みんな無課金俺課金(課金するとは言っていない)

穴の空いた靴下

33章 師匠

 『君は凄いな、まさか中央塔をクリアするとはね。』

 ここは……

 『君の身体は現在治療中だよ、治療中と言うか改造中というか。』

 落ち着いた優しい声が聞こえる。

 『はは、ありがとう。久々に通知が来た時はびっくりしたけど、
 その通知がクリア通知だったのは更に驚いたよ。
 滅茶苦茶なバランスだったろ?ごめんごめん、僕は戦闘系の調整が苦手で、
 内政関係は結構自信があるんだけどね。』

 あなたは……?

 『ああ、まだ名乗ってなかったね。君がいた世界の絶対神だよ。
 いろいろあって管理もしていないサボり魔だけどね。』

 絶対神が言っていた師匠って人ですか?

 『ああ、そうだね。あの子はなんでも人にやらせるから、
 ここまで教えたからあとは一人でやってごらんって通知オフにしてしまっていたから君にはいろいろと苦労をかけてしまったね。』

 これから俺はどうなるんですか?

 『今もともとの君の世界の絶対神と君の愛するサオリさんがいる世界の絶対神が来るから二人と色々と話をしてどうするか決めるつもりだよ、君の悪いようにはしないようにするつもりだ。』

 ありがとうございます。

 『いやいや、もともとは私とあの子がしっかりとしていないのが原因だ。
 ひさびさに触れてみるとこの世界が放置されるのも寂しいもんで、
 いろいろとあとの二人と久々に一緒にやりたくなったから、
 こっちが礼を言いたいくらいだよ。』

 あの……さっきから世界? ってホントの神様なんですか?

 『うーん、そうだねぇ。まぁ、ここまで来たら話しておくか。
 簡単にいえば君たちは私達が作る世界のNPCのような存在なんだ。』

 突然凄いことをサラッというなぁ。

 『そうだよね、でもNPCと言っても物凄く自由な思考、行動が取れるし
 私自身とそう変わりない自我というものを持っている。
 ココらへんは後で来る友人が本当に緻密に作り上げている。
 彼も君たちをNPCとは思っていない。大切な子どもたちと思っているよ。』

 なんで、どうして僕たちはこの世界に来たんですか……?

 『それは、お、来た来た。詳しくは君の創造主に聞くといいよ』

 創造主……?

 『やぁ、創造主ってのは正確ではないな、俺は大本を作っただけ、
 君たちが自ら進化を重ねて生まれてきている。でも僕にとっては可愛い子どもたちだ。』

 少し大人な声が聞こえてくる。

 『他の二人よりは年上だからね。』

 『彼がNPCの細かな設定の名人なんだよ。』 

 頭がついていかないんですが、その可愛い子どもをなんであんなとこに?

 『そうだね……それは確かに謝らねばならんな。すまなかった。
 君たちの国日本がおかしな方向に行くのが外部からの要因だったため、
 それをそのままにしておくわけに行かなかった。
 それもこちらの都合でしかない。すまん。』

 外部からの要因?

 『そうだ、突然国単位の思想が急激に変わったんだ。
 自分勝手、利己的、義務を果たさず権利ばかりを主張する。
 そのくせやる気もない、打たれ弱い、いくらなんでも急に変わりすぎる。
 数千年単位でゆるやかに変化が起きていたのに10年ほどで急にだ。
 不審に思って調べると、君にわかりやすく言えばバグだな。』

 バグ……?

 『君たち自身の進化によって世界の処理しなければいけない量が爆発的に増えてしまい、その歪みが君たち日本という国の一部のNPCの思考を歪め、
 そしてそのNPCが他のNPCに洗脳のような方法でその思考を浸透させていくという手段をとっていたのだ、ウイルスといったほうがいいかもしれないな。』

 そ、そんな!俺は別に何も変わっていない普通に過ごしていましたよ!

 『どちらかと言うと、まともな人間を避難させた。って言い方がただしいな。』

 避難ですか。

 『巻き込まれた方はこんなものは詭弁だよな、ただ、そんな理由で急激な変化を起こしてしまうのを静観できなかったんだ。君たちは僕の自信作でもあり、
 これから僕達が作る世界の人間のベースとなっていく大切な住人だから。
 全部消すことも考えたんだけど、君の元いた世界も愛着はあったからね、
 でも、申し訳ないが君の世界はすでに数千年が経過して、君の知る世界はのこっていないんだ。』

 な、なんだって……!?

 【落ち着け】

 その言葉を聞くと湧いて出た不安や怒りが一気に引いた。

 『コマンドは使いたくないんだけど、怒られてもどうしようもない。
 不遜な物言いになるが、君たちを消すのも簡単なんだ。
 もちろん、なるべくそれはしたくない。
 今だって君の想いを実現すべくお手伝いをさせてもらってる。』

 『そうだよ、君の言いたいことも十分わかるけど。
 我々は君たちの世界を作れる存在なんだ。
 ただ、世界に対して敬意と愛情を持っている。それは信じてほしい。』

 それは……そうかもしれませんんが……

 『納得しろと言っても無理なことはわかっている。
 少なくとも君はサオリさんに逢いたいだろ、脅しみたいだがこれ以上我々に怒っても意味がないんだよ。』

 ……

 『最後の一人も来たみたいだ。もう少しで君の望みを叶えられそうだ。
 悪いけど、ここでの会話の記憶は消させてもらう。
 君が見せてくれた可能性はこの先俺の糧となる。ありがとう』

 『師匠!! お久しぶりです!!』

 元気な声が聞こえたところで、もう一度俺の意識は薄れていく。

 『次目覚めた時は、君の望みが叶うよう最大限努力するよ。』

 最後に優しい声が聞こえて。眠りについた。

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