ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その8・a werecat

[クロノ]
キキョウのアジト。
クロノ「というわけで、倒してきた。」
キキョウ「そうか…」
首は途中で捨ててきた。
クロノ「後はドルグマノの連中に何とかしてもらうよう頼んであるし、大丈夫だとは思うよ。」
キキョウ「あそこのトップも何だかんだ悪人じゃがな。」
クロノ「そりゃまあそうだけど…」
ジュリの横にいるワーキャットの少女を見る。
アジトに帰ってくるなり、ジュリに飛びついてきた。
すっかり懐いている。
クロノ「まぁ、これ以上マフィア組織壊滅させても余計混乱させるだけだ。マフィアってのは何だかんだで秩序だからな。」
キキョウ「それも間違いないな。」
ジュリ「あの人は?シリューシカさん。」
先輩を救助して先にアジトへ帰した。
キキョウ「奴なら今別室でケアを行っておる。とはいえ…」
クロノ「この町にはトラウマが多すぎるってか?」
キキョウ「うむ。もう無いものとはいえ、カノディアの恐怖は消えない。しかもこの町での出来事だったんじゃ。そう簡単に癒えはせんじゃろう。」
クロノ「ならこの町から離れればいいんじゃないか?」
キキョウ「それはそうじゃが…」
クロノ「うちのギルド、まだ部屋は空いてるはずだし、うちでなら預かれると思うが。」
キキョウ「よいのか?」
クロノ「ついでだよ。あんたにもうちのギルドに来てもらわんといかんしな。」
キキョウ「ありがたい。」
クロノ「部下思いなのなーあんた。」
キキョウ「なんじゃ急に。おだてても何も出はせんぞ?」
クロノ「いや、そこまで部下に気を回せるなんてさ。すげぇと思うよ。」
キキョウ「なんでもよかろう。ワシは別に人間嫌いではない。ワシはワシを嫌わない奴以外は嫌わん。それだけじゃ。」
クロノ「なるほどね。」
キキョウ「さて、ではシリューの所へ向かうとするかの。」

シリューシカが先輩のケアを行っているという部屋に入る。
シリューシカは先輩の手を握り、必死に言葉をかけ続けている。
カノディアのアジトにいた時より良くなっているようで、少なくとも殺してくれとせがむことはなくなっているようだ。
部下「あ、キキョウ様、クロノさ…様。」
クロノ「いや、呼びやすい呼び方でいいよ。俺もシリューでいいか?」
シリュー「はい!ありがとうございます!そしてジュリ様。」
ジュリ「私は様付け?」
シリュー「女性は様付けで呼ばないと気が済まないというか…」
キキョウ「ナナはどうじゃ?」
シリュー「大分落ち着いてきたとは思いますが、まだ不安定です…。」
この人、ナナって言うのか。
ナナ「ここはいや…こわい…こわい…」
シリュー「とまぁ、こんな感じでして…」
キキョウ「やはりここがダメということか。」
シリュー「今や先輩にとって、この町はトラウマの宝庫といった感じなのでしょう。」
キキョウ「クロノがな。ギルドに来たらどうだと誘ってくれたんじゃ。」
シリュー「え?」
クロノ「この町にいたらダメなんだろ?ならうちに来ればいいさ。そこで療養に専念すればいい。」
シリュー「とても嬉しい申し出なんですが、よろしいので…?」
クロノ「ただしうちのギルドのメンバーとして働いてもらうがな。まずはその先輩さんの療養を済ませること。それがお前の仕事だ。」
シリュー「ありがとうございます!」
クロノ「さて、じゃあリースに戻るか、の前に…」
ワーキャットの方を見る。
ワーキャットは首を傾げ、不思議そうな顔をする。
クロノ「この子を帰さなきゃな。キキョウ、ワーキャットってどこに住んでんの?」
キキョウ「そうだな。口で言うより、実際に行った方が分かりやすかろう。」
クロノ「なら出る準備をして早速出発かな?」

夜になり、キキョウ達を屋上から連れ出し、町の外に出る。
キキョウのような分かりやすい見た目が町を堂々と歩くと、目立ってしまう。
そのため、なるべく誰にも見つからないようにコソコソと脱出する。
馬車に乗り、南のワーキャットが住む集落へと向かう。

キキョウ「今の確か、繁殖期ではなかったな。なら安全かの。」
クロノ「繁殖期だと危険なの?」
キキョウ「男女構わず襲うんじゃよ。」
クロノ「男女?」
キキョウ「繁殖期じゃからのう。」
うわぁ…
キキョウ「ワーキャットには性別は女しかない。それでも子を成せるというのじゃから、大した種族じゃて。」
クロノ「えぇ…」
キキョウ「なんじゃ、そういうのは嫌いか?」
クロノ「いや、嫌いじゃないしむしろ好きだけどさ、キキョウがそういう話題を振ってくることに驚いた。」
キキョウ「年を取ると上品な話ばかりではつまらなくてなっての。たまには下世話なことを言いたくなるんじゃ。」
クロノ「そうなの?」
シリュー「初耳です…。」
キキョウ「ちなみに、どうやって子を成すか知っておるか?」
クロノ「や、想像つくんでいいです。」
キキョウ「ほう。お主の世界にはそういうものはあったのか?」
クロノ「あったけど、現実にはいたのかな?よくわからん微妙なラインだや。ってか、テンション高くない?」
キキョウ「あの町を出るのは100年ぶりじゃからのう。少し気持ちが高ぶっているのかもしれんな。」
なるほど。どうりでさっきから尻尾がバタバタしているわけだ。
ジュリ「その尻尾、柔らかそうですよね…」
キキョウ「触ってみるか?」
ジュリ「いいんですか⁉︎」
キキョウ「うむ。存分に触られい。」
ジュリ「では、失礼して…」
ジュリがキキョウの尻尾に近づき、手を触れる。
ジュリ「すごい…」
クロノ「柔らかいの?」
ジュリ「はい…抱きつきたくなるほど…」
キキョウ「なら抱きついてみるか?」
ジュリ「い、いいので⁉︎」
キキョウ「あぁ。」
ジュリが尻尾に抱きつく。
尻尾に顔をグリグリと押し付け、幸せそうな顔をしている。
クロノ「人をダメにする尻尾ってか。」
ワーキャットの女の子はそれに合わせてジュリに抱きついている。

御者「キキョウ様。着きました。」
キキョウ「ふむ、もうか。」
そこには大きな森が広がっていた。
キキョウ「この森の中にワーキャットの集落があちらこちらにある。確か6個くらいあったかのう。」
クロノ「じゃあ1個1個探すしか…」
キキョウ「いや、その必要はなかろう。ほれ。」
森の中からワーキャットがそろそろと出てくる。
クロノ「なんとなく予想はしてたが…」
ちょっと空気がピリピリしている。
すると、ワーキャットの女の子が森から出てきた群れの中に走っていく。
群れの中から2人のワーキャットが出てきて、ワーキャットの少女を抱きとめる。
親だろうか。
クロノ「感動の再会か。いい話だなー。」
ワーキャットの親と少女は何かを話している。
クロノ「ワーキャットって喋れないんじゃ?」
キキョウ「喋られないのはワシらが話しているこの言語のこと。ワーキャットにはワーキャットの言葉があるのじゃ。人間や他の亜人とは違う生活を送っておったが故かもしれんの。」
やがて、ワーキャットの少女がこちらに戻ってくる。
クロノ「あれ、どしたの?」
馬車を指差す。
クロノ「馬車?連れて行けってこと?」
キキョウ「ジュリに懐いておったからのぅ。ついて行きたくなったのかもしれんの。」
ジュリに抱きつく。
ジュリ「クロノさん…どうします…?」
クロノ「どうするって…」
ワーキャットの少女がジュリに向かって微笑む。
クロノ「そんな笑顔見せられたら断れねぇわな。」
ジュリ「ですよね!」
キキョウ「名前はどうするんじゃ?これから共に行くのであれば、名前が必要じゃろう。」
クロノ「ワーキャットには名前はないの?」
キキョウ「ないはずじゃ。以前ワーキャットに会ったことあるが、名前を聞いたら、そんなものはないと言われた。」
クロノ「会話できんの?」
キキョウ「いいや。身振り手振りで頑張った。」
クロノ「あぁ……じゃあ名前が必要だな…そうだな…名前か……」
猫らしく、そして可愛く…
クロノ「ミーア、ってのはどうだ?」
キキョウ「ミーアか。可愛らしい名前じゃな。」
クロノ「じゃあ決まり。お前はこれからミーアだ。よろしくな。」
ミーアは今までで1番明るい笑顔を見せて頷く。
言葉は通じないが、意思は通じるようだ。

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