僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
第16部6部—異変は山道にあり—
「あだだだだだ!! なにするんすかサボり神様!! 」
からころと足早に石畳を踏んで近づいてきた九尾の狐の神様は朱音さんの尖った耳を引っ張って少し離れたところまで連れて行って……。
「いやいや! これ山神様の命令ですって……え? 見当違い? 銀狼様に相談するな? なんでっすか! 今この山に入る神様たちの中で一番頼りになる……え、見返り? 神酒をふんだくられる? そんこと……銀狼様はお優しい方っすよお。ねぇ?」
少し遠くから、ちらりとこっちを見てなにやら同意を求めてきてる朱音さん。
「当たり前じゃ。八百万の神の中で一番優しいと言われておるこの儂が、見返りを求めるわけがなかろ? 精々持ち帰る酒樽が3、4樽増えるだけじゃ」
「ほら!! あだっ!! 貴重な神酒を樽で持ち帰るつもりじゃないかって!?」
大きくて重量のありそうな尻尾の一房で思いっきり顔を叩かれてる……。
ちなみに空っぽの樽は一荷、一駄と数えるから、銀露はお酒で満たされた樽を持ち帰る気満々なんだよね。
とにかくあの狐面の九尾の狐様は、銀露には頼りたくない様子だったんだけど……。
「のう、白面の。手伝ってやるから少々奮発してはくれんかの?」
離れた位置でなんやかんやしていたお狐様と朱音さんのところまで歩いていくと、人に物を頼む態度かというくらい遠慮ない感じで言い寄ってた。
「ん、どうしたの? 子鞠」
そこで、子鞠の様子が変わったのに気づいた僕は少し困惑しながら声をかけたんだ。
銀露が離れたあたりから、ずっと頭のお耳をせわしなく動かして、鼻をすんすんと鳴らし、辺りを見回してる。
何か、近くの環境が変わったんだろうな。
「へんなにおい……」
「へんなにおい?」
子鞠が、ほけっとした可愛らしい表情から一転。口を固く閉じて険しい表情になってから僕をかばうようにして前に出た。
「いかん! 子鞠、下じゃ!!」
「した……」
ぐお、と。僕の体が下から思いっきり持ち上げられた、ように感じた。
持ち上げられて、空高くに放り飛ばされた。
近くにいた子鞠も一緒に。
「うわああああ!!」
「ふああ……!」
空中で体が回転する中、ちらりと見えた眼下の景色。とんでもないものが映ってた。
さっきまで普通に立っていた石畳の道。それが山のように盛り上がってた。
まるで蛇がのたうったように。
そう、僕は道に空へ打ち上げられたんだ。その道は、ずるずると山肌を移動しているようにも見えた。
「ちょっ、これ落ちるんじゃ……」
まだ上昇している中、とんでもない高さにいる自分のこの先を考えてぞっとした。
こんな高さから落ちたらまず助からない……!!
と、思った矢先に横から吹き付けてきた生暖かい、湿った風……。
「あにさまにげて……!!」
「逃げられないよ!!」
その湿った風は、僕たちを狙って横から迫ってきた爬虫類からのものだった。
僕の体を優に超える巨大な“蛇”の頭が大口を開けて迫ってきてたんだ。
空中で身動きできない僕と子鞠は見事にその巨大な口に飲み込まれて——……!!
からころと足早に石畳を踏んで近づいてきた九尾の狐の神様は朱音さんの尖った耳を引っ張って少し離れたところまで連れて行って……。
「いやいや! これ山神様の命令ですって……え? 見当違い? 銀狼様に相談するな? なんでっすか! 今この山に入る神様たちの中で一番頼りになる……え、見返り? 神酒をふんだくられる? そんこと……銀狼様はお優しい方っすよお。ねぇ?」
少し遠くから、ちらりとこっちを見てなにやら同意を求めてきてる朱音さん。
「当たり前じゃ。八百万の神の中で一番優しいと言われておるこの儂が、見返りを求めるわけがなかろ? 精々持ち帰る酒樽が3、4樽増えるだけじゃ」
「ほら!! あだっ!! 貴重な神酒を樽で持ち帰るつもりじゃないかって!?」
大きくて重量のありそうな尻尾の一房で思いっきり顔を叩かれてる……。
ちなみに空っぽの樽は一荷、一駄と数えるから、銀露はお酒で満たされた樽を持ち帰る気満々なんだよね。
とにかくあの狐面の九尾の狐様は、銀露には頼りたくない様子だったんだけど……。
「のう、白面の。手伝ってやるから少々奮発してはくれんかの?」
離れた位置でなんやかんやしていたお狐様と朱音さんのところまで歩いていくと、人に物を頼む態度かというくらい遠慮ない感じで言い寄ってた。
「ん、どうしたの? 子鞠」
そこで、子鞠の様子が変わったのに気づいた僕は少し困惑しながら声をかけたんだ。
銀露が離れたあたりから、ずっと頭のお耳をせわしなく動かして、鼻をすんすんと鳴らし、辺りを見回してる。
何か、近くの環境が変わったんだろうな。
「へんなにおい……」
「へんなにおい?」
子鞠が、ほけっとした可愛らしい表情から一転。口を固く閉じて険しい表情になってから僕をかばうようにして前に出た。
「いかん! 子鞠、下じゃ!!」
「した……」
ぐお、と。僕の体が下から思いっきり持ち上げられた、ように感じた。
持ち上げられて、空高くに放り飛ばされた。
近くにいた子鞠も一緒に。
「うわああああ!!」
「ふああ……!」
空中で体が回転する中、ちらりと見えた眼下の景色。とんでもないものが映ってた。
さっきまで普通に立っていた石畳の道。それが山のように盛り上がってた。
まるで蛇がのたうったように。
そう、僕は道に空へ打ち上げられたんだ。その道は、ずるずると山肌を移動しているようにも見えた。
「ちょっ、これ落ちるんじゃ……」
まだ上昇している中、とんでもない高さにいる自分のこの先を考えてぞっとした。
こんな高さから落ちたらまず助からない……!!
と、思った矢先に横から吹き付けてきた生暖かい、湿った風……。
「あにさまにげて……!!」
「逃げられないよ!!」
その湿った風は、僕たちを狙って横から迫ってきた爬虫類からのものだった。
僕の体を優に超える巨大な“蛇”の頭が大口を開けて迫ってきてたんだ。
空中で身動きできない僕と子鞠は見事にその巨大な口に飲み込まれて——……!!
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