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僕のとなりは!?(僕とな!?)

峠のシェルパ

夕食後睡魔タイム

 僕はかつてこう言われた、目の前のものが全てじゃないって次があるって
一区切りつけるのも大事だよ、そう言われているうちには
その頃の僕は何でも全力で出来た、出来たはずなんだ。
出来なんて全然よくなかった事もあったけど楽しく精一杯のことが出来た。
何時からなんだろう目の前のものが曇って見えるようなったのは、
諦めの甘さが喉と頭を粘着質に覆っていく、手を伸ばして歯を食い縛っていた頃の自分はとうに消えて何だかぼやっとした良くわからない不透明な不細工な飴細工のようなモノになってしまっていると思う。
自己評価とか聞かれて自分の誇れる点はどこですかと聞かれることもあるみたいだけど
「諦めの良さと順応性が売りです!」
なんて言ってしまうくらいに僕は卑屈さが売りになっていると思う。
「そんなことを考えていても仕方ないんだろうけどなー。」
ため息混じりに独り言を吐くと少しだけ楽に…ならないね、どちらかと言えば落ち着くけどその分悩みの重さを再確認した気がして僕はあんまり好きじゃない。
肯定はないただただ不可の文字ばかりが眼前に貼られていく、まるで差し押さえられた物品のように悲しくそこにいることしか出来ない。
これは告白でなく独白である。自問自答が一番疲れたりするんだよね案外とさ、
この手じゃなんにも持てやしないよな…ぬくもりなんてもってのほかじゃないか?
はぁ、これ以上自虐と時間を無駄にするのはやめておくとしよう、僕の人生観よりかレイピアとののんびりライフのほうが興味ありそうだもの…。

 夕食も一段落してお皿洗いは…これ僕が全部やるパターンだね、レイピアはリラックスしてテレビ見てるしわざわざ台所から僕がお皿洗いの分担を提案するまでもないだろう。
「二人分位ならわざわざ分担してやる必要なんてないか」
小さく息を吐いて面倒と感じる前に片付けてしまおう…
水を流して買ってきた合成洗剤とスポンジを取り出す、水道代とか光熱費とかってレイピアと割り勘になるのかなぁ…
なんて考えつつもお皿を分類してみたりと洗い物にいざ取りかかろうとしたとき
「あ、そっか洗い物…」
素で忘れてたらしく立ち上がるのをやっとくからいいよーと既に洗い終えてピカピカになった自分のスプーンを見せてレイピアを納得させる、
「ごめんね、なんだか何もかもやらせちゃって」
少しばつの悪い顔をするレイピアに僕は気を聞かせ過ぎたなと心のうちで思うのだった。
もしもレイピアの腹の虫まで手懐けてしまったら同居人(仮)の(仮)が取れてしまいかねない、(実際家賃を少なくとも1ヶ月払ってもらっているのて初めから詰んでいると言えばその通りなのだが) 

今に隣人ではなく同居人になりうる人に対して配慮とか謙譲語を使うようになりかねない僕の態度に怒りは無いにしても困惑はしているの…かな?  
「分かったよレイピア、明日の朝御飯の洗い物は君に任せても良い?」
学校が始まるまでの数日間はこの部屋で1日過ごすのだから これから先に僕は言いたいこととかは素直に言うことにしよう。 「そうするとまず手始めに…レイピア、食事の後で女の子がソファーにもたれ掛かってこう「ぐでー」っとだらしなくしてるのはどうなんだい、年頃の女の子がする格好じゃないよ?」
着崩してるからなのだろうかちらちらと薄い肌色が見え隠れしているのは心臓に悪い、頼むから僕の寿命を縮めないでおくれ。
「そー言うものかなぁ?」
そういうものでなくても多少は恥じらいをもってください。
「食後にコーヒーとか紅茶とかってレイピア飲むの?」
水だけ飲むのも味気ないのでヤカンもあるし沸かして何か飲もうかとぼくは提案してみる
「うーん、コーヒーは飲めないから紅茶にしておこうかな、甘いやつね!」
食後とはいっても後は寝るだけなんだからあまり砂糖を入れるのはおすすめしないけど…
「歯は一生ものだから大事にしないとダメだからね、いざというときに踏ん張りがきかなくなっちゃうからね、8020だよ」
最後の数字の部分をレイピアが意味を覚えてるかはさておき、食後茶といこう、
「八十才まで歯が健康なまま二十本かだ、そんなに長生きしても元気なら良いけど病気とかしてたらあんまりいい気しないなぁ」
テレビを見ながら呟くレイピアを見てたしかにとも思ったが
病気とかしちゃったらそれまでだしなぁ、かといって健康に気を付けようとしてストレスたまっても嫌だし…

「それはそれとして、涼くん趣味とかないのかなって思うんだけどさ、何か話しようよ?」
話か、どんなお話がレイピアの食い付きが良いのかな?
そうだね…どうしたものか案外難しいな…
「そんなに人に言えない趣味とかあるの?
なんだか知らないけどアイドルみたいなの追いかけてひたすらに叫び続けてみたりする人だったりするのかな?
いや…涼くんに限って…まさか…?」
おやおや、何やらあらぬ方向にレイピアの思考が向きつつあるのだけれど、僕は訂正をすることもなく頑固になる前にお皿に付いた汚れを取るのに忙しいので一体レイピアの答えがどんな場所にたどり着こうとも気にはしないよ。
も、もしかして涼くんが持ってきたトランクの中身は自作の等身大抱き枕なのではないですかぁ!!?」
悪いけど訂正するよこれは…
落ち着いてレイピア、別に僕はそこにある深緑のスーツケースの中に等身大抱き枕なんて代物は入っていない、精々シャンプー位なもんだ。
レイピアはどこか妄想癖とは言わないまでも「夢見がちな女の子」と言われるような人なのかもしれない、
レイピアの家の内情までも僕は安易に土足で踏み込んだりはしないけれど、そのなかで彼女のストッパーとなるべき人がいたのかと少しだけ疑問に思う。
「うーん…それはないかぁ、」
自己完結してるし
「僕のスーツケースの中に入っているものなんて精々ステレオ位だよ。」
ステレオなんて言ってもパソコンに回線を繋ぐ小さめのやつだけどね。
「やっぱり音楽聞くんじゃん、アイドルかな? アイドルだね!」
何故レイピアがアイドルに拘るのかは分からないけれど僕が聴きたいのはJ-popよりも聴きたいジャンルがあるよ 
「ごめんねレイピア、どっちかっていうと聴きたいのはジャズとか、クラッシックなんだけど…」
それを聞いたレイピアは少しだけ残念そうな顔をする
「折角なんとか49?とかパルプァム?とか聴いたことないのを聴けるかなってちょっと楽しみにしてたのにな!」
うーん、どれも僕が知ってるアイドルとはちょっと違うかな…
「うーん、なら清掃係とSTEPは!?」
駄目だぱっと聞いた瞬間になにいったんだこの子って思ったけど
これ単にうろ覚えで正確なやつが出てこなくてそれに近いものを頭の中から見つけてるんだ。
「ないのかーあれぇ?」
無いというか絶妙に間違ってるだけなんだけどね、
「ふーん間違って覚えてたの、どおりででマスターに「清掃係の曲ってレコード無いの?」って聞いたら不思議な顔されるわけだよ。」
僕はパソコンにステレオを繋いでやって正しい答えを流して教えるべきかとも迷ったけれど、放っておけば音楽に触れる機会だって沢山有るんだからここは一先ず小さめに、持ってきた音楽プレイヤーとを繋いでjazzでも流すことにしよう。
「レイピアってこんなこと聞いて良いのか分からないけど、お嬢様だったりするの?」
ゆったりした低音の調べがテレビの生真面目なニュースもちょっとだけ味を変える一方で彼女は部屋にあるソファーベッドに横になりながら猫模様にゴロゴロしている、そろそろお皿洗いも終わるしぼくもそっちにいこうかな?
「そう言えばなんだけどさレイピア、君って御嬢様にしては口調がほら垢抜けてない?」
育ちのいい人は話し方からしてもっとゆったりした話し方だったりすると思っていたら
今時の人はあんな時代錯誤というか漫画みたいなしゃべり方する人なんていないでしょうにとレイピアに言われて少しショックを受けたのは内緒である。
「やろうと思えばそんな話し方も出来ますけれど、折角友人と居場所を得る好機なんですもの、素で話すとどうしてもマシンガントークっていうのかは知りませんがそちらに話し方が移行してしまいますわね…。
それにしても、んー明るい…」
眠そうに天井に向かって伸びをするレイピア、夕御飯も食べ終わったし横になってたらそれはそうなるって、
眠そうにゆっくり起き上がろうとするレイピアを眺めて溜め息を一つ吐いた。
「それならもう一回寝ちゃえば?」
今日いちにちだけで色んな事が起きたし、レイピアも僕の調子に合わせるのも疲れたんじゃないかな、
「そうしたいけどー、今ここで寝ちゃうと狼に食べられちゃうかもしれないので…」
レイピアは目を閉じたまま起き上がることなくソファーベッドから転がり落ちるとレイピアの自室に這って移動し始めたのである。
安心してくれていいよ、狼は日本で既に絶滅してしまっているから君が心配するようなことは起こらないよ、絶叫。
「普通に起き上がった方が疲れないんじゃないかな…」
わざわざ匍匐前進みたいにしなくてもいいよねとは思って眺めているとそのまま本当にレイピアの自室に消えていったのだ。
「うーん、多分10時位になったら起きると思うけどお風呂入りたいので…それくらいになったらおこしてー。」 
和室の構造はレディの秘密なので教えてはくれなかったけれど今確かに布団やらマットが高いところからドスッと落ちる音がしたぞ…。
「やっぱり変わってるよレイピアって…」
1日をレイピア共に過ごした率直な感想がいつの間にやら湧いて出て独り言になっていた。
トランペットの低い音程が不安げに流れている中で僕は今日出会った人を振り替えって見ることにした、
気になる人も気にしなければいけない人も恐らく一杯いるだろうけど先ずはレイピアとのこの生活を何とかして振り払わねば…
最悪の話はこのあと親御さんからの依頼で青い公安委員会の人がやって来て誘拐犯に上手いこと仕立て上げられてしまうこと事が一番怖い、
まさかレイピアは誘拐犯詐欺なんて言う新しい詐欺グループなんじゃ!?
家出を装い人のうちに上がり込んで証拠を作り、警察を呼んで…
まさかそんな詐欺に遭遇するなんて宝くじに当たるくらいにレアなことだよ…。

気を使い相手を満足させながら自分という存在を誰でもいい他人にする、今までそんなやり方位しか僕には無かった。
アイデンティティーなんてものは…僕には無いかな?
一先ず確認しなければいけない事はレイピアが親御さんから非公認で家出をしていると言うこと、それに対する僕なりの答えを出さなきゃいけないこと、それとレイピアは別にマスターに預けるという選択肢もあると思うがここで匿うリスクとメリットを考えよう、
僕に対してのメリットがあるかどうかはともかくレイピアにとってのメリット…
レイピアとして結局学校に行くという意思はある、それを考えれば通学距離はこちらの方が近い、それと学生寮という場所であるからマリアさんの目と学生の身で多少は安全が保証される、親御さんが来たとしても勝手に嫌がるレイピアを連行していくのは難しいだろう、
「…それを考えると僕の部屋にいた方が安全なのか…?」
いやまて、それを考えたら何故女子専用階である一階に部屋を貸して上げないんだ?
…事情があるにしたって何かあるだろ…
マスターの言ってた僕が決めなきゃいけない事は多分だけどレイピアを応援して親子関係をどうにかする立場に立つか、
家出なんていけないことだとレイピアを説き伏せるかどっちかって事だと思う、あくまで予測だけどね。 
でも親子関係を赤の他人がどうこう出来るって話でも無いでしょ…?
レイピアとその家族との関係は恐らく冷えきった関係なのだろうか、彼女の話を聞く限りそうとしか思えない、それを…情けない話ではあるけど無理でしょ。
なら、改善するまでとはいかないけどお互いの妥協点を見つけてレイピアには納得してもらった上でここを去ってもらう…
作戦としてはこれが一番よいのでないか…?
「僕の部屋の安寧な生活はこれからだ!」
なんて幕引きで今回のお話を終わらせられたら簡単で平和だったのだろう、
僕は何の気なしにレイピアの自室(不法占領済み)の襖に軽く持たれかかって何を思ったか語り始めるのだった。
「レイピア…起きていないって前提で話をするね、今日一日ってすごく僕にとって大変な一日だったんだ。
だって気がついたら女の子が自分のいるべき場所に住み着いていたんだからさー、
これでも僕は人に気を使うタイプの人間だからねやれやれって正直な所思った、けどそれと同時に楽しくもあったんだ。
急に何を言ってるのかって言われたらそうだなぁ、男の子って発作的にそうしたくなるときがあるものだと言うよ。
それに君には言わなくちゃいけないことがある、
レイピアが家に帰るように説得するべきか、それとも親御さんからレイピアを庇うか…二つに一つだと思うけど僕はね、残念だけど君の話だけ聞いたらその親御さんに腹が立つんだ、
どんな事情があっても親っていうのは子供のやりたいようにやらせるべきだって、子供を頭のいい学校に入れてそれをさも自分の手柄みたいに周囲にひけらかすなんて親は大嫌いだ。
子供の外枠だけよく見せて中身なんてからっぽにするやつとかいるんだよ、許せないよね?
子供のと親は選べないからさ…レイピアの言ったことを僕は信じます、君が親御さんとぶつかる覚悟があるなら…それを応援するよ、おんなじ部屋にいるよしみだしね?」
下らない独り言でしかないけれど僕は今は一人のこの少女の力に微力でもなってやろうと無言実行すると決めた。
自分で何をいってるんだと顔から火が出そうな位に恥ずかしいことを口走った気がするけれどきっとレイピアは今ごろ夢の中だから問題はないだろう…。
「よし、お風呂にお湯でも溜めようかな…?」
襖に寄りかっていた体重をおこして立ち上がると何事も無かった様にして僕はその場を後にしようとしたのだが… 

「ありがとう」

ふすまの奥から大きな座敷わらしが小さくなにかを言ったと思ったけれど僕はそんなことは気にせずにループしていたjazzの曲を切り替えて風呂場へ向かおうとしていた時だ。 
「何か忘れてるな…」
急に微風とマリアさんとのやり取りが気になって頭のなかでそのシーンを再現してみる、この寮生活において気を付けなきゃいけないことがあった気がする…
お風呂を湧かそうとしていたから炊事関連のことだろうか…?
「湯沸し器の調子がおかしいとか?」
水を沸かす?
「でもガスコンロの火もちゃんとついたし…」
沸かしたら沸騰して水は水蒸気になるよね…
頭のなかで何かが引っ掛かっているのだが一体なんだろうか
モヤモヤがもう少しで晴れそうで僕は台所と居間を行ったり来たり…行ったり来たり…
「水…水蒸気…蒸気機関車…D51?」
D51ってどういう意味でD51何だっけ、誰に言われたんだっけ?
微風か!
なるほど、微風にD51に気を付けろと言われたんだ!
…何で蒸気機関車に気を付けろって言われたんだろう?
疑問が次々に脳内でプカプカと浮かぶなかで恐らくドアフォンであろう電子音が鳴る
「こんな時間に誰だろう、マリアさんが様子を見に来たのかな?
はーい、今開けまーす!」
僕は玄関へと向かうのであった…。




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