僕と狼姉様の十五夜幻想物語 ー温泉旅館から始まる少し破廉恥な非日常ー
第18節47部ー精気徴収ー
と、結局やかましい朱音さんに銀露が一発殴りを入れてしまい……。
「いったぁい!! 銀狼様痛いっすよぉっ」
「やめんか。千草が困っておるじゃろうが」
「しょーがないじゃないっすかあ。人の子とお話しする機会なんて滅多にないんすからあ」
銀露に殴られた後頭部をさすりながら、朱音さんはぶつぶつ文句を言っている。
“小さい割にものすごい力だ”とかなんとか……。護り火の加護を受けている朱音さんに、まともにダメージを与えられる存在っていうのは神様ですらなかなかいないんだって。
だからこそ、神々の警護者なんて言われているんだろうけど。
「……で、何のご用件っすか? 運びっすか、護りっすか。君のお守りなんてのもウチ大歓迎だぜー」
「え、えっと。銀露? 空にあるであろう楼閣に行きたい、でいいんだよね」
ぽけっとした顔で頭をさすりながらだから、ちょっと不真面目さが見える格好でそう聞いてきた朱音さん。
でも仕事内容さえ聞けばしっかりこなしてくれるみたいだ。
「うむ。上に結界が張られた蛇姫の楼閣がある筈じゃ。そこまで行きたい」
「……うそん、これ蛇姫様絡みっすか」
「そうじゃ」
「か、帰っていいすか」
「わしを敵に回したいのならよいぞ」
「ぜっ……前門の蛇後門の狼……っ」
んん、あかねさんの様子がおかしいぞ。たしか、朱音さんは稲荷霊山の時に……蛇姫様相手じゃどうにもならないとかなんとか言っていたような気がするな。
仮にも神々の警護者という肩書きを持つ朱音さんがそんなことを言うなんてって、ちょっと印象に残ってた言葉ではあるけれど……。
「朱音さん、蛇姫様のこと苦手なんですか?」
「そりゃあねえ。あの方、気に入らない神様にすぐちょっかいかけるし……呪詛やらなんやら、いちいち強い力使ってくるんで何度も手酷くやられてるんだよ」
蛇姫様が絡むと、いつもまともにお仕事できなくなって失敗するからなんて言っちゃうあたり、蛇姫様の力の強さが伺えるな。
「あれの目的はこやつじゃ。そう危害をくわえてはこんじゃろう。うぬとわしにはどうかはわからんが」
「ううう……下手したら稲荷霊山の儲けじゃ割に合わないぜー。君の精気少しでも分けてもらえるならウチ、頑張れちゃうかも」
「僕の精気?」
「うん。君みたいな子の精気はいい火になるんだー。どう?」
銀露からすればふざけるなという話だったらしい。食ってかかろうとした銀露だったけど、それを僕が止めて……。
「精気がどんなものかよくわからないけど、いいですよ。僕にできることがあるならどんどん言ってください」
「おっ、話がわかる子で助かるぅ。んじゃあ、いただきまー……」
「へっ!?」
僕の顔を両手で挟むようにして固定し、朱音さんは唇を近づけてきた。その色っぽい唇が届く前に、銀露が朱音さんの脇腹に見事な回し蹴りを入れてすっ飛ばし……。
「んっ」
代わりに、銀露がつま先立ちになりながら僕の唇を奪ってしまった。
あまりに唐突なことで、銀露の唇の感触を味わうどころじゃなかったのが悔やまれる。
気付いた時にはもう唇は離れていて……目の前に、頬を赤く染めて目を伏せた銀露の姿があった。
なんだか眠気と疲労が……倒れそう。
「ほれ、護り火の。大事な千草の精気じゃ」
「うぐっぅぅぅ……ひ、ひどいっすよ……。乙女の脇腹を思いっきり蹴るなんて……」
「いったぁい!! 銀狼様痛いっすよぉっ」
「やめんか。千草が困っておるじゃろうが」
「しょーがないじゃないっすかあ。人の子とお話しする機会なんて滅多にないんすからあ」
銀露に殴られた後頭部をさすりながら、朱音さんはぶつぶつ文句を言っている。
“小さい割にものすごい力だ”とかなんとか……。護り火の加護を受けている朱音さんに、まともにダメージを与えられる存在っていうのは神様ですらなかなかいないんだって。
だからこそ、神々の警護者なんて言われているんだろうけど。
「……で、何のご用件っすか? 運びっすか、護りっすか。君のお守りなんてのもウチ大歓迎だぜー」
「え、えっと。銀露? 空にあるであろう楼閣に行きたい、でいいんだよね」
ぽけっとした顔で頭をさすりながらだから、ちょっと不真面目さが見える格好でそう聞いてきた朱音さん。
でも仕事内容さえ聞けばしっかりこなしてくれるみたいだ。
「うむ。上に結界が張られた蛇姫の楼閣がある筈じゃ。そこまで行きたい」
「……うそん、これ蛇姫様絡みっすか」
「そうじゃ」
「か、帰っていいすか」
「わしを敵に回したいのならよいぞ」
「ぜっ……前門の蛇後門の狼……っ」
んん、あかねさんの様子がおかしいぞ。たしか、朱音さんは稲荷霊山の時に……蛇姫様相手じゃどうにもならないとかなんとか言っていたような気がするな。
仮にも神々の警護者という肩書きを持つ朱音さんがそんなことを言うなんてって、ちょっと印象に残ってた言葉ではあるけれど……。
「朱音さん、蛇姫様のこと苦手なんですか?」
「そりゃあねえ。あの方、気に入らない神様にすぐちょっかいかけるし……呪詛やらなんやら、いちいち強い力使ってくるんで何度も手酷くやられてるんだよ」
蛇姫様が絡むと、いつもまともにお仕事できなくなって失敗するからなんて言っちゃうあたり、蛇姫様の力の強さが伺えるな。
「あれの目的はこやつじゃ。そう危害をくわえてはこんじゃろう。うぬとわしにはどうかはわからんが」
「ううう……下手したら稲荷霊山の儲けじゃ割に合わないぜー。君の精気少しでも分けてもらえるならウチ、頑張れちゃうかも」
「僕の精気?」
「うん。君みたいな子の精気はいい火になるんだー。どう?」
銀露からすればふざけるなという話だったらしい。食ってかかろうとした銀露だったけど、それを僕が止めて……。
「精気がどんなものかよくわからないけど、いいですよ。僕にできることがあるならどんどん言ってください」
「おっ、話がわかる子で助かるぅ。んじゃあ、いただきまー……」
「へっ!?」
僕の顔を両手で挟むようにして固定し、朱音さんは唇を近づけてきた。その色っぽい唇が届く前に、銀露が朱音さんの脇腹に見事な回し蹴りを入れてすっ飛ばし……。
「んっ」
代わりに、銀露がつま先立ちになりながら僕の唇を奪ってしまった。
あまりに唐突なことで、銀露の唇の感触を味わうどころじゃなかったのが悔やまれる。
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