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穴の空いた靴下

37章 攻略

 あの宴から3日後タカシとサオリは女神のダンジョンへ来ていた。
 過去の神具はPTLパーティーリーダーにしか与えられなかったが、
 現在はアイテム化して移動可能なのでサオリが手に入れていた、
 女神、人、ドワーフ、精霊のダンジョンの神具をタカシに与えようとしたんだけど、攻略時に参加していたPTMパーティーメンバーでないと受け取れない事実が発覚したので、
 サオリとタカシ、それに二人の仲魔という構成でダンジョン攻略に来ていた。

 「今まで私が管理してていいって言われてたので気が付かなかった。」

 「まぁ、さくっと行こうよ!」

 サオリはこの世界で一流の冒険者として攻略を進めていた自負があった。
 そして今の自分ならタカシだけに頼ることなく手伝うことが出来る。
 そしてタカシと一緒に戦うのなら後衛からの支援と補助、回復。それに重点を置いた育成をしていた。

 「おお、動きが凄いね、こりゃ楽しい!!」

 「なかなかやるニャ! 絶対神ウロボロスみたいなワクワクする戦闘ニャ!」

 そして目の前で広がる、規格外な戦闘。
 とんでもないスピードで壁や天井までも利用して楽しそうに戦闘をしている二人、一人と一匹。
 職業やスキル構成はサオリがある程度は助言した。
 基本的なスペックがあまりに凄すぎるので、試しながら取っていこうという話になり、以前の戦闘が無手による近接戦闘を重ねてきているので格闘系ジョブと、基本スキル、Jobスキルを少し取るように助言はした。
 そう、少ししかシステム補助を受けていないはずなのだ、

 「でも前の神具を持ってると95階からスタートできるのは助かったねー」

 「そうね、念の為に1階から入ったけど、なんていうか、触れると消えてたもんね敵……」

 あまりに実力差がありすぎるし、これだけの力があれば95階からでもなんの問題もないだろうと分析して今最上階のボスと戦っている。

 ハッキリ言って遊んでる。

 「おっしゃー行くぞウーニャ、ドロップキーック!」

 「ダブルドロップキックニャー!」

 タカシが蹴り飛ばした敵をウーニャちゃんが叩き落とす。
 敵が可哀想になる。

 「勝利!」

 「Vなのニャ!」

 「陣形とか作戦とか考えて、一生懸命倒したんだけどなー……」

 「マスターの努力の賜物なのニャ!」

 それはそうなんだろうな、この理不尽な強さを手に入れるためにタカシは、
 何年も一人で戦い続けてきた。
 私のために。。。

 「ありがとね……」

 「ん? なにか言った?」

 「……ううん! なんでもない! お疲れ様!」

 「よーし、この調子で次のダンジョンも行こー!」

 「おー!ニャ」

 やっぱり、理不尽だ……
 何ヶ月も準備して初めて女神のダンジョン攻略して、まぁその後は敵の種類が変わるけど強さ的には同じなので攻略速度は飛躍的に上がっていったけど……
 やっぱり、タカシにはかなわないなぁ……

 「それにしてもサオリとゴーレム君の補助あると楽だよねー」

 「ホントだにゃ! 水を得たウーニャニャ!」

 「ははは、何だよそれ!」

 「悩んでるのが馬鹿馬鹿しいから次のとこ行きましょ!」

 「あれ? サオリさん怒ってる?」

 「怒ってない、呆れて楽しくなってきてるだけ、じゃあ行こう!」

 サオリの差し出された手を握り、次のダンジョンへ向かう!

 「ひゃう!!」

 と、思ったら急に手を振りほどかれた、

 「ど、どしたの?」

 「なななな、なんでもない!! なんでもないから! ちょ、ちょっと一回部屋に戻って準備してから行くから! 人神様のダンジョン前でまってて!」

 「ああ、うん。」

 それから逃げるようにサオリは街へ帰っていった。

 「戦った後だから汗っぽかっかたかな? 注意しなくちゃな……」

 「サオリ様はレディーなんだから優しくしいと駄目ニャ!」

 「そうだね。」

 二人は今後もこの勘違いをしたまま旅を続けていくのである。


 ああーーーーーもーーーーーーーーーーーーー
 一人部屋で身悶えるサオリの苦悩と苦労は今後も続いていくのであった。



 「言わせてもらう。あえて言う。チート野郎……」

 「ぬわっ! サオリに言われると突き刺さる!」

 「マスター……哀れなのニャ……」

 新しい戦闘が楽しくてしょうがないタカシはそのまま8種族ダンジョンをクリアしてしまった。
 ええ、全部クリアしてしまったのだ。

 「私達が5年もかけて研究に研究をして、作戦をねって、構成を考えて……」

 「さ、サオリさん? 目が怖いです……」

 「はーーーーーーーーーーっ! わかっちゃいたけどタカシとウーニャちゃんは規格外ね、ほんとに。」

 「サオリとゴーレム君の支援のおかげだよ! 早くなるのとか強くなるのとか凄いよあれは! 何より仲間がいるから俺も安心して戦えるんだよ!」

 「そうニャ、最後の戦いなんて負けたらマスターは死ぬかもしれなかったニャ」

 「……え?」

 「ウーニャ!!」

 珍しく怒気をもってウーニャを叱責する。

 「ご、ごめんなさいなのニャ」

 「ウーニャちゃん、今の話はをくわし「なんでもない!」

 「なんでもないって、死ぬって「なんでもないから!!」

 タカシが声を荒げるとこなんて初めて聞いた。

 「……ごめん。落ち着いたらゆっくり話すよ。」

 「わかった……」

 たぶん、タカシは自分の命をかけて前の世界で戦って今ここに居るんだ。
 その事実が、サオリの心に重くのしかかった。
 軽い気持ちでチートだとか規格外と言っていた自分がほんとうに愚かだと思い知らされた。
 自分なりに努力をしたと勝手に思い上がって、安全なゲームの中でたくさんの人に支えられていた自分。
 たった一人の世界で、命をかけて戦ってきたタカシ。

 私に、彼に報いる資格なんて、ない……

 「サオリ!!」

 サオリが失意に落ちかけた時、タカシは強くサオリを抱きしめた。

 「ちゃんと話す。だからサオリは自分のことを卑下したりしないでくれ。
 俺は今サオリを抱きしめて、君と逢えて、心の底から嬉しいんだ。
 君がいない世界なんて意味が無いんだ。
 それだけはわかってほしい、俺にとってサオリは何にも変えられない存在なんだ、ずっとそばに居てほしい。」

 サオリは嬉しさと心地よさに包まれながら、
 返事の代わりにきつくタカシを抱きしめて、

 そっと口づけを交わした。









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