ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その1・New life

この小説は前作「ヒーローライクヒール」の続編です。
先に「ヒーローライクヒール」を読んでからの方がお楽しみ頂けると思います。

[クロノ]
男「そろそろリースが見えるぞ。」
ウロウロしていた時に乗せてもらった馬車の御者が声をかける。
俺は上月玄野かみづきくろの
いろいろあって日本の某県から異世界に飛ばされ、そこでまぁいろいろあっていろいろなった。
詳しくは前作を読んでちょうだい。
クロノ「意外と遠かったんだな。」
男「まぁ、他の町から少し遠い場所にあるからな。」
リースという村がアリアンテという町の東側にある。
そこで傭兵のようなことでもして金を稼いでのんびり暮らそうかと思ってこのリース行きの商人の馬車に乗せてもらったのだ、
勿論、タダではない。
クロノ「そんで、女盗賊ってのはそろそろ現れる頃か?」
リースの近くには女盗賊がいるらしく、リースに入ろうとする馬車を襲うらしい。
男「そのはずだ。この荷物だけはどうにかして守らなきゃならないんだ。あんたの腕、信用するぜ。」
クロノ「なに?なんか大層なモンでも入ってんの?」
男「いや、別にそういうわけではないんだが…今年最後の入荷だから最後まで全部送り届けたいのと、後リースにいる娘の為に買ったプレゼントがあってな。」
クロノ「あら、おっさん子持ち?いいねぇ。」
男「2年前に産まれたばかりなんだ。あいつは将来絶対美人に育つぞ!」
クロノ「あ〜あこれだから親バカは…」
馬車の荷台から後ろの景色を見る。
向こうから何か見えてくる。
馬に乗った数人の…女?
男「リースが見えてきたぞ。」
クロノ「いや、それよりもさ…女盗賊ってのは馬に乗って襲ってきたりするの?」
男「え?えーと…あぁそうだな…俺はいつもそうやって襲われてたな。」
クロノ「何回も襲われて生きてんのあんた…?」
男「やつは荷物は奪ってはいくが、殺しはしないやつらしい。盗賊共が直接言ってたわけじゃないが、うちの村を出入りする商人で、奴らに殺されたやつはいない。」
クロノ「ふーん…。」
女の1人が何かを構える。
クロノ「弓…?」
すると、何かが自分めがけて飛んでくる。
それを右手で掴む。
クロノ「やっぱ弓矢か。もう少しで俺の眉毛の間にぶっすりいくところだったじゃねーか…。おい、奴ら殺しはしないんじゃねぇのか?」
男「いや、分からん。俺たちが勝手にそう思っていただけかもしれん…」
クロノ「ふーん…」
矢に右手の魔力を込める。
自分の右手を包む魔力は通常の魔力と違い、『闇』の力を含んでいる。
『闇』とは、簡単に言うと自分の心の中の本心や感情が魔力を持った存在だ。
少し前にいろいろあって自分の本心と向き合う機会があり、それから闇の力を右手に宿すことになった。
盗賊達がこちらへ馬を走らせてくる。
男「マズイ‼︎あいつらに追いつかれちまう‼︎」
クロノ「あいつらに追いつかれたらヤバイよなぁ…」
男「当たり前だ‼︎追いつかれる前になんとかできるか?それとも、追いつかれてから何とかする感じか?」
クロノ「じゃあ前者で。このまま走らせて。」
矢を投げ返す。
矢は盗賊達の足元に落ちる。
クロノ「ま、今回は別にいいか。」
指を鳴らす。
矢は爆発を起こし、盗賊達を驚かせる。
盗賊は馬から落ちたが、退散していったようだ。
クロノ「おーおー、逃げ方のマヌケなこって。」
男「今のどうやったんだ?遠隔起爆?あんな遠距離の起爆なんて見たことないぞ?魔法陣でも作ってたのか…?」
クロノ「ちょっと変わってんだよ、俺は。」
男「いや、何にせよ助かったよ!あんたがいなかったらこの馬車は間違いなく奴らの餌食になってたさ。」
クロノ「こんくらいならいくらでも受けるよ。」
男「そういや、あんたリースに何の用があってきたんだ?」
クロノ「いや、どっかテキトーな村か町かで傭兵もどきでもしようかと思ってたんだけどさぁ。どうやらこの村だと、仕事がたくさんありそうだな。」
男「だろうな。あんなのがいたんじゃ、入り口に立って盗賊を追い払うだけでも食っていけるだろうよ。」
クロノ「この村には自警団とかギルドとかはないの?」
男「ない。いや、自警団のようなものならあるんだが…この村には強いやつはいないんだ。ちょっとした弱い魔獣なら数人でギリギリ追い返せるって程度かな。」
クロノ「はー…大変だね…。」
男「あんたみたいなのは歓迎されると思うぞ?そら、到着だ。」

リースの門が開く。
中はまぁ、まさに村、あるいは小さな町といった感じか。
見たところ木造の家はなく石造りが多いが、町よりは村の方が近い感じだ。
老人「おお、カルイ!無事だったか?」
ここまで乗せてくれた男はどうやらカルイという名前らしい。
カルイ「村長!あぁ、この人が馬車を守ってくれたんだ。」
腰の曲がった老人がこちらへ歩み寄ってくる。
側にはメイドであろう女性がいる。
老人「お若い戦士よ…私はリースの村長を務めております、ルーガルと言います…。うちの村の者を守ってくださり、ありがとうございます。」
クロノ「いやいや、別に戦士じゃないし…ここまで乗せてってくれたお礼で守っただけだし…そんな感謝なんていらねぇよ。あぁ、俺はカミヅキ・クロノって言います。」
ルーガル「いえいえ、この村には盗賊と対抗できるような者はおらず…感謝します…。」
カルイ「村長、この人はこの村で傭兵をやりたいんだそうだ。」
ルーガル「おぉ、そうだったのですか。えぇ、あなたのような方がおられれば私共も安心していられます。」
クロノ「いいの?傭兵っていうからにはお金とか普通に取るけど。」
ルーガル「それで依頼をこなしてくれるというのならお安いものでございます。」
クロノ「それなら、やらせてもらおうかな。さて、宿はどうするか…」
ルーガル「今、空いている家屋はあるかな?」
メイド「一件だけありますが…あれは…」
ルーガル「あぁ、あれか…うぅむ…」
クロノ「なに?いわくつきとか?」
ルーガル「えぇ、幽霊が住む家でして…誰も近寄りたがらないのです…」
クロノ「そこしか空いてないんでしょ?ならそこでいいからどっか住ませてくんないかな?」
ルーガル「いえ、ですが…」
クロノ「俺は幽霊とかあんま怖いとは思わないタチなの。案内してくんない?」
ルーガル「では…こちらです。」
カルイ「そうだ、これを持ってってくれ。礼だ。」
カルイから袋を渡される。
クロノ「にゃにこれ?」
カルイ「中に食い物だとか、リースのお菓子なんかが入ってる。」
クロノ「お、いいの?んじゃあありがたく。」
ルーガルに案内され、幽霊屋敷に向かう。

幽霊屋敷とは言ったものの、大してそんなに屋敷という感じがあるわけではなく、ただのその辺の家屋みたいなものだ。
ルーガル「こちらです。」
クロノ「あんがとさん。さて、中は…」
中に入る。
誰も近寄りたがらないとだけあって、中はそれなりに埃っぽい。
クロノ「まずは掃除かな?」
二階に上がる。
クロノ「玄関よりかは綺麗か…。なら一旦こっちに荷物を避難させようかな。」
一階に荷物を取りにいく。
一階に降りると、何かがカルイからもらった袋を漁っていた。
ぼやけているような、実体があるような…
(まさかこいつが幽霊か…?)
見た感じ女の子の幽霊だ。
袋から何かを取り出して食べる。
あれはおそらくカルイが言っていたリースのお菓子だろう。
美味しそうに食べ、周りを見る。
自分と目が合った。
幽霊「………」
クロノ「………」
幽霊が逃げるためか、姿を消そうとする。
クロノ「まぁちょい逃げんなって。ちょっとお話ししようや。」
幽霊が消しかけていた姿をだんだんと濃くする。
幽霊「………」
何かを言っているようだが、全く聞こえない。
クロノ「悪いが、なんて言ってるのか全く分からん。こっちの声は聞こえるか?」
幽霊が頷き、何かを言っているようだがやはり聞こえない。
幽霊が何かを書くような仕草をする。
クロノ「筆談しようってか?悪いが、俺は字が読めないんだ。」
こちらの世界は日本語を話さない。
こちらの世界特有の言語で会話をする。
そのため、自分がこの世界に来た時もこちらの世界の言葉は分からなかったが、ハゼット・ローウェルという男に特殊な魔法をかけられたおかげで、こちらの世界の言葉を聞き、話すことができる。
が、こちらの世界の文字を読めるようにはされてくれなかった。
そのため、この幽霊と筆談ができない。
現状、この幽霊との会話手段はこちらから一方的に話すだけの会話とも言えないようなものなわけだ。
クロノ「これだけは確認させてもらおう。あんたは俺に悪さをするつもりはあるか?」
幽霊は首を横に振る。
クロノ「それならいいんだ。なら俺もあんたに何かするつもりはない。それと、あんたはこの家に前から住んでたってことだよな?俺もここに住ませて欲しいんだが…いい?」
幽霊は首を縦に振る。
クロノ「そ。なら、これからよろしく。」
まさかの幽霊と共に暮らすことになるとは。
クロノ「そうだ、あんた名前は…俺が分かる手段がないよな…」
幽霊がシュンした表情をする。
クロノ「仕方ない。なんとか分かるまで、あんたはとりあえず幽霊ちゃんと呼ばせてもらおう。俺はカミヅキ・クロノだ。よろしくな。」
握手をしようと手を出す。
幽霊も応じて手を出すが、
クロノ「あらま、触れないの。」

次の日。
昨日はとりあえず寝室の掃除だけ終わらせて寝た。
朝起きて外が騒がしいのに気づく。
クロノ「おはよう、幽霊ちゃん。」
外の騒がしさよりも、なぜこの幽霊ちゃんが俺の体の上にいるのかが気になる。
クロノ「もしかして…元々あんたのベッドだったとか?」
幽霊は首を横に振る。
クロノ「じゃあなんなんだ…」
特に異常はなかったから悪さをされたわけではないようだが…なんだったんだ…

外に出る。
どうやら自分がリースに入ってきた西側の門で騒いでいるようだ。

クロノ「カルイ。何かあったのか?」
カルイ「おうクロノ。あれだよ。」
クロノ「あれ?」
カルイが指差す方を見る。
誰かが仰向けで倒れ、苦しそうに呻いている。
カルイ「他所の町の商人なんだが…」
クロノ「襲われたのか。」
カルイ「あぁ。夜中なら盗賊に襲われないと思ったのかもしれんが…」
クロノ「夜こそ盗賊の独壇場ってもんだろうな。」
カルイ「夜でも昼でも奴らは襲うけどな。」
ルーガル「おぉ…クロノさん。」
カルイ「村長!」
クロノ「村長さん。」
ルーガル「盗賊達は他所の商人だろうと問答無用で襲います。」
クロノ「何とかしなきゃいかんな…。」
ルーガル「お願いできますでしょうか…?」
クロノ「………」
(殺してまで奪うような奴らじゃないってか…普通は殺した方が奪いやすいはずなのに…人を殺せる実力がないわけじゃないはずだ…遠距離から弓で的確にヘッドショットしてくるような奴らだ…奴らを壊滅させるよりは…)
ルーガル「クロノさん…」
クロノ「二個くらいさ、聞きたいことあるんだけど…」
ルーガル「何でしょう?」
クロノ「盗賊達って何人いるの?」
ルーガル「正確な人数は分かりません。ですがおそらく…少なくても10人はいるはずです。私が今まで見てきたのは10人でした。」
クロノ「ほー…。じゃあもう一個なんだけどさ。この村に10人やら20人やらを養うような財力だとか、食糧だとかはある?」
ルーガル「それくらいでも余裕ができるくらいにはございますが…」
クロノ「ほほーう…。よし、じゃあ一個お願い聞いて欲しいんだけどさ…。」

表で警備を始める。
数時間経ち、
クロノ「お、ありゃ馬車かな?」
かなり向こうから馬車がこちらに向かってきているが、馬車にしてはやけにスピードが速い。
クロノ「追われてんな、ありゃ。」
バイクに乗り、馬車まで寄る。

クロノ「おーい、お助けはいるかー?」
男「あんたは…?いや、助けてくれるのか⁉︎」
クロノ「その為にリースで働いてんだ。で、いる?」
男「あぁ、助けてくれ‼︎」
クロノ「りょーかい‼︎」
馬車に近くまで寄っていた盗賊達との間に入る。
クロノ「はーい、ストップ。」
盗賊A「なんだい、あんたは‼︎」
盗賊B「邪魔しないでちょうだい‼︎」
クロノ「全部で3人か。」
盗賊C「いいさ。邪魔するってんなら容赦しないよ‼︎」
クロノ「マジで?」
盗賊C「安心しな、命までは取らないさ。」
クロノ「いいの?そんな優しくて。」
盗賊A「あたし達が男相手に遅れをとるとでも?」
クロノ「そうじゃないけどさ…」
右手に魔力を集め、チェーンソーを作る。
右手の闇の魔力は割となんでも作れる。
クロノ「俺は割とガチめな方法であんたらを追い返すつもりだよ?」
盗賊B「なっ⁉︎」
さすがにチェーンソーを見てビビったようだ。
というか、この世界にはチェーンソーはないから見ただけでもかなりグロい武器に思えるはずだ。
知ってた方がよりグロい武器に思えるだろうが。
(そもそも武器ではないんだがな。)
クロノ「さすがにビビるわな、こんな武器。」
盗賊A「くっ…男相手に怯えてなんかいないよ‼︎」
3人がまとめて飛びかかる。
チェーンソーを捨てる。
チェーンソーはチリとなって消える。
闇の魔力は全部で3つのモードがある。
魔力を発射、あるいは何かに込めて自分の体から離れても効果を維持する魔力的な使い方。別に体から離す前提ではなく、普通に身体強化にも使う。
二つ目はこのように、何かしらの道具を作り出すこと。こちらは自分の右手から離れると、チリとなって消えてしまう。
このチェーンソーも自分の体から離れたから消えてしまった。
三つ目は…これから先に話すべき機会があるのでその時に説明する。
クロノ「飛びかかるなんて戦法は‼︎」
右手で地面を殴る。
地面から岩の塊を出現させ、3人の腹にぶち当てる。
「「「ぐぁっ‼︎」」」
クロノ「迫力はあるし、相手をビックリさせるのに使えるが、案外意味ないぞ?」
盗賊A「ぐっ…がはっ…」
思ったより威力が強かったのか、吐血してしまっている。
クロノ「さて、あんたらのアジトの場所を吐いてもらおうか。」
盗賊A「誰があんたに…」
クロノ「だめ?」
チェーンソーを作り、首元に近づける。
盗賊A「ひっ‼︎」
クロノ「別に壊滅させるつもりはないんだ。ちょっとあんたらの親玉と話したくてね。行き方だけでも教えてほしいんだ。さもないと俺のこれを持つ肩が限界でついうっかり腕を下げてしまうかもしれん。」
盗賊C「も、森の中だ‼︎」
クロノ「森?」
盗賊A「ラン‼︎」
盗賊C「リースから南にある森にあたし達のアジトがある‼︎」
盗賊A「ラン…あんた…」
盗賊C「お願いだ…殺さないでくれ…」
盗賊B「頼む…」
クロノ「あんたらなりにも友情はあるってか…別に殺す気はないよ。ただの脅しのつもりだったし。あくまで言わないつもりなら指一本くらいは覚悟してもらおうかとは思ったけど。ま、いいや、あんたらの親玉に伝言お願いしていい?」
盗賊A「なに…?」
クロノ「近々あんたらのアジトに行くからさ。ちょっとお話でもしようやって。あんたらと交渉したいことがあるって言っといて。」
盗賊B「交渉…?何をだ…?」
クロノ「それはその時に話すさ。それじゃあ。」
リースに戻る。

ルーガル「クロノさん。」
クロノ「ただいまー。」
ルーガル「商人の馬車を守ってくださったのですね。」
クロノ「ま、あれくらいならね。例の件、お願いしますね。」
ルーガル「えぇ…ですが…」
クロノ「やっぱ信用できない?」
ルーガル「それはまぁ…今まであいつらには苦しめられてきましたから…」
クロノ「俺がなんとかする。だから俺を信じてくれ。」
ルーガル「成功すれば私たちにとっても非常にありがたいことです。クロノさん、信じます。」
クロノ「サンキュ。それじゃあ。」

家に戻る。
自分は寝室の掃除しか済ませていなかったはずだが、玄関が綺麗になっている。
幽霊「………!」
幽霊が自分に気づき、お辞儀をする。
クロノ「まさか、やってくれたの?」
幽霊が頷く。
クロノ「ありがたい‼︎こんな広いエントランスを掃除するなんて大変だったろう‼︎」
幽霊は照れるように体をクネクネさせる。
クロノ「こりゃお礼に美味いもんでも作ってやんなきゃな。」
この幽霊は料理ができないらしい。
幽霊だからではなく、単純に料理がヘタなのだそうだ。
その為、自分が料理係になっている。
昨日の夜作った料理は好評だった。
幽霊が嬉しそうな表情をする。
会話は通じなくとも、美味い飯というのは万国…いや万世界共通語らしい。

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