東方狐著聞集

稜さん@なろう)

十五尾 狐の姉妹とひまわり


 
 朝日が昇っているな……おかしいな……帰るときはまだ月が頭の上にあったはずなのにな? 
「朝だな……」
「そうですね。ところで、お姉ちゃん」
「ん、なんだ?」
「転移したら朝になってなかったんじゃないかな?」
 あ、完全に転移札のことを忘れていた……誤魔化しちゃお。
「て、転移札? し、しらないなー」
「ふーん、私もう寝るね。お休み」
「お、おやすみ」
 よかった、ばれてないみたいだ……寝るか。

 トントントンと戸をたたく音が部屋に伝わる。
「うぅむ。誰だこんな早朝に訪ねてくる馬鹿者は」
「あら、馬鹿で悪かったわね」
 はっ!? いつの間に中に!?
「って、うぉあ!?」
「あら、人の顔を見るなり叫ぶなんて」
 く、首が浮いている!? しかも見たことある奴の!?

「って、紫か。驚かせるなよ、あとお前、人じゃないだろ」
「言葉の綾って奴よ。それで例の件どうなってる?」
「あれか、危害はなさそうだ」
 危害はな。気になると言えば……一応報告するべきか。

「ただ一つだけ気になることがある」
「気になること?」
「あぁ、あいつから微かにだが妖力の匂いがする」
「どういうことかしら?」
「わからん。まぁ、調べてはみるさ」
「そう、そろそろ帰るわね」
 うぅ、そろそろやば……い
「あぁ、今……度は、昼に……きて……」
 意識が……遠のいていく……
「あらあら、こんなとこで寝ちゃうなんて。おやすみなさい、ラグナ」

  昼

「ん、寝すぎた……」
 紫が帰ったあと自力で寝室に戻ったのか? 少し体がだるいな。霊力の使い過ぎか? っと誰かが走ってきてるな誰だ?

「お姉ちゃん。晴明さんが来たよ」
 雪夢だったか、晴明が来たねぇ。まぁ、依頼についてだろう。」
「準備したら行くからまって」
「はい」

 数分後

 お茶を啜ってまるで爺のようだな。
「何の用だ?」
「おう、やっと来たか。いやな、大黒猫はどうなったか聞きたくてよぉ」
 やっぱりそれを聞きに来たのか。
「妖力とよくわからない人格を封印して下に落とした」
「下に落としたのなら安心だな。ところでよくわからない人格とな?」
「あぁ、あれは元々火車と言う妖怪だったんだろうな、何かが原因で化け猫という人格ができてそれが暴れていたようだ」
「ふん、なるほどな」
 そういえばこいつの仕事はどうなったんだ? 聞いてみたいが話してくれるだろうか?

「俺の仕事の話はしねぇぜ?」
「ッチ……なら次からは私も話さない」
「そうかい。んで報酬の金はどうする」
「いつものようにしておいてくれ」
「分かった、あと今日は依頼がないから好きにしていいぞ」
 よし、寝るか。
「あぁ、わかった。だからさっさと帰れ」
「へいへい、あ、明日からかぐや姫からの依頼があるから、じゃあな」
 あ、あの野郎、なんか重要そうなこといって消えやがった!?

「お姉ちゃん! 今日は休みな花畑に行こうよ!」
「え? いまから寝るけど」
「はぁ? 今、なんて?」
「そうだな。花畑に行くか!」
「うん!」


 ~太陽の畑~
 脅され、お願いされてやってきた、太陽の畑。ここは大妖怪、風見幽香が育てた四季の花が咲いている場所だ。以前依頼で来たことがある。

「しかし花がきれいだ……」
「そうだね」
 おっと、後ろから足音が、これの音は……

「あら誰かと思えば貴女達ね」
「幽香か、おまえの咲かせた花に見とれていたんだよ」
 私に後ろから傘を突き付けている彼女がこの畑の主こと風見幽香だ。花に危害を与えなければ基本何もしてこないが花を傷つけると地獄の閻魔より遅しい目にあわされる。

「あら、嬉しいわ」
「あぁ、だから傘で頭をぐりぐりしないでくれ」
「幽香さんの花はいつ見てもきれいですね」
「ありがとう、雪夢。後で一本詰んであげる」
「えぇ!? 本当ですか! ありがとうございます!」
「素直な子は好きよ。ねぇ? ラグナ」
「そ、そうだなぁ」
 やっぱり、私は幽香にはかなわないようだ。以前彼女に「あなたほど弄りがいのある子はいないわ」って言われたくらいだからな……

「二人とも家に来なさい。料理を用意しているから」
「「本当!? すぐに行く!(行きます)」」

「あら、息ぴったり。まるでワンちゃんね」


幽香の手作り料理はとても美味しかったですby狐姉妹


つづく

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品