ILIAD ~幻影の彼方~
016 謝罪
シルティスラント城、そこは全体的に純白の美しい城である。一階は一般人にも開放しており、この城を一目見んと、多くの観光客で賑わっている。この城の二階にある、とんでもなく豪華な一室にセトルたちは招かれた。
「よかったねサニー、疑いが晴れて!」
嬉しそうな笑顔を見せて、セトルは彼女を抱こうとするように両手を広げた。
裁判の結果は言うまでもなく、サニーの無実で終わった。
「でも、まだ信じらんないよ。セトルが来てくれたなんて……」
「おいおい、俺らもいるぞ! なあ、ザンフィ」
アランが振ると、ザンフィは「キー!」と鳴いた。
「アハハ、ごめんアラン、ザンフィ!」
サニーは、冗談だよ、とでも言うように、にこやかに笑った。
「まったく……それにしても、ホントよかったぜ。もし有罪にでもなってたら、軍相手に戦うことになってたかもしれないからな!」
アランは苦笑した。あの時のセトルを見ていたら誰でもそう思ってしまうだろう。だが、そのセトルは、
「え、何で?」
と、こうだ。するとしぐれが溜息をつき、
「何でって、セトル判決が下る時、剣抜こうとしてたやんか!」
と言う。
「あれ? そうだったかな?」
サニーは思わず、ぷっ、と笑った。いつものような会話。村には戻っていないが、帰ってきたという気分になった。セトルもアランもザンフィもいる。いつものような……いつもの?
「そういえばさぁ、あんた誰?」
サニーはしぐれを指差した。その目は何となく厳しいような気がする。
「そういやまだ自己紹介してへんかったな。うちは雨森しぐれ。よろしくな、サニー!」
「ふーん、変わってるのは服装や話し方だけじゃないんだね」
「な、名前はしぐれの方やで!」
ハッとし、しぐれは言った。セトルたちと同じ反応、これは絶対名前を勘違いしている、と彼女は直感した。すると――
「皆さん、揃ってますか~♪」
扉がノックされ、ウェスターの声が聞こえてきた。返事をし、扉が開かれると、そこにはウェスターと共にあのサニーを誤送した正規軍の将軍、ウルド・ミュラリークがいた。
そう、セトルたちが城に居るのは、このウルド将軍の謝罪を受けるためである。
「君たちには本当にすまないことをした。この通りだ!」
彼は心からそう思っているように深々と頭を下げた。
✝ ✝ ✝
セトルたちが王城でウルドの謝罪を受けていたころ、裁判所の廊下を二人の男性が話をしながら歩いていた。
「なあ、いいのか? 彼のところに行かなくても?」
そう言ったのはアトリーだ。そしてその相手は、あの青い瞳を持つ青年、ワースだった。
「何のことだい?」
「何だ、気づいてなかったのか?」
首を傾げたワースにアトリーは嘆息すると、真剣な表情で彼を見る。
「あの少女を迎えに来た少年、お前と同じ青い目をしていた……」
「何!?」
目を瞬き、ワースはアトリーの両肩に手を乱暴に押しつけた。かなり興奮している様子だ。
「今、その少年は?」
サファイアブルーの瞳が揺れる。
「し、城だ! 今うちの師団長が謝罪をしているはず……っておい!」
その勢いに圧倒された彼が答えると、ワースはまた乱暴に手を放し、一目散に駈け出した。
「まったくあいつは……気持ちはわかるが、礼くらい言えよな」
残されたアトリーはやれやれと小さく息をつき、彼の軌跡を呆然と眺めた。
「よかったねサニー、疑いが晴れて!」
嬉しそうな笑顔を見せて、セトルは彼女を抱こうとするように両手を広げた。
裁判の結果は言うまでもなく、サニーの無実で終わった。
「でも、まだ信じらんないよ。セトルが来てくれたなんて……」
「おいおい、俺らもいるぞ! なあ、ザンフィ」
アランが振ると、ザンフィは「キー!」と鳴いた。
「アハハ、ごめんアラン、ザンフィ!」
サニーは、冗談だよ、とでも言うように、にこやかに笑った。
「まったく……それにしても、ホントよかったぜ。もし有罪にでもなってたら、軍相手に戦うことになってたかもしれないからな!」
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「え、何で?」
と、こうだ。するとしぐれが溜息をつき、
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と言う。
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サニーは思わず、ぷっ、と笑った。いつものような会話。村には戻っていないが、帰ってきたという気分になった。セトルもアランもザンフィもいる。いつものような……いつもの?
「そういえばさぁ、あんた誰?」
サニーはしぐれを指差した。その目は何となく厳しいような気がする。
「そういやまだ自己紹介してへんかったな。うちは雨森しぐれ。よろしくな、サニー!」
「ふーん、変わってるのは服装や話し方だけじゃないんだね」
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ハッとし、しぐれは言った。セトルたちと同じ反応、これは絶対名前を勘違いしている、と彼女は直感した。すると――
「皆さん、揃ってますか~♪」
扉がノックされ、ウェスターの声が聞こえてきた。返事をし、扉が開かれると、そこにはウェスターと共にあのサニーを誤送した正規軍の将軍、ウルド・ミュラリークがいた。
そう、セトルたちが城に居るのは、このウルド将軍の謝罪を受けるためである。
「君たちには本当にすまないことをした。この通りだ!」
彼は心からそう思っているように深々と頭を下げた。
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「なあ、いいのか? 彼のところに行かなくても?」
そう言ったのはアトリーだ。そしてその相手は、あの青い瞳を持つ青年、ワースだった。
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「何だ、気づいてなかったのか?」
首を傾げたワースにアトリーは嘆息すると、真剣な表情で彼を見る。
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