ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その8・Back home?

[クロノ]
遺跡を出ようとしたところで、例のでかいムカデが出てきた。
レオリー「さっきの⁉︎生きてる⁉︎」
レオリーが刀を抜こうとする。
クロノ「ちょっ、ストップストップ!」
レオリーの前に立ってレオリーを止める。
そういえばこの2人はまだこのムカデが味方であることを知らなかった。
レオリー「クロノさん⁉︎虫を庇うなんて正気ですか⁉︎」
確かに俺が虫を庇うなんてこんな状況でもない限り死んでもしないかもしれんが。
クロノ「違うの‼︎こいつは敵じゃなかったんだよ‼︎」
レオリー「敵じゃない?これ人を襲う虫なんじゃ…」
クロノ「これはな、ルカの母親が門番として召喚した虫なんだ。」
ルカ「お母さんが…?」
ムカデがルカに顔を近づける。
ルカ「………」
ルカがそっとムカデの頭に手を乗せる。
ルカ「なんだか…懐かしい感じがする…」
ムカデの体が霧のように消えていき、ルカの体の中に入っていく。
レオリー「今のは…」
クロノ「ムカデも自分のものにしたって感じか?」
ルカ「うん…お母さんが、私が力を取り戻したら私の召喚蟲として従いなさいって言ったんだって…」
母なりに娘のことを想っていたようだ。
(ならなんでいなくなったんだ…?)
自分の娘がこんな風に村人から狙われる事態は想定できたろうに…


遺跡を出て森に入る。
虫の数が少なくなった気がする。
いや、確実に少なくなった。
クロノ「あぁー、森の緑色具合が分かりやすくなった。」
レオリー「わけわかんないですけど、なんとなく分かります。」
ルカ「虫も好きだけどこういう森もいいな…」
しかし、罠はまだ消えていない。
これもどうにかすべきだろうか。
クロノ「さて、どうするか。」
レオリー「ルカも連れて村を出た方が…」
確かにそうすべきだろう。
力を手にしたとはいえ、村人はあの手この手でルカに危害を加えにくるかもしれない。
ルカ「ううん…私は森に残る…」
おや?
レオリー「なんで?村の人達に襲われるかもしれないんですよ?」
ルカ「お母さんが帰ってくるのを待つの…いつか帰ってくると思うから…」
クロノ「だがいつ帰ってくるか分からないし、村人という脅威の近くで暮らし続けることになるんだぞ?」
ルカ「大丈夫…力を取り戻したから…何とかなるよ…」
レオリー「でも…!」
クロノ「いや…」
こちらをまっすぐ見つめている。
ルカなりに本気のようだ。
クロノ「そこまで言うんなら…あんたの意見を尊重しよう。」
レオリー「クロノさん…」
クロノ「ただ危険を感じたらすぐに逃げるんだ。母さんがとか言ってる場合じゃない。そんですぐに俺らを頼れ。俺らはリースっていう村にいる。もしくは、アリアンテって町にあるラフってギルドでもいい。リースより近い。あそこは俺の元いたギルドだから、それ伝いで俺にも伝わるはずだ。」
ルカ「分かった。」
クロノ「絶対無茶はするな。」
レオリー「クロノさん!ルカはまだ子供ですよ!10歳の!」
それはまぁそうだ。
ルカ「私なら大丈夫!今まで1人で生きてきたし、クロノさんとレオリーさんにも迷惑かけられないし…」
レオリー「迷惑だなんて…‼︎」
クロノ「ルカ、迷惑かけたくないからって理由でなら、そういう気遣いはやめてくれ。本当に、独りで、生きる覚悟があるのかどうかで考えるんだ。」
ルカ「独り?」
クロノ「俺らは迷惑だなんて思わない。むしろ、俺たちを頼ってほしい。俺だってレオと一緒だ。お前を1人にするなんて、頼まれてもしたくないさ。だが、あんたにそれほどの覚悟があるんなら、あんたの言うことに従うさ。あんたは10歳の子供だが、精神はもう大人だ。」
だから、ルカが1人で生きるという選択肢を消さなかった。
ルカ「分かった…迷惑とか、そういうのは考えない…でも、私はここで待ってる。お母さんを待ってる。」
クロノ「そうか…分かった。そこまで言うのなら。」
ルカ「ありがとうございました!」


レオリー「クロノさん、これって…」
ルカを小屋まで送って、入ってきた森の入り口にまで向かう。
レオリー「未来が変わったんじゃ…」
クロノ「たしかに…」
未来では、ルカはヒーラーの一員になるはずだった。
だが今、ルカと別れた。
クロノ「いや、まだ分からんな。何かでヒーラーに来ることになるかもしれん。」
レオリー「あぁ、その可能性がありましたね…でも…」
クロノ「不安か?」
レオリー「当たり前です!あんな小さい子に…!」
クロノ「俺とお前が初めて会った頃も似たようなもんだった気もしないではないがな。あんたもかなり前線で戦ってたろ。」
1年前とかくらいに。
レオリー「それはまぁ…そうですが…」
クロノ「そういうことだ。この世界なら、力さえありゃ子供でも強い。」
レオリー「でもやっぱり…」
クロノ「ハゼットも似たようなこと感じてたんじゃねぇのか?」
レオリー「父さん…」
クロノ「そういやよ、ハゼットはお前がここに来ること知ってたんだよな?」
レオリーの表情が急に硬くなった。
何かあったのだろうか?
クロノ「そういえば、未来のラフでは俺にとってショックなことがあったらしいが…」
レオリー「はい…ありました…」
クロノ「教えてくれないか?」
レオリー「未来では…クロノさんが行方不明になったことで、父さんが…その、変わってしまって…」
クロノ「変わる?どういう意味?」
レオリー「クロノさんが行方不明になったのは自分が守ってやれなかったからだと自分を責め、クロノさんを助ける為に動いたのですが、今までの人を愛するような父さんとは違って、過激というか暴力的というか…」
あのハゼットが?
大犯罪人にですら生かすチャンスを与えそうなあいつが?
レオリー「本当に人が変わったみたいで…ラフのメンバーにも厳しくあたって…クロノさんの言う、『悪人』の枠に入っていたと思います。時には無関係な人まで傷つけて、疑わしい人は手当たり次第殺して回って…」
確かに、俺の考える『悪人』の枠に入っている。
レオの顔がだんだんと恐怖に変わっていく。
クロノ「それで?」
レオリー「それで、みんなでこれをどうにかするには、と考えました。」
クロノ「何か案は出たのか?」
レオの声はだんだんと涙が混じった声になっていく。
レオリー「はい…火山に父さんを呼びました。クロノさんの手がかりがあったと嘘をついて。変わってしまったとはいえ、クロノさんを助けるという目的からはズレていませんでしたから、すっかり信じていました。それから、溶岩が池のようになっている所まで…呼び寄せました。」
それって…
クロノ「まさか…」
レオリー「だって…‼︎そうでもしなきゃ…‼︎みんなに迷惑かかるから…‼︎父さんが…‼︎平和が好きだった父さんが…‼︎みんなを傷つけるのが…‼︎だから…‼︎父さんを…溶岩に…‼︎」
クロノ「突き落とした…のか…?」
不老不死を溶岩に突き落とす。
それは、永遠の苦しみを以って殺し続けるようなもの。
体を修復しようとしても、治りきる前に溶岩が体を溶かす。
魔力で何とかする前に、体が焼けきる。
ルカが、魔力は肉体を通して精神に結びつくと言っていた。
つまり、肉体が壊れきってしまえば、精神にも魔力がいかない。
なす術無しということだ。
しかし、不老不死だから命は消えず、痛覚は、火傷のし過ぎで麻痺するまで消えないだろう。
本当に永遠の苦しみだ。
偶然、誰かが溶岩の中からハゼットの肉体となる部分を見つけ出し、それをどこか空気中に出せば…
いや、それまでに正気を保っている必要があるし、そもそも自分から離れた肉体から体を復活させるなんてできるのだろうか。
つまり、溶岩にぶち込んで上がってこないのを確認した時点で、ハゼットは永久に溶岩の中に閉じ込められるのが確定したということだ。
レオリー「ごめんなさい…‼︎本当に…‼︎ああでもしないと…‼︎ごめんなさい…‼︎あああああああああああああああ‼︎」
両手で顔を押さえながらうずくまる。
(俺のせいで…ハゼットが…変わって…)
いや、今一番罪の意識があるのはレオの方だ。
俺より一番辛いはずだ。
そんなの誰が考えても分かる。
自分の愛した父親を自分の手で殺したのだ。
クロノ「レオ…」
レオリー「あああああああああああああああ‼︎ああああああああああ‼︎」
ただただ大きな声で泣き続ける。
こんな罪の意識を感じて、それでも自分に心配をかけまいと冗談を言ったりしていたのだろうか。
クロノ「レオ、お前は悪くない…」
レオを抱きしめる。
クロノ「辛かったろう…お前は悪くない…誰もお前を責めない…」
レオは悪くない…
変わってしまったハゼットか、変えてしまった俺が悪いんだ。


泣き止むまでに時間がかかった。
多分1時間いったかいってないかくらいか。
クロノ「大丈夫か?」
レオリー「はい…ごめんなさい…」
クロノ「未来ではかなりヤバイ事態になってるようだな…」
レオリー「ごめんなさい…僕…クロノさんの親友でもある父さんを…」
クロノ「いいさ。」
俺よりレオの方が辛いはずだ。
クロノ「確かに話しづらいことだな。だが、未来でそんなことが起きるってんなら、変えてやらなきゃならんな。」
レオリー「クロノさん…?」
クロノ「レオ、頑張るぞ。そんな未来には向かわない。一緒に変えよう。」
レオリー「変える…って言っても、どうやって…」
クロノ「さぁな、これから見つける。でも変えられたら、そんな辛い思いせずに済む。そんでみんな幸せハッピーエンドだ。」
レオだけでなく、エリーや他のメンバーだって辛かったはずだ。
そんな思いをさせたくないし、ハゼットのような人間を見殺しにしたくもない。
なら変えるしかないだろう。
レオリー「…はい‼︎」


村に帰り、村長の元へ向かう。
村の地面は虫の死体で埋め尽くされていたのも、ほとんど消え去っている。
点々と残ってたりもするが、召喚された虫に混じって潰された元々の虫だろう。
ゴールド「クロノ様!レオリー!」
家の前に来ると、待ちわびていたとばかりに村長が出てきた。
ゴールド「見ての通りです!虫は完全に消失しました!やってくれたのですね!」
クロノ「あぁ。原因は何とかした。どうも虫を発生させるのを抑制させる装置のような物が壊れてたらしくてな。」
ゴールド「発生を抑制させる装置?」
クロノ「あぁ、何者かが壊したようだった。」
ゴールド「魔女でしょうな…忌々しい…ですが、クロノ様が退治なされたのでしょう?でしたらこの村も平和に…」
クロノ「いや、退治してねぇよ。」
ゴールド「なんですと?」
クロノ「退治する必要が無かったからな。」
さて、どう反応するか。
ゴールド「何を言うんですか‼︎この村の異常は、魔女が原因なんですよ‼︎」
予想通りの反論。
やはり、魔女を嫌っている。
クロノ「あいつは、むしろ抑制しようとしてた側だ。」
ゴールド「………魔女が悪くないと…?」
クロノ「あぁ。」
意外と反発してこない。
ゴールド「そう…ですか…我々の勘違いか何かだったのか…」
(むしろ受け入れた?意外と良心有り?)
ゴールド「分かりました。この度は何とお礼を申せばよいか…そうだ、依頼の報酬をお渡ししなければ!」
ゴールドが家の中に入っていく。
しばらくして、小包を2つ持ってくる。
ゴールド「こちらが、今回の依頼の報酬です。」
片方の小包を渡される。
重さ的に、中は金が入っているようだ。
ゴールド「それから…こちらはお近づきの印ということで…今後また何かの機会であなた方に依頼を頼むことがあるかもしれませんので…」
もう片方の中には粉か何かが入っている。
(これは…)
この時にようやく思い出した。
この村はラパレリャというかなりヤバイ麻薬を生産している村。
ということは、おそらくこれはそれ••だろう。
クロノ「あぁ、ありがとう。」
ゴールド「本当にありがとうございました!」


レオリー「いいんですか?ルカが生きているだなんて言って…」
クロノ「死んでるって言って後で生きてることがバレるよりはマシだろう。それに、意外と信じてた。」
レオリー「ルカが悪くないってことをですか?」
クロノ「あぁ。まぁ、そんな奴を俺はまだ信用しきってねぇがな。」
村の中心辺りまで来る。
村の広間的な場所に来た。
大きな黒いタワーが中心にそびえ立つ。
クロノ「6,7メートルってところか?高ぇなぁ…」
レオリー「クロノさんは目をつぶってたから見てませんでしたね。」
タワーに近寄る。
タワーの足元には黒く煤けた部分がいくつかあった。
クロノ「火事か?」
レオリー「足元だけじゃないですよ。」
レオリーがタワーの人の高さ辺りの部分に触れると、手が真っ黒になった。
クロノ「この黒色は、木か何かを燃やしてできた黒色…ぽいな。」
近くに焦げた木の破片らしき物が落ちているの。
クロノ「木に油かなんかでも塗って燃やしでもしたのか?」
レオリー「何か意味はあるんですかね?」
クロノ「あると思うぞ。雨乞いの方法の1つだったりするし、あとはまぁ、虫がウザいから一網打尽にしてやろうと燃やしたっていうのもあるだろうしな。」
虫は火を嫌う。
たまに飛んで火に入るみたいな虫もいるだろうが、それはそれで駆除になる。


レオリー「依頼は済ませましたし、帰りますか?」
宿に帰ってレオリーと御者のおっさんと相談する。
クロノ「いいや、俺たちは帰らん。おっさんだけ帰ってくれ。」
御者「え?なぜですかい?」
クロノ「まだ遺跡の調査は済んでないからな。用事済ませに行っただけだ。」
御者「いや、それだったら私も残った方が…」
クロノ「ちょっとな。考えというか作戦というか…」
レオリー「何を考えてるんです?」
クロノ「この村の怪しい部分を突きたいなって。」

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