連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜

川島晴斗

第12話:セカンド・コンタクト⑥

 一方、商館の一階にて。
 暗闇の中に幾つかの死体や物が流れ、正面の入り口が大破したこの1階に、2人の男が凛然と佇んでいた。

「ったく、ずぶ濡れだぁ……。おい大将、どうするよ?」
「今の力を使うという事は、建物に奴等は居ないだろう。外に出るぞ」
「へいへい、っと」

 建物を覆う水、それは建物に居ればレジスタンスも巻き添えになる。
 否、結界で守ればそうはならないが――実態は知れないため、2人はまた夜の世界に戻った。

 辺りには人っ子一人おらず、この近隣の人は逃げたと予想される。
 戦いの場から遠ざかるのは当然のことであるが、静まり返った場は奇妙で他ならない。

「あーあっ、怖いねぇ……」

 影のあるうちにドライブ・イグソーブを両手に出していたヘイラが舌打ち交じりに呟く。
 既に2本のイグソーブ・アックスを失い、まだ敵影もないとなれば、そのイラつきも頷ける。
 使用可能のアックスは残り1、予備は残り2。
 できればアックスの使用を避けるため、ドライブ・イグソーブで終わらせる算段であった。

 しかし、武器を出していても敵がいなくては仕方ない。

「……ふむ」

 トメスタスは空を見上げた。
 この状況でどうすれば敵を見つけ出せるか、はたまたもう逃げてしまったのか思考する。

(……しかも、来ていたはずのバスレノス兵が1人もいない。面倒な事になったな……)

 おおよそ全員死んだか捕まったかの二択であったが、トメスタスは思考を切り替える。

「ここからでは、よくわからんな」

 街中では視界が悪い、しかし建物に入られていれば見つけようもない。
 ただ、外に敵が出ているのならば――上から見るのが1番探しやすい。

「ヘイラ、お前はここにいろ。俺は空から敵を見つける」
「休憩かよ。早く探してくだせー」

 ヘイラのダラけた声を聞く前にトメスタスは空へ飛び立った。
 空を切り飛ぶその姿は、さながら花火が打ち上がるようである。

 そしてトメスタスが街を見渡せるほどの場所まで来ると動きを止め、下に視線を向ける。
 人が往来する端の方から各建物、家屋の屋根までくまなく見た。
 文面と向かうことも少なく、体を動かすことの多いトメスタスは視力が良く、少し空をうろうろしながら捜索するが――。

「……いない、か」

 後続に来ていたであろう100を超える人間は、どこにも見つからなかった――。



 ◇



「見つかるわけないだろう」

 もう1人のトメスタス――紫髪を持つキュールの男は、先ほどまで屋上に居た建物の中でニヤリと笑う。
 彼らが居たのは魔法訓練施設――100人はゆうに入る、魔法で戦うフィールドなのだ。
 その中でフィサとミュベスが、館内に放置された死体と瀕死の者を選別していた。
 彼らにとっては最早、死体は見慣れたものである。
 まるで物のように扱う手つきは、一般人が見れば嘔吐を催すであろう。

「お兄様、大体こちらは終わりましたわ」
「そうか。生存者は何人だ?」
「18人ですわ。少し多いですの」
「なら13人殺して5人にしよう。死体はここに捨てて帰るぞ」
「了解」

 指示を聞き、ミュベスは背中にセットしてあるドライブ・イグソーブを取り出した。
 そして1人の倒れた男の顔の横に立ち、ドライブ・イグソーブから魔法の刃を出した。

 シュリンという、なんとも鮮やかな音がした。
 躊躇いもなく刃を振り下ろし、少女は男の首を切断したのだ――。

 ドロリとした血が広がる。
 だが少女は死体に目もくれず、また隣、そのまた隣と殺していく。
 その様子をフィサは、苦い顔をして見ていた。
 彼女としてはあまり無用な殺生は控えたいから。
 だからといって、トメスタスの命令なのだから止めることもない。

 そして、命令したトメスタスはシュリン、シュリンと首の切れる音を楽しむように目を閉じて耳を澄ますのだった――。



 ◇



「まぁそんなわけでよぉ、俺はこの世界に来てから魔法の訓練や槍の使い方を叩き込まれたわけよ。ふざけんなって言いてぇわ。俺の気持ちわかるかよみずっちぃ?」
「う、うん……。まぁ、大変だったんだね?」

 所変わって城下町、立ち話もなんだからといって瑛彦とミズヤは城下町まで来ていた。
 賑やかな所は試験のことも知らずに店を出しており、ブラブラも座る場所を探しながら瑛彦の世界に来てからの事を聞かされていた。

(だったら早く、僕の事話してくれればいいのに……)

 と心の中で思っていたようだが、それに瑛彦が気付くことはない。
 むしろ本題は後のお楽しみと瑛彦は考えていた。

 そして、前世で瑛彦達と友人だったサラは――

(理優もこの世界に来てんのね〜……南大陸わたしんとこに来てくれれば保護できるんだけど、会話が通じないと無理だし……)

 ミズヤの頭の上で、そんなことを考えていたそうな。

 この数日、強制召喚された瑛彦は戦闘員として戦うために槍や魔法を習い、理優はサポート員としていろいろとレジスタンス内の言葉を覚えていた。
 そして今日が実戦とそれだけ話を受けたのだ。

「俺の元いた世界じゃ、今頃俺はテロリストだよ」
「大丈夫、もうテロリストだから」
「うっせー。お、居酒屋じゃん。瑞っち、行くぞ!」
「僕12歳なんだけど……」
「おう、俺も17だ」

 じゃあどっちみちダメだねとミズヤは肩を落とし、結局2人は噴水広場の噴水に腰掛けた。
 人が行き交う場所ではあるが、ミズヤのジャージが軍服であるという事から彼らに近づく者はいなかった。

「……さて、どこから話したもんかなぁ」

 そしていよいよ、瑛彦の口から、1度目の転生世界【ヤプタレア】での瑞揶みずやが語られる――。

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