僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
第17節2部ー子鞠の尻尾ー
と、僕は長々と言ってはみたものの。子鞠にとっては難しい話だったみたいだ。ようかんを両手でつまんで、端から少しずつ食べつつ首を小さく傾げてしまっていた。
そりゃそうだよね。子鞠はまだまだ幼いし、僕はわかるようになってきていても子鞠にとってはわからないことなわけなんだし。
「あまま……」
「甘くておいしいよね。羊羹って言うんだよ」
「よーかん」
「そう。ようかん」
「あにさま、こまりよーかんすき……」
「子鞠の口にも合うんだね。ようかん。狼って肉食のイメージがあるからなあ。人の姿だと、食べ物の好みも変わるとか? うーん、不思議だ」
僕の膝の上でちょこんと座っている子鞠……の、尻尾がもふりもふりと揺れている。とってももふもふ抱きしめたい、大きくて立派な尻尾。触ろうとして、ふと止めた。尻尾は軽々しく触れるものじゃないって銀露が言ってたんだよなあ。
でも、触っちゃいけない理由を教えてもらってないから、イマイチその重要性が理解できていないというか……。子鞠のなら触っちゃってもいいんじゃないかと、そんな思いが一度は止まった僕の手を進めた。
 もう少しで尻尾に触れる……と、いうところで揺れている子鞠の尻尾が一瞬だけ挙動が変わった。気付かれたのかな……でも本当に一瞬だったし、これくらいの挙動の変化なんて頻繁に起こるし。
よしよし、今のうちにこっそりもふろう。と、僕は子鞠の尻尾を包むような形で手を持って行って……。
「これ、尾に気安く触れてはならんといったじゃろ」
「うわ、銀露! いつの間に……」
もふろうとしていた手を、後ろから銀露に絡め取られた。振り向いて見た銀露の頰は、お酒を飲んでいたからほんのりと赤い。僕の腕を掴んでいる手にも熱がこもってる。
「まったく……見境がないとはこのことじゃ。そんなに触れたいものかの?」
「もふもふしたいんだけど……」
「欲に正直じゃの。子鞠、ぬしも千草が触れようとしていることに気づいておったろう」
「あにさまいいひと。あにさまなら、もふもふいい……」
子鞠は相変わらずようかんを食べながら、その尻尾を僕の体に預けるようにしてしなだれさせてきた。
「まぁ、仕方ないのう。子鞠はまだ幼い。そういった意味を理解させようとするのも酷じゃな」
「うわ、すごい柔らかい! あったかい! もふもふ!」
「ぬしも遠慮がないのう!」
僕は初めて、もはや抱き枕じゃないかと思うほどの尻尾に触ってみた。ものすごく柔らかい。尻尾の毛に指が沈み込んで、とても暖かいんだ。毛並みに沿ってゆっくりと撫でてあげると……。
「んぅ……」
子鞠はなんだか艶っぽい声を出して、お耳と尻尾をふるふると細かく揺らした。どうにも、くすぐったいみたいなんだ。
あんまり刺激を与えないようにゆっくり撫でてあげるのがいいのかな。
「あにさまくすぐった……」
「あ、ごめんね、子鞠」
ひとしきり尻尾を堪能した後、隣に座ってきた銀露とお茶を飲むことに。子鞠はなぜか山神様に呼ばれてお酒配りの場所へ行ってしまったんだけど……。
「相変わらずここからの眺めは無駄に良いのう。昔と一つも変わっておらん」
「そんなに昔から、この大行列行事があるの?」
「うむ。神酒を呑むにはここで並ばなければならんからの。これほど清く力のある酒はそうそう手に入るものではないのじゃぞ」
そりゃそうだよね。子鞠はまだまだ幼いし、僕はわかるようになってきていても子鞠にとってはわからないことなわけなんだし。
「あまま……」
「甘くておいしいよね。羊羹って言うんだよ」
「よーかん」
「そう。ようかん」
「あにさま、こまりよーかんすき……」
「子鞠の口にも合うんだね。ようかん。狼って肉食のイメージがあるからなあ。人の姿だと、食べ物の好みも変わるとか? うーん、不思議だ」
僕の膝の上でちょこんと座っている子鞠……の、尻尾がもふりもふりと揺れている。とってももふもふ抱きしめたい、大きくて立派な尻尾。触ろうとして、ふと止めた。尻尾は軽々しく触れるものじゃないって銀露が言ってたんだよなあ。
でも、触っちゃいけない理由を教えてもらってないから、イマイチその重要性が理解できていないというか……。子鞠のなら触っちゃってもいいんじゃないかと、そんな思いが一度は止まった僕の手を進めた。
 もう少しで尻尾に触れる……と、いうところで揺れている子鞠の尻尾が一瞬だけ挙動が変わった。気付かれたのかな……でも本当に一瞬だったし、これくらいの挙動の変化なんて頻繁に起こるし。
よしよし、今のうちにこっそりもふろう。と、僕は子鞠の尻尾を包むような形で手を持って行って……。
「これ、尾に気安く触れてはならんといったじゃろ」
「うわ、銀露! いつの間に……」
もふろうとしていた手を、後ろから銀露に絡め取られた。振り向いて見た銀露の頰は、お酒を飲んでいたからほんのりと赤い。僕の腕を掴んでいる手にも熱がこもってる。
「まったく……見境がないとはこのことじゃ。そんなに触れたいものかの?」
「もふもふしたいんだけど……」
「欲に正直じゃの。子鞠、ぬしも千草が触れようとしていることに気づいておったろう」
「あにさまいいひと。あにさまなら、もふもふいい……」
子鞠は相変わらずようかんを食べながら、その尻尾を僕の体に預けるようにしてしなだれさせてきた。
「まぁ、仕方ないのう。子鞠はまだ幼い。そういった意味を理解させようとするのも酷じゃな」
「うわ、すごい柔らかい! あったかい! もふもふ!」
「ぬしも遠慮がないのう!」
僕は初めて、もはや抱き枕じゃないかと思うほどの尻尾に触ってみた。ものすごく柔らかい。尻尾の毛に指が沈み込んで、とても暖かいんだ。毛並みに沿ってゆっくりと撫でてあげると……。
「んぅ……」
子鞠はなんだか艶っぽい声を出して、お耳と尻尾をふるふると細かく揺らした。どうにも、くすぐったいみたいなんだ。
あんまり刺激を与えないようにゆっくり撫でてあげるのがいいのかな。
「あにさまくすぐった……」
「あ、ごめんね、子鞠」
ひとしきり尻尾を堪能した後、隣に座ってきた銀露とお茶を飲むことに。子鞠はなぜか山神様に呼ばれてお酒配りの場所へ行ってしまったんだけど……。
「相変わらずここからの眺めは無駄に良いのう。昔と一つも変わっておらん」
「そんなに昔から、この大行列行事があるの?」
「うむ。神酒を呑むにはここで並ばなければならんからの。これほど清く力のある酒はそうそう手に入るものではないのじゃぞ」
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