みんな無課金俺課金(課金するとは言っていない)

穴の空いた靴下

19章 獅子奮迅

(うおおっ!! 怖いけど楽しーーー!!)

凝縮された時間の中でギリギリで敵の攻撃をよけながら攻撃をしていく、
慣れてくると敵のブレス攻撃なんかをこちらの攻撃で妨害したり、
味方のいない方向へ誘導したりも出来るようになった。
圧倒的に選択肢が増えてきた。
防御面も被弾をそもそもしづらいし、受けてもサオリの仲魔の防御のおかげで
大したダメージを受けない。
以前は苦労した80階のボスもはっきり言って楽勝で倒せるようになった。

「ふいー! いっちょ上がり!!」

「おつかれー、もう前みたいにへばらなくなったね。」

「だんだん慣れてきたんだよ、戦闘中話せないのが残念だ。」

「確かに、戦闘中私の仕事が無い……」

戦闘に入るとすぐに相手のステータスを確認して攻撃に入る。
これら一連の動きはもう身体に染み付いてきた。
突然の攻撃も着弾までの間に属性、特徴を理解して対応する。
最初は思考時間の増加にものすごい疲労感に襲われることも多かったけど、
今では普通にこなすことが出来るようになった。

「戦闘のあとの分析とか助言とかサオリ先生にはお世話になっております。」

「そう言ってもらえると嬉しい。」

「それにサオリに見てもらえると頑張れる。」

「……うん。」

慣れてくると以前より遥かに強くなってきたことがわかる。
NPCの無秩序な力任せの攻撃でもある程度は戦えた、
しかし、状況を分析してそれに対して最適な行動を選んで実行する。
それらが行われると同じ能力でもここまで戦況が楽になる。
俺たちは身を持ってそれを感じていた。

当然仲魔の強化も影響しているんだけど、
それでもいまでは80階のボスを余裕を持って倒すことができている。

「これなら90階目指してみてもいいかもね。」

「そうだね、もうすぐサオリのゴーレムさんもレベル上限に達しそうだしね。」

レベル上限に達すると進化することが出来る。
ただレベルが下がってしまうので一時的に戦力が低下してしまう。
ウロボロス君は普通の仲魔よりも成長が遅いしレベル上限が高いので、
そうそうは進化の機会にめぐまれないけど、
上層部の経験値はかなりのものなのでサオリの仲魔は部分部分進化をしたり、
手に入れたよりレアリィティの高い仲魔に変えている。

一日のダンジョン侵入回数制限がない俺たちは、
普通の勇者たちでは考えられない量のデイリークエやサブクエをこなしている。
各種族をめぐるのでサオリもかなりの数の輝石を得ることに成功している。
今では各部位の装備もSR,SSRの防御系、いわゆるハズレで固めている。

「一旦出て、食事をして体調を万全にして90階アタックしよう!」

「うん!」

油断はしない、運営はこういう時に絶望を与えてきて課金させるのだ。


「想像以上だね・・・・・・」

「そうだね・・・・・・」

俺たちはもう90階のボスの扉の前にいた。
嬉しい誤算でそんなに雑魚の強さが変わらなかったのだ、
その代わりHPだけ多くなっている。これは運営のありがちな手抜きだな。

「戦うと会話できなくなるから先に言っとくけど、
復活できるようなら限界まで復活してしまう。
サオリの仲魔が倒れた場合わざと死ぬこともある。」

「そうだね、もう90階は早く突破しないと次からが本番だものね。」

「じゃあ、がんばろう!」

「うん! がんばろう!」

90階の最後の扉を開く

闇火龍 ヴァラハムート
巨大な龍、翼竜のような大きな羽を広げてこちらを威嚇している。
その姿は光沢のある黒色の鱗、腹部は鮮やかな赤い鱗をしている。
美しい金色の目がぎょろりとこちらを見つめ、

「グァアアアアアアアアアアアアア!!!」

その咆哮が戦闘開始の合図となった。
この戦闘は復活制限はなかった。


(早い!)

加速した時間の中でもその攻撃は結構な速さを誇った、
避けることはできるけど、避け方を間違えると被弾も十分有り得る。

(出来る限りこちらで攻撃を受け持たないとゴーレムさんが直撃をうけると、
やばいな・・・・・・)

攻撃方法は前肢の鋭い爪による引っかきがメイン、
その部屋の床とか壁をガリガリと削っているのでかなりの破壊力だ。
あとはブレス、可能なら妨害しているけど、
時たま吐かれるブレスはものすごい勢いの火属性のブレスだ。
さらにたまに尻尾で全体攻撃をしてくる。
これも早い、突然後ろを向くと尻尾が飛んで来る。

危ない時は幸運装備に変更したり臨機応変に対応する。
メインは水攻撃が有効みたいだ。

(ゴーレムには攻撃させないぞ!)

その爪でゴーレムに向かおうとする龍に水で作った刃を飛ばして牽制する、
すぐに尻尾が飛んでくるがそれをギリギリで避ける、
連続して爪による連撃、やっといなして距離を取るとブレス。

正直息つく隙がない。

(攻撃も続けているけどまだ20%削ったってとこか、
いくら楽になったと言ってもこれはキツイ)

それでも長いこと攻撃しているとパターンも読めてきて、
安定してダメージを与えることができるようになる。

(もうすぐ50%変化があるだろうな)

50%になる前に全属性耐性に換装する。
と同時に龍の全身から熱波と衝撃派が放たれる!
同時に体力がごっそり持って行かれた。

全身の鱗の隙間から炎を上げてお怒りのようだ、
でもこちらも倒さないといけない相手! ビビってはいられない!

(ゴーレムが攻撃を弱体化させたうえでこのダメージ。
でも次回からは固定ダメでなければ完全回避で行けそうだ。
ゴーレムも健在!)

リジェネ効果で少しづつ体力が回復していく。
その後もブレスが来たけど対策ができている以上躱すことが出来る。
自分が避けることでゴーレムへのダメージも半分になり、
余裕ができている。

(このまま、決める!!)

幾度も技を放ち、魔法を撃ち込んだかわからないが
闇火竜ヴァラハムートはその巨体を地面に晒し、もう動くことはなかった。

同時に視点がタカシのもとへ戻る。

「はぁぁぁぁぁっぁあ、しんどかったーーーーーーー!!」

「お疲れ様ーーーー! 強かったね。」

「ついでに戦闘時間ってどれくらいだったの?」

「うーん、20分位は戦っていたと思う。
ゴーレムもSP,MP回復しないと間に合わなかったよ……」

今更だけど戦闘中はHP回復はできない。
ただプレイヤーはSP回復剤、MP回復剤は使える。
キャストタイムを縮めることは出来ないけどね。
あと、すごい高級品だから滅多なことでは使わない。
サオリさんは戦闘を見て判断して使うべきなら使ってって決めてある。

「ありがとう、正直ゴーレムさんが落ちたら負けてたと思う。
ゾンビアタックはなるべくしたくないからね」

「そうね、出来ない時も多くなるだろうから……」

「でも、倒せてよかった。もう一回はきつい……」

俺は大の字でその場に横になった。

「お疲れ様、かっこよかったよ。」

サオリはそう言いながら側によってきて頭を撫でてくれる。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

こ、これは……

俺はサオリの髪に手を触れてそっと引き寄せようとする・・・・・・

「Congratulations!!!!」

ゴツン!

レアドロップを知らせるシステム音が鳴り響き
二人は心臓が飛び出るほどびっくりして頭突きみたいな状態になってしまった。

でも、サオリだけは気がついた、一瞬唇も触れたことを……


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