俺の同級生は魔王

巫夏希

1-[5] 魔王、放つ。

 それを見ていた俺と、大田はしばらく何も話せなかった。だって、考えてみろよ? 今までの日常が悉くそれで崩されたんだぜ? もしくはその女の周りに旋風が吹いた、って考えるのか? いやそんなやつもいるだろう。しかし俺は言ってやるよ。「そんな一言で片付けられることじゃない」ってね。


 そんな俺と大田の驚く表情をみて、そいつは笑ってた。まるで逃げ惑う鹿をみて笑うチーターのように。


「どういうことだ。こりゃ・・・・・・」


「信じられない、とでも言いたいの?」

 彼女は俺が口にする前にその言葉をいい放った。

 せめて、俺に言わせろよ。とか思っていたけど。すぐにそいつはそれを言わせるのをやめさせるような発言をした。


「どう? 信じた? これで私の部下になるわね?」


「だからならねえよ。いい加減にしろ」


「……おい。まさかおまえずっとそれ言われてたのか?」ずっとのけもの、というか俺と彼女の話に飲み込まれて空気と化していた大田が口を開いた。


「ああ。そうだよ。分かるか。俺の気持ち」


「ああ。まず男子トイレに普通に入るところからして普通の人間じゃねえよ」


 そこかよ。おまえ今までその会話を聞いてて違和感はそこだけかよ。もうおまえも観点というか目の付けどころがおかしすぎるよ。とかそんなことを思っていたのだが。


 そうして大田は笑って言った。「あんた、だれだ?」


「魔王よ。何度言ったらわかるのかしら?」


 まだ大田には一回しか言ってないじゃないか。とか俺は思っていたのだが。


「ともかく私の部下になりなさい。さもなくば」


「さもなくば?」


「後ろにいる魔物に突かれて死ぬわよ?」

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