俺の同級生は魔王

巫夏希

3-[2] 魔王、傲慢。

「まあ、真琴。一つだけきこうじゃないか」

「なに、私の計画に不満でも?」

 お前の計画は全て不満なんだが……そう言ってしまえば世界が終わりかねないので、当たり障りない言葉でさりげなく図書部について尋ねていかねばならない。まるで俺は人類を滅ぼそうとする宇宙人と交渉するネゴシエーターみたいだな。

「まず、図書部とは何をするんだ?」

「決まってるじゃない。文化祭に、出店するのよ!」

「……なにを?」

「小説本を出してじゃんじゃん売るわ」

「……ものすごく文化祭本部に目を付けられそうな目的を言ってくれてどーも」

 やっぱりそんな目的だったか、と俺は溜息をついた。しかしここで断ってはやはりイカヅチが襲いかかってくるだろう。だってあいつはホンモノの魔王だからな。魔王サマは人間界の常識は通用しない、単なるバケモノに過ぎないんだから。

 さて、どうしようか。と思ったが待ってくれ。人はどうするんだろうか。まさかオレらだけでその小説本を書くわけでもあるまいし。

「そのことなんだけど、テーマは『北欧神話』にするわ」

 真琴は何を言ってるんだろうもう何も分からないHAHAHA……じゃなくて、北欧神話?! まったくわかんねーよそんなもん!! なんでいきなり北欧神話なんかにするんだ?!

「なんとなく。というかここ図書室なんだから資料なんてばっさばっさ見つかるっしょ? だからそれで書きゃいいのよ。なに、一人一万字なんて終わる終わる」

「お前さらりと小説家をバカにしただろ。一万字なんてそう簡単に書けねーぞ。というか今年の文化祭は十月はじめだからあと半月で製本作業も済ませなきゃなんねーんだぞ」

「そのへんはお任せあれ。なんと光星ちゃんの実家が製本所なんだって。それもかなり大きな」

 ……おう、かなりのご都合主義だな……。

 というか、俺はいいけど光星ちゃんはいいのか? さらっと光星ちゃんとか言ったけどいいよね! かわいいし!

「……あ、はい。たぶん……大丈夫だと思います……」

 なんか不安しかないが、やることはやらねばなるまい。

 俺達は、小説を書くためにまずは大量の本棚から北欧神話にかんする本を見つけて、北欧神話とは何かを調べねばならないのだから――。

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