ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その2・Who is he?

[クロノ]
桃の中で拘束されていた青年を解く。
クロノ「大丈夫か?」
青年「はい!危ない所を助けて頂き…」
クロノ「あぁーそういうのは後でいい。どんくらい拘束されてたのかは知らんが、かなり衰弱してるはずだ。とりあえず座ってろ、立てるか?」
体力的に消耗してなかったとしても、精神的には疲れているはずだ。
なんせ体を拘束された状態で川をどんぶらこしてたんだからな。
青年「えっと…」
クロノ「マキノ、そこのソファ借りるぞ。」
マキノ「あぁ、使ってくれ。」
クロノ「ほら、肩貸すから。」
青年「それじゃあ…お願いします…」
青年をソファまで運び、座らせる。
クロノ「何か食い物とか…」
青年「そんな、そこまで…」
クロノ「遠慮すんな。命に関わることだぞ?」
青年「いや、僕なんかの為に…」
クロノ「誰の為だろう知ったこっちゃねぇよ。」
メイ「軽食を持ってきました。」
さすがロボット、仕事が早い。


軽食として持ってきたパンを食べ、とりあえず安心したところだろう。
クロノ「さて、話を聞いていいか?」
青年「はい。」
クロノ「俺はカミヅキ・クロノ。リースって村でギルドをやってる。」
青年「僕は、レオリー・クロール。ハスタルシアの村長を務めておりました。」
クロノ「ハスタルシア?どっかの村の名前か?」
マキノ「いや、私は知らないな。」
レオ「僕も聞いたことない。」
この世界に住んでるこの2人が知らないとは…
レオリー「そうでしょう。なにせ、ハスタルシアは周囲を結界で囲って、外からは見えない入れないというふうにしてますから。」
なるほど、完全な鎖国状態と。
クロノ「村の外側の奴で村のことを知ってる奴はいないと。」
レオリー「おそらく。村の外に出た者が誰かに話したとしても、結界の内側には入れないですから、確認のしようがありませんけどね。」
クロノ「ってことはお前は…」
レオリー「戻れないでしょうね。ハスタルシアには。」
クロノ「おいおい、それはヤバイんじゃねーのか?」
レオリー「いえ、むしろあの村から離れられて良かったのかもしれません。」
クロノ「どういうこと?」
マキノ「この紙に面白いことが書いてあるな。」
マキノが紙切れをピラピラさせる。
クロノ「なにそれ?」
マキノ「これの中に入っていた。『裏切り者を許すな。』と書いてある。」
クロノ「裏切り者?」
レオリー「確かに、僕は裏切り者なのかもしれませんね。」
クロノ「どういうことよ?」
レオリー「ハスタルシアは長年閉鎖されて時を過ごしていました。もう何百年もそうしてきたのです。ですが、僕はそれがあまり良いことだとは思いません。外の町や村と関係を築くべきです。僕は村の住人に同意を得ようとしましたが、村の住人には、『我々の文化を汚すつもりか。」と、反対されまして。その中の過激な連中に油断したところを捕まってしまい、あちこち縛られてあのよく分からない容れ物の中に入れられていたのです。今は何月何日なんでしょうか?」
マキノ「今は8月の20日だな。」
レオリー「ってことは、この中に入れられて1日も経っていませんね。」
クロノ「そうだったのか。」
レオリー「僕の考えは異端だったのでしょう。ですが、僕はあの考えを悪いものとは思っていません。まぁ、これを機会にあの村からは離れて生活しようと思います。」
クロノ「そいつはいいが、アテはあるのか?」
レオリー「………そうだった…僕は外の世界に知り合いは1人もいないんだった………」
クロノ「ならうちのギルドに来い。」
レオリー「…いいのですか?」
クロノ「あぁ。ついでに、うちで働いてくれ。人手はいくらあっても困らんからな。どうだ?」
レオリー「いえ!とても嬉しいです!」
レオリーが両手を合わせるように握ってくる。
レオリー「どんな仕事でもお任せください!実は僕、剣と魔法には多少覚えがありまして!」
クロノ「そいつは心強いが、ちょっと手が痛い。」
レオリー「あぁ!ごめんなさい!つい…」
クロノ「ま、やる気があるのは嬉しいさ。」


研究所前。
そろそろリースに帰ろうと研究所を出る。
クロノ「あぁ〜、思ったより時間経ってたんだな〜。」
結構暗くなっている。
マキノ「レオリー!ちょっといいか!」
研究所の中からマキノがレオリーを呼ぶ。
レオリー「はい、なんでしょう?」
レオリーがマキノの元へ走り、研究所内に入る。
レオ「良かったね。向こうの世界とは関係なくて。」
クロノ「関係ない…んだよなぁ…?」
やはり桃の形が気になる。
あれは人工的な物で、食べ物ではなかった。
そこはまぁいいとして、なぜあんな形の物をわざわざ作ろうと思ったのか。
もっと作りやすい形があるだろうに。
わざわざ下がちょっと凹んで上が出っ張ってる形なんて、手間がかかるだけで何にもならない。
それだったら球の形でも四角形でも三角形の方がまで簡単なのに、なぜわざわざ桃なのか。
レオ「にしても不思議だよね。」
クロノ「何が?」
レオ「似てるもん。桃太郎のお話と、レオリーのこと。」
確かに、桃から出てきたって点ではな。
レオリーは縛られてたが。
レオ「もしお兄ちゃんが見つけてなかったら、レオリーってどうなってたんだろ?」
クロノ「そのまま海に流されてただろうな。運が良けりゃあ誰かが拾ってくれるかもだが。」
レオ「いいタイミングだったよね。」
クロノ「何が言いたいんだ?」
レオ「だって不思議でしょ?あんなタイミングであんな形の物が流れてくるなんておかしいよ。」
クロノ「それもそうだが、それこそ運って場合もあるからな。何も分からない以上、決めつけるわけにはいかない。それよか、今考えるべきはレオリーのことだろう。」
レオ「そうだよあの人!」
クロノ「なんだ、何かあるのか?」
レオ「あの人、お兄ちゃんが肩貸してた時の目が怖かったの!」
クロノ「そうなのか?」
その時は顔を見てなかったから分からん。
レオ「やらしい目で見てた!」
クロノ「ちょっと待て。ちょっと待て。どういうことだそりゃ。」
レオ「お兄ちゃんを見てる時の顔がね、僕とそっくりだったなって思ったの。だからきっとそうだよ!」
つまり、レオリーは俺のことが好きだと。
クロノ「会って数分でか?ありえない…ことはないかもしれんが…」
レオ「ううん。間違いないよ。」
同じだから分かるのだろうか。
そう言われてもなぁ…。
レオリー「お待たせしました!」
レオリーが出てきた。
クロノ「おう。何の話してたんだ?」
レオリー「あぁ…えっと…あまりお話できないというか…」
会って数分の研究者とあまり他の人には話せないような話。
まぁ、マキノなら色々とそれ関連の話はありそうだがな。
レオ「えー?何のお話だったのー?」
レオリー「いやーえっと…その…」
クロノ「話せないんならいいさ。その気になった時にでも話してくれればいい。それよか、もうこんな時間なんだ。」
レオ「今から馬車使っても遅くなっちゃうよね。」
クロノ「じゃあ馬車より速い物を使おう。」
地面に魔法陣を作り、バイクを召喚する。
レオ「わー!これ乗るの初めてー!」
レオリー「これは…?」
クロノ「バイクって言ってな。かなりスピードが出る乗り物だ。」
バイクに跨る。
クロノ「ほら乗った乗った。レオは俺の後ろで、その後ろにレオリーが乗ってくれ。」
レオ「うん!」
レオリー「それでは失礼して…」
レオとレオリーが後ろに乗る。
クロノ「しっかりしがみついておけよ。危ないからな。」
レオ「分かった!」
レオが背中にがっしり抱きつく。
これがただの少年や少女だったら特に何でもないのだが、あのレオなのでちょっと寒気がする。
レオリー「しがみつけば…いいんですね…?こう、ですか…?」
後ろから首の方に手が回ってくる。
(これあれだよな?よくカップルなんかが後ろから抱きつく時にやる奴だよな?)
レオからレオリーの疑問の話を聞かなければ意識しなかっただろう。
聞いてしまったが為に、さらに寒気がしてくる。
(いやいやいやいやいやいやいや。ありえないありえない。)
抱きつき方のせいで、耳の至近距離でレオリーの吐息がする。
クロノ「よし、行くぞ!」
レオ「うん!」
レオリー「はい!大丈夫です!」


何とかリースに着く。
特に危ないことはなかったが、別の意味では危ない状況だった。
クロノ「思ったより早く着いたな。」
今は丁度晩飯時だ。
クロノ「ギルドはこっちだ。」
家から漏れ出ている明かりを頼りにヒーラーへ向かう。
ヒーラーに着き、扉を開けようとすると、中から人が出てきた。
正確には人ではなく、サキュバスが出てきた。
ミランダ「あら、丁度いいタイミング。」
クロノ「なんでお前がここに?」
ミランダ「なんでって、暇だから?」
クロノ「なんじゃそりゃあ…」
ミランダ「まぁまぁ入りなさいよ!あら?その子は?新入りさんかしら?」
レオリー「初めまして!レオリー・クロールと申します!」
レオリーが一歩前に出て深々とお辞儀をする。
ミランダ「あら、行儀いい子ね。ミランダよ。さ、入って入って!」
ギルドの中に入る。
入り際に、ミランダがレオリーの首筋に顔を近づけ匂いを嗅ぐような仕草をする。
レオリー「はひぃっ‼︎」
クロノ「何やってんだアホ。」
ミランダの頭に手刀をかます。
ミランダ「いったーい!ちょっと〜。」
クロノ「ちょっとはこっちのセリフだアホンダラ。何やってんだ。」
ミランダ「いや、なんか知ってる匂いだな〜って。」
クロノ「はぁ?」
ミランダ「なんかどこかで…会ったことないわよね?私たち。」
何をいきなり口説いてるんだ。
レオリー「無い…はずですけど…」
ミランダ「そうよねぇ…こんな可愛い子忘れるわけが…ねぇクロノ、ちょっとこの子借りていい?」
クロノ「あ?」
ミランダ「別に変なことしようってわけじゃないのよ。ちょっとお話聞きたいだけ。いいでしょ?」
いつになく真面目な表情だ。
ということは、何か真面目な話があるのだろうか。
クロノ「どうする?レオリー。」
レオリー「えっと…お話くらいなら…」
クロノ「だってよ。あんま変なことすんなよ。」
ミランダ「ありがと。じゃあちょっと部屋借りるわね。誰も部屋に入っちゃダメよ。」
何の話をするのやら。
キキョウ「何とも不思議な雰囲気の青年じゃのう。レオリーと言ったか?」

レオリーと出会った経緯をみんなに話す。

リンコ「本当に桃太郎みたいな人ですね。」
ジュリ「私は桃よりもその縛られ方の方に興味が」
サクラ「なら私が後で縛ってあげるわよ?」
クロノ「ちょっと今その話は後にしてくんない?」
最近この2人が自重しなくなって嬉しいのやら嬉しくないのやら。
キキョウ「で、お主はまた変なのに好かれてると。」
クロノ「可能性の話だよ、可能性の。」
キキョウ「レオは間違いないと言っとるんじゃろう?」
レオ「うん。敵だよ敵。」
頬をムスーッと膨らませている。
キキョウ「ハスタルシア?わしも聞いたことがないの。結界で隠れている集落とな?」
クロノ「キキョウでも知らないんなら知ってるやつなんていないだろ。」
キキョウ「自分で言うのもなんじゃが、わしは最高の情報屋じゃからの。そんなわしが知らないとなれば、本当に隠れた村なのじゃろうな。」
クロノ「ミーアとマリアは?なんか思いついたこととかある?」
今までずっと目を閉じていたマリアがカッ‼︎と目を開く。
マリア「レオの意見に賛成ですね。」
クロノ「と言うと?」
マリア「レオリーは間違いなく、そっちの人間です。」
クロノ「そっち?」
マリア「そっちです。男同士が好きな方向の人です。」
(マジかー)
クロノ「証拠は…?」
マリア「私の長年の人間観察力と、あの館での経験です。」
キキョウ「イリヴィの館とやらはそこまでのものなのか?」
マリア「えぇもう。開けてはならない扉がありましてですね。その向こうではもうパーティですよ。どうパーティなのかはご想像に任せますが。そんな所で何日も働いていると、空気で分かるんです。こいつは将来どういうやつになるのか。内に秘めているものは何なのか。」
妙に説得力があるから困る。
マリア「別にいいんじゃないですか?むしろ男同士でそういうのもちょっと興味ありますし?」
(こいつ、腐女子の片鱗が…‼︎)
クロノ「お前が興味あっても俺に無いんだよ。自分に置き換えてみろ。女同士での絡みとか、お前は気持ち悪いとか思わないの?」
マリア「全然?私は男でも女でもあんまり関係ないですよ?」
クロノ「勝てねぇ。」
マリア「むしろ何か新たな扉が開きそうな気がしまして。」
クロノ「永遠に閉じてろ。」
マリア「クロノは嫌なんですか?」
クロノ「好きじゃない。」
マリア「嫌いでは?」
クロノ「ミーアは?なにかある?」
マリア「話切らないで下さいよ〜。」
横で座っているミーアを見る。
ミーア「レオと おなじ。」
クロノ「マジで?またBL説?」
ミーア「ちがう  そうじゃなくて  レオとおなじ。」
クロノ「…?どういうこと?」
ミーア「あいつのにおいと  レオのにおい  いっしょだった。」
クロノ「それは…同類は皆同じオーラが出てるとかいう意味?」
キキョウ「いや、ミーアがそこまで遠回しなことは言うまい。おそらくそのままの意味だ。」
クロノ「そのままの意味ってーと…」
サクラ「ミランダさん、知ってる匂いって言ってましたよね。」
ジュリ「レオと同じ匂い?同じ故郷とか同じく人種とか…」
故郷はどうなんだろう。
レオリーはハスタルシアと言っていたが、レオの方は知らない。
クロノ「レオって自分の故郷とか…」
レオ「知らない。気づいた時からお父さんといたから。」
クロノ「故郷じゃ分からない。人種は…どっちも人間だな。判断はできない。とすると…」
ジュリ「同じ匂い…」
リンコ「同一人物ってわけでもないですし…」
ミーア「おなじ!」
クロノ「同一人物ってことか?全くの同じ?」
ミーア「おなじ。」
クロノ「はぁ…どうよ?」
レオも実際にここにいる。
変身しているわけでもないだろうし、ドッペルゲンガーだとしても今と同じ姿で現れるはず。
キキョウ「分かったぞ!未来から来たのじゃ!」
クロノ「未来からぁ?ありえるのかよそれ。」
キキョウ「少なくとも異世界から来たお主が言うセリフではあるまい。異世界だからと言って、時間のどこまで進んでいるかが同じとは限らんからな。」
ごもっとも。
サクラ「たまたま全くの同じ匂いってのがあるのでは?ハスタルシアの村長なんでしょう?だったら同一人物じゃないでしょうし。」
クロノ「そうだったな、その可能性もあるな。」
リンコ「なんでそんな正体を知ろうとしてるんです?」
クロノ「ハスタルシアってのが本当の話で、そこの村長ってのも本当なら別にいいんだ。ただの追われた身の可哀想な若者だ。だが未来から来たレオだという話が本当なら、ハスタルシアは嘘になる。何の目的でわざわざ嘘をついたのか。それが何なのかに限らず知っておくべきだと思う。会いたい人がいるならそれでいい。過去を変えるってならそれでもいい。だが未来から来てる以上、只事ではないわけだ。知っておく必要がある。」
ジュリ「どうやって知るんです?」
それなんだよなぁ。
ミランダ「おまたせ〜♪」
ミランダが二階から降りてきた。
レオリーも降りてきたが、見た感じ異常はない。
クロノ「なにかされなかったか?」
レオリー「いえ、本当に話を聞いただけです。」
ミランダ「私ってそんなに信用ない?」
クロノ「ない。」
ジュリ「なに話してたんです?」
ミランダ「さぁね〜。2人だけの内緒話よ。」
いったい何を話すことがあるのか…。
クロノ「さて、さっさと飯食って寝よう。もう疲れた、俺は。」
激しく戦闘したわけではないが、なんかもう色々あって精神的に疲れた。
ミランダ「私の分もあるかしら?」
リンコ「えぇ、ありますよ。」


キキョウ「クロノ、ちょっといいかの?」
夕食を食べ終わって寝室に戻ろうとしたところで、キキョウに呼び止められる。
クロノ「なに?」
キキョウ「レオリーが未来から来たかどうかを判明する方法がひとつあるかもしれん。」
クロノ「ほほう?それはいったいどういうものよ?」
キキョウ「レオがお主のことを好きだということを利用するのじゃ。」

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