連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜

川島晴斗

第10話:模擬戦②

 ミズヤが衝撃波を放った後、一瞬遅れてクオンも同じ衝撃波を放つ。
 2つの攻撃は拮抗し、3人にミズヤの攻撃が届く事はなかった。
 そうでなくとも、

「フッ」
「うらぁっ!!」

 ケイクとヘルリアは【赤魔法】で筋力増強を図って地を蹴り、衝撃波の高さを超えた前面に飛び出す。
 ケイクが前を出る中、ヘルリアは左手のラージ・イグソーブで砲撃を放つ。
 トンファー状の円筒部から放射される光は目にも留まらぬ速さでミズヤへと迫った。

「よいしょ」

 しかし、その程度は避けられる。
 ミズヤは左に飛んでこれを避けた。
 ケイクはミズヤに追尾して迫る、そんな中――

 ドシュン!

 クオンはドライブ・イグソーブをジェット噴射させ、右回りに旋回し、ミズヤの死角へと回っていた。
 彼女はもう片方の手にあるラージ・イグソーブで狙いを定めるのを、ミズヤはしっかりと見ていた。
 だからこそ撃ち出さず、回り込みをやめて特攻に移った。

「オラァッ!!」

 ガンと音を鳴らし、ケイクのイグソーブ・アックスのギアが変わる。
 ギアにより威力増加を図って、剣を腰に当てて斧を振りかぶった。

 ミズヤはそれに怯むことなく、ドライブ・イグソーブを1つ上にあげ――

 ドドドッ!!

 連続して衝撃波を放つ。
 横に長い3つの衝撃波は、斧の振るわれる弧に当たるようになって、斧の攻撃を弾いた。

 カチャン、ボッ――!

 スイッチを変え、もう片方のドライブ・イグソーブに羽を出しながらターボをオンにしてクオンに向かって飛んだ。

「!?」

 突撃してくる事は、クオンにとって意外だった。
 ドライブ・イグソーブという重機を2台有しているミズヤがクオンにぶつかれば、質量的にクオンが吹き飛ばされるのはわかるが、このまま――

(攻撃をラージ・イグソーブで防いで、あなたに攻撃することができるんですよ!?)

 考えると同時に、クオンはドライブ・イグソーブのトリガーとボタンを離し、【赤魔法】の身体強化のみで走った。
 ラージ・イグソーブのダイヤルを切り替え、自身の周囲に結界を張り、さらにブーストを解除したドライブ・イグソーブから青い刀身を生み出す。

「うああっ!!!」

 吠え、華奢の体に不釣り合いな機器を振り上げる。
 加速する2人の体は、すぐにでも衝突して――

「【空天意】」

 途端に透過したミズヤが、クオンをすり抜けた。

「ッ!」

 直後すぐに体を反転させるクオン。
 これまでミズヤの魔法は幾度となく見てきた、この程度で怖気付くわけがない。

「――クオン様! 避けて!」
「!!?」

 しかし、ミズヤの体に隠れて見えていなかった、ミズヤを追うケイクがクオンにすぐ側まで迫っていた。

「ふうっ――」

 ダイヤルを戻し、クオンは結界を解く。
 まっすぐとケイクを見据え、武器を捨ててバックステップを踏み、

 半歩下がって体を横に向け、ケイクを受け流すのだった。

 ケイクはそのまま勢いのままに駆け、身を翻して停止する。
 だが、クオンはケイクの姿に反応する暇もなく――

 ドッ――

 後ろに控えたミズヤのドライブ・イグソーブから出た刀が、背中から胸を貫いていた。

「ぐうっ――!」
「はい、クオンしぼー」

 何でもないように呟き、ミズヤはカチャンとトリガーから手を離して刀を消し、すぐさまケイクを追う。

(くっ……ここまで力の差がありますか……)

 歯を噛み締めながら、クオンはドライブ・イグソーブを噴射させて壁際へと離脱していく。
 クオンの動きは悪くなかった。
 相手を追い込むための攻撃、突進してくるケイクとの衝突を防ぎ、ダメージはミズヤから一撃を貰うまで0。
 ただ、その一撃は致命傷になるものだっただけで――。

(結界を解いたのは油断だったでしょうか? ケイクならば結界側面を回って衝撃を分散しながらミズヤを追えたかもしれない)

 色々と思考をするが、クオンがケイクを認識した時の距離は僅か10m、【赤魔法】で加速する2人が衝突するのに一秒も要らなかった。
 そんな僅かな時間であれだけ動けたにもかかわらず、改善点すら思い浮かべるクオンは、三年前から明らかに成長していた。

 しかし、成長しているのは彼女だけではない。

 ――ドン、ドドンッ!!

 飛行するヘルリアが上からレーザーの如きラージ・イグソーブの攻撃を繰り出す。
 地面がえぐれて行く中、ミズヤは多段に脚を動かして全てを避けながら、迫るケイクから逃げている。
 何食わぬ顔で避けながら衝撃波を飛ばすミズヤ、レーザーの雨と衝撃波を避けて迫るケイク。
 その動きは既に過去に見た西軍基地でのイグソーブ武器使い達のレベルを遥かに上回っていた。

 脚を狙った横薙ぎのワイドショットも、ケイクは少し高く足を上げるという最低限の動きのみで避けて行く。
 不意を突いて上に向けて打った衝撃波も、ヘリリアはイグソーブ・ソードで叩き返していた。

「んー」

 攻撃が通じず、ミズヤは唸る。
 状況は厳しいが、1対1なら確実に勝てる相手。
 ならばタイマンに持ち込めばいい。

「【無色魔法カラークリア】【ウォール】」

 手のひらを上に掲げ、地面と平行な空気の壁を作り上げる。
 ミズヤの作る結界だ、当然ながら協力で上からのレーザーを全て防いでいた。
 立ち止まり、迫るケイクに向けて2本の魔法刀を出す。
 対するケイクも、剣と斧を手に立ち向かった。

「フッ――!!」
「にゃあっ!」

 まずは斧を振るい、ミズヤ刀を斜めにして攻撃をいなした。
 だが本命は剣、イグソーブ・ソードは威力を反射する刀であり、それは裏を返せば防げない剣である。
 横薙ぎに振るわれる刀、しかしこれもまた当たらない。
 ミズヤは自分の体を【無色魔法】で飛ばしたのだ。

「このっ――!」

 斧と剣の乱撃をひょいひょいとかわしていくミズヤ。
 両者共に【赤魔法】の身体強化を施しているものの、攻撃が当たらないのは経験の差か――。

 ブォンと、大振りの斧が振るわれる。
 そこでミズヤは1歩を踏み込んで、左手の武器を捨て、右手のドライブ・イグソーブの刀を前に出す。

 その時、ケイクは笑った。
 比較的大振りに振るった先の斧はフェイント、そしてこのカウンターまでを読み、

 ギィン!!

 イグソーブ・ソードが、ミズヤの持つドライブ・イグソーブを弾いた。
 そして降ろしたはずの斧を振り上げれば勝てる――なのに、

 ドンッ!

「ぐうっ!!?」

 ミズヤはケイクにタックルを繰り出していた。
 武器もなく特攻を――否、ミズヤはここまでわかっていた。
 だからこそぶつかる前にドライブ・イグソーブを手放して反動をなくし、【赤魔法】を纏った体でのタックルができる。
 ケイクの体は文字通り吹っ飛んだ。
 両手の武器は手放し、苦悶の表情を浮かべながら仰向けに倒れている。
 10m近く吹っ飛ばされたのだ、いくら魔法で筋力を上げていてもすぐには起きれない。

 そんな彼の顔の横に、何かが降って来た。
 それは彼が持っていたイグソーブ・ソードで、ミズヤが投げたものらしかった。
 顔に当たってればしぼー、そういう意味合いなのはすぐにわかった。

「くそっ……」

 悔しげに呟くケイクは立ち上がり、渋々と壁際まで歩いていくのだった。

 残った2人は――

「オラァ!!!」
「ほっ」

 乱雑に振るわれるイグソーブ・ソードをミズヤが避ける。
 逆に、ミズヤが衝撃波を撃つと一瞬だけ出される結界に守られてしまう。
 勝負は一進一退――のように思われた。

「よっと」

 ミズヤは左手でケイクの使っていたイグソーブ・アックスを手に取り――

 ドシュン!

 まずは衝撃波を撃つ。
 しかしそれは結界に弾かれて――

 ガンガン!

 撃鉄を鳴らすようにアックスのギアを変え、結界に向かって振り降ろした。
 パキンと、驚くほど簡単に結界は割れて、ミズヤは刃の出るドライブ・イグソーブをヘルリアに投げるのだった。
 間髪入れずに叩き込まれた攻撃になすすべもなく、ヘルリアは刀身を体に受けて今回の模擬戦が終了した。

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