オレハ、スマホヲテニイレタ

舘伝斗

3-7 オレハ、ナガレニノリオクレル

 ハロルディア受付から3日。
 ハロルディアの開催されるコロッセオの前では、参加者たちがその開催を今か今かと朝一(朝7時)の鐘が街に鳴り響く前から集合していた。
 その数は五桁を越えていそうな程で、もうまさに

 ピコンッ

 「人がごみのようだねー。」

 くっ、クラトに先を越された。

 「兄ちゃん、何開始前から落ち込んでんのさ。」

 俺がクラトに台詞を取られて落ち込んでいると、横に居る臨戦態勢のウルが話し掛けてくる。
 因みに今この場にヴィエラさんとニアちゃんは居ない。
 それどころか観戦者も係員も居らず、ガチガチに装備を整えた参加者たちのみで埋め尽くされている。

 ゴーン、ゴーン

 そこに鳴り響く朝一の鐘。
 その瞬間、ざわめき立っていた参加者たちは一斉に口を閉じ、一万人を越えているとは思えないほどの静寂に辺りが包まれる。

 「鐘は鳴ったけど、案内の人も誰も出てこないな。」

 「でもみんな何かを待ってるよね?後ろ過ぎて見えないだけかな?」

 「おう、坊主たち。今回が初参加か?」

 俺とウルが鐘が鳴っても何も起こらない事を不審に思っていると、隣に立つ上半身だけ裸でマントだけ羽織った古代ギリシャの戦士みたいな格好をした大男が話し掛けてくる。

 「えぇ。実を言うとハロルディアの事は最近知りましてね。どんな流れなのかとか全く知らないんですよ。」

 「俺も集落に住んでたからな。名前だけしか知らなかった。」

 「そうか。なら俺が先輩として色々教えてやるよ。おぉ、そうだ。俺の名前はスパールタだ。ハロルディアだけじゃなく八大会巡りをしてる。」

 大男、スパールタさんはそう言って丸太のような腕を差し出してくる。

 「ユウトです。こっちはウル。」

 「よろしくな、おっちゃん。」

 俺とウルはスパールタさんと握手する。

 「ん、お前たち、腰の剣は使わないのか?」

 握手するとスパールタさんが顔をしかめたと思ったらそんなことを聞いてきた。
 確かに俺もウルもメインは素手クラトだし、一応カモフラージュのために腰にショートソードを提げてるんだけどな。

 「わかります?」

 「あぁ、そりゃあ握手したら一発だな。剣を握る奴なら掌の皮膚が固くなってるはずだからな。お前らは皮膚が固くなるどころかマメすらねぇ。それに剣の柄も汚れてねぇしな。」

 俺たちはスパールタさんの観察眼に感心する。

 「すごいですね。まぁ、確かに俺たちは基本的に素手ですからね。これは、まぁ舐められないようにするための飾りです。」

 俺が隠すことでもないので正直に話すと、スパールタさんは驚いたような顔をする。

 「ほぉ。得物を使わないとなると、無刀致死拳か何かか?あそこはキツいが才能のあるやつは数ヶ月で国に仕える騎士をも素手で葬るっていうからなぁ。俺と当たっても手加減しねぇで良いぜ?」

 スパールタさんは俺が否定するより先に軽く笑う。
 っていうか、無刀致死拳って物騒な名前だな。何でも良いや。おかしな武術集団が居るってことだけ覚えとこ。
 異世界人ってばれるよりはマシだろ。

 「あー、と。悪いな、話が逸れた。で、ハロルディアだが、思ったより時間が過ぎたから話すより体験した方が早えぇ。そろそろ聞こえるはずなんだがな。」

 「聞こえるって何が?」

 参加者の決意表明でも聞こえるのかな?
 とかバカなことを考えていると、コロッセオから光の壁が立ち上る。

 「おっ、始まったな。」

 だから何が?
 スパールタさんにそう聞こうとしたとき、俺の頭の中に直接、ズズッというノイズのような音が聞こえてくる。

 「何だ?」

 ズズッ、ズッ

 ノイズは次第に収まる。

 「皆さま、お待たせいたしました。これより、今年のハロルディアを開催いたします。」

 「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

 声が聞こえた瞬間、静まり返っていた参加者たちが一斉に雄叫びをあげ、世界が揺れてるのではないかと錯覚するほどの衝撃が走る。

 「それでは皆様、入り口に近い方から順にコロッセオにお入りください。」

 頭の中の声は小声の筈が、不思議なことに辺りの喧騒を掻き消されることなくきちんと聞き取ることが出来る。

 「何だかっ!頭に直接!情報を!書き込まれてるみたいだなっ!!」

 「えっ!なにっ?」

 残念なことにその不思議な現象は頭の中に響く声だけにしか効果がないようで、隣でウルが何か言っているが全く聞こえない。

 ピコンッ

 「頭に直接情報を書き込まれてるみたいだってさー。」

 そんな俺たちの様子にクラトが会話を経由してくれる。
 何気にこういうところで役に立つのがクラトだ。

 声が入場を促してから少し経ち、人の波に紛れて 俺たちもスパールタさんと共に入り口に進んでいると、入り口に近づくごとに辺りの喧騒が弱まっていく。

 「おぅ、二人とも!受付でもらった番号札持ってるか?出してみな。」

 頃合いを見計らっていたスパールタさんは俺たちに届くように、少し大きな声でそう告げる。

 「持ってますよ。ほら。ん?」

 スパールタさんに促されて取り出した番号札は今朝見たときは確か檜のような白っぽい木で出来ていて、番号札というわりには何も書いていなかった筈が、今は色が青く変色し、表面にデカデカと7の数字が浮かんでいた。
 ウルのは赤く変色している。

 「おっ。ちゃんと持ってきてるな。無くすなよ?それはこれから向かう先への切符みたいなもんだ。移動後に説明があると思うが、この札は100人~200人が同じものを持ってる。そんで同じ色の奴を纏めてバトルロワイヤル形式で戦って、最後まで札を壊されなかった一人が晴れて本戦に出られるって訳だ。お前は青の7ブロックだな。弟は赤の16か。運が良いな。俺は黒の1だ。お前らなら楽しめそうだ。本戦で待ってるぜ。」

 スパールタさんはそう言って一足先に光の幕となっているコロッセオの敷居を跨ぐ。
 俺たちが質問する間もなく入ったな。
 せっかちな人だ。

 「あれで予選落ちしてたら面白いのになー。なぁ、兄ちゃ」

 スパールタさんの背中を追いかけるように俺たちが光の幕を潜ると、隣で俺に話しかけていたウルが光の幕を潜った瞬間に消える。

 「ウル!?どこ行った?」

 俺は慌てて振り返ると、そこはコロッセオの入り口ではなく海の見える断崖絶壁だった。

 「何がどうなってるんだ?クラト。ウルが何処に行ったか分かるか?」

 ピコンッ

 「うーん。何処なのかは分からないけど無事だよー。ウルの方もご主人様を探してるー。」

 クラトの言葉を聞き、取り敢えずウルが無事なことが分かると、俺の視界に辺りの情報が飛び込んでくる。

 「なんだよ、ここは。」

 見渡す限りの海、砂浜。
 俺は丁度海を見下ろす断崖絶壁の上に立っているから辺りを見渡すことができたが、どうやらここは幾つかある無人島の1つのようだ。

 「コロッセオの中、なのか?いや、それにしては入り口が背後になかったな。転移した?」

 俺があれこれ考えていると、再び頭の中にズズッというノイズのような音が聞こえる。

 「青の7ブロックの皆様。お待たせいたしました。参加者が全て会場入りされましたので、ハロルディア予選ブロックの説明をいたします。えー、ご存知の方も居るかもしれませんが、公平を期すため、皆さんの足は今しばらく固定させていただきます。説明が終わるまでご辛抱くださーい。」

 その言葉が頭に響いた瞬間、高さを見ようと崖の下を覗き混んだ体勢で、足だけが地面に固定され動かなくなる。

 「うぉっ!」

 突然足を固定されて重心のバランスを失った俺は重力に引かれ、マイ○ル・○ャクソンばりに斜めの体勢を強制され、断崖絶壁の真下を覗き込まされる。

 「では、説明いたしますね。あ、失礼いたしました。まずは自己紹介を。私は、ハロルディアの審判を勤めさせていただきます。水の大精霊と申します。さて、ではコロッセオに入ったのになぜこんなジャングルに?とお思いの方も多数いらっしゃるでしょう。ご存知の通り、ハロルディアは毎回毎回参加者がとても多いので、予選を行うにしても場所がありません。そこで、私の転移魔法で各グループ毎に各フィールドに別れて勝ち上がった128名を本選の出場者としています。
 このハロルディア。何といってもルールは相手を意図的に殺さないことのみ。個人戦、集団戦、追い討ち、騙し討ち何でもござれの総力戦でございます。
 今回の参加者は約20000人。その方々を赤、青、黄、緑、茶、黒、金、白の各属性をイメージした8色。その8色を更に1~16の番号で細分化し、128のグループを作りました。各グループに約150人いますが、最後の一人となった方には本戦出場権が与えられます。奮って周りを蹴散らしてください。
 では、最後に。皆様の番号札をベルト状に致しましたのでご確認の上、外から見える位置に巻き付けてください。外から見えない位置に巻き付けている者、そのベルトを切られてしまった者、相手を殺害してしまう危険のある者は私が手ずから転移してこちらに呼び戻しますので、最後の一人になるまでそのベルトを守りきってください。
 あ、因みに予選の様子は観客に映像として見られていますが、目欲しい方以外映さないので目立ちたければ大暴れしてくださーい!!
 では、ハロルディア予選、青の7ブロック開始!!!」

 長々とした説明の後、遠くに響く雄叫びを聞きながら俺は、

 

 

 断崖絶壁を落下していった。

 「クソ神の精霊はやっぱりクソ精霊かぁぁぁぁぁ!!!届け物廃棄してやろうか、こんちくしょぉぉぉぉ!!、」

 ドボォォン

 






 「ぜぇ、ぜぇ。お、泳ぎきったぜ。」

 俺が慣れない着衣水泳での遠泳を終えて、フラフラになりつつもようやく陸地に辿り着いた頃、浜辺には無数の戦闘痕が見られた。

 「後、80人です。」

 丁度タイミングよく頭に響くクソ精霊の声。
 泳いでいる間もたまに聞こえたこの声は残りの人数を示していたことに今更ながら気づく。

 いや、数十キロ海を泳ぎながらこんなの聞いてられないでしょ。
 ってか何で上陸できる陸地がこんなに遠いんだよ!
 陸地探してついついこの島を一周しかけたよバカ野郎!

 「それにしても、もう一時間は経っていると思うけど、思ったより減ってないな。こんなもんか?」

 俺は思ったより慎重に進んでいる予選に少し意外感を覚える。
 それにしても、濡れた服が鬱陶しいな。

 「クラト、服の水分とってくれない?」

 ピコンッ

 「まかせてー。」

 俺がそう言うと、首に巻き付くクラトは体を薄く伸ばし、俺の服や防具の内側から海水だけを吸っていく。

 ちなみに、俺の今の服装は目立たないよう麻の服を着て、その上にこの世界の剣士見習いのような、安い革の胸当てに手首までの革のグローブ。そして足元は膝まである革のブーツを履いている。
 この革がまた水分を吸って重いの何の。

 ピコンッ

 「終わったよー。このくらいで良い?」

 俺が辛かった遠泳に遠い目をしているとクラトから終了の報告が来る。
 俺は手早く体のあちこちを触り、大体乾いていることを確認する。

 「ありがと。やっぱりお前は便利だなぁ。」

 俺はクラトにそういいつついつも通りグニグニと撫でてやる。

 ピコンッ

 「えへへー。」

 クラトはこれまたいつも通り、気持ちが良いのか玩具のスライムのように少しずつ垂れてくる。

 グロォォォォッ

 海岸で少しクラトと戯れて休んでいると、砂浜に隣接する森の茂みから4トントラック位の陽炎を纏ったライオンがのそりと現れ、俺たちを見つけると涎を滴ながら低く唸る。

 「おぉっ!?誰かの従魔・・・じゃないよな?もしかして進行が遅いのってこんな魔物が闊歩かっぽしてるからか?」

 俺は超大型のライオンを、座った体勢のまま眺めて冷静に状況を分析する。

 「あれ?地球に居た頃の俺ってこんなに豪胆だったっけ?よく考えたら目の前にいるのって地球のライオンより遥かに怖くね?」

 俺は異世界に毒されつつある自分の感性に少し感慨深いものを感じる。

 ピコンッ

 「ご主人様ー、もう襲ってきそうだよ?」

 感慨に耽っていると、クラトは動かない俺に忠告してくれる。
 まぁクラトも俺の力を知ってるから全然焦ってないし、寧ろ俺の気持ちが異世界にトリップしているのを連れ戻してくれた感じだな。
 異世界にいるのに気持ちが異世界地球にトリップって。
 地球って異世界だよな?元世界?

 グラァッ

 俺が無反応なことについに痺れを切らしたライオンがその体に似合った鈍重さで飛び掛かってくる。
 精々時速40kmの車程度の遅さだ。
 まぁ制止状態から一瞬でそのトップスピードまで加速したんだけど、そんなことは些事だな。

 おっ!良い感じに今の俺って異世界の強者感出てね?

 俺はもう目の前まで来たライオンにようやく行動を起こす。

 シャッ

 俺はこの3日間でコントロールに馴れた"気"を右手に纏い、胸当ての内側にある非常用の内ポケットからスマホを取りだし、一瞬で起動する。

 パフッ

 ちなみに、シャッター音は地球にいた頃に愛用していた、気の抜ける音に変えてある。

 バクンッ

 だが、そこで無情にもギリギリまで接近を許していたライオンの顎が閉じる。

 しかし、俺はすでにその場に居らず、"気"で強化した足で砂浜を蹴り、ライオンの背後に回り込む。

 「さて、ここ一月で魔力も相当上がった筈だし、ここらで新たな従魔を増やさせてもらうぞ!」

 俺はライオンの背後でスマホを操作する。
 さぁ、服従するんだ!

 ピッ

 ピピピッ

 あれ?嫌な予感・・・
 もう一回。

 ピッ

 ピピピッ

 俺は聞き覚えのある機械音にスマホの画面を覗き混む。

 警告!
 ファントムリオンは召喚獣のため服従できません。

 そんな馬鹿なっ!?

 グラァッ

 バシィッ

 俺がスマホの警告に目を奪われていると、気配を察したファントムリオンが大人の腕ほど太い尻尾で俺を弾く。

 「ぐぉっふっ!」

 ピコンッ

 「ご主人様、大丈夫?」

 綺麗な放物線を描き、空を舞う俺にクラトが話し掛けてくる。

 「おーびっくりした。ダメージはないけど、衝撃がすごいな。っていうか、あれ?何で俺こんな数十メートル吹き飛ばされてるのにノーダメージなんだ?」

 俺はこの世界に存在する"気"の力に戦慄し、益々人間離れする自分の身体能力に無性に嬉しくなる。
 思っても見なかった自分の身体スペックの上昇に驚きつつも、空を飛ぶ俺を追いかけるように走るファントムリオンの姿を見る。

 「あんにゃろうめ。やってくれたなっ!叩き潰したる!」

 俺は吹き飛ばされた体勢のまま、落下の衝撃の備えて体に"気"を纏い、ファントムリオンに向けた右手には"魔力"を纏う。

 「折角魔力が増えたのに、魔物じゃないなんて。俺の期待を返せっ!"ホーリー・レイ"(笑)!」

 俺が魔法名を唱えると、右手に集まった"魔力"が一条のレーザーとなってファントムリオンに襲いかかる。
 ちなみにホーリー・レイ(笑)という名前を付けたはいいが、この魔法、実はただ魔力を力業ではなってるだけで魔法ではない。

 俺には魔法の才能が皆無だってヴィエラさんに言われたよ、ちくしょう!

 俺の放つ魔法、いや、魔力をファントムリオンは鼻で笑うかのように避ける。

 あっ、あいつマジて今鼻鳴らしやがった!
 避けたファントムリオンは高度の大分落ちてきた俺に飛びかかるべく、更に加速する。

 チュドォォォンッ

 その背後に、行き場を無くしたホーリー・レイ(笑)が着弾すると、轟音を立てて海岸を消滅させる。

 グロッ!?

 その音に一瞬振り返ったファントムリオンは背後に広がる光景を見て、人間並みに表情を変化させる。

 ズダンッ

 ファントムリオンが足を止めた隙に、俺は何とか着地する。

 「さて、ファントムリオンだっけ?こいつ、普通の魔物じゃなくて服従できないし、倒してもいっか。折角格好良かったのに。」

 ピコンッ

 「クラトがアイツ食べたらあの形になれるよっ!」

 おっ、珍しくクラトが嫉妬してる。
 でも、そうか。服従できない魔物が居るならクラトの餌にすればいいのか。

 「その手があったな。クラト、今日の昼飯はファントムリオンな。」

 ビクッ

 ピコンッ

 「ご主人様の従魔はクラト一人で充分だー。」

 さて、と、俺がファントムリオンに目を向けると、お腹を空に向けた服従のポーズを取ってウルウルとした瞳でこちらを見つめていた。

 「こいつ、服従しないんじゃないのかよっ!!」

 俺はついつい突っ込んでしまい、どうしたものかと考える。

 「うーむ。」

 ウルウル

 「むむむっ。」

 ウルウルウルウル

 「くっ。」

 ウルウルウルウルウルウル

 「ほら、分かったからそんな目で見るな。こっちにおいで。」

 俺が瞳の魔力に負け、ファントムリオンを呼ぶと、これまでで一番俊敏な動きで起き上がり、俺の目も前でベタぁーっと伏せのポーズをとる。

 面白いな。そうだ。

 「お手っ。」

 シュパッ

 「おかわり。」

 シュピピッ

 ファントムリオンはすぐさま起き上がり、前足を俺の差し出した手に乗せる。

 「おまわり。」

 グルンッ

 あまりの勢いにつむじ風が巻き起こる。

 「ちんちん。」

 ズオッ

 あっ、こいつオスじゃねぇ、メスだ。
 一瞬馬鹿なことを考えたが、俺は最後に取って置きの指示を出す。

 「よしっ、最後だ。ハウス!」

 俺はそう言っていつの間にか背後に出来ていた、ファントムリオンも入れるほど巨大な青い・・犬小屋を指差す。

 グロォッ

 ファントムリオンは何の躊躇いもなく、俺の指示通りその犬小屋に飛び込む。

 パクンッ

 するとその犬小屋は、入口が無くなり、みるみる小さくなっていく。

 ピコンッ

 「ご馳走さまでしたー。」

 ファントムリオンの飛び込んだ犬小屋クラトはそう言うと、今飲み込んだばかりのファントムリオンの形に擬態する。

 ピコンッ

 「ほら、ご主人様。乗っていいよー。」

 俺は哀れなファントムリオンに軽く黙祷し、クラトに飛び乗る。

 「それじゃあ、そろそろ他の参加者を倒しにいこうか。」

 俺はクラトに乗り、指示を出す。
 が、クラトはすぐには動かなかった。

 ピコンッ

 俺がスマホに目を落とそうとすると、

 「只今、最後の参加者が番号札を失った為、青の7ブロックの勝者は、ネクラ・ユウト、クラトペアに決まりました。」

 そんなアナウンスと共に、俺とクラトの体が光に包まれる。

 「えへへ。ご主人様が泳いでる間に参加者を全員見つけて、一斉に番号札壊しちゃった。」

 「なにぃぃぃぃ!?俺の役目・・・」

 フッ

 こうして、俺が遠泳している間に暗躍したクラトのお陰で、俺の本戦出場が知らぬ間に決まった。

 

 
 

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