連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第18話:ファースト・コンタクト④
所変わって結界外――ラナ達はイグソーブ系の攻撃と通常の魔法攻撃で結界の破壊を目論んでいた。
しかし、その結界は破れる様子がなく、魔力の無駄として攻撃を中断する。
「まったく……嫌な魔法だ。異才、“5色の結界王”……」
ラナの呟きに反応する者は居ない。
攻撃の止んだ今、静寂が夜を包み込んでいた。
(しかし、ミズヤとヴァムテルが先に行ったはずだ。ここまで私の前に出て来ないとなると、奴等は結界内のはず……)
ラナは今できることを考える。
ヴァムテルとミズヤ、バスレノスの大将と神楽器を持った少年が内部にいるこの状況。
ヴァムテルの強さをラナは知っているし、ミズヤは“魔力を40倍にする”神楽器を持つ。
2人が協力すれば、内部から結界を破ることも可能かもしれない。
(……。……いや、敵の根城に突っ込んで2人が無事というのも考えにくい。しかしどちらにしても、結界から出てくるのを待つしか無いか……)
自分が結界に入れない悔しさに拳を握り、ただ結界が消えるのを待つのであった――。
◇
「……。遅い」
紫髪の男は待っていた。
味方からのバスレノス迎撃体勢完了の報を。
しかし、味方からの報告は未だになく、結界内から攻撃の止んで静かになった空を見るばかり。
「ヴァムテルが来た……とはいえ、此処は戦闘員だけでも300人前後で来ているんだぞ? 奴に手こずるのはわかるが、こんなに……」
1対300、その戦力差から最早殺し終わったと推測していた。
下にはヴァムテルの妹であるフィサも居る、彼は妹に手を出すような事はしない。
自分がした事の罪を、感じてるから――
「……様子を見に行くか」
ブラッドストーンの瞳を使っているうちはその結界が崩れるような事はない。
男もカン、カンとゆっくり階段を降り、屋上は無人に還るのだった。
◇
2階――そこには150余名のレジスタンスがフィサからの情報を聞き、血眼になってヴァムテル達を探し回っていた。
当のヴァムテル達はといえば――
「はぁ……なんとか一息、だね?」
「うむ……」
夜風にさらされ、外壁にぶら下がっていた。
破れた窓から脱出し、壁の外に身を隠していたのだ。
「すまぬ……我がしっかりしていれば……」
「ううん、いいよ。家族は大事だからね。でも、敵国に妹がいるの?」
ミズヤが尋ねると、ヴァムテルは無言で少年を見つめ、それからふいっとそっぽを向いた。
「……もともと、我はキュールの人間だ。アイツは……フィサは、年の差がある妹でな。親が死んで、稼ぎがなくなった。だが我がバスレノスに兵士として雇われてな、稼いで妹を施設に預けていた。それだけの事よ」
「…………」
顔を見せぬヴァムテルの話にミズヤはそれなりに心中を推察する。
きっと何年もバスレノスに居て、そして――キュールと戦争したのだから。
「……恨まれちゃってるの?」
「これでも、我も大将だ。元は小市民であるこの身、キュールにはなんの未練もなかった。だからたくさん殺した……。殺したが……」
「…………」
自責の念を感じ取り、ミズヤはそれ以上追求しなかった。
ぽっかりと会話に穴が開き、ヴァムテルは別の話題でそれを塞いだ。
「我の事より、この状況をどうするかだ。
いずれこの結界は開くだろうが、それまでに我等が殺されるだろう」
「……そうかな? ヴァムテルさん強そうだし、僕らでここ、制圧できない?」
「敵には強者もいる。そう上手くはいかぬよ。なんとかして総力戦に持ち込めれば良いのだが……」
「…………」
その話を聞いて、ミズヤは外を見た。
結界は無色魔法から成り、無色魔法を得意とするミズヤは結界の性質を見切った。
4重構造であり、防御・探知・――・防御。
(……あれ?)
ただ1つだけ、彼にもわからない結界があった。
性質不明の結界――三層目は紫色の結界で、ミズヤが今までに知らない結界だった。
しかしそれでも、結界を破壊すれば状況が一変することに変わりない。
二層目の探知結界からミズヤ達の居場所も把握されていることだろう。
だからミズヤは――
「【羽衣天韋】」
ミズヤの身につけていた紫のマフラーが解け、羽衣のように展開される。
それと同時に、徐々に刀が姿を変え、ミズヤの両手に巻きついていく。
やがて巨大な鉄槌と化し、両腕には雷撃が絶縁破壊を起こして電気が放電していた――。
「……ミズヤ殿、その技は――」
「【狂気色】、【黄色】」
少年の腕を包む鉄の塊。
少年は両腕を振り上げ、拳を結界に叩きつける!
「【羽衣天技】――【三千雷火】!!!」
目にも留まらぬ速殿打撃の連打。
結界は厳しくそれを跳ね返し続ける、しかし――
パキン――
ヒビが入り、ぽっかりと穴が開いた――。
「なっ――」
その驚嘆はヴァムテルが発したものだった。
“ブラッドストーンの瞳”を用いた結界が破ることができたのは、今までトメスタス以外に見たことがなかったのだから――。
だがミズヤはトメスタスと同じ、神楽器使い。
だからこそ結界を破ることが可能だが――
「そんな、打撃だけで!?」
強力な魔法を使うでもなく、殴打の繰り返しだけで結界を破った。
そのありえない光景を前に、彼は驚いてるのだった。
「【三千雷火】は体を光速で移動させることを許し、術者への衝撃や抵抗をほとんど無くす魔法。この短距離でとはいえ、光の速さで殴ればこんな結界――」
さらにミズヤは拳を振り上げ、第2の結界に鉄腕を振り下ろした。
「――何枚でも壊せますよっ」
しかし、その結界は破れる様子がなく、魔力の無駄として攻撃を中断する。
「まったく……嫌な魔法だ。異才、“5色の結界王”……」
ラナの呟きに反応する者は居ない。
攻撃の止んだ今、静寂が夜を包み込んでいた。
(しかし、ミズヤとヴァムテルが先に行ったはずだ。ここまで私の前に出て来ないとなると、奴等は結界内のはず……)
ラナは今できることを考える。
ヴァムテルとミズヤ、バスレノスの大将と神楽器を持った少年が内部にいるこの状況。
ヴァムテルの強さをラナは知っているし、ミズヤは“魔力を40倍にする”神楽器を持つ。
2人が協力すれば、内部から結界を破ることも可能かもしれない。
(……。……いや、敵の根城に突っ込んで2人が無事というのも考えにくい。しかしどちらにしても、結界から出てくるのを待つしか無いか……)
自分が結界に入れない悔しさに拳を握り、ただ結界が消えるのを待つのであった――。
◇
「……。遅い」
紫髪の男は待っていた。
味方からのバスレノス迎撃体勢完了の報を。
しかし、味方からの報告は未だになく、結界内から攻撃の止んで静かになった空を見るばかり。
「ヴァムテルが来た……とはいえ、此処は戦闘員だけでも300人前後で来ているんだぞ? 奴に手こずるのはわかるが、こんなに……」
1対300、その戦力差から最早殺し終わったと推測していた。
下にはヴァムテルの妹であるフィサも居る、彼は妹に手を出すような事はしない。
自分がした事の罪を、感じてるから――
「……様子を見に行くか」
ブラッドストーンの瞳を使っているうちはその結界が崩れるような事はない。
男もカン、カンとゆっくり階段を降り、屋上は無人に還るのだった。
◇
2階――そこには150余名のレジスタンスがフィサからの情報を聞き、血眼になってヴァムテル達を探し回っていた。
当のヴァムテル達はといえば――
「はぁ……なんとか一息、だね?」
「うむ……」
夜風にさらされ、外壁にぶら下がっていた。
破れた窓から脱出し、壁の外に身を隠していたのだ。
「すまぬ……我がしっかりしていれば……」
「ううん、いいよ。家族は大事だからね。でも、敵国に妹がいるの?」
ミズヤが尋ねると、ヴァムテルは無言で少年を見つめ、それからふいっとそっぽを向いた。
「……もともと、我はキュールの人間だ。アイツは……フィサは、年の差がある妹でな。親が死んで、稼ぎがなくなった。だが我がバスレノスに兵士として雇われてな、稼いで妹を施設に預けていた。それだけの事よ」
「…………」
顔を見せぬヴァムテルの話にミズヤはそれなりに心中を推察する。
きっと何年もバスレノスに居て、そして――キュールと戦争したのだから。
「……恨まれちゃってるの?」
「これでも、我も大将だ。元は小市民であるこの身、キュールにはなんの未練もなかった。だからたくさん殺した……。殺したが……」
「…………」
自責の念を感じ取り、ミズヤはそれ以上追求しなかった。
ぽっかりと会話に穴が開き、ヴァムテルは別の話題でそれを塞いだ。
「我の事より、この状況をどうするかだ。
いずれこの結界は開くだろうが、それまでに我等が殺されるだろう」
「……そうかな? ヴァムテルさん強そうだし、僕らでここ、制圧できない?」
「敵には強者もいる。そう上手くはいかぬよ。なんとかして総力戦に持ち込めれば良いのだが……」
「…………」
その話を聞いて、ミズヤは外を見た。
結界は無色魔法から成り、無色魔法を得意とするミズヤは結界の性質を見切った。
4重構造であり、防御・探知・――・防御。
(……あれ?)
ただ1つだけ、彼にもわからない結界があった。
性質不明の結界――三層目は紫色の結界で、ミズヤが今までに知らない結界だった。
しかしそれでも、結界を破壊すれば状況が一変することに変わりない。
二層目の探知結界からミズヤ達の居場所も把握されていることだろう。
だからミズヤは――
「【羽衣天韋】」
ミズヤの身につけていた紫のマフラーが解け、羽衣のように展開される。
それと同時に、徐々に刀が姿を変え、ミズヤの両手に巻きついていく。
やがて巨大な鉄槌と化し、両腕には雷撃が絶縁破壊を起こして電気が放電していた――。
「……ミズヤ殿、その技は――」
「【狂気色】、【黄色】」
少年の腕を包む鉄の塊。
少年は両腕を振り上げ、拳を結界に叩きつける!
「【羽衣天技】――【三千雷火】!!!」
目にも留まらぬ速殿打撃の連打。
結界は厳しくそれを跳ね返し続ける、しかし――
パキン――
ヒビが入り、ぽっかりと穴が開いた――。
「なっ――」
その驚嘆はヴァムテルが発したものだった。
“ブラッドストーンの瞳”を用いた結界が破ることができたのは、今までトメスタス以外に見たことがなかったのだから――。
だがミズヤはトメスタスと同じ、神楽器使い。
だからこそ結界を破ることが可能だが――
「そんな、打撃だけで!?」
強力な魔法を使うでもなく、殴打の繰り返しだけで結界を破った。
そのありえない光景を前に、彼は驚いてるのだった。
「【三千雷火】は体を光速で移動させることを許し、術者への衝撃や抵抗をほとんど無くす魔法。この短距離でとはいえ、光の速さで殴ればこんな結界――」
さらにミズヤは拳を振り上げ、第2の結界に鉄腕を振り下ろした。
「――何枚でも壊せますよっ」
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