東方狐著聞集

稜さん@なろう)

二十四尾 狐と妖怪寺

 寅丸星に案内され本堂に案内された私は出されたお茶を飲んでいた。

「良い茶葉を使っているな」

「わかりますか? 秘伝の茶葉なんですよ」

 久しぶりの来客なのか嬉しそうに笑っている寅丸を見て私も笑ってしまった。

「――? どうなされましたか」

「なんでもないよ。それより話を聞かせてもらってもいいだろうか?」

「はい、わかりました」



  そう言って彼女は語り始めた。




 ◇

「そういうことがあったのか」

 彼女の話をまとめると。この寺、命蓮寺の僧、ひじり白蓮びゃくれん
つい先日ある人間たちから封印されてしまい。聖を助けようとした仲間たちも一緒に封印されたらしい。 なぜ寅丸が封印されなかったかと言うと毘沙門天の代理だからだという。そして今、この寺にいるのは彼女とその部下だけらしい。


「それでなぜ聖とやらは人間に封印されたんだ?」

「それは多分、聖が妖怪を匿っていたからでしょう。そのせいで……聖は」

「そうだったのか」

「はい、その時、私は何もできずにただ見ているだけでした。私には聖に合わせる顔もありませんし、毘沙門天代理失格ですね……はは」

「悔しかったんだな」

「――! 悔しいですよ‼ 聖を、みんなを目の前にいたにもかかわらず助けれなかった! 
なのに聖は! 聖は……笑顔で封印されたんですよ!? 『私は大丈夫です』と言って。あの時、私が聖たちを人間から助けれたらっ!」

  私は無言で泣きく崩れた寅丸を抱きかかえながら背中をさすっていた。
いつの間にか寅丸は小さく寝息を立てて眠ってしまった。


「……人間は自分らの思想とは異なるものを排除しようとする生き物だろうか……」

 私は器用に尻尾を使って寅丸を抱きかかえ来る途中に見つけた彼女の寝室らしき場所に向かった。
部屋につくと私は布団を引いてそこに彼女を下ろした。

「どれ、起きるまで待っているか……」


 それから寅丸が起きたのは一時間たった後だった。


「お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありませんでした。それに部屋まで運んでもらちゃって」

「いや気にするな。話を聞かせてもらったお礼に運んだだけだよ」

 心なしか寅丸の顔は少し晴れやかになってる。貯めこんでいたものを吐き出せたからだろうか。

「私はそろそろ出るよ。あまり貯め込みすぎないようにな。それとお前がここを守っていくんだ、聖やほかの封印された仲間のために」

「――っはい! いつか聖や皆が戻ってきたときのために私がこの寺を守ります!」








――それじゃあ私はいくよ。達者でな

――はい、良い旅路を

 そんな短い言葉を交わしてから私はまた旅に戻った。



つづく



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