連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第7話:お別れとお菓子
「えーっ、それでは南大陸でみんなを預かるサラにゃーにお話を伺いたいと思いまーす。はい、拡声器」
《ニャーッ、ニャニャー》
「はい、ありがとうございました。今日も可愛いですニャーッ!」
サラを抱きしめるミズヤの頭を環奈が叩き、瑛彦が背中を蹴る。
ふざけてると思ったのだろうが、ミズヤは真面目だった。
「みんな酷いですにゃーっ!」
「これさ、ウチら居なくなったら誰がツッこむん?」
「俺が引き受けよう」
「おーう色黒くん、頼むわ〜」
「ケイクだ……」
助けを求めるのような環奈の声に、クオンと同い年のケイクが応えた。
肌の色が濃いが、その事をネタにされたくはないらしく、少し仏頂面になる。
「キトリュー殿、時間遷延の魔法はお教えいただけませんか? やはり秘術で……?」
「ああ、秘術なので諦めて欲しい。強くなりたいようだが、大して手助けできず申し訳ないな」
「いえいえ……貴方達が居なければ、きっと私達はカルノールで全滅していました。それで十分ですよ」
「そう言ってもらえるとたすか――痛っ」
クオンと話すキトリューの脇腹に、ミズヤの頭が直撃する。
何事かと思えば、向こうの方で環奈がいい笑顔で親指を立てていた。、
「ストライク!」
そして何か言っているが、サウドラシアでこの言葉は通じないだろう。
「金髪……おっぱいが大きい……背もなかなか……」
「あ、あのっ……?」
「……むむぅ、これはサラちゃんに嫌われそうな……」
「ええっ!? わ、私、何もしてないですよぅうごめんなさいぃぃいいい……」
理優の端的な感想を聞いてヘリリアがすかさず土下座してしまう。
理優からしたら、金髪でありながら貧乳で背の低い沙羅と比べただけで、なんで泣かれるのかわからず、オロオロするのだった。
環奈達が来てあまり時間が経っていない上、瑛彦や理優は初めて顔を合わせる人も多い中、送別会は思いのほか賑わっていた。
「サラちゃん、このミズヤくん普通に可愛いよね〜っ? 私の子供にしたいなーっ」
「…………」
「ねこぱんちっ!?」
「あーっ。サラにゃー、叩いちゃダメだよーっ。ごめんね理優さん?」
一回り小さなミズヤを抱きしめる理優がサラのビンタを受けて倒れた。
彼氏の瑛彦はあまり気に留めず、のんびりとケーキを食べる。
生クリームがたっぷり乗ったフルーツケーキだったが、クオンも無心で食べていたりする。
「……【ヤプタレア】。私も一度行ってみたいです」
「おおー、皇女様来ちゃう? 国ほったらかしちゃう? マジかぁ、もうミズヤこっち来ちゃえばよくない? ねぇねぇ?」
「……や、やっぱり行きません! 太りそうですし! ……あっ」
「あっはっは、太るかもねぇ」
「おいカンナ殿、クオン様をいじめるな」
太りそう発言で自爆し、本音が露呈されて顔を赤くするクオンだったが、からかう環奈はケラケラと笑うのだった。
制止するケイクも、チラチラと顔の赤いクオンを見ていて微笑ましい。
時間が過ぎ行く中、ケイクはクオンに質問した。
「クオン様。聞きたい事があるのですが、よろしいですか?」
「構いませんよ? なんですか?」
普通の受け答えであったが、ケイクはワンテンポ遅らせてから質問する。
「クオン様、最近はやけにミズヤと時間をお過ごしになりますよね。まさかとは思いますが……」
「……クス。私が、ミズヤに、ですか?」
思わぬ質問に、クオンは吹き出した。
なんと言ったって、あの女々しい童子を好いているかと確認されたのだから。
「私に男性の好みがあるわけではありませんが、ミズヤの事は友人程度にしか思ってませんよ。そもそも異性だという認識すら怪しいですし、第一、彼はサラの恋人です。その証明は今日ここにいる【ヤプタレア】から来た人々によって立証されてますからね。私は他人の恋人を奪おうとするほど、不届きではありませんよ。そもそも好きじゃないですし」
「は、はぁ……そうですか」
「えぇ。しかし、私もミズヤを好きになると思われるなど、ナメられたものですね。少し怒ったのか、言葉数が多くなってしまいましたよ」
「!!? し、失礼しました!」
頭を下げるケイクを一瞥して、クオンは今一度ミズヤを見た。
「ひぃーっ!! みんな嫌いですにゃーっ!!!」
「これ脱がし方わかんねー……。環奈っち、任せた」
「はいよーっ。……うわーっ、足白っ。ミズヤ、全国の女性に謝りなよ」
「サラにゃー助けてぇぇえええ!!」
「…………」
話の中心人物が現在ズボンを脱がせられている。
その様子になんとも言えない気持ちを抱くも、助けに行かないあたり、ミズヤへの気持ちもたかが知れるのだった。
◇
「門出の時なのに、ミズヤを来させられず申し訳ないです」
「気にしなくていいよ。アレ完璧ウチらのせいだから」
逢魔時に差し掛かる夕暮れ、送別会のメンバーはミズヤを除いて中庭に来ていた。
ミズヤはズボンを下げられたショックで不貞寝してしまってるので、来る事はない。
「やっばり瑞っちは瑞っちだよなぁ〜。腹筋ついてたけど、腕とかガタイとかな、うん」
「瑛彦くん、凄い失礼だよ……」
「…………」
キトリューは黙し、瑛彦と理優はどこかボケていた。
ヘリリアとケイクも特に言うことはなく、ここ最近一番動いていた環奈から最後に1つ、クオンに頼み事をした。
「ミズヤはあんなんだからさ、手ェ掛かるわけよ。でも、しっかり面倒見てあげてくださいな。懐けば子猫みたいに可愛いんで」
「面倒は見ますよ。ただ、私の身の安全も確保してもらいますがね」
「んっ、あんがとね。それじゃ、また会えたらよろしく」
「はい。お世話になりました。そして行ってらっしゃい」
別れの挨拶を告げると、環奈は振り返らずに瑛彦と理優を無理やり脇に抱える。
そして魔法の力で飛び上がり、キトリューと共に飛んで行った。
◇
一方、自室で布団を被ったミズヤは、毛布の中でサラを抱きしめていろんな事を考えていた。
笑ってふざけ合える、不思議な人達だった。
それはきっと、前世からのソウルメイトだから無意識に話せた、という見方もできる。
それとも単に人柄が良かったと言っても間違いではない。
だから別れが、今になってちょっぴり寂しかったのだ。
「……でも、また会えるもんね」
サラの脇を持って、体毛にスッ、スッと手櫛を入れる。
くすぐったいのか、サラは甘い声で鳴いた。
「その時は、本当のサラにも会う時、かぁ……」
「ニャァ?」
「僕が南大陸に行く時だよーっ。早くバスレノスの戦いも終わって、僕らも解放されるといいね……」
「ミャーッ」
サラは彼の呟きに応えて鳴き、ミズヤはそんな可愛い猫のあごを撫でるのだった。
穏やかな時が暗い布団の中で過ぎて行く。
しかし、不意に部屋の扉が開いた。
キィ、という小さい音。
それに反応してミズヤは身を硬ばらせた。
部屋への侵入者は足音を聞こえないようゆっくりと入って来る。
しかし、静まり返った部屋では微かな足音もミズヤの耳に入るのだった。
(む……誰ですにゃ?)
ミズヤは音を立てないようモゾモゾと動き、布団から隙間を作って部屋の中を見た。
部屋に居たのは、クオンだった。
「…………」
(何してるんだろう?)
抜き足差し足忍び足、コソコソと部屋に入って来たクオンを不思議がるも、彼女の行動を見守る。
見られていることにも気付かぬクオンはテーブルの前に座った。
彼女の目の前には、まだまだ余っているお菓子やご馳走があって――。
ヒョイっと、クオンはマシュマロを1つ手に取った。
そしてすかさず口の中へと放り込む。
「〜〜〜〜ッ!!」
声を押し殺し、頰に手を当てて満面の笑みでマシュマロを噛んでいた。
そしてまた1つ、2つと口に放り込んで行く。
皇女のその様子を見てミズヤとサラは顔を見合わせる。
そして、ミズヤの方からクスクスと笑いだしてしまった。
「……!!?」
笑い声に反応して、クオンが目を見開きながら布団の方を見た。
最早姿を隠す必要もなく、ミズヤは掛け布団の中から出てくる。
「クオン、こそこそ入って来るから何するんだろうって思ったら、お菓子食べるんだもん。あははっ、可愛いですにゃあ〜」
「なっ、なななっ……! いや別に、これは……」
「あ、食べていいんだよ? 求められればまた作るし、寧ろ喜んでもらえて光栄だし」
「うっ……。意地汚いところを見せて申し訳ないです……。でも、美味しいのでこれからも作ってください……」
「はーいっ」
ニコニコと笑って返事を返すも、クオンはバツの悪そうにそっぽを向いていた。
こんな微笑ましい情景に、サラも思わず欠伸をするのだった。
《ニャーッ、ニャニャー》
「はい、ありがとうございました。今日も可愛いですニャーッ!」
サラを抱きしめるミズヤの頭を環奈が叩き、瑛彦が背中を蹴る。
ふざけてると思ったのだろうが、ミズヤは真面目だった。
「みんな酷いですにゃーっ!」
「これさ、ウチら居なくなったら誰がツッこむん?」
「俺が引き受けよう」
「おーう色黒くん、頼むわ〜」
「ケイクだ……」
助けを求めるのような環奈の声に、クオンと同い年のケイクが応えた。
肌の色が濃いが、その事をネタにされたくはないらしく、少し仏頂面になる。
「キトリュー殿、時間遷延の魔法はお教えいただけませんか? やはり秘術で……?」
「ああ、秘術なので諦めて欲しい。強くなりたいようだが、大して手助けできず申し訳ないな」
「いえいえ……貴方達が居なければ、きっと私達はカルノールで全滅していました。それで十分ですよ」
「そう言ってもらえるとたすか――痛っ」
クオンと話すキトリューの脇腹に、ミズヤの頭が直撃する。
何事かと思えば、向こうの方で環奈がいい笑顔で親指を立てていた。、
「ストライク!」
そして何か言っているが、サウドラシアでこの言葉は通じないだろう。
「金髪……おっぱいが大きい……背もなかなか……」
「あ、あのっ……?」
「……むむぅ、これはサラちゃんに嫌われそうな……」
「ええっ!? わ、私、何もしてないですよぅうごめんなさいぃぃいいい……」
理優の端的な感想を聞いてヘリリアがすかさず土下座してしまう。
理優からしたら、金髪でありながら貧乳で背の低い沙羅と比べただけで、なんで泣かれるのかわからず、オロオロするのだった。
環奈達が来てあまり時間が経っていない上、瑛彦や理優は初めて顔を合わせる人も多い中、送別会は思いのほか賑わっていた。
「サラちゃん、このミズヤくん普通に可愛いよね〜っ? 私の子供にしたいなーっ」
「…………」
「ねこぱんちっ!?」
「あーっ。サラにゃー、叩いちゃダメだよーっ。ごめんね理優さん?」
一回り小さなミズヤを抱きしめる理優がサラのビンタを受けて倒れた。
彼氏の瑛彦はあまり気に留めず、のんびりとケーキを食べる。
生クリームがたっぷり乗ったフルーツケーキだったが、クオンも無心で食べていたりする。
「……【ヤプタレア】。私も一度行ってみたいです」
「おおー、皇女様来ちゃう? 国ほったらかしちゃう? マジかぁ、もうミズヤこっち来ちゃえばよくない? ねぇねぇ?」
「……や、やっぱり行きません! 太りそうですし! ……あっ」
「あっはっは、太るかもねぇ」
「おいカンナ殿、クオン様をいじめるな」
太りそう発言で自爆し、本音が露呈されて顔を赤くするクオンだったが、からかう環奈はケラケラと笑うのだった。
制止するケイクも、チラチラと顔の赤いクオンを見ていて微笑ましい。
時間が過ぎ行く中、ケイクはクオンに質問した。
「クオン様。聞きたい事があるのですが、よろしいですか?」
「構いませんよ? なんですか?」
普通の受け答えであったが、ケイクはワンテンポ遅らせてから質問する。
「クオン様、最近はやけにミズヤと時間をお過ごしになりますよね。まさかとは思いますが……」
「……クス。私が、ミズヤに、ですか?」
思わぬ質問に、クオンは吹き出した。
なんと言ったって、あの女々しい童子を好いているかと確認されたのだから。
「私に男性の好みがあるわけではありませんが、ミズヤの事は友人程度にしか思ってませんよ。そもそも異性だという認識すら怪しいですし、第一、彼はサラの恋人です。その証明は今日ここにいる【ヤプタレア】から来た人々によって立証されてますからね。私は他人の恋人を奪おうとするほど、不届きではありませんよ。そもそも好きじゃないですし」
「は、はぁ……そうですか」
「えぇ。しかし、私もミズヤを好きになると思われるなど、ナメられたものですね。少し怒ったのか、言葉数が多くなってしまいましたよ」
「!!? し、失礼しました!」
頭を下げるケイクを一瞥して、クオンは今一度ミズヤを見た。
「ひぃーっ!! みんな嫌いですにゃーっ!!!」
「これ脱がし方わかんねー……。環奈っち、任せた」
「はいよーっ。……うわーっ、足白っ。ミズヤ、全国の女性に謝りなよ」
「サラにゃー助けてぇぇえええ!!」
「…………」
話の中心人物が現在ズボンを脱がせられている。
その様子になんとも言えない気持ちを抱くも、助けに行かないあたり、ミズヤへの気持ちもたかが知れるのだった。
◇
「門出の時なのに、ミズヤを来させられず申し訳ないです」
「気にしなくていいよ。アレ完璧ウチらのせいだから」
逢魔時に差し掛かる夕暮れ、送別会のメンバーはミズヤを除いて中庭に来ていた。
ミズヤはズボンを下げられたショックで不貞寝してしまってるので、来る事はない。
「やっばり瑞っちは瑞っちだよなぁ〜。腹筋ついてたけど、腕とかガタイとかな、うん」
「瑛彦くん、凄い失礼だよ……」
「…………」
キトリューは黙し、瑛彦と理優はどこかボケていた。
ヘリリアとケイクも特に言うことはなく、ここ最近一番動いていた環奈から最後に1つ、クオンに頼み事をした。
「ミズヤはあんなんだからさ、手ェ掛かるわけよ。でも、しっかり面倒見てあげてくださいな。懐けば子猫みたいに可愛いんで」
「面倒は見ますよ。ただ、私の身の安全も確保してもらいますがね」
「んっ、あんがとね。それじゃ、また会えたらよろしく」
「はい。お世話になりました。そして行ってらっしゃい」
別れの挨拶を告げると、環奈は振り返らずに瑛彦と理優を無理やり脇に抱える。
そして魔法の力で飛び上がり、キトリューと共に飛んで行った。
◇
一方、自室で布団を被ったミズヤは、毛布の中でサラを抱きしめていろんな事を考えていた。
笑ってふざけ合える、不思議な人達だった。
それはきっと、前世からのソウルメイトだから無意識に話せた、という見方もできる。
それとも単に人柄が良かったと言っても間違いではない。
だから別れが、今になってちょっぴり寂しかったのだ。
「……でも、また会えるもんね」
サラの脇を持って、体毛にスッ、スッと手櫛を入れる。
くすぐったいのか、サラは甘い声で鳴いた。
「その時は、本当のサラにも会う時、かぁ……」
「ニャァ?」
「僕が南大陸に行く時だよーっ。早くバスレノスの戦いも終わって、僕らも解放されるといいね……」
「ミャーッ」
サラは彼の呟きに応えて鳴き、ミズヤはそんな可愛い猫のあごを撫でるのだった。
穏やかな時が暗い布団の中で過ぎて行く。
しかし、不意に部屋の扉が開いた。
キィ、という小さい音。
それに反応してミズヤは身を硬ばらせた。
部屋への侵入者は足音を聞こえないようゆっくりと入って来る。
しかし、静まり返った部屋では微かな足音もミズヤの耳に入るのだった。
(む……誰ですにゃ?)
ミズヤは音を立てないようモゾモゾと動き、布団から隙間を作って部屋の中を見た。
部屋に居たのは、クオンだった。
「…………」
(何してるんだろう?)
抜き足差し足忍び足、コソコソと部屋に入って来たクオンを不思議がるも、彼女の行動を見守る。
見られていることにも気付かぬクオンはテーブルの前に座った。
彼女の目の前には、まだまだ余っているお菓子やご馳走があって――。
ヒョイっと、クオンはマシュマロを1つ手に取った。
そしてすかさず口の中へと放り込む。
「〜〜〜〜ッ!!」
声を押し殺し、頰に手を当てて満面の笑みでマシュマロを噛んでいた。
そしてまた1つ、2つと口に放り込んで行く。
皇女のその様子を見てミズヤとサラは顔を見合わせる。
そして、ミズヤの方からクスクスと笑いだしてしまった。
「……!!?」
笑い声に反応して、クオンが目を見開きながら布団の方を見た。
最早姿を隠す必要もなく、ミズヤは掛け布団の中から出てくる。
「クオン、こそこそ入って来るから何するんだろうって思ったら、お菓子食べるんだもん。あははっ、可愛いですにゃあ〜」
「なっ、なななっ……! いや別に、これは……」
「あ、食べていいんだよ? 求められればまた作るし、寧ろ喜んでもらえて光栄だし」
「うっ……。意地汚いところを見せて申し訳ないです……。でも、美味しいのでこれからも作ってください……」
「はーいっ」
ニコニコと笑って返事を返すも、クオンはバツの悪そうにそっぽを向いていた。
こんな微笑ましい情景に、サラも思わず欠伸をするのだった。
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