奴隷でもチートを目指す

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2話 こんな展開知らんぞ

「ここは、どこだ?」

 いかにも怪しい儀式してますと言うような石作りの部屋だ。足下にはいかにも儀式に使いましたと言うような魔方陣が石の台座に彫られている。台座の四隅は、薄暗い部屋を照らす青白い炎が浮かんでいる。おそらく俺を召喚した部屋かな?てことは無事異世界到着だ。

 俺の召喚主は居ないのかと思い周りを見渡すと、台座に取り付けられた5段の階段の下に、冷たい石の地面に倒れ、肩で息をする異世界の王女を連想できる女がいた。王女らしい見事な服が汚れ、所々破けているのがとても気になる。

 まあ、こいつが召喚主だろう。俺を召喚するために力を振り絞ってくれたんだろう。ありがたやありがたや。

「おお、こいつはなかなか使えそうだ」

 で、お前は誰だよ。ここは王女の護衛騎士的な人が王女の隣に立って王女を気遣う場面だろ。ここはお前みたいな序盤で勇者の踏み台にされる盗賊みたいなやつの出る幕じゃねぇんだよ。

「これで、国民だけでも解放して貰えるのですよね……?」

 お、今まで疲れた様子しか見せなかった王女が喋りだした。てかこの盗賊風男とこの王女はどういう関係なのだろう? 解放とは一体……? 俺マニュアルにこんな展開に対する対処方なんて無いぞ。どうすればいいんだ?

「あ?んな訳ねぇだろ。お前も国民も、みーんな奴隷行きだ。いつ勇者召喚したら国民は解放するっつった?」

「え、でも……、あの時、こうすれば国民だけは助けてやるって。そう仰ったじゃないですか」

 あーあ、これ、王女騙されてんな。可哀想に。……あれ? これって俺絶対巻き込まれてるよな? 俺ピンチじゃないか?

「あーうぜー。そもそもこの召喚は俺の言った通りじゃねぇんだよ」

 え、なんで俺の方に来るの? 薄々察してたけど待ってくれって、ね? 情報整理する時間位は欲し――。

「あだだだだだ」

 イタイッ。いきなり髪を引っ張らないで! 禿げる、禿げちゃうから!

「黒き鎖は絶対の束縛成りて、彼の者に絶対成る服従を《奴隷契約》。魔方陣に奴隷化の術式を加えとけっつったろ?」

「イテッ、いたたた」

 いきなり放すなよ、ゆっくり降ろせよ。ケツいてぇよ。……今こいつなんて言った? 奴隷契約って……まさか。

「奴隷化の術式なんて、そんなすぐに加えられません。最低でも一年はひつよ、きゃあ!」

「ごちゃごちゃうっせーな。どっちにしろ俺の手間が掛かるか掛かんねぇかってだけだ。国民を解放しろだのあーだのこーだの。一々うっせーんだよ」

 あ、俺から離れた盗賊風男が王女を蹴り飛ばした。女だぞ?そこは躊躇しろよ。男としてどうよ?

「うぅ。で、でも」

「あーうぜー。おい、お前。そいつを担いでついてこい」

 あ、今の俺に言った? よし、こんなやつ無視しよう。

「…………」

「あ? 俺の命令が聞こえなかったのか? ……あぁ、奴隷命令じゃなかったのか。《そいつを担いでついてこい》まったく、煩わせんなよな」

「え、ちょっと、なんで勝手に動いてんの?」

 あれ、体が勝手に動く。え、マジなんで? 体が勝手に盗賊風男の言う通りに王女を担いで盗賊風男についていく。……え、なんで?

「え、なんで?なんでなの!?」

「《黙ってろ》おめぇもうるせーな」

「……!?」

 喋れない、え?なんで?

「ごめんなさい……」

 王女? いきなりごめんって? え? 何がどうなってんの? 勇者になってチート無双するんじゃないの? こんな展開、俺は知らんぞ。

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