俺の同級生は魔王
3-[1] 魔王、転換。
一日が終わると俺はそそくさと図書室へと足を踏み入れた。言っとくが、俺は進んで行ってる訳じゃないぞ。これだけを勘違いしてもらっては困るからな。
図書室の準備室に入ると真琴と吉永さんが既にそこに――あれ? 吉永さんの格好がなんでウェイトレス仕様になってるんだ?
「あ、あの……。真琴さんがこれの方がお茶汲みしても似合うだろう、って……」
彼女は恥ずかしそうにもじもじさせながら言った。はっきりと言おう。彼女は天使だ。誰がなんと言おうと俺だけの天使なのだ。
「おかしいわねー。グランドロビスが笹を食べないなんて」
そんなふわふわ時間を完膚なきまでに破壊した――そう、高峰真琴はグランドロビス、いやパンちゃんに笹をあげていた。パンちゃんとは以前『搜索』していたときに発見したパンダのことだ。あと、お前だけだからな。その『グランドロビス』の名称を使っているのは? 一体どこの怪獣だっていうんだ。
「あ、あの……。まだ小さいから食べられないんじゃ……?」
「なるほど! それもそうね! パンとかあげればいいかしら?」
“とか”ってなんだ。“とか”って。パンとその他に何か色々あるだろ。例えば……ハムとか。
「何言ってるの。野菜も食べさせなきゃ、栄養には良くないわ」
真琴にしては常識のある発言をして、さっき購買で買ってきたんだろうと思われるサンドイッチ――耳を切り落とした食パンにハムとレタスと申し訳なさそうな程度に卵焼きが入っているまあまあ豪華なやつ――を摘み、ちぎり、それをパンちゃんの口へと運ばせた。パンやハムは食べるのに野菜は食べない――というかさっきパンちゃんが笹食えなかったのを思いっきり忘れてないか? とか思いながら、まあいつもの席に俺は腰掛けて、いつも読む文庫本を手に取るのだった。
「そういえば、転校生が来てたわよね?」しばらく蔵書の整理など、所謂『図書委員らしい仕事』をやっていたとき、何もせずに携帯ゲーム機で何かを遊んでいる真琴は思い出したかのように口を開いた。ともかく俺はそれに「ゲームしてないで手伝え」とか言いたかったが、魔法とか使って数千倍ダメージ(ただし精神ではなく肉体に、だが)が俺に跳ね返ってくる。まさにハイリスクノーリターンだ。
「あぁ。そういえば担任がそんなことを言ってたっけか」
俺は4週連続トイレ掃除にならなかったので結局遅刻してトイレ掃除になった太田をせせら笑ってて忘れてたけどな、というこの一言を俺の心の中に閉じ込めておいて、先ほど吉永さんに汲んでもらったお茶を一口啜った。
「こっちの方に来ないかなー。部活とか入ってないんだよね?」
いや、入ってたら驚きだよ、とか言い出そうとして――ふと、思った。
「……ここって、部活だったっけ?」
「えぇ。列記とした部活よ」
「……お前は部活と委員会の定義をはっきりさせとけ。ここは部活ではなく、委員会だ」
「だーかーらー、ここはもう部活なのよ」
「……なんだって?」おれは真琴の言った言葉が半ば信じられずにいた。だって、ここは『図書委員会』だ。まさかここは『図書部』とかでも思っているんじゃないだろうな。
「その通りよ」真琴が急に『心を読む』というとんでもなエスパー的能力を身につけて、俺に指を差し、「ここは今日から『図書部』になったのよ。あ、お墨付きだからね。ほらほら」そう言って書類を俺に突き出した。
どれどれ、どんなイカサマか見てやろうじゃ――え? 学園長の印鑑つき? 『図書部を本日付けで新設する』? 一体どうしてこうなってる?
随分と恐怖に怯え、俺は真琴の方を一瞥した。
――この女、本気である。
図書室の準備室に入ると真琴と吉永さんが既にそこに――あれ? 吉永さんの格好がなんでウェイトレス仕様になってるんだ?
「あ、あの……。真琴さんがこれの方がお茶汲みしても似合うだろう、って……」
彼女は恥ずかしそうにもじもじさせながら言った。はっきりと言おう。彼女は天使だ。誰がなんと言おうと俺だけの天使なのだ。
「おかしいわねー。グランドロビスが笹を食べないなんて」
そんなふわふわ時間を完膚なきまでに破壊した――そう、高峰真琴はグランドロビス、いやパンちゃんに笹をあげていた。パンちゃんとは以前『搜索』していたときに発見したパンダのことだ。あと、お前だけだからな。その『グランドロビス』の名称を使っているのは? 一体どこの怪獣だっていうんだ。
「あ、あの……。まだ小さいから食べられないんじゃ……?」
「なるほど! それもそうね! パンとかあげればいいかしら?」
“とか”ってなんだ。“とか”って。パンとその他に何か色々あるだろ。例えば……ハムとか。
「何言ってるの。野菜も食べさせなきゃ、栄養には良くないわ」
真琴にしては常識のある発言をして、さっき購買で買ってきたんだろうと思われるサンドイッチ――耳を切り落とした食パンにハムとレタスと申し訳なさそうな程度に卵焼きが入っているまあまあ豪華なやつ――を摘み、ちぎり、それをパンちゃんの口へと運ばせた。パンやハムは食べるのに野菜は食べない――というかさっきパンちゃんが笹食えなかったのを思いっきり忘れてないか? とか思いながら、まあいつもの席に俺は腰掛けて、いつも読む文庫本を手に取るのだった。
「そういえば、転校生が来てたわよね?」しばらく蔵書の整理など、所謂『図書委員らしい仕事』をやっていたとき、何もせずに携帯ゲーム機で何かを遊んでいる真琴は思い出したかのように口を開いた。ともかく俺はそれに「ゲームしてないで手伝え」とか言いたかったが、魔法とか使って数千倍ダメージ(ただし精神ではなく肉体に、だが)が俺に跳ね返ってくる。まさにハイリスクノーリターンだ。
「あぁ。そういえば担任がそんなことを言ってたっけか」
俺は4週連続トイレ掃除にならなかったので結局遅刻してトイレ掃除になった太田をせせら笑ってて忘れてたけどな、というこの一言を俺の心の中に閉じ込めておいて、先ほど吉永さんに汲んでもらったお茶を一口啜った。
「こっちの方に来ないかなー。部活とか入ってないんだよね?」
いや、入ってたら驚きだよ、とか言い出そうとして――ふと、思った。
「……ここって、部活だったっけ?」
「えぇ。列記とした部活よ」
「……お前は部活と委員会の定義をはっきりさせとけ。ここは部活ではなく、委員会だ」
「だーかーらー、ここはもう部活なのよ」
「……なんだって?」おれは真琴の言った言葉が半ば信じられずにいた。だって、ここは『図書委員会』だ。まさかここは『図書部』とかでも思っているんじゃないだろうな。
「その通りよ」真琴が急に『心を読む』というとんでもなエスパー的能力を身につけて、俺に指を差し、「ここは今日から『図書部』になったのよ。あ、お墨付きだからね。ほらほら」そう言って書類を俺に突き出した。
どれどれ、どんなイカサマか見てやろうじゃ――え? 学園長の印鑑つき? 『図書部を本日付けで新設する』? 一体どうしてこうなってる?
随分と恐怖に怯え、俺は真琴の方を一瞥した。
――この女、本気である。
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