Re:勇者召喚
第二十六話
はるか遠くで起こった爆発を、サーシャとエーロは見つめていた。
「タカナシ……大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ……あいつは強いから」
口ではそう言いつつも、サーシャは心の中で不安を感じていた。
(この魔力の感じ……間違いない、四百年前のあの時とそっくりだわ。そんな事、ある筈ないのに)
既に滅んだ、自分たちがこの手で滅ぼした筈の魔王の魔力……それをサーシャは鋭敏に感じ取っていた。
一方、エーロの方も自責の念に駆られていた。
攫われた原因は自分に無いとはいえ、知り合って間もない男を戦闘に駆り出してしまった形になってしまっている。しかも、様子を見る限り尋常な相手ではない。
彼女には彼が死なないよう祈ることで精一杯だった。
「もし、タカナシが死んじゃったら……私……」
「大丈夫よエーロ。殺したって死ぬような男じゃないんだから」
恐怖に震えるエーロを強く抱きしめるサーシャ。心臓のトクン、トクンという鼓動が多少なりともエーロを安心させたらしく、彼女の震えはゆっくり収まっていった。
(でもこの魔力の流れ……絶対におかしい。倒したはずの存在がいる筈がない。何か、何か裏があるはず……)
落ち着いたエーロを放し、エルフの特性である《魔力視》を発動する。魔力視とは、その名の通り、本来は見えない物である魔力を見るという代物だ。エルフの感覚が鋭敏という話もこれに由来する。
魔力の流れを、全体を俯瞰しつつ注視する。すると一点だけ、明らかに不自然な流れを発見する。
(あそこは……何もないところから魔力が放出されてる? そしてあたりに散らばった魔力を敵が回収……成程、そういうこと!!)
敵の仕掛けていた策を一瞬で見破ったサーシャ。そうと決まれば後は簡単な話だ。
その策を完膚なきまでに叩きのめせばいい。
◆◇◆
『オラオラどうしたぁ!! さっきまでの威勢がねぇぞぉ!!』
「うるせぇ……よ!! こちとらもう年なんでね!!」
次々と繰り出される攻撃を紙一重で躱していく。別に余裕があるとかではなく、単純に相手の攻撃が速いのだ。さすが魔王の力と豪語するだけはある。
クソッ、このままじゃジリ貧だ。相手は再生手段を持ってる上に、魔力もすぐ回復するときた。どんなクソゲーだよこいつ!!
「《強欲》!!」
右手の咢で繰り出された相手の拳を喰らう。
『無駄無駄ァ!!』
が、すぐさま再生されてしまう。なんか再生力上がってねぇ!?
『ドラァ!!』
「ぐっ!!」
放たれた拳を避けるも、その拳は地面を抉り、近くにいた俺もろとも吹き飛ばす。
ズザザザザ、とブレーキをかけて止まるが、奴の攻撃は終わらない。
『耐えれるものなら耐えて見せろ!!』
「弾幕ゲーかよ……俺苦手なんだよなぁ」
幾百もの魔力弾が奴の周りに浮かぶ。
「弾幕ゲーには力押し、ってね!!」
俺も《強欲》を展開させ、魔力を喰らう準備。が、先ほどのようにあっさりとは行かなかった。
『甘いわぁ!!』
二手に分かれ、右と左からそれぞれ弾幕が襲い掛かる。
「なっ!?」
これでは一気に食い荒らすことが出来ない。ただでさえ隙の大きい技だ、今放ってしまえばその間に食いきれなかった弾が俺に当たってしまう。
《強欲》を収納し、腰から魔銃を取り出す。
「久々に暴れるぜ、《ケルベロス》!!」
銃の機関部が唸りを上げ、右の剣にも魔力を纏わせる。
「《絢爛武闘》!!」
両側から迫る魔力弾。当たればひとたまりもないほどの魔力が込められているが、逆に言えば当たらなければどうということはない。
銃を左に、剣を右に構え、そのまま前へ駆け出す。
『バカめ、気でも狂ったか!!』
奴はせせら笑っているが、そんな笑顔が出来るのも今の内だ。せいぜい笑っていると良い。
俺のすぐ両側に魔力弾が迫るが、俺はその場で回転する。右の弾は剣に、左の弾は銃弾に阻まれて消失。
当たらない弾は無視しつつ、直撃コースの弾だけを流れるように処理していく。まるで踊るような姿で敵を倒していく姿から名づけられたのが《絢爛武闘》って訳だ!! ちなみに命名は同じパーティの戦士。あいつ意外とネーミングセンスはあるんだよなぁ。
『な、すべて避けきるとは!?』
「おいおい、こんなんで驚いてたら身が持たないぜ?」
あっという間に目の前には異形の姿が。焦ったように拳を繰り出してくるが、俺はそれを軽く避けると、奴の腕に飛び乗る。
『何っ!!?』
「隙がデカいぞ!!」
一瞬で駆け上った俺は、その勢いのまま奴の首を狩る。噴出する血液。
『ぐおぉぉぉぉ!!』
苦悶の姿をバックに着地。が、これだけでは倒した感じにもならない。
『ぬぉぉぉぉ!! 許さん、許さんぞぉ!!』
「あーもう!! いい加減鬱陶しいんだっての!!」
いい加減俺もイライラしてきた。奥の手を使おうかという思いが頭にちらついたその時。
周囲に漂っていた魔力の雰囲気が急に途切れた。
『!?』
驚いた様子で辺りを見回す魔族。
(ナイスだサーシャ!!)
確証はないが、やった人物の心当たりはある。心の中で喝采を上げつつ、蹴りを付ける為構えをとる。
「さあ、覚悟はいいか?」
『や、やめっ……』
俺の右足に集まった炎、水、風、土。本来合わさるはずのない四属性を集めたこの一撃は、先ほどまでのどの攻撃よりも強力。
「《キックストライク》!! パート2!!」
高く飛び上がり、急降下。さあ、こいつで終わりだ!!
『グギャァァァァァァァァァ!!!』
必殺の一撃は奴の体を捉え、消し飛ばす。今度こそ回復はされないようで、魔力が集まることもなければ、奴の肉体が復活することもなかった。
「へっ、決まったぜ」
「タカナシ……大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ……あいつは強いから」
口ではそう言いつつも、サーシャは心の中で不安を感じていた。
(この魔力の感じ……間違いない、四百年前のあの時とそっくりだわ。そんな事、ある筈ないのに)
既に滅んだ、自分たちがこの手で滅ぼした筈の魔王の魔力……それをサーシャは鋭敏に感じ取っていた。
一方、エーロの方も自責の念に駆られていた。
攫われた原因は自分に無いとはいえ、知り合って間もない男を戦闘に駆り出してしまった形になってしまっている。しかも、様子を見る限り尋常な相手ではない。
彼女には彼が死なないよう祈ることで精一杯だった。
「もし、タカナシが死んじゃったら……私……」
「大丈夫よエーロ。殺したって死ぬような男じゃないんだから」
恐怖に震えるエーロを強く抱きしめるサーシャ。心臓のトクン、トクンという鼓動が多少なりともエーロを安心させたらしく、彼女の震えはゆっくり収まっていった。
(でもこの魔力の流れ……絶対におかしい。倒したはずの存在がいる筈がない。何か、何か裏があるはず……)
落ち着いたエーロを放し、エルフの特性である《魔力視》を発動する。魔力視とは、その名の通り、本来は見えない物である魔力を見るという代物だ。エルフの感覚が鋭敏という話もこれに由来する。
魔力の流れを、全体を俯瞰しつつ注視する。すると一点だけ、明らかに不自然な流れを発見する。
(あそこは……何もないところから魔力が放出されてる? そしてあたりに散らばった魔力を敵が回収……成程、そういうこと!!)
敵の仕掛けていた策を一瞬で見破ったサーシャ。そうと決まれば後は簡単な話だ。
その策を完膚なきまでに叩きのめせばいい。
◆◇◆
『オラオラどうしたぁ!! さっきまでの威勢がねぇぞぉ!!』
「うるせぇ……よ!! こちとらもう年なんでね!!」
次々と繰り出される攻撃を紙一重で躱していく。別に余裕があるとかではなく、単純に相手の攻撃が速いのだ。さすが魔王の力と豪語するだけはある。
クソッ、このままじゃジリ貧だ。相手は再生手段を持ってる上に、魔力もすぐ回復するときた。どんなクソゲーだよこいつ!!
「《強欲》!!」
右手の咢で繰り出された相手の拳を喰らう。
『無駄無駄ァ!!』
が、すぐさま再生されてしまう。なんか再生力上がってねぇ!?
『ドラァ!!』
「ぐっ!!」
放たれた拳を避けるも、その拳は地面を抉り、近くにいた俺もろとも吹き飛ばす。
ズザザザザ、とブレーキをかけて止まるが、奴の攻撃は終わらない。
『耐えれるものなら耐えて見せろ!!』
「弾幕ゲーかよ……俺苦手なんだよなぁ」
幾百もの魔力弾が奴の周りに浮かぶ。
「弾幕ゲーには力押し、ってね!!」
俺も《強欲》を展開させ、魔力を喰らう準備。が、先ほどのようにあっさりとは行かなかった。
『甘いわぁ!!』
二手に分かれ、右と左からそれぞれ弾幕が襲い掛かる。
「なっ!?」
これでは一気に食い荒らすことが出来ない。ただでさえ隙の大きい技だ、今放ってしまえばその間に食いきれなかった弾が俺に当たってしまう。
《強欲》を収納し、腰から魔銃を取り出す。
「久々に暴れるぜ、《ケルベロス》!!」
銃の機関部が唸りを上げ、右の剣にも魔力を纏わせる。
「《絢爛武闘》!!」
両側から迫る魔力弾。当たればひとたまりもないほどの魔力が込められているが、逆に言えば当たらなければどうということはない。
銃を左に、剣を右に構え、そのまま前へ駆け出す。
『バカめ、気でも狂ったか!!』
奴はせせら笑っているが、そんな笑顔が出来るのも今の内だ。せいぜい笑っていると良い。
俺のすぐ両側に魔力弾が迫るが、俺はその場で回転する。右の弾は剣に、左の弾は銃弾に阻まれて消失。
当たらない弾は無視しつつ、直撃コースの弾だけを流れるように処理していく。まるで踊るような姿で敵を倒していく姿から名づけられたのが《絢爛武闘》って訳だ!! ちなみに命名は同じパーティの戦士。あいつ意外とネーミングセンスはあるんだよなぁ。
『な、すべて避けきるとは!?』
「おいおい、こんなんで驚いてたら身が持たないぜ?」
あっという間に目の前には異形の姿が。焦ったように拳を繰り出してくるが、俺はそれを軽く避けると、奴の腕に飛び乗る。
『何っ!!?』
「隙がデカいぞ!!」
一瞬で駆け上った俺は、その勢いのまま奴の首を狩る。噴出する血液。
『ぐおぉぉぉぉ!!』
苦悶の姿をバックに着地。が、これだけでは倒した感じにもならない。
『ぬぉぉぉぉ!! 許さん、許さんぞぉ!!』
「あーもう!! いい加減鬱陶しいんだっての!!」
いい加減俺もイライラしてきた。奥の手を使おうかという思いが頭にちらついたその時。
周囲に漂っていた魔力の雰囲気が急に途切れた。
『!?』
驚いた様子で辺りを見回す魔族。
(ナイスだサーシャ!!)
確証はないが、やった人物の心当たりはある。心の中で喝采を上げつつ、蹴りを付ける為構えをとる。
「さあ、覚悟はいいか?」
『や、やめっ……』
俺の右足に集まった炎、水、風、土。本来合わさるはずのない四属性を集めたこの一撃は、先ほどまでのどの攻撃よりも強力。
「《キックストライク》!! パート2!!」
高く飛び上がり、急降下。さあ、こいつで終わりだ!!
『グギャァァァァァァァァァ!!!』
必殺の一撃は奴の体を捉え、消し飛ばす。今度こそ回復はされないようで、魔力が集まることもなければ、奴の肉体が復活することもなかった。
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