俺は異世界でブリーフをかぶる

川島晴斗

6話目「お金をもらうには対価(ムフフ)がいる」

「異世界でもコーヒーは美味いな」
「……それは何より」

 今日も今日とて変態の俺、智月です。
 海割って調子乗った日から数日、どれだけミスズにくすねても銅貨しか恵んでくれないのでミカレーの元に訪ねてみた。
 すると丁度レイクが居て、女の子2人でコーヒー飲んでたんだ。
 俺も入れてもらい、ホッと一息。

「……貴様にもコーヒーの味がわかるとはな。嫌な奴で変態で何回も寝首をかいて殺してやろうと思ったが、少しだけ、爪の垢程度には認めてやろう」

 そしてレイクにもささやかながらに認められた。
 普段はパンツの事で追いかけっこする仲なんだから、もう少し認めてくれてもいいのに。

「……それで、何の用?」

 ミカレーが小首を傾げながら尋ねてくる。
 おお、コーヒーの懐かしさのあまりに本来の目的を忘れてしまった。

「ミカレーさん、パンツ恵んでくれないか?」
「……死にたい?」
「死にたくないです。資金が欲しいから恵んでくれと言いたかったんだが、つい口がパンツと……」
「…………」
「嘘ですすみませんでした!」

 さすがの俺も無言の圧力には敵わず土下座する。
 そして無言だと許してくれたのか許されないのかわからないので頭を上げた。
 ミカレーの顔を見ると、怒ってないっぽい。

「……お金がいるの?」
「うん、服無いし。ミスズに何回頼んでもさ、ほら見て。銅貨5枚。これの価値ってどんなよ?」
「……。……1日の、最低限の食費?」
「そんなもんなのか……」

 どうやらこれで朝昼晩は食えるようだ。
 全部パンの耳とかなら勘弁して欲しいけど。

「というかミカレー話すの遅い。レイク、俺に金の価値教えてくれ」
「……何故貴様に。いや、少しは賢くなってもらった方がいいのか。わかった、教えよう」

 とても嫌そうだったが、なんとかレイクが教えてくれることに。

 例えるなら、

 銅貨=5円
 大銅貨=50円
 銀貨=500円
 大銀貨=5000円
 金貨=5万円
 大金貨=50万円
 ただのパンツ=300円
 フリフリパンツ=2000円
 ブリーフ=この世で最も高価

 こんなところらしい。

「ほうほう、5円ずつ増える十進法か。なかなかどうしてスケベだなぁ」
「どこがスケベなんだ。スケベなのは貴様の心だろう」
「なんだと……? あ、ミカレー。このパンツもらっていい?」
「……ちょっと、どっから出した」

 あらかじめ交渉用にミカレーの部屋から拝借していたパンツを出すと、レイクにガッと奪われてしまう。
 ミカレーさんは怒ってないのに、なんでレイクさんが怒るんすか?

「やっぱり貴様はただの変態だったな」
「何を今更。こんな変態を召喚したこの異世界の住人もみんな変態だよなぁ」
「召喚したくてしたんじゃないんだが……」

 それもそうだけど、俺だって召喚されたくて召喚されたんじゃないからね?

「というかミスズもケチだよな。これ合わせて25円かよ。お菓子の味が濃い棒2本しか買えねぇじゃん」
「……お菓子?」
「あんいや、こっちの世界の話。そういやクッキーとか食いてえな。この世界にもクッキーぐらいあるだろ」
「砂糖は高価だ。貴様如きに出してやる品ではない」
「あんだと貧乳騎士!?そのぺったんこな胸をクッキーにして食べてやろうか!?」
「……貴様は私を本気で怒らせたなぁああ!!!」

 剣を出現させ、俺を捕まえんと追っかけ回してくるレイク。
 そっから追いかけっこが始まって、さっさかミカレーの部屋を退室した。



 ――――――――――――――――――



 俺さ、異世界に来て思ったんだ。
 ハーレムって難しくね?

「……それを俺の所に来て言われてもな」

 レイクからなんとか逃げ延び、今度はセスタの部屋に訪れた俺、智月。
 たまに名前出さないとみんな忘れね?俺は智月へんたいだから、よろしく。
 ……あれ?ルビおかしくない?

「おかしくないだろう」
「そうか。お前は真面目な男だからな、その言葉を信じるぜ」

 セスタの言葉を信じ、この言葉で正しいことを受け入れる。

「……それで何しに来たんだ、変態?」
「そんなに俺の怪力ナックルが食らいたいか」
「……トモツキ、何の用なんだ?」
「ああ、金をくすねに来た」
「……俺が怪力ナックルを食らわせてやろうか?」
「NOーーー!!!」

 そんなやりとりをしても怪力ナックルは飛ぶ気配がなかった。
 俺の話し方も慣れられたものだなぁ。

「でも金は欲しいんだよね。俺さ、この服しか持ってないの。海の水のせいでジーパンとか潮の匂いするし、そろそろ替えが欲しいんですが」
「なら働けば良いんじゃないか?俺は働きもしない奴に物を施したりはしない。働けない事情があるなら別だがな」
「ブリーフが頭に食い込んで入院が必要だなぁ。これでは働けないなぁあ」
「そうか。帰れ」

 尾ひれでぶん殴られる俺。
 まぁ待て待てと抵抗し、部屋に押し止まる。
 ここは俺の最終兵器の出番らしいな。

「まぁまぁ、お兄さん。イイもん見せてやっから金くれよ」
「良いもの?まぁ対価を差し出すというなら恵んでやらんでもないが……」
「言ったな?ではこれを見るがいい!」

 そして俺はおもむろにスマホを取り出し、幾重にもパスワードを重ねたムフフなフォルダを開く。
 俺がアニメ好きだからって、集めてるのは二次元ばかりではない!!
 くらえ!この眩きエロパワーを!

「なっ、なんだこれは!?酷い、酷過ぎる……。こ、こんなものを見せて俺を誘惑しようなどと……」
「おうおう、口で言ってても鼻の下伸びてんぞ」
「ッ!? お、おのれ!このようなもので買収されたとなってはオリオンの名折れだ!ダメだ!」
「今から1時間見放題で」
「っ……ぐっ……ぬぅっ……!」
「定期的に閲覧する権利をやろう」
「ええい!オリオンの名折れでもいい!いくらだトモツキ!?」

 めっちゃ折れる龍人なのだった。
 コイツここに居て大丈夫か?

 まぁなんにせよ、取引成立はありがたい。
 奮発して大銀貨3枚も貰ったので15000円分、これで何か買える。

 しかし、俺は町や村(?)に行ったことがない。
 というかオリオンの奴って外に出るのだろうか。
 そこで我々はオリオンの専門家であるミスズ巫女に聞いてみた(ナレーション風)

「はい、外には出ますよ。もちろん、こんな建物にずっと引きこもったりしていません。外に出て宮廷で報告をしたり、普通に買い物をしたりしています。休日の日程は管理室に書いてありますので、そこを参考にしてください」

 と、どこぞの教授ばりにナイスな回答をしてくれた。
 お前ならテレビに出れる。
 そのおっぱいの力でな……。

「……何か失礼なことを考えませんしたか?」
「気のせいだろ。それより今度の休みっていつ?買い物行こうぜ」
「なんで貴方などと買い物に……。早く旅に出てくださいよ、目障りです」
「それは俺と一緒に駆け落ちしたいと?」
「1人で旅に、どうぞ」

 あまりにも対応がひどいので、今日もパンツを盗むことに決定したのだった。
 なかなかフラグが立たん。
 明日には1人で街に行って、ミスズにパンツでもプレゼントしてやることにしよう。

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