入っているのだろう。
そして、覗いている方の眼鏡の奥の瞳は――
「この人も……青い目……」
だった。驚いたようにセトルは呟く。周りの皆も同じように驚いた表情をしていた。彼と一緒に来たカザノヴァと、ウェスター以外は……。
「スラッファではないですか」
「誰なんや?」
すかさずしぐれがウェスターに訊く。すると彼は微笑んで、
「独立特務騎士団の副官、つまりワースの部下です」
と答えた。それもそうだが、問題はそこではない。問題なのは――
「そこの連中はみんな青い目をしてるのか?」
と、アランが言った青い目のことだ。
「いや」と答えたのはスラッファだ。「今、このシルティスラントに居る青い瞳を持つ人間は四人、僕とワース、それにもう一人の副官と――君だけだよ、確かセトル君だったかな?」
セトルは、そうです、と頷き、たぶんこの人も自分のことを知っているのだろう、と思った。
「四人……何か少ないね」
サニーが呟くと、スラッファは咳払いをする。
「僕としても、なぜ君たちがここにいて、ウェスターと一緒なのか知りたいけど、それは今は置いておくよ。ところで、元の話に戻ってもいいかい?」
皆が頷くのを確認し、スラッファは話し始めた。
「火霊素による爆発があったって聞いてね。ちょうど港の軍の機関に僕が居たから調べに来たというわけさ。それでここまで彼に案内してもらったんだ」
「それなら、坑道の中はもう俺らで調べたぜ!」
アランが言うと、スラッファは怪訝そうに目を眇めるが、ウェスターが頷くと、彼は得心したように眼鏡のブリッジを押さえる。
「それで、中には何があったんだい?」
「中には――」とウェスターは坑道にあったもの、起こったことを全てスラッファに語った。彼はそれを何の疑いもなく聞いている。やはり、ウェスターには信頼があるんだな、とセトルは思った。
スラッファはウェスターが拾った破片を受け取る。
「なるほど……そうなると、悪いが君たちにも首都まで来てもらわなければならないな」
「そうですね」とウェスター。「特にしぐれはあの少女のことを知っているようですし」
セトルは皆を見て、全員が頷くのを確認すると、わかりました、と了承する。
記憶が戻らないまま、もう一度首都に行くとは……。
「あれ? あなたは確か鍛冶屋の――」
「――カザノヴァだ」
彼はそう言うと、ウェスターを見て軽く会釈をした。
「どうしてここに?」サニーが訊く。
「――それについては僕が説明するよ」
カザノヴァの後ろ、ここへ続く道を一人の青年がそう答えながら歩み寄ってきた。何か
の模様が描かれた黒い法服に、右目を隠した長いライトブルーの髪、手には古びた弓を持っているので、背に背負っている筒には矢が入っているのだろう。
そして、覗いている方の眼鏡の奥の瞳は――
「この人も……青い目……」
だった。驚いたようにセトルは呟く。周りの皆も同じように驚いた表情をしていた。彼と一緒に来たカザノヴァと、ウェスター以外は……。
「スラッファではないですか」
「誰なんや?」
すかさずしぐれがウェスターに訊く。すると彼は微笑んで、
「独立特務騎士団の副官、つまりワースの部下です」
と答えた。それもそうだが、問題はそこではない。問題なのは――
「そこの連中はみんな青い目をしてるのか?」
と、アランが言った青い目のことだ。
「いや」と答えたのはスラッファだ。「今、このシルティスラントに居る青い瞳を持つ人間は四人、僕とワース、それにもう一人の副官と――君だけだよ、確かセトル君だったかな?」
セトルは、そうです、と頷き、たぶんこの人も自分のことを知っているのだろう、と思った。
「四人……何か少ないね」
サニーが呟くと、スラッファは咳払いをする。
「僕としても、なぜ君たちがここにいて、ウェスターと一緒なのか知りたいけど、それは今は置いておくよ。ところで、元の話に戻ってもいいかい?」
皆が頷くのを確認し、スラッファは話し始めた。
「火霊素による爆発があったって聞いてね。ちょうど港の軍の機関に僕が居たから調べに来たというわけさ。それでここまで彼に案内してもらったんだ」
「それなら、坑道の中はもう俺らで調べたぜ!」
アランが言うと、スラッファは怪訝そうに目を眇めるが、ウェスターが頷くと、彼は得心したように眼鏡のブリッジを押さえる。
「それで、中には何があったんだい?」
「中には――」とウェスターは坑道にあったもの、起こったことを全てスラッファに語った。彼はそれを何の疑いもなく聞いている。やはり、ウェスターには信頼があるんだな、とセトルは思った。
スラッファはウェスターが拾った破片を受け取る。
「なるほど……そうなると、悪いが君たちにも首都まで来てもらわなければならないな」
「そうですね」とウェスター。「特にしぐれはあの少女のことを知っているようですし」
セトルは皆を見て、全員が頷くのを確認すると、わかりました、と了承する。
記憶が戻らないまま、もう一度首都に行くとは……。
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