ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その8・Duel

[クロノ]
予選が終了し、明日から本戦がスタートする。
マリア「結局、予選は見なかったんですか?」
クロノ「まぁな。あちこちウロウロしてた。」
予選は自分の出番を終わらせてからなんだかんだ見ていない。
マリア「まぁ確かに、クロノ以上の試合は無かったですけど、結構面白い試合ありましたよ?」
クロノ「ほーう。」
マリア「クロノはいつの出番なんです?明日?」
クロノ「1日目。予選で同じ日にいた槍男と戦う。」
マリア「初日からですか。」
クロノ「あの槍使いかなりすごい技持ってたからなぁ…。」
マリア「あの技さえ気をつければいける、とよく言われている人ですが、逆にあの技だけは絶対に気をつけろとも言われています。」
クロノ「やはり強力か。」
マリア「でもクロノならいけると思いますよ?普通に。あの人は慢心する方なので。」
クロノ「慢心…か…」

そして次の日。
本戦が始まる。
時刻は昼過ぎ。
入場口に着くと、既に対戦相手であるテラーがスタンバイしていた。
テラー「おっと、期待の新人君じゃないか。」
仮面で表情は見えない。
が、それは自分も同じことである。
テラー「カラドマはどうだったい?かなり余裕な勝利だったじゃないか。ま、俺様の槍だったらもっと余裕だけどな。」
クロノ「余裕に見えるだけでめちゃくちゃ死にそうだったよ。」
テラー「ふーん。ま、俺様と当たったのが運の尽きだ。精々良い試合にしようぜ。」
クロノ「お手柔らかに。」
会場が盛り上がる。
ピギー「みなさん‼︎お待ちかねですよなぁ‼︎さっさと見たいよなぁ‼︎俺だって早く見てぇさ‼︎だったらもう細かい注意事項云々は言わなくていいよね‼︎では本戦開幕といこう‼︎ここに‼︎今年も‼︎レキュリエテ名物‼︎大闘技大会の開幕を宣言する‼︎」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおお‼︎‼︎」」」
テラー「いよいよだな。」
クロノ「せっかくだ、楽しくいこうぜ。」
テラー「いいねぇ。でも怪我しても知らねぇからな?」
テラーと拳を突き合わせる。
ピギー「さぁでは選手の入場だ‼︎まずは1人目‼︎今年は一体準ナニ優勝を狙うのか⁉︎テーーーーラァァァァァァァ‼︎‼︎」
テラーが入場口から出ていく。
ピギー「おっと勘違いするなよ?俺は別にテラーのことが嫌いなんじゃないからな‼︎こんないじりがいのあるやつをいじらない方が実況者としてどうかと思うね‼︎それでは2人目だ‼︎お前ら予選1日目は覚えてるよな‼︎1日目からかなり飛ばした試合だぜ‼︎ヒーーーーーーーールゥ‼︎」
クロノ「行きたくねぇー…」
緊張がやばい。
しかし、行かないわけにもいかない。
クロノ「行きますか‼︎」
舞台に上がる。
その瞬間、テラーの時とは比べものにならないほどの歓声があがる。
ピギー「予選じゃものスンゲェ試合を見せてくれたからな‼︎ファンも増えたことだろうよ‼︎当然、俺もそのうちの1人だぜ‼︎まぁ、俺はみんなのファンだけどな‼︎さぁ、両者‼︎まずは握手だ‼︎互いの魂とこの聖なる舞台に敬意を示せ‼︎」
テラーと握手をする。
テラー「手加減してやろうか?」
クロノ「こっちのセリフだアホタレ。」
ピギー「位置につけ‼︎」
会場が静まり返る中、互いに離れる。
距離は約50メートル。
テラーが装飾のついた黒い槍を両手で持って構える。
ピギー「第1回戦‼︎テラーVSヒール‼︎いざ、尋常に‼︎始めディッカ‼︎」
テラー「先手必勝‼︎」
テラーが瞬間の速さで間合いを詰め、槍で突く。
クロノ「よっ!」
腹のど真ん中を狙った放った槍は真っ直ぐ向かってきた。
真っ直ぐ向かってきたがゆえに、体を少し捻らせるだけで容易に避けられる。
テラー「はっ‼︎」
空を切った槍を横に振る。
さすがにそれは予想してなかった。
脇腹に槍が入り、そのまま自分の体を吹き飛ばす。
クロノ「ぐあぁぁぁ‼︎」
ピギー「おっと先手を取ったはテラー‼︎幸先いいぞ〜‼︎」
地面を転がりながら受け身を取り、剣を銃に変え、テラーに向けて撃つ。
テラー「甘いわ‼︎」
槍で放った魔力を迎撃する。
クロノ「やっぱ舐めプは効かないか!」
テラー「おらおらおらおら〜‼︎」
槍を片手に掴んで走ってくる。
負けじとこちらも魔力を足から噴射し、地面を滑るように移動する。
まさかの接近に驚いただろうテラーが槍を横薙ぎに振る。
それに合わせて剣を縦に構え、槍を受ける。
ピギー「地面を滑って2人がかち合う‼︎剣と槍の押し合いはどちらが競り勝つ⁉︎」
テラー「こんなもんじゃないぜ‼︎」
槍の先端に魔力が集結されている。
テラー「こいつはお前の魔力だ‼︎」
槍から放たれた魔力が空中を2,3回回った後にこちらへ迫る。
クロノ「奥の手隠してんのは‼︎」
右手の闇の魔力を伸ばし、後頭部を守る。
槍から放たれた魔力は、闇盾あんじゅんによって防がれる。
テラー「はぁ‼︎」
しかし、右手に集中していたせいで目の前の鍔迫り合い(槍相手だが)の事を忘れていた。
力が抜けてしまったため、テラーに押し切られてしまう。
テラー「もらったぁ‼︎」
槍を腹部めがけて突くが、
クロノ「パッシブ‼︎」
勢いよく放たれたにも関わらず、槍は腹を貫通しない。
かといって壁を突いたような硬さを感じさせたわけでもない。
カウンターにより、槍が持つエネルギーを全て魔力に変換。
その瞬間、槍と槍を放ったテラーの体から槍で自分を刺す際に起きたエネルギーが消えるので、止められたのではなく、動かなくなるのだ。
クロノ「カウンター‼︎」
腹で受け止めたエネルギーを右手に流し、雷の属性を付与。
その拳でテラーの腹を殴る。
右手に流すまでの過程で魔力が通った体の箇所はダメージを受けるが、外傷はない。
雷の属性を付けたことにより、テラーの体を痺れさせる。
テラー「っくぅ…やるじゃねぇか。」
かと思ったが、普通に殴られただけのような感じだ。
テラー「お返しだ‼︎」
槍を地面に突き立てる。
地面に雷の魔力が流れているのが見える。
クロノ「つぉぉい‼︎」
後ろに跳んで避け、距離を取る。
魔力はこちらに届く前に、地面に分散されきっていったようだ。
クロノ「なるほど、分かったぞ。その槍、魔力を吸収する能力があるな?」
テラー「分かったところで、どうしようもねぇよ。」
クロノ「いや、できるかな。」
剣を遠くに投げ捨てる。
良い感じに地面に刺さった。
テラー「?」
クロノ「要は変な魔力は使わないで戦えばいいんだ。」
テラー「なんで剣を捨てるんだよ?」
クロノ「剣だと、なんかしら魔力を流さないとロクに戦えないんだ。でも素手なら魔力強化をするだけで戦える。それに俺にはさっきみたいにカウンターが使えるから、いざという時の保険もある。武器を創りながら戦うこともできるしな。」
テラー「ほほう。つまり、こっからが本番だと?」
クロノ「俺はスロースターターなんだ。」
テラー「そうかい‼︎」
テラーが槍で突く姿勢で突っ込んでくる。
クロノ「そぉら‼︎」
右手でチェーンソーを創る。
テラー「うぉぉぉ⁉︎」
さすがにチェーンソーにビビったか、速攻で後ろに退がる。
テラー「その武器…‼︎金属の歯が高速回転してるのか…‼︎なんつーえげつねー武器を…」
クロノ「お前もえげつねぇ技持ってるだろうがよ。」
テラー「そんなもん振り回してるやつに言われたかねぇよ‼︎」
クロノ「俺様系ナルシストキャラが消えかかってるぞ。」
テラー「そんな持ってそんな顔で言うんじゃねぇ‼︎」
クロノ「ちっ…」
チェーンソーを捨てる。
クロノ「おらおらおらおらおらおら‼︎」
右手で刀を創り、テラーに連撃を繰り出す。
テラー「ちぃぃぃ‼︎」
槍で防ぐのがやっとのようだ。
クロノ「おらおらおらそぉら‼︎」
連撃の途中で足払いをする。
足を掬われたテラーの体が空中に浮かぶ。
クロノ「とぅぉりゃ‼︎」
浮かんだ体をサマーソルトキックでさらに高く上げる。
テラー「うがぁ⁉︎」
テラーに向かって跳び、体を掴む。
背中から抱きつき、空中で高速回転しながら地面に落ちる。
クロノ「回転‼︎イズナ落とし‼︎」
テラーを脳天から地面に落とし、自分はその落ちた流れで受け身を取る。
ピギー「うぉっと、連携からのすごい投げ技だ‼︎このヒール、見たことねぇ技をポンポン出してきやがる‼︎」
クロノ「どうした?勝負アリか?」
テラーが槍を杖代わりにヨロヨロと立ち上がる。
テラー「いいや…まだ終わらねぇ…いい技だったがな…俺様を倒すにゃあ弱すぎる…」
クロノ「と言いつつヨロヨロじゃねぇか。」
テラー「俺様には奥の手中の奥の手…切り札ってモンがあるんだ…キッドマンにすら出し惜しみしたが…あんたのようなバケモン並みの強さを持った奴相手になら使ってやってもいい…。」
クロノ「なに?」
槍を両手で持ち、体の前で縦に構える。
ヨロヨロとした立ち方ではなく、しっかりと自分の足で立っている。
テラー「偽装詠唱…開始。」
テラーが小さく呟くと、足元に魔法陣が現れる。
クロノ「なんだこれ…?」
テラー「汝を喚び出さん。汝が名はガリアス。義と悪を宿し、その狭間を貫く物言わぬ槍なり。義を愛するが為に民の希望を背負い、悪を信ずるが為に民の慢侮まんぶを受ける。故に汝は誰よりも笑い、誰よりも泣いた。叫べ。唸れ。こいねがえ。汝の心を供覧せよ。ここに、汝の技倆ぎりょうを示さん。」
魔法陣から魔力が溢れ出てくる。
クロノ「なんだこれ⁉︎詠唱魔法⁉︎」
しかし、自分の知っている詠唱魔法とかなり違う。
自分の知ってる詠唱魔法は自らの想いを詠唱呪文として唱えることで発動される。
こんないかにもな詠唱はしない。
ピギー「なんだなんだ…?詠唱魔法か?あの魔法陣の形は詠唱魔法のモノだぞ?俺らに聞こえない所で熱い闘いがあったのか⁉︎」
クロノ「どういうことだよ…?」
テラー「知らないのも無理はない。なんせこの槍は特別製なんだ。行くぞ‼︎」
テラーの姿が消える。
ピギー「テラーの姿が⁉︎いや、この光景はいつものアレだ‼︎」
実況が叫ぶ前に既に何が来るかは分かっていた。
上を見上げる。
テラーが槍を地面に向かって投げ落とす体勢を取り、既に投げようとしていた。
テラー「『偽装・穿つ迅槍レイ・ガリアス』‼︎」
槍が投げ下され、いや、あれは射出と言ってもいいだろう。
圧倒的な速さで槍が迫ってくる。
(避ける?…いや、これはチャンスだ‼︎)
右手を槍に向かって伸ばす。
落ちてきた槍を握るように、掴みカウンターの魔法を発動、エネルギーを少しずつ魔力に変え、その魔力で筋肉の力だけでは動かすのに間に合わない体を無理やり動かし、槍の軌道からズラす。
ズレた槍をそのまま掴み、後ろ向きに投げ、空中で回す。
体勢を整えて、槍を掴み、天に向かって構える。
投げる先は天ではなく、天にいるテラーだ。
クロノ「おおおおあああああ‼︎」
体に残っている全ての魔力を使って、槍を投げ返す。
これらが一瞬の間に行われたのだ。
誰だって反応できていない。
放った本人であるテラーは見えてはいても、体が動かなかったことだろう。
槍はテラーの体を貫く。
テラー「なっ…‼︎……かはっ⁉︎」
テラーの体が落ちてくる。
ピギー「はっ⁉︎これは⁉︎俺はてっきりテラーが槍を投げてさすがのヒールもこれまでかと思ったが…いつの間にかヒールがテラーの槍を投げていた…?何を言ってるのか自分でも分からなくなってきたぜおい…っていうか医療班‼︎出動‼︎」
選手入場口から魔導士が数人やってくる。
ピギー「っつーわけで勝負あり‼︎勝者、ヒーーーーーーール‼︎皆様盛大な拍手を‼︎」
会場が拍手に包まれる。
しかし、個人的にはそんなことはどうでもよく、あの謎の詠唱のことが気になっている。
(あんな詠唱呪文もあるのか…?聞いてないぞ…)

「ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く