連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第9話:模擬戦①
クオンが居なくなった直後、ミズヤの寝室ではその部屋の主人と猫がにらめっこしていた。
「……クオン、可愛かったね?」
〈私の方が可愛いから、安心しなさい〉
「まぁね〜、ねこさんは可愛いもんね〜」
バシーン!
「にゃは〜っ」
膝を叩かれ、嬉しそうな顔で倒れ伏すミズヤ。
最強の力を待っていても、可愛いものには勝てなかった。
そんなミズヤは天井を見つめながら、ポツリと言葉を漏らす。
「……サラには悪いけどさ、最後少し、ドキッとしちゃった」
「ニャッ!?」
「胸キュンですにゃあ〜」
ペチペチ
サラがミズヤの頬を叩く。
叩かれた顔を横に向けると、猫がぶら下げる板にはこう書かれていた。
〈惚れた?〉
率直な疑問、しかしそれはサラが一番懸念する箇所。
もしも惚れられでもしたら、自分の存在価値がなくなるのだから。
彼なしでは生きられない、そんな彼は今、寝ながらサラに向けてこう呟いた。
「友達って思う方が強いよ……ずっと仲間だったし」
「ニャーッ」
〈そう〉
「サラはやきもちねこさんだね〜っ。でも、僕の中でクオンは友達だから、大丈夫だよ」
ミズヤはサラの口元へ右手の人差し指を持っていくと、サラは優しく柔らかい指先を甘噛みした。
スキンシップはサラととった時間の方が圧倒的に長い。
しかしそれは対猫であるため、また別ではあるが――それでも、ミズヤにとって尊く、掛け替えのない存在だから、サラの都合を一番に考える。
好きとか嫌いとか、今はその気持ちに飲み込まれない。
だから、サラと再会して選択をする。
それがミズヤの出した結論であり、今はまだ、クオンの気持ちには応えずにいた。
「僕が好きだったんなら、本当に好きだったんだよね……」
ポツリとミズヤが言葉を零す。
彼の恋愛は異常なほどに執着心が強い。
一番最初の人生の記憶――霧代という少女の事を、彼はサラと対話するまでの12年間、ずっと想い続けてきたのだ。
それは悪い事をしたからという付加があったけれど、それでも12年間、ずっと心に贖罪を誓って生きていた。
今は好きな人の居ない自由な命だけれど、過去に霧代以外に愛した少女がいたのなら、何年も追い続けるほど好きだったのだろう。
それこそ、サラのように――。
「会いたいな〜っ」
〈いつでも来ていいわよ〉
「あはは……今回の事が終わったらね……」
3年間、サラをお預けさせてしまった。
ミズヤは今度こそ、会いに行きたいと思っている。
そのためにも、バスレノスの事情を解決させて、戦争を止めないといけない――。
「……頑張ろーね、サラ」
「ニャーッ」
可愛い返事を聞き、ミズヤは微笑みながらサラを撫でるのだった。
◇
1日経って、ミズヤの作った大広間に4人が集まっていた。
広さは四方100mのドーム状、その中心に4人は立っている。
その両手には、各々が得意とするイグソーブ武具を身に付けて。
「模擬戦ですにゃあ〜。頑張るからね、サラ〜」
「ミャーッ♪」
ミズヤは頭の上に乗せたサラを魔法で降ろし、端っこに駆けていくのを見送る。
そして、残った3人に目を向けた。
「今日は負けませんからね」
クオンは勝ち気でそう口にする。
手にはラージ・イグソーブ及びドライブ・イグソーブがあった。
どちらも遠距離射撃が可能であり、ラージ・イグソーブは結界も張れるため、攻防一体型だった。
いつもの緑色のドレスと重そうな機械武器は美少女が使うにミスマッチしているが、実力は別問題。
「お前には積もる恨みがあるからな……」
そう口にするのは褐色肌を持つ、赤髪をオールバックにした男、ケイクである。
右手にはイグソーブ・アックス、左手にはイグソーブ・ソードと、攻撃特化型であった。
赤を基調とした甲冑を身につけるその姿は宛ら1人の戦士である。
しかし――
「恨みって、ケイクくんのは自分勝手な理由でしょ……」
「? ケイク、ミズヤが何かしましたか?」
「……いえ、別に」
クオンを取られて気立っている、恋する1人の少年である。
クオンの問いにそっぽを向くも、いつまでも人の気持ちに気付かないクオンも人が悪かった。
最後、3人目――
「今日こそ勝つからなぁ、ミズヤァ!!」
「……既にキャラ崩壊してますにゃ」
人に向かって指差し、乱暴な口調で宣言するヘリリアならぬヘルリア。
その両手にはイグソーブ・ソード、ラージ・イグソーブがある。
青色の和服ドレスと2つの武器を持つ彼女は戦乙女と言える。
――対して、ミズヤはいつもの緑色の法被と軽衫を履き、両手にはドライブ・イグソーブを持っている。
「じゃあ、始めようか」
ミズヤは3人に向け、右手のドライブ・イグソーブを向ける。
1対3――同種の武器を使う者同士なのに、1対3の構図が完成していた。
これは4人の中で決まっている事であり、そして今までミズヤを倒した事は殆どなかった。
それほどまでにミズヤとその他の技能さがあるのだ――。
「いつも通り、攻撃魔法は禁止、それ以外はなんでもありです」
クオンもまた、その細腕で体の半分ほどの大きさはあるドライブ・イグソーブをミズヤに向けた。
飛行、結界、筋力増強などの補助はありだが普通の魔法攻撃は禁止。
代わりに、イグソーブ武器を使う模擬戦であった。
「よし、じゃあ――」
ミズヤは何でもないようにトリガーに手を掛けながら口を開き、
「始め」
ドライブ・イグソーブから、青い衝撃波を3人に向けて放つのだった。
「……クオン、可愛かったね?」
〈私の方が可愛いから、安心しなさい〉
「まぁね〜、ねこさんは可愛いもんね〜」
バシーン!
「にゃは〜っ」
膝を叩かれ、嬉しそうな顔で倒れ伏すミズヤ。
最強の力を待っていても、可愛いものには勝てなかった。
そんなミズヤは天井を見つめながら、ポツリと言葉を漏らす。
「……サラには悪いけどさ、最後少し、ドキッとしちゃった」
「ニャッ!?」
「胸キュンですにゃあ〜」
ペチペチ
サラがミズヤの頬を叩く。
叩かれた顔を横に向けると、猫がぶら下げる板にはこう書かれていた。
〈惚れた?〉
率直な疑問、しかしそれはサラが一番懸念する箇所。
もしも惚れられでもしたら、自分の存在価値がなくなるのだから。
彼なしでは生きられない、そんな彼は今、寝ながらサラに向けてこう呟いた。
「友達って思う方が強いよ……ずっと仲間だったし」
「ニャーッ」
〈そう〉
「サラはやきもちねこさんだね〜っ。でも、僕の中でクオンは友達だから、大丈夫だよ」
ミズヤはサラの口元へ右手の人差し指を持っていくと、サラは優しく柔らかい指先を甘噛みした。
スキンシップはサラととった時間の方が圧倒的に長い。
しかしそれは対猫であるため、また別ではあるが――それでも、ミズヤにとって尊く、掛け替えのない存在だから、サラの都合を一番に考える。
好きとか嫌いとか、今はその気持ちに飲み込まれない。
だから、サラと再会して選択をする。
それがミズヤの出した結論であり、今はまだ、クオンの気持ちには応えずにいた。
「僕が好きだったんなら、本当に好きだったんだよね……」
ポツリとミズヤが言葉を零す。
彼の恋愛は異常なほどに執着心が強い。
一番最初の人生の記憶――霧代という少女の事を、彼はサラと対話するまでの12年間、ずっと想い続けてきたのだ。
それは悪い事をしたからという付加があったけれど、それでも12年間、ずっと心に贖罪を誓って生きていた。
今は好きな人の居ない自由な命だけれど、過去に霧代以外に愛した少女がいたのなら、何年も追い続けるほど好きだったのだろう。
それこそ、サラのように――。
「会いたいな〜っ」
〈いつでも来ていいわよ〉
「あはは……今回の事が終わったらね……」
3年間、サラをお預けさせてしまった。
ミズヤは今度こそ、会いに行きたいと思っている。
そのためにも、バスレノスの事情を解決させて、戦争を止めないといけない――。
「……頑張ろーね、サラ」
「ニャーッ」
可愛い返事を聞き、ミズヤは微笑みながらサラを撫でるのだった。
◇
1日経って、ミズヤの作った大広間に4人が集まっていた。
広さは四方100mのドーム状、その中心に4人は立っている。
その両手には、各々が得意とするイグソーブ武具を身に付けて。
「模擬戦ですにゃあ〜。頑張るからね、サラ〜」
「ミャーッ♪」
ミズヤは頭の上に乗せたサラを魔法で降ろし、端っこに駆けていくのを見送る。
そして、残った3人に目を向けた。
「今日は負けませんからね」
クオンは勝ち気でそう口にする。
手にはラージ・イグソーブ及びドライブ・イグソーブがあった。
どちらも遠距離射撃が可能であり、ラージ・イグソーブは結界も張れるため、攻防一体型だった。
いつもの緑色のドレスと重そうな機械武器は美少女が使うにミスマッチしているが、実力は別問題。
「お前には積もる恨みがあるからな……」
そう口にするのは褐色肌を持つ、赤髪をオールバックにした男、ケイクである。
右手にはイグソーブ・アックス、左手にはイグソーブ・ソードと、攻撃特化型であった。
赤を基調とした甲冑を身につけるその姿は宛ら1人の戦士である。
しかし――
「恨みって、ケイクくんのは自分勝手な理由でしょ……」
「? ケイク、ミズヤが何かしましたか?」
「……いえ、別に」
クオンを取られて気立っている、恋する1人の少年である。
クオンの問いにそっぽを向くも、いつまでも人の気持ちに気付かないクオンも人が悪かった。
最後、3人目――
「今日こそ勝つからなぁ、ミズヤァ!!」
「……既にキャラ崩壊してますにゃ」
人に向かって指差し、乱暴な口調で宣言するヘリリアならぬヘルリア。
その両手にはイグソーブ・ソード、ラージ・イグソーブがある。
青色の和服ドレスと2つの武器を持つ彼女は戦乙女と言える。
――対して、ミズヤはいつもの緑色の法被と軽衫を履き、両手にはドライブ・イグソーブを持っている。
「じゃあ、始めようか」
ミズヤは3人に向け、右手のドライブ・イグソーブを向ける。
1対3――同種の武器を使う者同士なのに、1対3の構図が完成していた。
これは4人の中で決まっている事であり、そして今までミズヤを倒した事は殆どなかった。
それほどまでにミズヤとその他の技能さがあるのだ――。
「いつも通り、攻撃魔法は禁止、それ以外はなんでもありです」
クオンもまた、その細腕で体の半分ほどの大きさはあるドライブ・イグソーブをミズヤに向けた。
飛行、結界、筋力増強などの補助はありだが普通の魔法攻撃は禁止。
代わりに、イグソーブ武器を使う模擬戦であった。
「よし、じゃあ――」
ミズヤは何でもないようにトリガーに手を掛けながら口を開き、
「始め」
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