東方狐著聞集

稜さん@なろう)

八十四尾 狐と隙間 

 久しぶりに我が家に帰ってきた気がする。はぁ……今日は濃い一日だったな。
あ……朝食冷め切ってるし……はぁ、それにさっきから視線が気になる。

「なぁ? 紫、みているんだろ?」
 私の声が狭い部屋に響く。 
すると、どこからともなくスゥーとリボンが現れ、私の目の前には首だけの紫がいた。

「あら? 何か用かしら?」
「その現れ方は……やめたほうがいいぞ? 気色悪い」
 紫はガーンと聞こえそうなほど落ち込むと咳ばらいを一つして再度
「それで、何か用かしら」
「用というより確認だ。それとさっきのことは無かったことにするなよ」
「ふぅん。いいわよ」
 どうやらなかったことにして進めるようだ。

「まぁいい。それで確認のこととだがまず一つ。なぜ、私の巫女にしか使えない【夢想封印】を博麗の巫女の霊夢が使える? あの技は命と引き換えに発動する技だ」
 あとから、調べて判明したことだが【無双封印】と【夢想結界】を一緒に使うことですべてのものを封印する技【夢想封印】を発動できるようだ。しかし、この技には大きな代償を払わなければ】ならない

「それにある二つの技を使えないと発動できないはずだ。それ技も私以外この世で使えるものはもういないはずだ」
 私が喋りきった後に紫が口を開いた。

「その事についてなんだけど貴女に伝えるのを忘れていたわ……博麗の巫女は、いえ、霊夢はあなたの神社の巫女でもあるのよ」
「どういうことだ?」
「霊夢は本来、あなたの神社の巫女を継ぐはずだったのよ」
「意味が分からない。なんで霊夢が?」
「まだわからないの? 霊夢はあなたの食べた巫女の娘なのよ?」
「は? 何を言っている? それにどうしてそのことを知っている?」
「娘といっても血はつながってないわよ」

 なんで紫があの日の出来事を詳しく知っている? もしかして紫の嘘か?

「だが、あの日は誰もいなかった筈だ」
「その日、霊夢は裏の山で遊んでいた。そして帰ってきたときあなたと巫女が戦っていた。 霊夢に気づいたあなたは霊夢を先に殺そうとしたのを巫女が庇った、その時の傷が致命傷になった。死ぬ前に巫女は【夢想封印】で命と引き換えに霊夢の記憶を封印してあなた幽々子にかけた身代わりの術の負荷を減らしたのよ」
「霊夢の記憶を封印しただと? だが記憶の失った霊夢があの技を」
「記憶がなくても体にそれまでの修行の成果が染みついているのよ。それに記憶がなくても技は使えるわ、私が教えてあげたから」
 すごいでしょう。と言わんばかりにドヤ顔を決められ殴りたくなったが無理やり抑え込んだ。

「なぜ、お前が教えることができた?」
「簡単なことよ、私の能力で再現したのよ」
 確かに紫の能力ならあの二つの技を再現できてもおかしくない。しかし
「教えた技は【夢想封印】だけなのか?」
「そうよ」
「だが、あの技は命と引き換えに!」
「それは、大丈夫よ。それと貴女、いつまでも巫女のことを後悔しているせいで彼女が渦者まがいものに魂を奪われることになったのよ、彼女のことを後悔しないで感謝もしなさい。もし負荷を減らしていなかったら妖力と霊力の暴走で死んでいたわよ」
「だが、幻想郷で暴走したのは」
「あれは、幽々子にかけた術が消えた反動よ」
 これで満足かしらと紫はどこからか出したお茶を飲みながら聞いてきたが私には一つの疑問が浮かんできた。

「なんで、この話に詳しいんだ? 霊夢に聞けるわけないか。まさか、お前……いやなんでもない」
「記憶にはあるわけないと思うけど最後に巫女があなたに食べてと頼んできたのよ」


「は?」
「そして、今後、貴女の神社の力と博麗の巫女の力を持っているのは霊夢だけよ」

 一気にしゃべり終えると紫は「じゃあね」と言い残して消えた。

「なんか、いろいろごまかされた気がする……巫女、いや○○のおかげで留めた命」
 なぜ、○○は食べてくれと頼んだのか。そしてなぜ紫は……

「○○の魂を食らった渦に聞くしかないのか?」


つづく

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