オレハ、スマホヲテニイレタ

舘伝斗

3-8 オレハ、ケットウヲイドマレル

 「只今、最後の参加者が番号札を失った為、青の7ブロックの勝者は、ネクラ・ユウト、クラトペアに決まりました。」

 予選開始から1時間。
 そんなアナウンスと共に、ユウトがコロッセオの中央にある闘技台へと転移してくる。
 闘技台には既に本戦出場を決めた猛者が30人ほど出てきた後だが、初参加にしては早い方じゃないか?

 「おい、あんな子供がもう本戦出場決めたぞ?」

 「ありゃ実力じゃなくて策を弄するタイプだな。」

 「でもよく見ろよ。あいつ、そんなに賢そうじゃないぜ?」

 「うぉぉぉぉぉ!!俺の買った賭け札が!物凄い倍率にぃぃぃぃ!!」

 私はコロッセオの外にあるモニターで、ユウトとウルの戦う姿を探していたが、残念ながらユウトは見つける前に本戦への出場を決めたようだ。

 「やっぱりユウトお兄ちゃんがウルより先に出てきたにゃ。」

 私の横で同じようにモニターを見るニアが誇らしそうに胸を張る。

 「まぁ予選なら二人とも負けはしないだろうしな。問題は本当に力のあるやつしか出てこない本戦だな。」

 そう言って私は、闘技台モニターに映るユウトに近づく猛者・・に目を付ける。

 「あいつは確か・・・」

 「にゃ?ヴィエラお姉ちゃん、知り合いでもいたのにゃ?」

 「あぁ。ユウトに近づいてる奴だ。」

 私は厄介なことが起こる予感をヒシヒシと感じながら、二人の様子を見守る。

 

 

 

 
 「俺の、活躍が・・・」

 ピコンッ

 「ごめんね、ご主人様。」

 俺はアナウンスを聞いてから落ち込んでいた。
 折角ヴィエラさんに格好良いところを見せるチャンスだったのに、俺が陸地を探して泳いでる間に有能なクラトが予選の相手を余すことなく蹴散らしてしまい、恐らくモニターに映る間もなく本戦行きを決めてしまった。
 その事に激しく落ち込んでいた俺は周りの声も状況も認識できていなかった。

 だから言おう。

 

 俺は悪くない。

 

 

 「おいっ、聞いているのか!」

 ピコンッ

 「ご主人様ー?」

 「運良く予選を突破できた程度で図に乗るなよ!」

 ピコンッ

 「ごー主ー人ー様ー。」

 「貴様、聞いているのかっ!」

 ピコンッ

 「体借りるよー。」

 ヒュッ

 パシィッ

 「おっ?」

 俺は突然体が大きく動いたことで、ようやく周りの光景を認識する。

 「あれ、海とジャングルは?」

 ピコンッ

 「もー、ご主人様。予選は終わったからコロッセオまで戻ってきたんだよ!」

 「おぉ。そうだったのか。」

 「ぬぐぐぐぐ。」

 俺は右手でスマホを操作し、戻ってきたことを理解していると、近くから誰かの呻き声が聞こえる。

 「ふぉっ!?」

 そちらに目をやると、顔を真っ赤にしてロングソードを俺に向けて振り降ろし、全体重を掛けて俺を真っ二つにしようとしている赤髪短髪の騎士の姿と、そのロングソードをクラトを纏った、人差し指と中指・・・・・・・で挟んで止める俺の左手が視界に入る。

 「貴様、このままその首はねてやる。」

 「うぇっ!?ちょちょっ、何でそんな話になってるんですか!というか、あなた誰ですか!俺何かしましたっけ??」

 「えぇい!白々しい!大人しく斬られろ、ヴィエラさんに取り付く害虫め!」

 騎士はそう言うと体重だけでは足りないと、"魔力"も集め始める。

 「そこまでにしとけっ!」

 「ちっ!」

 ブォォンッ

 そんな言葉と、俺の鼻を掠めるように通過した巨大な何かを避けるように騎士は大きく飛び退く。

 「くっ、貴様邪魔するのかっ!」

 騎士が怒りの視線を向ける先には、俺の身長ほどある大剣を片手で振りきった体勢のスパールタさんが居た。

 何でこの人、大剣を片手で軽々扱ってるんすか。

 「スパールタさん。」

 「おう、ユウト。やっぱり本戦に進んだんだな。で、あの騎士さんは?」

 俺が話しかけると、スパールタさんはニカッと男臭い笑顔を向け、少し離れた場所まで退避した騎士を睨む。

 「いや、それがさっぱり。」

 俺を睨む騎士の顔を良く見て、その上で恐らく初対面と思しき騎士に首をかしげる。。

 「貴様さえ居なければ、コロネル家の長男である兄がヴィエラさんを嫁に迎えることが出来たのに!貴様のせいで、兄さんはっ!」

 騎士は射殺さんばかりの視線で俺を睨む。
 が、この騎士の一連の行動は

 「「逆恨みかよ。」」

 俺とスパールタさんの声が重なり、どうしたものかと悩む。

 「コロネル家っつったら武家の大家じゃねぇか。麒麟児って呼ばれた兄は今引きこもりになってる筈だし、ってことはお前は弟の方か。」

 兄、引きこもりなんだ。
 麒麟児なのに。

 「えぇい!煩いっ!それもこれも、全てこいつが悪いんだ!こいつさえ居なければ、兄も今ごろヴィエラさんの為にその才気を振るっていたはず!それにそもそも、ヴィエラさんもそうだ。何でこんな貧弱なやつが良くて、あの完璧な兄は駄目なんだ!兄の容姿、実力、財力、権力、魅力の全てに於いてこいつを上回っているはずなのにっ!!兄と一緒になるほうがヴィエラさんにとっても良き未来を描けるはずなのにっ!」

 あっ、やべー。
 こいつブラコンだ。

 俺は一瞬そう思って軽く引いたが、最後の言葉は聞き捨てならなかった。

 こいつ、俺のヴィエラさんで勝手に未来を描きやがったな。
 ヴィエラさんの上辺しか知らない若造め。・・・俺より年上っぽいけど。

 「貴様、名は何という!」

 俺の心の荒ぶりを知らない赤髪の騎士は、瞳が地面と直角になるんじゃないかという程目を吊り上げ、睨み付けてくる。

 「ネクラ・ユウトだ。それと覚えとけっ!ヴィエラさんはウサミミの先からから足の先まで余すとこなく俺のもんだ!そんな引きこもりの兄にはやらんっ!」

 「くっ、何を勝手なことを!ヴィエラさんは俺の兄、フティーネ・コロネルのものだ!貴様には相応しくない!それに、兄を愚弄したな?ネクラ・ユウト!フティーネ・コロネルの威厳のため、そしてヴィエラさんをお前の魔の手から救い出すため、このリベンジャ・コロネルが正々堂々と決闘を挑む!!精々俺と当たる前に本戦で破れんことだな!」

 「あぁ。決闘でも何でも受けてたってやる!お前こそ、俺と当たるまで無様に負けんじゃねぇぞ!」

 こうなると売り言葉に買い言葉といった風に、どちらも止まらない。
 スパールタさんもこの場で直接争うのでないのなら止める気はないようだ。

 「ふん、では精々足掻くといい。俺と当たる前に負ければ、お前は不戦敗。兄を愚弄した詫びと、ヴィエラさんは諦めてもらう。」

 「はっ、いいだろう!だが、俺が諦めてもヴィエラさんは俺から離れないぜ?それに、俺が勝てば・・・勝てば、ん?これって俺に何の特があるんだ?」

 俺はここでようやくこの何も生まない決闘に気づく。
 あれ、俺がこの決闘に勝っても得るもの無くね?

 「なら、お前が勝てば俺が兄への謝罪とヴィエラさんを諦めることに値するものをやろう。まぁ俺が負けるなどあり得ないがな。はぁーっはっはっ!」

 リベンジャ・コロネルはそう言い残し、俺の了承を得ずに去っていく。

 「おい、ちょっと待てよ!俺は了承なんかしてねぇぞ!」

 「なぁ、兄ちゃん、何騒いでんだ?」

 俺がリベンジャの背に向けて叫んでいると、予選を突破してきたウルが声をかけてくる。

 「おぅ、弟も勝ち上がってきたな。お前の兄貴は今な、決闘を受けたとこだ。」

 駆け寄ってくるウルに気づいたスパールタさんがリベンジャの背を睨む俺の代わりにウルに説明してくれる。

 「決闘?兄ちゃんと?誰だよ、そんな自殺志願者。」

 俺の状況を理解したウルが真顔でそう告げると、スパールタさんはポカンとする。

 「はっはっ、まぁ兄貴が強ぇのは分かるがな、その決闘相手はリベンジャ・コロネル。前回大会でも本戦ベスト8に入った猛者だぞ?」

 まぁ、俺は前回大会でベスト4だったがな。
 と、スパールタさんが続ける。

 「へっ、関係ねぇぜ。何て言ったって兄ちゃんと俺で今回の一位二位独占する予定だからな。おっちゃんは今年もベスト4だぜ。」

 「ほう、そりゃ楽しみだな。」

 ウルの言葉を聞いて獲物を品定めする獣のような視線をスパールタさんは俺に向ける。

 ズッ・・・ズズッ

 その視線に若干スパールタさんから離れる俺の頭の中にノイズが響く。

 「皆様、お待たせ致しました。たった今、128番目の本戦出場者が決まりましたので、これより本戦の参加ブロックを決める抽選に入ります。本戦出場を早く決めた方から呼びますので、番号札の番号を呼ばれた方から順に闘技台中央、トーナメント表前の抽選箱へお越しください。では、黒の1番をお持ちの方、抽選箱までお越しください。」

 頭の中にそんな声が聞こえてくると、いつの間にか闘技台の中央にトーナメント表のホログラムと係りの人たちが増えていた。

 「もうそんな時間か。悪いな、先に良い場所取っちまっても恨むなよ?」

 スパールタさんはそう言って中央に向かう。

 って、黒の1番、スパールタさんじゃん!
 何、あの人一番に予選突破したの?
 メチャクチャ強いんじゃね?勝てんのあんなのに。

 「兄ちゃん、クラトから聞いたぜ。予選開始直後から海に潜ってある程度人数が減るのを待ってたんだってな。流石だな。俺なんか子供だからってメチャクチャ狙われて体力を回復する暇も無かったっていうのに。」

 俺のことをクラトから聞いたウルの純粋な瞳が恐い。
 クラトに俺の事を喋らせると何処の完璧超人だ!ってなるからな。
 ウルはまだそれに気づいてないだけなんだ。
 教える気無いけど。格好いいお兄ちゃんで居たいし。
 この調子だとニアちゃんの方にも報告してるんだろうなぁ。

 「では、青の7番をお持ちの方。中央まで。」

 「おっ、俺の番だな。」

 ウルの話を聞いて少し意識が遠い所に飛びかけていた俺の頭にお馴染みの声が響く。

 「兄ちゃん、俺と反対側な。決勝で強くなった俺を見てくれよっ!」

 いやいや、ウルよ。
 反対側を引くのはお前だから。
 お前がまだ何処になるかわかんねぇし。

 俺はウルの言葉を背に受けながら、興味と怒りが混じった視線を受けつつ中央へ向かう。
 まぁ興味127:怒り1だけど。相手は言わずもがな。

 さて、俺が戻ったときにはあまり人数は居なかったからまだほとんど埋まってないだろうけど、どんなもんかな?

 「んげっ!」

 俺はそんな軽い気持ちでトーナメント表を見て絶句する。
 トーナメント表に書かれた名前の数から俺が出てきたのは33番目だと分かる。
 それはいい。問題はその名前の入り方だ。
 一番端のスパールタさんから始まり、二つ飛びで綺麗に名前が埋まっていた。

 こんな偶然あるのか?
 偶然なのか?
 良く見ろ、あの係員の笑顔。良い笑顔ではあるが、黒さは感じない。
 なら本当に偶々?
 でもこのまま偶々に巻き込まれると33番目の俺は一番右、つまりスパールタさんと決勝で、リベンジャとも準決勝辺りで当たることになる。
 それはそれでいいのだが、この作為っぽいものに流されるのは面白くない。
 何より傍迷惑な決闘によって俺はリベンジャと当たるまで負けるわけにはいかないんだ。
 奥の手を使いそうな相手は極力避けたい。なら・・・

 「ささ、どうぞ。ユウト様。」

 俺が抽選箱の前で一人問答をしていると、係員の一人が俺の名を呼び急かしてくる。

 「んなっ!?」

 俺がそちらを向くとアラびっくり。
 他の係員の着ている薄緑地に白のラインが入った制服のようなア物ではなく、アクセサリー類は無いにしても、どこぞの貴族のようにキラキラしたローブを纏ったアクアちゃんが抽選箱を両手に持ち、微笑んでいた。

 「アクアちゃん!?何でここに?」

 俺はあまりに突然のことで、周りの目を気にせず普通に疑問を投げ掛ける。

 「うふふ。何でここに?とは異なことを仰られますね、ユウト様は。水の精霊・・・・がハロルディアに居ておかしいですか?」

 そんな俺の様子に少し大人びた微笑みを浮かべたアクアちゃんが返す。

 水の精霊がアクアちゃんだとっ!?

 なら、

 

 ならっ!

 「ラッキー。クソ神からの届け物、そぉーしぃーん!!」

 ピピピッ

 「んっ!?」

 俺は迷うことなくスマホを操作して、クソ神から届いたデータをアクアちゃんに送信する。
 宛先はクソ神が設定済みだし、何より視界に入る距離に後何回近づけるか分からない。
 面倒後とはさっさと済ます。
 それが俺の流儀だ!!

 とか阿呆なことを考えていると、送信ボタンを押した途端、艶かしい呻き声をあげたアクアちゃんが頬を上気させ、潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。

 「んはっ、ユウト、様。」

 「貴様、アクア様に何をしたっ!?」

 「アクア様、大丈夫でございますか!」

 アクアちゃんの変化に周りの係員が一斉に立ち上がり、アクアちゃんを俺から隠すように囲む。

 ゾクッ

 すると突如、俺の背中を走る悪寒。
 これは、

 「クラト、緊急事態だ。くじをさっと引いてヴィエラさんの誤解を解きに行かなければ!!ってことで、狙うはスパールタさんの真逆のブロックで、リベンジャの隣、真ん中の空欄だ。」

 ピコンッ

 「まかせてー。」

 ズボォッ

 ガサッ

 ビシィッッ

 そういった俺は目にも止まらぬ早さで抽選箱からクラトの目視・・で選んだくじを掴み、地面に叩きつけ、係りの言葉を待たずにコロッセオを飛び出す。

 ヴィエラさん今、会いに行きます!!

 「あぁ、待って、ユウト様ぁ~~~!!」

 「「「「「お気を確かに!アクア様ぁ!!」」」」」

 「お前の兄ちゃん、なんつうかすげえな。」

 「・・・うん。」

 真面目な現場に突如カオスを振り撒く。
 これぞ俺の流儀!

 

 

 ってそんな流儀ねぇよ!!! 

 

 

 

 

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