ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その7・Mysterious flower garden

[クロノ]
予選の真っ只中、部屋で待機しているなう。
その時、ドアがノックされる。
クロノ「はいはーい。」
ドアを開けるとロナルドが立っていた。
クロノ「クロノ様、本戦でのことでご質問が…どうされました?」
クロノ「助けて。」
ロナルド「はい?」

ロナルド「なるほど。クロノ様は事情があって文字を読むことができず、その手紙の内容が分からないと。」
部屋に召使いが手紙を持ってきた。
しかしこちらの世界と向こうの世界とで使う言葉も文字も違うため、手紙の内容など読めるわけがない。
習ってないのだから。
マリアに読んでもらおうかと思ったが、マリアは今は部屋にいない。
つまりこの手紙を読んでくれる奴がいなかったのだ。
クロノ「誰か救いの手を…ってところであんたが来てくれたのさ。」
ロナルド「なるほど。しかし、文字が読めないというのは、呪いの類か何か…?」
クロノ「俺にも分からん。ある日全く分からなくなったんだ。そのある日も、朝だったか夜だったかも忘れた。」
ロナルド「なるほど。では失礼して…」
ロナルドが手紙を一通り読む。
ロナルド「リー、という方からですね。例の花畑に来て欲しい、と。何のことか分かりますでしょうか?」
クロノ「あぁ、分かる。ありがとな。そんで、そちらさんの用事は?」
クロノ「はい、空をご覧になったらお分かり頂けるでしょうが、雨が近づいてきております。嵐程にはならないでしょうが、強い風雨になると思われます。我々は選手の安全と最高のパフォーマンスを発揮することができる環境の為に、本戦の日程を遅らせるなどの策を取ることもできます。クロノ様はそういった何かの要求等はございますでしょうか?」
クロノ「いや、特に。そちらさんに合わせるよ。」
ロナルド「ありがとうございます。用はこれだけですので、それでは。」
クロノ「はいよ。」
ロナルド「他の方の予選はご覧になられないので?」
クロノ「リーに呼ばれたら仕方ねぇよ。」

クロノ「というわけで来たぞ。」
リー「遅い。」
大人の女性に拗ねられるとこう、胸にささる物がある。
これがギャップ萌えとかいうやつか。
リー「1時間は待ったわよ。」
クロノ「悪いって。ちょっと手間取ってたんだ。」
リー「手間取るって何によ。」
クロノ「ちょっとな。」
リー「ふ〜ん。それより、昨日の試合見たわ。あなたすごいじゃない!」
クロノ「カラドマか。あいつは本当に厄介だった。」
リー「カラドマ相手に1人で勝つなんて普通の人間にはできないわ。あなた、やっぱり只者じゃないのね!」
クロノ「むしろタダの人間なんだけどな。」
リー「謙遜なんてする必要ないわよ。あなたはとても強いわ。それにしても、その剣不思議ね。」
リーが腰に帯びている剣を指差す。
クロノ「何が?」
リー「その剣、変形しそうじゃない?もしかして本当に形を変えられるとか?」
クロノ「まぁな。こんな感じに。」
剣から銃へと形を変えてみせる。
クロノ「色々とできるんだ。」
リー「へー!やっぱりすごいのね!カミヅキ・クロノさん?」
クロノ「へ?」
唐突に本名を言われて焦る。
(この人に名前言った覚えはないぞ⁉︎)
クロノ「なんでそれを…‼︎」
リー「あ、本当だったのね。レギオン討伐の後にこの町から討伐隊に参加した生き残りの人が話してたの。カミヅキ・クロノという男は武器を自在に変形させながら戦っていた、って。だからあなたなんじゃないのかなってちょっとカマをかけたの。」
クロノ「俺としたことが…」
リー「へー、あなたがカミヅキ・クロノなんだ…。」
クロノ「おい、そっちだけズルいぞ。そっちの名前も教えてくれよ。」
リー「ダメ。知りたかったら自分で探しなさい。」
クロノ「はぁ…」
リー「ねぇ、聞かせてよ!今まで色々な所で戦ってきたんでしょ?クロノの話が聞きたいの!」

この世界に来てから色々と起きたことを話す。
ただし、異世界から来たことは言わず、その辺のは記憶を失ったとそれっぽいことを言った。
それ関連で、文字が読めないことも言った。
リー「へー。大英雄様がそんな事情を…」
クロノ「英雄英雄って、そんなにか?」
リー「当然よ!世界を救ったのよ!あなたのお陰で何百万…いえ、これから先の何億人以上の命を救ったのよ!英雄なんて名前でも生ぬるいくらいだわ!」
クロノ「そりゃあやったことはそうだろうよ。レギオンと戦って生き残った。カラドマ相手に勝った。今まで色んな所で勝ち続けてきた。でもそれで英雄なのか?俺は。戦うしか能のない俺は英雄になれねぇし、褒められる要素はねぇよ。」
リー「英雄はなりたいって言ってなるものじゃないわ。誰かになれと言われてなるものでもないの。みんながあの人は英雄だって言ったら、それが英雄になるの。だから、英雄英雄って言われるのは、自分のことをそういうニックネームで呼ぶ人だって考えればいいのよ!」
クロノ「ニックネームか…。」
リー「それじゃ。今日は色んなことを知れて楽しかったわ!またお話しましょ!」
そう言ってリーが去っていく。
クロノ「また…か…。」
(向こうからの質問に答えるだけの会話で、楽しんでもらえたのだろうか。)
人の気持ちが分かるようになりたい。

部屋に戻る頃には2戦目が終わっていた。
しかし、見に行くような気力が湧かない。
(そうだ、あの花畑にも行ってみよう。)
賑わう街を出て、こないだ訪れた森に向かう。
今回は運が良かったのか魔獣に出くわさなかった。
花畑に着く。
やはりとても落ち着く場所だ。
それに心も洗われる。
崖の近くから森の方を見る。
ここからだと、カラフルな花畑と緑色に覆われた木々とのミスマッチ感が幻想的な感覚を感じさせてくる。
クロノ「360°楽しませてくれるなーここは。……おろ?」
1本の木に何か違和感を感じた。
近づいて見てみると、何か焦げたような跡がある。
不自然にへこんだ跡もある。
クロノ「なんだこれ…」
他の木にも、小さくはあっても何かしら自然のものとは思えない跡があった。
1つには剣に切られた痕すらあった。
魔獣が近くにいるのだから、魔獣がつけた跡ということもありえないわけではない。
しかし、剣で切るなんてことは魔獣はしない。
(ここで誰かが戦ったってことか…?)
だがリーは、ここは自分しか知らないとっておきの場所と言っていた。
ここがどれほど素晴らしい場所かを伝えるために少し誇張して言ったのだろうが、気にならないわけじゃない。
花の方を見る。
おかしい点を1つ感じた。
(花畑だからって、こんなに種類が違うものか?)
花畑だからといって、同じ場所なら似たような花が多く咲くはずだ。
そうでなくとも、同じ種類の花が1つではなく、何個か存在するはずだろう。
なんせ種を残そうと種やら花粉やらをばら撒くのだから。
しかし、ここにある花は全てが違う種類であると分かる。
似たような形もあるが、よく見たら違いがある。
花博士ではないが、素人にも分かる。
何1つ、同じ花がない。
(よく見ると変な部分が多いな、この花畑。リーは何とも思わなかったのか…?)
今度聞いてみよう。
そして今日はもう帰ろう。
そろそろ、今日の分の予選が終わる頃だ。

街に帰る。
試合が終わった後のスタジアムから帰る観客のような空気に満ちている。
観客の中に、ロナルドが自分と会った時のようにフードを被っていて辺りを探している。
クロノ「おい魔導士さんよ。」
近づいて声をかける。
ロナルド「あぁ、剣士殿。少々人探しを…」
クロノ「手伝おうか?」
ロナルド「いえ!お気になさらず!」
クロノ「でもこんな中探すのも大変だぞ?」
ロナルド「いえ…これは自分で探さなければならないので…」
クロノ「そう?そんじゃまぁ、頑張れ。」
ロナルド「ありがとうございます。あ、そうだ剣士殿。」
クロノ「なに?」
ロナルド「お気をつけください。」
クロノ「…なにを?」
ロナルド「詳しく言うことはできないのですが…貴方は目をつけられていたようです。その…私は、この街を今すぐ離れることを…いえ、それでもおそらく無駄でしょう。」
クロノ「なに、やばいことでも起きんの?俺に?」
ロナルド「本当に申し訳ありません。気をつけろ、としか言うことができないのです…カラドマを倒した貴方でも命の危険が迫っていることをお伝えします。」
クロノ「どういうことだよ。」
ロナルド「申し訳ございません!それでは!」
ロナルドは逃げるように去っていく。
クロノ「何だってんだよ。」
(俺の命が狙われてる?目をつけられていた?街から離れようと無駄?)
相当ヤバいのに目をつけられたようだが、一体なんだというのか。

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