乙女よ。その扉を開け
紫を仲間に、紫を助けに
「異能・時雨の化」
光が溢れ出て校舎は元に戻った。
「よし。あや、全員の記憶を消しなさい」
「んな簡単そうに。
六百人以上の記憶消すの大変なんですよ?」
校舎の方へ向き、あやは真白の珠を出した。
「異能・博覧強記」
あやを中心に魔法陣が校舎を囲んでいった。
「やま」
校内にいたあさ達三人は後ろに控えていたやまの方へ寄った。
「……ゆかは?」
「連れてかれたさ。
目の前でマフィアのボスに」
やまは里奈の方を見た。
魔姫の正体を知っているわけではないが里奈の魔姫への態度と今の殺気の量からして有力な者ではあるのだろう。
「さっきマフィアのボス本人が自分をアビリティーキラーと呼んでた。
現に異能を使えなかったし……ゆかと同じようだった」
紫は今はまだ異能を使いこなせていない。
だがマフィアのアビリティーキラー。
破壊神が残酷無慈悲にでもなってしまったら……。
「終わったよ……って全員集合してる」
「よ。お疲れさん」
あまり疲労していないあやは軽く伸びをした。
「それでどうする気なの社長は」
少し離れた所で険しい顔で里奈は携帯を覗き込んだ。
「……………………」
(縁……)
里奈は電源を切った。
「マフィアに乗り込むわよ」
「ん………」
目を覚ますと鉄格子が初めに目に映った。
「ここ……どこ?」
探偵社でも学校でも無い。
立ち上がろうとすると左足に激痛が走った。
「――――――っ!!」
「最低限の処置しかしてないから動くと開くよ。
大人しくしてて」
外を見るとひなみがしゃがみ込む紫を見下ろしていた。
「ひ……なみ……あなた…………」
「ええ。私はマフィアの一人。ああそうだ。
色々と気になるよね。
今は六月十二日の二十二時過ぎ。まだ一日経ってはいないよ。
それとここはマフィアの牢。
と言っても本部じゃ無いけど」
紫は黙り込んだ。
前にあや達に問い詰められた時、校内にスパイがいると聞かされていた。
「まさかこんな近くにいたなんて知らなかった」
皮肉を込めて紫はひなみを睨みつけた。
「友達を睨むってどうかと思う」
「……その言葉、そっくり返すよ。
友達を牢屋に入れて」
「仕方ないじゃない。
私だって好きで鉄格子越しに喋ってるわけじゃないんだから」
溜息を漏らしながらひなみは紫に手を差し出す。
「…………何」
「この手を取ればあなたはここから出られる。
マフィアの一員として」
「取るわけないでしょそんなもの!」
異能者を奴隷として売りさばくような残酷な組織になど入りたくない。
何より探偵社を敵としたくない。
「異能者も探偵社も悪用させない。
絶対破壊させてやる」
赤黒い珠を呼び出して檻に光線を放った。
だがやはり壊すことは出来ない。
「止めなよ。体力の無駄になるよ」
キッと睨んで何度も光線を放ち続けた。
「異能・大悟徹底」
探偵社内を百目が取り囲んだ。
「里奈」
ずっと社内にいた真由美が寄ってくる。
「魔姫が出てきたって聞いたんだけど」
「ええそうよ。
だからひよに居場所を探してもらってるのよ」
「でも魔姫は……」
ひよの百目も通用しない。
「だけどそこの周りに異能力は無くなるわ。
その地点を探ればマフィアの拠点も見つかる」
ひよの異能が終わった。
「……分かりました」
「どこ!? ゆかはいるの?」
「あや。そこまではひよにも“視”えないって」
「はい。
やはりアビリティーキラーで途切れてしまいました。けれど場所はわかりましたわ。
行きますか社長」
「勿論よ。さて、潜りにいくわよ」
里奈達はマフィアの拠点へ乗り込んだ。
「紫。まだやるの?」
ひなみはもう何回発動したのかも分からない紫の破壊神を見ていた。
異能は体内にある魔力というものを普段使うがそれにも限度がある。
「もういい加減力も使い果てたでしょう。
それ以上やったら死ぬよ」
「……も、少し……壊して……や…………」
紫はバタリとその場に倒れ込んだ。
「だから言ったじゃない。
頑張りすぎてもその身が朽ちるだけなんだよ……紫」
気を失っている紫の頭を愛おしそうに優しく撫でた。
(紫……何で異能者に。
あんたは“こっち”を知らなくて良かったのに)
「ひなみ!」
自分を呼ぶ声がして向くと茜が地下牢まで降りてきた。
「異能探偵が押しかけてきた。破壊神は」
「力を使い過ぎて気を失っているわ。
それにずっと見張ってたし」
ひなみは倒れ込んでいる紫と光線を当て続けられた格子を交互に見た。
(何十回もやったのにひびも入れられてない)
神の力も使い物にならなければ役にも立たない。
「……ふふ……ふふふ」
「ひなみ?」
急に笑い出した少女を茜は訝しんだ。
「紫だけは渡さない」
茜の横を通り過ぎて来た道を戻る。
「異能・不倶戴天」
光が溢れ出て校舎は元に戻った。
「よし。あや、全員の記憶を消しなさい」
「んな簡単そうに。
六百人以上の記憶消すの大変なんですよ?」
校舎の方へ向き、あやは真白の珠を出した。
「異能・博覧強記」
あやを中心に魔法陣が校舎を囲んでいった。
「やま」
校内にいたあさ達三人は後ろに控えていたやまの方へ寄った。
「……ゆかは?」
「連れてかれたさ。
目の前でマフィアのボスに」
やまは里奈の方を見た。
魔姫の正体を知っているわけではないが里奈の魔姫への態度と今の殺気の量からして有力な者ではあるのだろう。
「さっきマフィアのボス本人が自分をアビリティーキラーと呼んでた。
現に異能を使えなかったし……ゆかと同じようだった」
紫は今はまだ異能を使いこなせていない。
だがマフィアのアビリティーキラー。
破壊神が残酷無慈悲にでもなってしまったら……。
「終わったよ……って全員集合してる」
「よ。お疲れさん」
あまり疲労していないあやは軽く伸びをした。
「それでどうする気なの社長は」
少し離れた所で険しい顔で里奈は携帯を覗き込んだ。
「……………………」
(縁……)
里奈は電源を切った。
「マフィアに乗り込むわよ」
「ん………」
目を覚ますと鉄格子が初めに目に映った。
「ここ……どこ?」
探偵社でも学校でも無い。
立ち上がろうとすると左足に激痛が走った。
「――――――っ!!」
「最低限の処置しかしてないから動くと開くよ。
大人しくしてて」
外を見るとひなみがしゃがみ込む紫を見下ろしていた。
「ひ……なみ……あなた…………」
「ええ。私はマフィアの一人。ああそうだ。
色々と気になるよね。
今は六月十二日の二十二時過ぎ。まだ一日経ってはいないよ。
それとここはマフィアの牢。
と言っても本部じゃ無いけど」
紫は黙り込んだ。
前にあや達に問い詰められた時、校内にスパイがいると聞かされていた。
「まさかこんな近くにいたなんて知らなかった」
皮肉を込めて紫はひなみを睨みつけた。
「友達を睨むってどうかと思う」
「……その言葉、そっくり返すよ。
友達を牢屋に入れて」
「仕方ないじゃない。
私だって好きで鉄格子越しに喋ってるわけじゃないんだから」
溜息を漏らしながらひなみは紫に手を差し出す。
「…………何」
「この手を取ればあなたはここから出られる。
マフィアの一員として」
「取るわけないでしょそんなもの!」
異能者を奴隷として売りさばくような残酷な組織になど入りたくない。
何より探偵社を敵としたくない。
「異能者も探偵社も悪用させない。
絶対破壊させてやる」
赤黒い珠を呼び出して檻に光線を放った。
だがやはり壊すことは出来ない。
「止めなよ。体力の無駄になるよ」
キッと睨んで何度も光線を放ち続けた。
「異能・大悟徹底」
探偵社内を百目が取り囲んだ。
「里奈」
ずっと社内にいた真由美が寄ってくる。
「魔姫が出てきたって聞いたんだけど」
「ええそうよ。
だからひよに居場所を探してもらってるのよ」
「でも魔姫は……」
ひよの百目も通用しない。
「だけどそこの周りに異能力は無くなるわ。
その地点を探ればマフィアの拠点も見つかる」
ひよの異能が終わった。
「……分かりました」
「どこ!? ゆかはいるの?」
「あや。そこまではひよにも“視”えないって」
「はい。
やはりアビリティーキラーで途切れてしまいました。けれど場所はわかりましたわ。
行きますか社長」
「勿論よ。さて、潜りにいくわよ」
里奈達はマフィアの拠点へ乗り込んだ。
「紫。まだやるの?」
ひなみはもう何回発動したのかも分からない紫の破壊神を見ていた。
異能は体内にある魔力というものを普段使うがそれにも限度がある。
「もういい加減力も使い果てたでしょう。
それ以上やったら死ぬよ」
「……も、少し……壊して……や…………」
紫はバタリとその場に倒れ込んだ。
「だから言ったじゃない。
頑張りすぎてもその身が朽ちるだけなんだよ……紫」
気を失っている紫の頭を愛おしそうに優しく撫でた。
(紫……何で異能者に。
あんたは“こっち”を知らなくて良かったのに)
「ひなみ!」
自分を呼ぶ声がして向くと茜が地下牢まで降りてきた。
「異能探偵が押しかけてきた。破壊神は」
「力を使い過ぎて気を失っているわ。
それにずっと見張ってたし」
ひなみは倒れ込んでいる紫と光線を当て続けられた格子を交互に見た。
(何十回もやったのにひびも入れられてない)
神の力も使い物にならなければ役にも立たない。
「……ふふ……ふふふ」
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