ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その7・Kill and rob

[クロノ]
イリヴィの館を出て、目的の街ローベリスプへ向かう。
到着は夜になったが、むしろ好都合である。
イリヴィは色々と用事があるそうなので着いてこれず、結局ミランダと2人で来る羽目になった。
クロノ「これはなかなか…」
ミランダ「なーんかあちこち、マキノの研究所みたいな雰囲気の街ね。」
コンクリートのような何かで舗装されたベージュ色の地面。
その地面にはレールが走っている。
トロッコでも通るのだろう。
クロノ「人間界より発展してんじゃね?」
ミランダ「ほんとねー。でも…」
通りに人が全くいない。
クロノ「外出禁止って言われてるわけだし、そりゃそっか。」
ミランダ「私達もどっかの店に入った方がいいんじゃないの?」
クロノ「まぁな…」
武装した警備ロボットに容赦なく銃殺されるらしい。
町長に会うまであまり変な騒動を起こしたくないので、どこか近場の店に入ることにする。
クロノ「…酒場発見。どうする?」
ミランダ「入りましょ。」


酒場に入る。
中はボチボチと客がいたが、どうも明るいという雰囲気ではない。
(むしろ、ピリピリしてるな。)
2人でカウンターの席に座る。
マスター「ご注文は?」
ミランダ「私初めて来たから…何かオススメくれないかしら?2人分。」
マスター「2人分…?かしこまりました。」
ミランダの後で頼むつもりだったが、なぜか自分の分まで一緒に頼まれる。
クロノ「えっ?俺は…」
ミランダ「いいから。」
ミランダが強くこちらを見る。
ここは私に任せておけ、というものではなく、私に従えと言ってるかのようだ。
客「おい人間さんよぉ〜。」
ガラの悪そうな魔族が少し離れた席から話しかけてくる。
客「なんでこんな所にいるんだ〜?えぇ?」
(酔ってるのか…?)
ミランダ「あら、ごめんなさいね?この子、私の奴隷なんだけど、ちょっと用事でここまで連れてきちゃったのよ。」
クロノ「はい?」
言い返そうとするが、またもやこちらを睨むように見る。
(なるほどね…)
人間と魔族の仲が悪いのを思い出す。
モニカやミランダやイリヴィは、比較的人間に対する(正確にはクロノに対する)嫌悪感は低い。
しかし、そんな例は魔界では珍しい。
普通の魔族は、人間は虫以下のクズとしか見ていない。
実際、魔界では人間を奴隷として売買している。
ちなみに、人間界でも一部では魔族で似たようなことをしているから魔族1つが悪というわけではない。
ミランダは、下手に騒ぎを起こさない為に、魔族であるミランダの奴隷だという設定でやり過ごせと言っているのだ。
(だから俺に注文させなかったのか…そりゃ人間からの注文を受け付けるわけないわな。)
客「おいおい、酒が不味くなるからやめてくれよ。外に追い出してくんねぇか?」
ミランダ「ごめんね?私、サキュバスだから。近くに人間の男がいないと不安なのよ。」
客「けっ。だったらお前ごとなー…」
マスター「お客様、あまり騒ぎになるようなことは…」
マスターが仲裁に入る。
客「あ〜?ちっ…」
絡んできた客はチビチビと酒を飲み始める。
マスター「申し訳ありません。」
ミランダ「いいのよ。外に出れないからイライラしてるんでしょ。」
マスター「その通りです。変に大事になると、町長に目をつけられてしまいかねませんから、みんな静かに過ごしているのですが…」
クロノ「俺のような人間がここにいるとさすがの魔族も拒否反応が、ってやつですか?」
マスター「ええ、その通りです。」
ミランダには比較的柔らかい口調で話していたマスターだが、自分には厳しいトーンで言う。
(こいつも人間嫌いか。)
ミランダ「ごめんなさいね。」
マスター「いえ、外から来られた方でも、町長はお許ししませんから…明日の朝になりましたら、すぐにでも街を出た方がよろしいかと…」
ミランダ「それなんだけど…私、町長さんとお話したくて来たのよね。」
マスター「例の新しい発明がとかいうやつですか?」
ミランダ「会いに行く方法とか、知ってたりしない?」
マスター「まさか、アポ無しですか⁉︎」
マスターが驚く。
ミランダ「えぇ。」
マスター「悪いことは言いません。やめた方がいいです。無謀です。」
ミランダ「なに、そこまで怖いの?ファカナって子。」
マスター「えぇ、その…よその街から来たのですから、あまり関わらない方が身のためです…」
ミランダ「ふーん。じゃあ…」
その時、外で銃声が聞こえた。
クロノ「今のは…」
マスター「こんな時間に出歩いていた馬鹿者が警備ロボットに見つかったのか?」
距離からして、そこそこ近い。
クロノ「ちょっと見てくる。」
ミランダ「あ、こらちょっと!」
クロノ「見つからなきゃ大丈夫だって!」


店を出る。
(音のした方角は…)
すると、また近くで発砲音がした。
(あっちの方か?)


魔族の男が脇腹を抑え、フラフラになりながらも走っている。
男「ハァ…ハァ……くそっ…」
脇腹から大量の血が溢れ出ている。
男「ぬぁっ‼︎」
地面のレールに足を引っかけて転んだ。
男「ちくしょう…」
そこへ、円筒型のロボットが地面をホバリングしながら曲がり角を曲がってくる。
男「あぁ…いやだ…」
怪我のせいで立ち上がる体力すら残っていない。
ロボットが男を発見すると、腕を男の方へ向ける。
男「いやだ…死にたくない…」
男の懇願を無視して、ロボットは腕から魔力でできた銃弾を発射する。
クロノ「間に合った‼︎」
間一髪飛び込み、右手から魔力のバリアを張る。
銃弾を全て弾き、男を担いで近くの民家の屋上に魔力の鎖を引っかける。
クロノ「掴まってろ!」
鎖で自分の体を引き、屋上へと上がる。
ロボットはクロノ達を見失い、巡回へと戻っていった。


男「助かった…のか…?」
クロノ「その傷が治ればな。」
男はまだ窮地を脱していない。
出血の量がひどいのか、かなり弱っている。
クロノ「あいにく、俺は回復させられるような魔法は使えないんだ。どっかの酒場にでも入って…」
ミランダ「おバカな奴隷持つと大変ね、全く。」
ミランダが飛んでやってきた。
そりゃあもちろん、羽が生えてるんだから飛べる。
クロノ「来ちゃったの?」
ミランダ「もちろん。で、その男が撃たれたおバカさん?」
クロノ「あぁ。かなりキツイ。」
男の脇腹からは出血が治る気配がない。
ミランダ「もう。」
ミランダは男に向かって手をかざす。
すると出血が収まった。
ミランダ「止血だけよ。回復させるような魔法はないから、誰かに頼みなさい。」
男「ありがとう…」
男がミランダとクロノを見る。
男「あんた…人間か…?」
クロノ「そうだけど?」
男「人間にも…良い奴ってのはいるんだな…」
クロノ「魔族にだって良い奴がいるくらいだし、人間にいてもいいだろ?」
男「魔族も人間も…似たようなもんだってか。」
男が吐きすてるような言う。
クロノ「なぁ、ありゃあなんだ?」
男「あれは武装警備ロボットだ。夜になると町内を巡回しだして、出歩いている奴らに向かって警告無しに発砲してきやがる。」
クロノ「んで、あんたは歩いていた所を見つかっちまったと。」
男「いや、俺は屋上を歩いてた。奴らは頭上は分からないっつー欠点があるからな。みんな移動するときは屋上を飛び移って移動してる。ただ、俺はちょっとミスって飛び移る時に落ちちまったんだ。しかもそこにロボットが通りがかって、襲われたんだよ。」
クロノ「そいつは運の無いこって。しかし、屋上がセーフゾーンか…」
ミランダ「どうしたの?」
クロノ「俺が町長なら、屋上を安全地帯にさせない為になんか対策するかなってさ。」
ミランダ「どうやって?」
クロノ「どうやってかは知らんが、やってる側は楽しいかもしれんぞ?屋上は安全だという意識を植え付けさせて安心したところを…ゴッソリって感じに。」
よくある罠だ。
男「そんなの…あるはず…」
クロノ「無いって言い切れっか?」
男「いや、あの町長ならやりかねんな。」
クロノ「よし。じゃあまずは、こいつを…どこに連れてきゃいい?」
ミランダ「私が連れて行くわ。あなたは…」
町長の凶行をこれ以上許してはおけない。
クロノ「町長様のお城に忍び込もう。」
ミランダ「はぁ?バカじゃないの?」
クロノ「今更。これ以上こんな馬鹿げた真似見過ごせるか。」
ミランダ「あなた、ここに来た目的忘れてない?発明品見に来て、その技術を持ち帰りに来たんでしょう?」
クロノ「いや、目的変更だ。町長殺して機関をそのまま人間界に持ち帰る。」
悪を倒す為に悪を行う。
義賊になると宣言。
男「殺す?持ち帰る?あんたら、いったい何しに来たんだ?」
クロノ「ちょいと遠くに行く為に船が必要なんだが、その船がこれまたすんごい魔力が必要でね。でもいい感じにできそうな機関をここの町長さんが作ったっていうから見に来たんだが、殺して奪うに変更した。」

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