連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第15話:作戦会議
「戻ったよーっ!」
「ニャーッ」
ガラガラとミズヤは中央塔の最上階にある扉を開くと、そこでは重い空気に満ちながら読書をしながらペンを走らせる2人が居た。
ペラペラとページをめくり、めぼしい情報があればカリカリと書き出す。
暗鬱とした表情で力なくペラリ、またペラリと捲られるのはなんとも酷い光景だった。
奥の方でヘリリアだけはスヤスヤ寝ていたが、それはまた別として、
「……にゃーっ」
「…………」
「…………」
ミズヤの様子に気付かず、ひたすら読み進める2人。
無視されたからか、ほっぺたを膨らませてミズヤは歩き出す。
それは早歩きだったが、両手を挙げて、てってってっという擬音が似合いそうな可愛い歩みだった。
彼はクオンの横に立つと、クオンの事を思いっきり抱きしめる。
「ねこさんっ!」
「わっ!? ……ああ、ミズヤですか。お帰りなさい」
「ただいまなんだよーっ」
ほわほわとした声を出しながら、ミズヤはクオンから離れて両手を伸ばす。
「ほっ」
掛け声と共に体を左に傾けると、左手の裾から白いものの詰まった袋が出てきて机に落ちる。
それは彼が先ほどまで作っていたマシュマロだった。
「もう1つ〜♪」
くるりと身を翻し、同様に右の裾からもマシュマロの入った袋を出した。
「これ食べて頑張ってねっ。今お茶淹れるけど、何飲む?」
「ありがとうございます、ミズヤ。ハーブティーをお願いします」
「俺はダージリンティーを……」
「はーいっ。じゃ、頑張ってねっ!」
そう言ってミズヤは出て行き、別室でお茶作りを始める。
彼が出て言った後、クオンとケイクは顔を合わせて微笑むのだった。
応援してくれる仲間がいる、だから頑張ろうと思えるのだった。
◇
――深夜3時。
塔最上階の4人はまだ起きていて、昼間にグッスリと眠ったヘリリアは起きてられるが、他の3人はうとうとしながら口がぽかんと開いていた。
サラはベッドに丸くなって寝ているものの、クオンもケイクもミズヤもすぐに後を追いそうだ。
「……ミズヤ、ケイク。もう貴方達は寝ても構わないのですよ?」
「クオン様が頑張ってるのに、家臣の私が寝るわけにはいきません」
「僕は2人の夜食とか、飲み物作るから……。ハーブティー要るー?」
「……頂きます。ですが、もう寝て良いのですからね? ほら、ヤーシャ殿は2徹3徹などいつものことですし、私だって徹夜はそこそこ経験していますし、付き合わなくても……」
クオンが2人に催促するも、男の子2人は頷かなかった。
「僕達だって徹夜には慣れてるし、大丈夫だよ〜っ」
「そうです。我々はクオン様の手足、クオン様が寝なければ我々とて寝ませんし、夜番も必要ですから」
「夜番はヘリリアが居ますけどね……。まぁ、それなら任せますよ」
クオンが微笑みながら言葉を返すと、2人も微笑むのだった。
辛い仕事でどんよりした空気だったのに、今では暖かな空気が流れている。
それはミズヤの存在のおかげか、あるいは仲間だからこそ作れる雰囲気なのか……。
「じゃあ、ハーブティー作ってくるね」
「ええ。お願いします」
クオンに頼まれ、ミズヤはハーブティーを作りに外へ出るのだった。
飲み物を飲んで、欲しい情報を書き出して、時間だけが進んでいく。
ケイク、クオンの両者が4冊目の本に突入する頃、外が明るくなり始めるのだった。
「……軽くまとめましょうか」
「そうですね」
ケイクが提案すると、クオンは彼と情報を共有しあい、そこにミズヤとヘリリアも同席した。
各軍の情勢、現在キュールの軍基地の数、兵の数、バスレノス側の情勢、その他商業関連、トメスタス退位の革命後に何が起きるのかを予測した情報を提供しあった。
聞いていたヘリリアは時折頷きつつ、何かを考えるように上を見上げていたが、ミズヤはいつの間にか座ったままスヤスヤと寝ていた。
彼は政治についての関心などまるでないのである。
「ですから、当初の予定通り北軍を予め東に集めておきましょう。北は極寒であり、攻めるはずの東南とは逆ですし」
「クオン様、それを見越して北に逃げられれば苦労するのは我々です。今の時期でさえ吹雪の吹く北ではトメスタスを追えません」
「でも、ここに軍基地があるのですから――」
意見が飛び交い、収拾がつかないまま1時間が過ぎる。
「我々は資金面が厳しいですからね……。今回だって革命が失敗すれば――って、もう朝じゃないですか。ミズヤ、寝てないで朝食をお願いしますよ」
さも当たり前のようにミズヤの肩を揺するクオン。
ミズヤはスゥスゥと寝息を立てるも、ゆっくりと目を開いた。
その様を見て、ケイクは率直に尋ねる。
「……クオン様、寝る気は無いのですか?」
「え、なんでです?」
「……ああ、いえ。何でもございませんよ」
そんな小さなことは気に留めないか――そう悟ったケイクはただ微笑を浮かべ、眠たい体を叩いて気合いを入れるのだった。
戦闘技術に関しては、仕上がっている。
策を練ろう――時間は限られてるのだから。
◇
空は鮮やかなオレンジ色に染まり、夕刻を迎えた。
軍議を終え、それぞれの最高司令官が各軍に指示を与えに向かう中、中央塔に居るクオン達は倒れるように眠りについた。
逆に、軍議中は寝ていたミズヤがみんなを魔法で集めてベッドに運んだ。
軍議の内容は軍議と呼べるものではなく、ただの会議であっただろう。
トメスタスは、後ろを向いたところにこの部隊最速を誇るマナーズがドライブ・イグソーブで刺す。
騒めきを誘ったところでミズヤがミュベスを捕らえる。
しかし、トメスタスは刺されたとしても気絶することはないだろう。
そのため、最高司令官及び【懐刀】、およびクオンが襲撃し、ダウンさせる。
作戦はそれだけで、その後の事を討論する時間の方が長かった。
クオンを女帝にする考えが強かったが、「武力を持って成る女帝など価値はない」と本人が一蹴し、キュール政府が戦争賛成派ならばバスレノスが政治も乗っ取る方針で話はまとまった。
キュール城集結まであと1日の猶予がある。
最後の日のためにも、皆は眠りにつくのだった。
(寝てますにゃあ……)
眠る3人の顔色を、ミズヤはサラを抱えながらひょっこり覗いていた。
6時間に渡る軍議の間、ずっと寝ていたから眠気もなくなったのだ。
「ニャー……」
「にゃー……」
2人揃ってニャーと鳴きながら、ただただ3人の顔を見る。
ミズヤは本作戦の要になる人物……しかし、そんな事で緊張したりはしない。
作戦も立てた、訓練も行なった。
対策はバッチリだし、万が一戦いになっても負けることはない。
そんな訳で、暇を持て余していた。
「……マシュマロ作ろっか」
「ニャー」
少しでも英気を養わせるため、主人の好きなお菓子を作ることにする。
こうして2日目が過ぎて行き、バスレノスがキュール城へ向かうまであと1日となるのであった。
「ニャーッ」
ガラガラとミズヤは中央塔の最上階にある扉を開くと、そこでは重い空気に満ちながら読書をしながらペンを走らせる2人が居た。
ペラペラとページをめくり、めぼしい情報があればカリカリと書き出す。
暗鬱とした表情で力なくペラリ、またペラリと捲られるのはなんとも酷い光景だった。
奥の方でヘリリアだけはスヤスヤ寝ていたが、それはまた別として、
「……にゃーっ」
「…………」
「…………」
ミズヤの様子に気付かず、ひたすら読み進める2人。
無視されたからか、ほっぺたを膨らませてミズヤは歩き出す。
それは早歩きだったが、両手を挙げて、てってってっという擬音が似合いそうな可愛い歩みだった。
彼はクオンの横に立つと、クオンの事を思いっきり抱きしめる。
「ねこさんっ!」
「わっ!? ……ああ、ミズヤですか。お帰りなさい」
「ただいまなんだよーっ」
ほわほわとした声を出しながら、ミズヤはクオンから離れて両手を伸ばす。
「ほっ」
掛け声と共に体を左に傾けると、左手の裾から白いものの詰まった袋が出てきて机に落ちる。
それは彼が先ほどまで作っていたマシュマロだった。
「もう1つ〜♪」
くるりと身を翻し、同様に右の裾からもマシュマロの入った袋を出した。
「これ食べて頑張ってねっ。今お茶淹れるけど、何飲む?」
「ありがとうございます、ミズヤ。ハーブティーをお願いします」
「俺はダージリンティーを……」
「はーいっ。じゃ、頑張ってねっ!」
そう言ってミズヤは出て行き、別室でお茶作りを始める。
彼が出て言った後、クオンとケイクは顔を合わせて微笑むのだった。
応援してくれる仲間がいる、だから頑張ろうと思えるのだった。
◇
――深夜3時。
塔最上階の4人はまだ起きていて、昼間にグッスリと眠ったヘリリアは起きてられるが、他の3人はうとうとしながら口がぽかんと開いていた。
サラはベッドに丸くなって寝ているものの、クオンもケイクもミズヤもすぐに後を追いそうだ。
「……ミズヤ、ケイク。もう貴方達は寝ても構わないのですよ?」
「クオン様が頑張ってるのに、家臣の私が寝るわけにはいきません」
「僕は2人の夜食とか、飲み物作るから……。ハーブティー要るー?」
「……頂きます。ですが、もう寝て良いのですからね? ほら、ヤーシャ殿は2徹3徹などいつものことですし、私だって徹夜はそこそこ経験していますし、付き合わなくても……」
クオンが2人に催促するも、男の子2人は頷かなかった。
「僕達だって徹夜には慣れてるし、大丈夫だよ〜っ」
「そうです。我々はクオン様の手足、クオン様が寝なければ我々とて寝ませんし、夜番も必要ですから」
「夜番はヘリリアが居ますけどね……。まぁ、それなら任せますよ」
クオンが微笑みながら言葉を返すと、2人も微笑むのだった。
辛い仕事でどんよりした空気だったのに、今では暖かな空気が流れている。
それはミズヤの存在のおかげか、あるいは仲間だからこそ作れる雰囲気なのか……。
「じゃあ、ハーブティー作ってくるね」
「ええ。お願いします」
クオンに頼まれ、ミズヤはハーブティーを作りに外へ出るのだった。
飲み物を飲んで、欲しい情報を書き出して、時間だけが進んでいく。
ケイク、クオンの両者が4冊目の本に突入する頃、外が明るくなり始めるのだった。
「……軽くまとめましょうか」
「そうですね」
ケイクが提案すると、クオンは彼と情報を共有しあい、そこにミズヤとヘリリアも同席した。
各軍の情勢、現在キュールの軍基地の数、兵の数、バスレノス側の情勢、その他商業関連、トメスタス退位の革命後に何が起きるのかを予測した情報を提供しあった。
聞いていたヘリリアは時折頷きつつ、何かを考えるように上を見上げていたが、ミズヤはいつの間にか座ったままスヤスヤと寝ていた。
彼は政治についての関心などまるでないのである。
「ですから、当初の予定通り北軍を予め東に集めておきましょう。北は極寒であり、攻めるはずの東南とは逆ですし」
「クオン様、それを見越して北に逃げられれば苦労するのは我々です。今の時期でさえ吹雪の吹く北ではトメスタスを追えません」
「でも、ここに軍基地があるのですから――」
意見が飛び交い、収拾がつかないまま1時間が過ぎる。
「我々は資金面が厳しいですからね……。今回だって革命が失敗すれば――って、もう朝じゃないですか。ミズヤ、寝てないで朝食をお願いしますよ」
さも当たり前のようにミズヤの肩を揺するクオン。
ミズヤはスゥスゥと寝息を立てるも、ゆっくりと目を開いた。
その様を見て、ケイクは率直に尋ねる。
「……クオン様、寝る気は無いのですか?」
「え、なんでです?」
「……ああ、いえ。何でもございませんよ」
そんな小さなことは気に留めないか――そう悟ったケイクはただ微笑を浮かべ、眠たい体を叩いて気合いを入れるのだった。
戦闘技術に関しては、仕上がっている。
策を練ろう――時間は限られてるのだから。
◇
空は鮮やかなオレンジ色に染まり、夕刻を迎えた。
軍議を終え、それぞれの最高司令官が各軍に指示を与えに向かう中、中央塔に居るクオン達は倒れるように眠りについた。
逆に、軍議中は寝ていたミズヤがみんなを魔法で集めてベッドに運んだ。
軍議の内容は軍議と呼べるものではなく、ただの会議であっただろう。
トメスタスは、後ろを向いたところにこの部隊最速を誇るマナーズがドライブ・イグソーブで刺す。
騒めきを誘ったところでミズヤがミュベスを捕らえる。
しかし、トメスタスは刺されたとしても気絶することはないだろう。
そのため、最高司令官及び【懐刀】、およびクオンが襲撃し、ダウンさせる。
作戦はそれだけで、その後の事を討論する時間の方が長かった。
クオンを女帝にする考えが強かったが、「武力を持って成る女帝など価値はない」と本人が一蹴し、キュール政府が戦争賛成派ならばバスレノスが政治も乗っ取る方針で話はまとまった。
キュール城集結まであと1日の猶予がある。
最後の日のためにも、皆は眠りにつくのだった。
(寝てますにゃあ……)
眠る3人の顔色を、ミズヤはサラを抱えながらひょっこり覗いていた。
6時間に渡る軍議の間、ずっと寝ていたから眠気もなくなったのだ。
「ニャー……」
「にゃー……」
2人揃ってニャーと鳴きながら、ただただ3人の顔を見る。
ミズヤは本作戦の要になる人物……しかし、そんな事で緊張したりはしない。
作戦も立てた、訓練も行なった。
対策はバッチリだし、万が一戦いになっても負けることはない。
そんな訳で、暇を持て余していた。
「……マシュマロ作ろっか」
「ニャー」
少しでも英気を養わせるため、主人の好きなお菓子を作ることにする。
こうして2日目が過ぎて行き、バスレノスがキュール城へ向かうまであと1日となるのであった。
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