ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その10・Revolver

[クロノ]
クロノ「俺がどう危ないって?」
ロナルド「その…どこから話しましょうか…。まずはそうですね…。その不老不死の英雄神について話します。名はアリウス・リーパルツィア。戦いの神と言われた方で、その名の通り戦い、特に一対一の決闘に秀でておられました。いえ、不老不死なのですから、過去形にするのはおかしいですね。秀でておられます。その彼女は今、レキュリエテの三騎士の1人をとして、この大会を指揮しておられます。」
赤、青、緑の3人の騎士から成る三騎士。
青は今目の前に。緑は以前あったおじさん。
ということは、
クロノ「紅の剣士が、そのアリウス・リーパルツィアって奴なのか。」
ロナルド「はい。お会いしたことはあると思います。」
(あったなぁ…。あれか…。)
ロナルド「貴方をこの街に呼んだのも、彼女の命令なのです。」
クロノ「名前からなんとなく察してたが、女か。」
ロナルド「そうですね。彼女は人柄も良く、善悪も区別でき、奴隷は何人か雇ってはいますが、非道な扱いはしておりません。ただ1つ欠点を挙げるとすれば…」
クロノ「挙げるとすれば?」
ロナルド「彼女は無類の殺し好き、いえ、戦闘好きでしょうか。」
クロノ「ん?戦闘狂なのか殺人狂なのかどっちなんだ?」
ロナルド「どちらとも言えますが、前者に近いかと。彼女は強者と戦い、殺す事に快感を覚えるのだそうです。」
クロノ「また変態か…」
(なんか似たような魔王様を昔相手にしたなぁ…)
クロノ「ってことはだ。俺を呼ばれた理由って…」
ロナルド「レギオンを倒した英雄ともなれば、実力は無いわけがありませんからね。ドラゴンスレイヤーとも言われたハゼット・ローウェルでさえ倒しきれなかった魔獣を倒した男。アリウスがそこに惹かれないわけがありませんでした。」
つまり、俺と戦って俺を殺すために俺を呼んだと。
ロナルド「この闘技大会で貴方の実力がどういうものかを再確認し、どこかで貴方に決闘か何かを挑むと思われます。」
クロノ「それで俺を殺すと。」
ロナルド「はい。ですから、勝手ながら貴方の街の中での行動を監視しておりました。アリウスが我慢できなくなって貴方の所へ向かってしまった時に止められるように。」
クロノ「アリウスを監視しとけばいいんじゃ?」
ロナルド「無理です。アリウスはそういうことは許さない方でして、もしバレてしまったら…」
クロノ「どうなるの…?」
ロナルド「分かりません…。ですが、少し昔に似たような事をやろうとした人がいたらしく、その人はある日行方不明になったそうです。ジグから聞きました。」
クロノ「うわぁ…」
ロナルド「ジグが言うには、監視されたくないだけというのだそうです。ですから、アリウスではなく貴方なら監視していてもアリウスの怒りを買うことはないし、貴方の安全を守ることもできるのです。」
クロノ「まぁ、そうか…」
ロナルド「それでですね。1つ知っておいて欲しいことが。」
クロノ「なに?」
ロナルド「この際言っておいた方がいいかと。貴方の身のためです。以前手紙が読めないからと、リーという方からの手紙を私が代読しましたね。」
クロノ「あぁ、したな。」
ロナルド「例によって、その後貴方の監視をしておりました。そのリーという方とお会いしている所も確認しましたが、そのリーという方が…」
クロノ「なに?」
ロナルド「アリウスなのです。」
クロノ「なに?」
ロナルド「ですから、リーという女性はアリウスなのです。間違いありません。私はアリウスの顔はよく知っています。彼女は我々三騎士には顔を明かしておりますから。」
クロノ「………はぁ〜〜」
ロナルド「クロ…ヒール様?」
wtfと心の中でつぶやく。
クロノ「マジで言ってるの…?」
ロナルド「はい。出会って数日なのでしょうがそれなりに親しそうでしたので、その数日間、機会を伺われていたのではないかと。」
クロノ「寒気してきた。」
ロナルド「この闘技大会が終わるまでは、なにも起こらないかと思います。アリウスの我慢が続けばの話ですが。」
クロノ「分かった。だいたい分かったよ。」
店主に酒のお代わりを求める。
クロノ「明るい話しよう‼︎何か別の話しよう‼︎」
ロナルド「別のですか。そうですね…ヒール様は優勝賞品はどうされるのですか?」
クロノ「優勝賞品か…考えたことなかったな。」
ロナルド「今までの優勝者はお金なんかを頼んでいましたが、それら以外でも別に構いません。」
クロノ「そうだな…あ、一個欲しいものがあるんだよ。」
ロナルド「欲しいものですか?余程のものでもない限りは手に入れることはできますよ。」
ジェスに会ってから何となく欲しいなぁとは思っていたものがある。
クロノ「銃なんだけどさ。」
ロナルド「銃?魔法銃ですか?何か特殊な…」
クロノ「魔力を使わない銃なんだよ。」
ロナルド「魔力を使わない⁉︎それは…どうなのでしょうか…」
クロノ「仕組みはな、何となく知ってんだよ。だから作って欲しいだけなんだけど…」
ロナルド「仕組みとは…」
クロノ「魔力を一切使わないってことは、一から十までカラクリで出来てるってわけだ。あと撃つ時には火薬を使う。」
ロナルド「火薬?銃に火薬ですか…初めて聞く使い方ですね。普通は魔力を使わない類の爆弾なんかに使うはずですが…」
(そんな使い方しかなかったのか。)
魔力があるないだけでここまで違うのだろうか。
クロノ「実際この目で見たことあるから、作れない代物ってわけじゃない。」
ロナルド「……分かりました。形だけでも教えてくれますか?知り合いに1人、物作りに長けた方がいます。」
クロノ「そうだな。絵、得意?」
ロナルド「はい。得意分野です。」
クロノ「よし、おっちゃん!紙と書くものない?」
店主「はいよ。」
紙と例の書ける野菜もどきの野菜を受け取る。
クロノ「待てよ…確かこんな感じの…」
右手に魔力を集中させる。
少しずつ形を現していく。
ロナルド「なるほど。片手で持てるようなサイズなのですね。」
創り出したのはシングルアクションリボルバーという、簡単に言うと西部劇なんかでよく見かけるようなハンドガンだ。
撃つたびに毎回ハンマーという、後ろの尖った部分を降ろす必要があるのだが、そこはロマン。
ロナルドが絵を描き終える。
ロナルド「にしても見たことない形状ですね。名前はあるのですか?」
クロノ「リボルバーって言うんだ。見ての通り、マガジン式とは違う。」
ロナルド「マガジン式、という分類分けもわざわざしませんでしょう。弾倉がいつものあの形以外の銃はないのですから。」
銃としてはこちらの世界にもちゃんと色々ある。
ショットガンもあるし、アサルトライフル、スナイパー。
ただ、どれも魔力をかなり浪費するものである。
弾としての魔力。
弾を発射する為の魔力。
しっかり真っ直ぐ飛ばす為に調整する魔力。
場合に応じて連射、拡散、消音などにも魔力。
しかもそれらに決して多くはないものの魔力をそれなりに使う。
贅沢に連射やら消音やらを同時に付けようとするとかなり魔力を使うことになる。
だから使う者はあまりいない。
それだったら魔力を飛ばしたり、矢飛ばしたりの方が魔力を使わないからだ。
ただどうしても魔法が使えなえかったり、ロマンを追い求めるようなやつが銃を使う。
マガジンに魔力を他人に詰めてもらえば、撃つ本人に魔力がなくても、ある程度撃つことはできる。
ロナルド「この銃の形の利点はあるのですか?見たところ、装弾数が6発と少なめ、撃つたびにワンアクション必要、ハンドガンの類ですから威力も出しにくい。メリットはそんなに無いように思われるのですが。」
クロノ「いや、結構メリットはある。まず、こういうリボルバーっていう種類の銃はジャムが起きにくい。マガジン式に比べてな。」
ロナルド「ジャム…というと…」
クロノ「故障…というか正常に作動できなくなった不具合の事を指す。例えば、弾が詰まったり次弾が装填されなかったり。」
ロナルド「あぁ。詰まるというのはともかく、次弾が装填されないというのは弾丸式の銃だとたまに起こると聞いたことがありますね。」
こちらの世界での弾丸式というのは、薬莢の中に火薬やら鉛やらの代わりに魔力を詰めているタイプの事を言う。
その他の形式はというと、魔力式というのがある。
これはマガジンの中に魔力しか詰めておらず、その中から必要な量だけの魔力を取り出し放つ。
自分が今まで使ってきた武器の銃もそんな感じだ。
何回か言った全く魔法が撃てない者は弾丸式の銃しか撃てない。
クロノ「それから、物によるが威力がかなりある。」
ロナルド「あるのですか?ハンドガンに?」
クロノ「これはちょっと変わったリボルバーでな。マグナム弾ってのが使える。」
ロナルド「マグナム弾というのは?」
クロノ「火薬の量を増やしたり、弾丸の形がちょっと大きくした弾だ。普通の弾よりデカイ威力を出す。」
ロナルド「どこまで強くなるのでしょうか?」
クロノ「手足とかじゃない限り致命傷って感じかな。多分。」
ロナルド「それ程までに強力な銃なのですか⁉︎」
クロノ「銃じゃなくて弾だけどな。リボルバーにだって普通の弾弱い弾ってのはある。まぁリボルバー自体、ハンドガンにしちゃあ威力がある銃だけどな。」
ロナルド「リボルバー…ですか…」
クロノ「あとはまぁ、ロマンだな。見た目、発砲音。マガジン式に比べてカッケェんだ。」
ロナルド「それは分かります。なんというかこう…自分の中の男の部分がくすぐられるようなフォルムです。」
クロノ「分かるだろう?これをちょっとヒゲの生えたカッケェおっさんが使うのがスゲェカッケェんだよ。」
ロナルド「いいですね。分かりました。実現するかどうかは分かりませんが、貴方が優勝すれば、この銃を贈呈します。試作品となってしまいますが。」
クロノ「あぁ。よろしくな。」
ロナルド「それでは、私はそろそろ帰ります。アリウスの件、くれぐれもお気をつけください。アリウスのことですから、周辺住民に危害の及ぶようなことはされないかと思いますが、好きな人のこととなると周りが見えなくなるタイプの方ですので。」
クロノ「りょーかい。」

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