愛山雄町の酔いどれ酒エッセイ
第9話「麦酒の楽しみ方(新幹線編)」(2015年5月17日投稿)
今回は麦酒――ビール・エール類――の話です。
と言っても、皆さんが期待されているようなクラフトビールの話ではなく、私のささやかな楽しみのお話です。
仕事柄、東京への出張が頻繁にあります。
以前は月の半分ほど東京に出張していたことがありましたが、ここ数ヶ月は落ち着いており、月に3~4回、日帰り出張がある程度です。
出張の案件にもよりますが、だいたい午後七時半くらいに終わり、その足で家に帰ることになります。出張先が都心――虎ノ門とか霞が関付近とかお役所系の集まっている場所――なので、東京駅まではそれほど遠くありません。
ですが、私の住んでいる神戸に帰ろうとすると、直通では午後八時五十分の新幹線が最終となります。大体3時間弱で神戸に着くのですが、家に帰ると日付が変わる直前。家に帰ったら、シャワーを浴びて速攻で寝るしかありません。翌日は六時に起きて出勤ですから。
そこで、新幹線の旅にささやかな楽しみを見付けることにしたのです。
午後七時半くらいに仕事が終わり、そのまま東京駅に向かうと、大体午後八時になります。東京駅の“エキナカ”で駅弁を買ってもいいのですが、私の場合、八重洲の大丸東京店で弁当を買うことが多いです。
なぜなら、この時間になると2~3割引で売っているので、いつもは買えない豪華なお弁当――1500円~2000円のもの――が比較的リーズナブルにゲットできるからです。
もちろん、私、愛山にはお酒が必要です。
時間があれば、駅の地下1階にあるハセガワ酒店で試飲をしながら日本酒を買ってもいいのですが、そんな時間があった試しはありませんから、大抵、麦酒を買うことにしています。
大丸で弁当を購入し、予約してある新幹線のチケットを発券すると、出発の5分前くらいになります。
そのまま、東海道新幹線の待合室にある売店で生ビール――スーパードライ520円――を買い、ホームへダッシュ。
16番ホームにあるキヨスク――7号車付近――で軽井沢の“よなよなエール”とエチゴビールの“レッドエール”か銀河高原の“ペールエール”を買い、そのまま新幹線に乗車。
ちなみに出発まで15分くらいある時は、大丸の酒屋でビール系を買い、待合室に向かうこともあります。大丸でのお気に入りは、スコットランドのブリュードッグのアメリカンペールエールである“Dead Pony Club”か、“Punk IPA”です。
生ビールを右手に、左手にはちょっぴり豪華な弁当。その状態で席に着くと、ピッタリ出発時間。
帰りの席は必ず3列シートの通路側――C席――。
まずは隣に人がいるかを確認。人がいれば、安心してお弁当を開けられますが、いないと品川から乗ってくることが多いので、お弁当は7分間お預けです。
東京駅で弁当を開けられないときは、品川駅までスーパードライをちびちび飲みながら――7分もありますから、いつも品川に着く頃には半分以上無くなっていますが――豪華な弁当を食べ始めます。
新横浜を越えた辺りでスーパードライが無くなり、次の麦酒に。ここで、冷えていてもおいしい銀河高原のペールエールか、ブリュードッグのDead Ponyを開けます。
このとき役に立つのが、スーパードライが入っていたプラスチックコップ。これが350ミリリットル缶にぴったりなのです。
弁当を食べながら、のんびりときれいな琥珀色のエールを注いでいきます。本当なら、味が移らないようにすすぎたいのですが、新幹線の中ではそれも難しい――手洗いの水は飲用不可――ので、我慢します。
最初は少し勢いを付けて。
泡が3cmほど上がったところで10秒ほど待ち、今度は慎重に注いでいきます。
下7割が琥珀色の美しい液体、上3割が真っ白できめ細やかな泡。
こんな感じにきれいな泡が立つと、なぜか幸せな気分に。
小田原に差し掛かった辺りで乗車から30分ほど。
弁当を食べ終え、二杯目のエールが無くなった頃に、軽井沢ビールの“よなよなエール”の登場です。
スーパードライのプラスチックコップに再びエールを注いでいきます。
この時大事なのは温度を確認すること。
キヨスクではエールもビールもお構いなしにキリキリに冷やしていますから、冬場だとまだ少し冷た過ぎるくらい。逆に夏場は温くなりすぎるので、ハンカチに包み、買った時のレジ袋に入れてきっちりと口を縛ります。そうしておけば、ちょうどいい温度――12~13℃くらい――になっているのです。
音楽を聞きながら、やや濃い琥珀色の液体を眺めつつ、ゆっくりと喉を潤していきます。
フルーティな味と香り。そして、しっかりとしたコク。
喉を通った後の香りも余韻が長く……本当に至福の時間。
350ml缶を30分ほど掛けて飲んでいると、静岡か掛川辺りで飲み切り。
それから先は睡魔とともに西へ。
もちろん、かばんの肩紐はしっかりと持ったまま。
新大阪で出来る人の流れで目覚め、我が家へ……。
ちなみに、新幹線の中で楽しそうにプラスチックコップにビールを注いでいる人を見たことがありません。もし、新幹線の中で、にやけながら麦酒を注いでいるサラリーマンがいたら、それはきっと愛山です。その時はとても真剣に楽しんでいますので、見えて見ぬ振りをしてください。
折角ですので、先日飲んだプレミアム系のビールの感想などです。
コンビニで売っている大手メーカーの瓶プレミアムビール四種の飲み比べの話です。
飲み比べたのは、サントリープレミアムモルツの“醸造家の夢――Master’s Dream――”と、キリンのGrand KIRINシリーズのグランドキリン、ビタースィート、ジ・アロマ。
醸造家の夢はプレモルとは思えないほど、しっかりとした苦みがあり、何となく懐かしい感じ、昔のキリン・ラガーをすっきりと飲みやすくしたような感じです。通常のプレモルはキレがなく、余韻がしつこい感じがして、あまり飲まないのですが、これならリピートしたいと思えるほど。
グランドキリンはバランスがいい。重厚さとキレ、後味のバランスが絶妙でとてもおいしいビール。ただ、醸造家の夢と飲み比べた場合、どっちがキリンだ?と悩むくらい特徴がない感じです。
ビタースィートは濃醇で残り香かかなり後を引くビールでした。食事に合うかと言われると微妙ですが、10℃前後の温度でじっくり飲むにはおいしいと思います。
ジ・アロマはその名の通り、ホップの香りが抜群で、苦みよりほのかな甘さとすっきりとしたキレが特徴で、今回飲んだ4本の中では一番、私の好みに合っていました。
まあ、これは私の個人的な感想なので、あまりあてにはなりませんが(笑)。
ちなみに普段飲むのは、アメリカのブルックリン・ラガー。
ホップの香りが強く、暑い日にキリキリに冷やしてゴクゴク飲むにはちょうどいい感じです。
次回は第二回に続き、ゴールデンウィークに目白の酒屋に行ったお話などを。
と言っても、皆さんが期待されているようなクラフトビールの話ではなく、私のささやかな楽しみのお話です。
仕事柄、東京への出張が頻繁にあります。
以前は月の半分ほど東京に出張していたことがありましたが、ここ数ヶ月は落ち着いており、月に3~4回、日帰り出張がある程度です。
出張の案件にもよりますが、だいたい午後七時半くらいに終わり、その足で家に帰ることになります。出張先が都心――虎ノ門とか霞が関付近とかお役所系の集まっている場所――なので、東京駅まではそれほど遠くありません。
ですが、私の住んでいる神戸に帰ろうとすると、直通では午後八時五十分の新幹線が最終となります。大体3時間弱で神戸に着くのですが、家に帰ると日付が変わる直前。家に帰ったら、シャワーを浴びて速攻で寝るしかありません。翌日は六時に起きて出勤ですから。
そこで、新幹線の旅にささやかな楽しみを見付けることにしたのです。
午後七時半くらいに仕事が終わり、そのまま東京駅に向かうと、大体午後八時になります。東京駅の“エキナカ”で駅弁を買ってもいいのですが、私の場合、八重洲の大丸東京店で弁当を買うことが多いです。
なぜなら、この時間になると2~3割引で売っているので、いつもは買えない豪華なお弁当――1500円~2000円のもの――が比較的リーズナブルにゲットできるからです。
もちろん、私、愛山にはお酒が必要です。
時間があれば、駅の地下1階にあるハセガワ酒店で試飲をしながら日本酒を買ってもいいのですが、そんな時間があった試しはありませんから、大抵、麦酒を買うことにしています。
大丸で弁当を購入し、予約してある新幹線のチケットを発券すると、出発の5分前くらいになります。
そのまま、東海道新幹線の待合室にある売店で生ビール――スーパードライ520円――を買い、ホームへダッシュ。
16番ホームにあるキヨスク――7号車付近――で軽井沢の“よなよなエール”とエチゴビールの“レッドエール”か銀河高原の“ペールエール”を買い、そのまま新幹線に乗車。
ちなみに出発まで15分くらいある時は、大丸の酒屋でビール系を買い、待合室に向かうこともあります。大丸でのお気に入りは、スコットランドのブリュードッグのアメリカンペールエールである“Dead Pony Club”か、“Punk IPA”です。
生ビールを右手に、左手にはちょっぴり豪華な弁当。その状態で席に着くと、ピッタリ出発時間。
帰りの席は必ず3列シートの通路側――C席――。
まずは隣に人がいるかを確認。人がいれば、安心してお弁当を開けられますが、いないと品川から乗ってくることが多いので、お弁当は7分間お預けです。
東京駅で弁当を開けられないときは、品川駅までスーパードライをちびちび飲みながら――7分もありますから、いつも品川に着く頃には半分以上無くなっていますが――豪華な弁当を食べ始めます。
新横浜を越えた辺りでスーパードライが無くなり、次の麦酒に。ここで、冷えていてもおいしい銀河高原のペールエールか、ブリュードッグのDead Ponyを開けます。
このとき役に立つのが、スーパードライが入っていたプラスチックコップ。これが350ミリリットル缶にぴったりなのです。
弁当を食べながら、のんびりときれいな琥珀色のエールを注いでいきます。本当なら、味が移らないようにすすぎたいのですが、新幹線の中ではそれも難しい――手洗いの水は飲用不可――ので、我慢します。
最初は少し勢いを付けて。
泡が3cmほど上がったところで10秒ほど待ち、今度は慎重に注いでいきます。
下7割が琥珀色の美しい液体、上3割が真っ白できめ細やかな泡。
こんな感じにきれいな泡が立つと、なぜか幸せな気分に。
小田原に差し掛かった辺りで乗車から30分ほど。
弁当を食べ終え、二杯目のエールが無くなった頃に、軽井沢ビールの“よなよなエール”の登場です。
スーパードライのプラスチックコップに再びエールを注いでいきます。
この時大事なのは温度を確認すること。
キヨスクではエールもビールもお構いなしにキリキリに冷やしていますから、冬場だとまだ少し冷た過ぎるくらい。逆に夏場は温くなりすぎるので、ハンカチに包み、買った時のレジ袋に入れてきっちりと口を縛ります。そうしておけば、ちょうどいい温度――12~13℃くらい――になっているのです。
音楽を聞きながら、やや濃い琥珀色の液体を眺めつつ、ゆっくりと喉を潤していきます。
フルーティな味と香り。そして、しっかりとしたコク。
喉を通った後の香りも余韻が長く……本当に至福の時間。
350ml缶を30分ほど掛けて飲んでいると、静岡か掛川辺りで飲み切り。
それから先は睡魔とともに西へ。
もちろん、かばんの肩紐はしっかりと持ったまま。
新大阪で出来る人の流れで目覚め、我が家へ……。
ちなみに、新幹線の中で楽しそうにプラスチックコップにビールを注いでいる人を見たことがありません。もし、新幹線の中で、にやけながら麦酒を注いでいるサラリーマンがいたら、それはきっと愛山です。その時はとても真剣に楽しんでいますので、見えて見ぬ振りをしてください。
折角ですので、先日飲んだプレミアム系のビールの感想などです。
コンビニで売っている大手メーカーの瓶プレミアムビール四種の飲み比べの話です。
飲み比べたのは、サントリープレミアムモルツの“醸造家の夢――Master’s Dream――”と、キリンのGrand KIRINシリーズのグランドキリン、ビタースィート、ジ・アロマ。
醸造家の夢はプレモルとは思えないほど、しっかりとした苦みがあり、何となく懐かしい感じ、昔のキリン・ラガーをすっきりと飲みやすくしたような感じです。通常のプレモルはキレがなく、余韻がしつこい感じがして、あまり飲まないのですが、これならリピートしたいと思えるほど。
グランドキリンはバランスがいい。重厚さとキレ、後味のバランスが絶妙でとてもおいしいビール。ただ、醸造家の夢と飲み比べた場合、どっちがキリンだ?と悩むくらい特徴がない感じです。
ビタースィートは濃醇で残り香かかなり後を引くビールでした。食事に合うかと言われると微妙ですが、10℃前後の温度でじっくり飲むにはおいしいと思います。
ジ・アロマはその名の通り、ホップの香りが抜群で、苦みよりほのかな甘さとすっきりとしたキレが特徴で、今回飲んだ4本の中では一番、私の好みに合っていました。
まあ、これは私の個人的な感想なので、あまりあてにはなりませんが(笑)。
ちなみに普段飲むのは、アメリカのブルックリン・ラガー。
ホップの香りが強く、暑い日にキリキリに冷やしてゴクゴク飲むにはちょうどいい感じです。
次回は第二回に続き、ゴールデンウィークに目白の酒屋に行ったお話などを。
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