ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その4・High-sounding talk

[クロノ]
キキョウの部下に、キキョウのアジトの部屋の1つに連れられる。
部下「こちらの部屋をお使いください。」
ベッドが2つに、机と椅子が2個。
部下「宿をとられていないそうで。」
クロノ「まぁ、そうだけど…ここまでしてもらっちゃっていいのか?」
部下「他の方にはここまでの待遇はなさりませんでした。それほど、クロノ様を信頼なさっているということでしょう。」
ジュリ「良かったじゃないですか!」
クロノ「そりゃまぁ、こっちもありがたいけど…今までこういう依頼受けた人にもここまでしたの?」
部下「いいえ。そもそも、カノディアのボスの殺害依頼を受ける方はいませんでした。この町の人間にとって、カノディアの名前は大きいので、それに刃向かえる者はいません。また他所の町から来た者も、カノディアの恐ろしさを聞いて逃げてしまうほどです。ですから、あなた方は初めてこの依頼を受けてくださった方なのです。」
クロノ「それでここまで期待をね。」
部下「…カノディアを倒してくれますか?」
クロノ「?どうした、急に。」
部下「カノディアに連れ去られてしまった部下というのは、私の先輩にあたる方です。あの人がいなくなったことで、私がその枠に入り、今こうしてキキョウ様のお世話をさせてもらっています。あの人は私にあらゆる事を教えてくださいました。私を指導してくださったのがあの人だったからこそ、私はここまで来れたと言っても過言ではない。キキョウ様は自らの復讐だとおっしゃっておりましたが、私の復讐でもあります。どうか…カノディアを…」
クロノ「任せろ。俺だってカノディアの連中のそのやり方は気に食わなかったんだ。頼まれなくたってボッコボコにしてやるよ。」


クロノ「とは言ったものの。」
ジュリ「どうやってカノディアのアジトを見つけるんです?」
一晩休んで次の日。
朝だというのに、昨日ここを訪れた時とほとんど変わっていない。
朝から酒に酔いつぶれ、その辺に倒れて寝ている男。
その男の服を漁る汚れた服の子供。
クロノ「ほんとに朝なんだよなぁ?今。」
ジュリ「そのはずですけど…」
カノディアのアジトはキキョウでも分かっていない。
それほど、カノディアのボスは注意深いというか、自分の身の安全を全力で守っている。
ジュリ「場所を知らなきゃ何もできませんしね。」
クロノ「それだけじゃない。」
ジュリ「と言いますと?」
町に聞いて回ったところ、キキョウからも聞いたのだが、カノディアはこの町の中でトップをいくマフィアだ。
クロノ「他にもマフィアがある中で、トップになれた。そんな男がただ腕力や強い魔法だけで戦えたのかなって。」
ジュリ「何か特殊な能力を持っていると?」
クロノ「推測だがな。だが、ただ腕力や魔力があるだけじゃあ、そこまで大きくはなれないと思う。」
ジュリ「なんでしょう…」
クロノ「さぁな…ん?」
ジュリ「どうしました?」
クロノ「あれは…」
道の先の方で、大柄な男が袋を担いで路地裏に入っていった。
その袋は暴れていて、中に何か生き物でも入っているかのようだ。
クロノ「ついでだ。ちょっと行ってみよう。」

例の男の入っていった道を進んでいく。
その途中にも、空を見つめぼやけている女や、あーあーとしか喋れなくなっている少年が横たわっていた。
男が袋を開けているところだった。
中からは、手と足を塞がれ、目隠しをされたネコ耳の亜人の女の子が出てきた。
ジュリ「ワーキャット?」
クロノ「なんだそれ?」
ジュリ「猫の亜人です。南の方で暮らしていて、一応人間のような暮らしはしていますが、人間の言語は理解できないので、人間との関わりはあまりないんです。他にも、他の種族にら特徴が結構ありますね。」
クロノ「へー。それがなんでここに?」
ジュリ「おそらく攫われてきたんじゃないかと。」
男がワーキャットの目隠しを取る。
涙を出しながら男を見つめ震えている。
クロノ「ありゃ確かに攫われてきてるな。」
男「ヒヒッ、まぁそんなに怖がるなって。」
クロノ「あ〜。ダメなやつか。」
ジュリ「どうします?」
クロノ「どうするって助けるに来ま…ちょっと待て。」
男がズボンのポケットから包みを出し、それを開く。
包みの中には粉が入っていた。
クロノ「あの粉…路地裏の男が吸ってたのと同じ…」
ジュリ「もしかして…ラパレリャ⁉︎」
クロノ「だとしなくても、助けに行かなきゃな‼︎」
身を乗り出すと、男がこちらに気づいた。
男「誰だてめぇ‼︎」
クロノ「通りすがりのヒーローだ。そういうあんたはその子をどうしようってんだ?」
男「てめぇには関係ねぇよ。あっち行きな。ったく、ボスに献上する前にちょっと楽しんでいこうかと思ってたのによぉ。」
クロノ「ボスに献上?あんたまさかカノディアの人間か?」
男「はっ、ちげーよ。俺はドルグマノの一員だ。」
クロノ「ドルグマノ?カノディアとは違うのか?」
男「あんなとこと一緒にすんじゃねぇ!」
クロノ「いや、正直あそことは力があるか無いかの差で、やってることは同じに見えるが?」
男「ちっ、ぶっ殺してやる。」
男がナイフを取り出す。
ジュリ「ナイフなんかで私たち2人に勝てるとでも?」
男「へっ、俺はこのナイフで20年間戦い続けて負けたことはねぇ。カノディアの連中にもだ。あそこのボスが違うやつだったら、俺がドルグマノをトップに導けたんだよ。」
クロノ「ま、武器なんて自分の扱いやすい武器が最強だからな。だから…」
右手でチェーンソーを創る。
男「え?」
クロノ「お前はこの武器じゃなくて俺らの実力に負けることになるがいいのか?」
男「え、それ…」
クロノ「見たこと無いか?これはチェーンソーっていう武器だ。見ての通り超高速回転してるノコギリみたいな物でな。これがまた面白いように人を切れるんだ。で、どうする?」
男「ちぃっ‼︎」
男がワーキャットの女の子を抱えて逃げる。
クロノ「逃がさん‼︎」
チェーンソーを捨て、右手の魔力を伸ばす。
魔力は男を掴みこちらへ引き寄せる。
男「ぐおぉ‼︎」
クロノ「ジュリ、その子よろしく。」
ジュリ「はい。」
ワーキャットの女の子をジュリに預ける。
クロノ「俺に目を付けられた時点で負け確だったんだよ。で、ボスに献上ってのはどういうことだ?」
男「先月にうちの縄張りをカノディアに取られちまったんだ。力ずくで無理やりな。しかもそこはボスが生まれ育った場所だったからそれはもう苛立ってたんだ。それで慰み者としてワーキャットを連れてこいって命令されたんだよ。」
クロノ「なるほどね。場所をとられたことは同情するが、かといってこんなことを容認するわけにはいかんな。」
男「ならなんだってんだよ。あんたが代わりにカノディアを壊滅させてくれるってのか?」
クロノ「そういう依頼があったもんでね。」
男「あんたマジに言ってんのか?」
クロノ「大マジだ。」
男「頭イかれてるぜあんた。」
クロノ「なぁ、あんたらのボスってさ。カノディアのボスのこと知らないのか?」
男「さぁ…縄張り争いの時にボスと戦ったって言ってたが…」
クロノ「あんたのボスはまだ生きてるってことだよな?」
男「あ、あぁ。」
クロノ「会わせてくれ。」
男「はぁ?なんだって会わせなきゃいけねぇんだよ?」
クロノ「カノディアのボスと戦ったんなら、何かボスについて知ってるはずだ。ボスが何か変わった能力は持っていないかとかな。」
男「無理だ。今あのボスにカノディアの話したら殺されちまう。」
クロノ「ならアジトの場所を教えろ。そこに俺が侵入して無理やり聞く。」
男「あんた…ほんとにイかれてるよ。」
クロノ「そんなことは聞き飽きた。あと、このワーキャットの女の子は俺らが預かる。」


キキョウのアジトに戻り、あてられた部屋に入る。
ジュリ「もう大丈夫よ。心配しないで。」
ワーキャットはジュリにしがみついている。
ジュリが優しく接したことで、ジュリを信用したようだ。
ジュリ「女の子に抱きつかれるっていいものですね…」
クロノ「お前があの男の第2号になるつもりか?」
ジュリ「もしそうなったらナニをされちゃうんです…?」
クロノ「一生お前に優しく接する。」
ジュリ「そんな‼︎ご褒美は⁉︎」
クロノ「それがご褒美のはずなんだが…?あと、その子の耳元であまり大きな声を出すな。」
ジュリ「あぁ、ごめんね。」
ワーキャットは頭をジュリにすりすりと擦り付けている。
まさしく猫だ。
クロノ「まぁ、確かに可愛いか。」
キキョウ「その娘はどうしたんじゃ?」
キキョウが部屋に入ってきた。
クロノ「あぁ、キキョウか。攫われてた所を助けた。」
キキョウ「ワシの依頼もあるのに、随分余裕があるのぅ。」
クロノ「目の前の命最優先なんでね。」
キキョウ「攫われた命を、しかも亜人の娘を助けるとはの…」
クロノ「あんたも亜人だろう?」
キキョウ「他種族を助けたと言いたいのじゃ。」
クロノ「他種族を助けるのがおかしいことなのか?」
キキョウ「お主がいた世界でどのような差別があったかは知らん。だがこの世界では、大昔に人間は今亜人や獣人と呼ばれる種族を迫害した。化け物のような見た目だもな。人間が豊かな生活を送っている中で、亜人と獣人は魔獣に命を狙われながらその日を生きていく過酷な生活を強いられた。今でこそ、亜人獣人と人間との仲は良くなっている。じゃが、そのような考えが途絶えたわけではない。アリアンテに亜人の姿を見たか?リースには?お主が前に訪れたベルージアやイクツキ、ヤシュールでは?1人も見なかったじゃろう?今もなお、その文化が、残っているのじゃ。」
種族嫌いを文化と言いやがるか。
クロノ「皮肉った言い方。でもまぁ、こっちと似たようなもんだな。こっちもちょい昔、似たような迫害があった。我らの種族は優れているとか、貴様らの存在そのものが罪なのだとか言ってな。今もその迫害は終わっていない国がある。それが原因で戦争をしている所もある。だが俺から言わせればな、そんなことして何になるってんだって話だ。アホ以外の何物でもない。そうやって嫌い合うより、お互い好きになった方がどんだけ幸せかっつー話だ。戦争と遊び。不味い飯とカフェでお茶会。殴り合いと愛の囁き合い。あんたはどっちが好きだ?俺は全部後者だね。それなら誰かを嫌ってる暇なんてない。みんなでみんなを愛し合っていきゃあいい。簡単なことだろ?誰かを嫌うのと誰かを好きになるの。どっちの方が気分が良い?そんなの子供だって分かる。」
キキョウ「世はそれを綺麗事と言うのだぞ?」
クロノ「綺麗事も語れない奴が平和を語る資格はねぇよ。」
キキョウ「綺麗事で世界は平和にできん。」
クロノ「綺麗事を実行した世界が平和な世界なはずだが?」
キキョウ「………ふふ、お主はなかなか面白い考え方をしとるな。」
クロノ「俺は昔いじめられっ子だったからね。むしろそれが原因で、無条件で人を好きになる性格になっちゃったのさ。愛に飢えてたからかね。余程の悪人じゃない限り、俺はみんな好きだ。あんたもな。」
キキョウ「ワシに愛の告白か?100人の部下が黙っておらんぞ?」
クロノ「ありゃりゃ、それは怖いな。20になったばっかで刺し殺されたくはないね。んじゃ友達ってことでどう?」
キキョウ「変な奴じゃ。」
クロノ「知ってる。」

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