僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
第17節10部ー崩れる建前と本当の気持ちー
……。
お母さんが教えてくれた。千草は拾われてきた子なんだって。私とは血が繋がってないって。
あなたが、千草に惹かれても、それは仕方のないことなんだってことを。お母さんはゆっくりと話してくれたわ。
でも、このことを千草は知らない。だからこの子にとって私はあくまでもお姉ちゃん。
「はい、綺麗になったわね。じゃあ温泉に浸かりましょ」
「ありがとー。入ろ入ろ、体が冷えちゃうよ」
もうお互いタオルも巻かず、真っ裸。純粋な千草は私の体を意識しているわけじゃなさそうだけど、私は駄目ね。千草を意識してしまって、顔は赤いわ心臓は高鳴るわで興奮してるの側から見たら丸わかり。
自分からお風呂に誘っておいてなんだって話なんだけどね。
「ふぅー、きもちーね」
「そうね。私、久々に入ったわ。ここの温泉。相変わらず綺麗よね……ここだけ時間が進んでないみたい」
ここは昔からずっときれいに保たれてるの。少しでも破損や、汚れが目立ってきた時はすぐに修繕されるから。銀狼様が浸かる神聖な温泉だから、当たり前よね。
まあ、その銀狼様はウチにいるわけなんだけど……。
「千草、今日は楽しかった?」
「楽しかったけど、大変だったよ。すごい山登りしたし、重いもの持ったし……。すごい大きい蛇も見たし。稲荷霊山っていうところでね。ものすごい神様がお酒をもらいに並ぶんだよ。そりゃもうすごいのなんのって!」
「うわあ、あんたの話ひとつも鮮明に想像できないんだけど?」
「そりゃもう想像できるような光景じゃなかったからね。すごいよ、もう何でもかんでも見たことない景色ばっかり!」
ばしゃっと温泉を両手で持ち上げて、凄さをボディランゲージで表そうとしてるけど……可愛さと勢いは伝わったわ。
銀露ちゃんが来てから、千草はいろんなものを見ているみたいね。それがいいことか悪いことなのかはわからないけれど、どんどん私から離れていってしまうみたいで嫌……嫌なのよ。
昔はいつも私のそばにいて離れなかった千草が、今はいろんなところに行って、いろんなものを見て、私の知らないことを話す。
それはいいことなんだけど、私は嫌なの。理屈じゃないのよ……。
【いよねーね、どこいくの……? ぼくもいっしょにいく……】
【いよねーね、いっしょにねてもいい……?】
つい、隣の千草と昔の千草を重ねてしまう。……やだ、なんで……。
「伊代姉……? なんで泣いてるの……?」
「えっ、なに? 泣いてないわよ、あはは。湯を被っちゃっただけ!」
慌てて、両手でいっぱいの温泉を汲み取って自分の顔にかけた。でも、鼻声は誤魔化せなかったみたい……。
「伊代姉、僕すぐわかるんだよ……?」
「……っ泣いてないから! 泣いてないの! もう、近寄らないでっ……。……!?」
頭の中が、真っ白になった。千草の腕が、私を包むように回されて、引き寄せられて……暖かくて薄い千草の胸に抱かれてた。
「ごめんね、伊代姉……。伊代姉が嫌いになったわけじゃないんだよ? 昔と同じで、伊代姉の事は大好きだよ」
「……うそ。そんなことない」
ダメ。ダメよ。私。何を言ってるの。いつだって、千草が誇りに思える姉でいようって、決めたじゃない。そんな弱いところを見せちゃダメ……なのに。
お母さんが教えてくれた。千草は拾われてきた子なんだって。私とは血が繋がってないって。
あなたが、千草に惹かれても、それは仕方のないことなんだってことを。お母さんはゆっくりと話してくれたわ。
でも、このことを千草は知らない。だからこの子にとって私はあくまでもお姉ちゃん。
「はい、綺麗になったわね。じゃあ温泉に浸かりましょ」
「ありがとー。入ろ入ろ、体が冷えちゃうよ」
もうお互いタオルも巻かず、真っ裸。純粋な千草は私の体を意識しているわけじゃなさそうだけど、私は駄目ね。千草を意識してしまって、顔は赤いわ心臓は高鳴るわで興奮してるの側から見たら丸わかり。
自分からお風呂に誘っておいてなんだって話なんだけどね。
「ふぅー、きもちーね」
「そうね。私、久々に入ったわ。ここの温泉。相変わらず綺麗よね……ここだけ時間が進んでないみたい」
ここは昔からずっときれいに保たれてるの。少しでも破損や、汚れが目立ってきた時はすぐに修繕されるから。銀狼様が浸かる神聖な温泉だから、当たり前よね。
まあ、その銀狼様はウチにいるわけなんだけど……。
「千草、今日は楽しかった?」
「楽しかったけど、大変だったよ。すごい山登りしたし、重いもの持ったし……。すごい大きい蛇も見たし。稲荷霊山っていうところでね。ものすごい神様がお酒をもらいに並ぶんだよ。そりゃもうすごいのなんのって!」
「うわあ、あんたの話ひとつも鮮明に想像できないんだけど?」
「そりゃもう想像できるような光景じゃなかったからね。すごいよ、もう何でもかんでも見たことない景色ばっかり!」
ばしゃっと温泉を両手で持ち上げて、凄さをボディランゲージで表そうとしてるけど……可愛さと勢いは伝わったわ。
銀露ちゃんが来てから、千草はいろんなものを見ているみたいね。それがいいことか悪いことなのかはわからないけれど、どんどん私から離れていってしまうみたいで嫌……嫌なのよ。
昔はいつも私のそばにいて離れなかった千草が、今はいろんなところに行って、いろんなものを見て、私の知らないことを話す。
それはいいことなんだけど、私は嫌なの。理屈じゃないのよ……。
【いよねーね、どこいくの……? ぼくもいっしょにいく……】
【いよねーね、いっしょにねてもいい……?】
つい、隣の千草と昔の千草を重ねてしまう。……やだ、なんで……。
「伊代姉……? なんで泣いてるの……?」
「えっ、なに? 泣いてないわよ、あはは。湯を被っちゃっただけ!」
慌てて、両手でいっぱいの温泉を汲み取って自分の顔にかけた。でも、鼻声は誤魔化せなかったみたい……。
「伊代姉、僕すぐわかるんだよ……?」
「……っ泣いてないから! 泣いてないの! もう、近寄らないでっ……。……!?」
頭の中が、真っ白になった。千草の腕が、私を包むように回されて、引き寄せられて……暖かくて薄い千草の胸に抱かれてた。
「ごめんね、伊代姉……。伊代姉が嫌いになったわけじゃないんだよ? 昔と同じで、伊代姉の事は大好きだよ」
「……うそ。そんなことない」
ダメ。ダメよ。私。何を言ってるの。いつだって、千草が誇りに思える姉でいようって、決めたじゃない。そんな弱いところを見せちゃダメ……なのに。
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