オレハ、スマホヲテニイレタ

舘伝斗

2-8 ユウシャハ、センジョウニタツ

「君にヴィエラ殿の先発部隊への参加をかけて、正式に決闘を申し込む!」

「は、はぁ。」

  そんな漫画でしか見たことの無いような台詞を受け、俺の気の抜けた返事を肯定と受け取った童顔イケメンはツカツカと店を出ていく。
  俺たちはそれに続くように表に出る。の前で見世・・物になるのは嫌だなーと阿呆なことを考えていると童顔イケメンは街の東門・・の方へと歩いていく。

「あれ?おぉーい、どこまで行くんだ?」

  俺の呼び掛けに童顔イケメンはピタッと足を止め、やや芝居掛かった大きなモーションで振り返る。

「ユウト君、君はもしかして無様に這いつくばる姿を大勢の観衆の前で晒したいのか?見た目通りマゾなんだな。」

「誰が見た目通りのマゾだコラ。調子乗るなよクソショタイケメン。さっき華麗にお前の不意打ち止めたところなのを忘れたのか。無様に這いつくばるのはお前だコラ。」

「ふん、なら黙って付いてくるといい。東門の方は今、ほとんど人がいないはずだからな。」

  そういうと童顔イケメンは、俺の挑発にも動じずに再び歩き始める。

「東門にほとんど人がいない?祭りって訳じゃないよな。この街に入って来たときに感じた変な雰囲気の原因がそれか?」

「多分あいつ呆けてるんだよ。若いのに。」

「にゃー、そういうことを言っちゃダメにゃ。」

  俺は半ば当たっている予想を口にしながら童顔イケメンの後に続き、ウルがキツいことを言い放ち、ニアがそれを苛めながら童顔イケメンに続く。
  それが童顔イケメンの罠だと気づかずに。




 童顔イケメンの後ろを付いて歩くこと数分。
 ようやく東門の近く、冒険者ギルドと呼ばれている何とも心踊る建物の訓練場へと辿り着いた。

 童顔イケメンの言うとおり一般人は・・・・東門の内側に誰もいなかった。
 代わりに何やら武装した者たちが門の外へと駆け足で向かっていく。

「さて、ここでいいだろう。始めようか。」

 童顔イケメンはそういうとさも自然に構える。

「いやいや、待って待って。こういうのはまず名乗るのが礼儀だろう?それにこの辺りの、いや、この街に今何が起こっているのかも教えろよ。」

「・・・いいだろう。俺はアノールド・シュロンドゥネッガー。この街には今5万を越える魔物が迫ってきている。俺は皇帝の命を受け、ウィンブルス王国所属の英雄級、《魔女兎》ヴィエラ殿の力を借り受けようと交渉に来た。だが、ヴィエラ殿に参加の条件にされたのはお前に勝つことだ。だから死ね。」

 アーノ・・ルド・シュワルツェ・・・ネッガー?
 いや、アノールド・シュロンドゥネガーか。
 ややこしいな。
 で、アノールドは何て言った?
 今ここに5万の魔物が迫っている?
 はっはっはっ、名前がアメリカっぽいとジョークもアメリカのように荒唐無稽だね。
 ヴィエラさんの力を借りたいから俺に死ねっていったしね。
 おっと、今のはジョークじゃないぞ?
 俺はそんな低レベルなジョークは入れないからな。
 でも、そうか。
 この街はまさに未曾有の危機ってわけか・・・

「あ、大変っすね。おつかれっしたぁー。」

「兄ちゃん。」

「逃げるが勝ちにゃ。」

 ウルよ、これが大人だ。
 ニアちゃん、よくわかってるね。

 シュピッ

 ぶよんっ

「ひっ!」

「まて、どこに行く?ヴィエラ殿の力を借り受けるため、ひいてはこの国存続のため、お前には死んでもらう。」

 くっ、アノールドめ。
 せっかく俺が奥義"絶対的無干渉勝手にやってろ"を発動したのにまた躊躇いなく首に剣を刺しやがった。
 クラトが居なかったら死んでるぞバカ野郎!
 許せん、泣かしちゃる!

「はっはっはっ、いいだろう!こうなったら仕方ない。俺は俺のためにお前という壁を乗り越えよう!
 クラトっ!俺に纏わりついて目の前のターミネーターに身の程を分からせてやれ!」


 ピコンッ

 「まかせてっご主人様ー!」


 ウゾゾゾゾッ


 そして、俺は最強・・の力を手に入れ、最悪・・の代償を支払うことになる。










 所変わってガロティス帝国、東門前。
 そこには街中の戦闘員の殆どが集められていた。

「っ!来たっ!魔物たちだ!」

 物見櫓ものみやぐらの鷹人の冒険者。
 視力が良いことを理由に見張りを任されていた彼の言葉に東門の喧騒はピタッと止み、緊張感を孕んだ静寂に包まれる。

「アキラ、準備はいいですか?」

 その先陣に立つ二人の英雄級。
 片方はガロティス帝国、第一騎士団団長、190センチを越える長身の持ち主。顎髭を生やしていて、騎士団の中では随一の愛妻家、もといガロティス帝国でも三指に入る実力者、ネロ。

 そしてもう一人は異世界、地球から召喚された勇者、ネロと比べると頭ひとつ分小さいが、それでも180センチという長身に赤のメッシュが入った黒の短髪に柔らかな瞳、少し低めの鼻が特徴の本郷暁ほんごうあきら

「えぇ、いつでも。エンペラーコングの討伐報酬として貰った200金もありますし。」

 ネロの言葉にアキラは自信をもって答える。
 しかしネロの表情は優れない。

「だが本当にいいのですか?私は対単体に特化して訓練を積んできたせいで集団戦はそこまで強くない。やはり身軽なナダクや高位の冒険者の力をトレースした方がいいのでは?」

 アキラの能力、"魂の叫びギャグソウル"。
 その第二の能力、"お金マネーあげるから真似・・させて!"は1分毎に、対象の実力に応じた金額を犠牲にすることでその能力を完璧に・・・扱うことができるというものだ。
 一分1金(約10万円)を代償にネロの力を借り、一度はこの世界で上から二番目の討伐難度を持つ魔王、エンペラーコングを討伐したアキラ。
 ネロの力を借りたアキラにも、その力は決して対多数向きではないことが理解できていた。

「でも、ネロさん以外に力のある人なんて探してられないです。それに、開戦後にその人を見つけたとしてトレースする前に俺が死んだら意味が・・・」

「・・・そうですね。」

 アキラの素の能力は騎士団でも下から数えた方が早い。最下位とまではいかないがそれに近い程度でしかない。そんなアキラが今立っているのは最前線、なぜか。

 捨て駒な訳ではなくこの配置を指示したものはアキラの力をネロに次ぐものだと考えている。

 理由は先程述べたエンペラーコング討伐という実績。
 アキラはこの戦闘にてネロの力をトレースし、騎士団総出でないと討伐できない魔王を、ネロと二人だけで五分という短い時間で討伐。能力はその者の切り札となり得るため周囲への報告にはアキラの能力について詳細は述べられなかった。

 その為周囲の皆は訓練中に見せたアキラの素の力を偽りの力・・・・であると考え、エンペラーコングを討伐した力を真の力・・・と認定した。

 実力が高い者がアキラを見ると隙だらけのその姿に違和感を覚えそうなものだが、残念なことにこの世界には魔法なるものが存在し、加えてアキラはこの世界の外、異世界からの勇者だ。
 しかも召喚時の事故・・によりアキラはその場にいた50人に及ぶ者から魔力の供給を受けている。
 魔力量だけならこの世界どトップクラス。真の力を発揮するには何らかの代償が必要なのだと都合のいいように理解され、誰も止める者がなくアキラは最前線に送られた。

「そろそろ、ですか。」

「そうですね、今回のリミットは200分。約3時間です。それまでに5万を越える魔物を全滅させられるとは思いませんが。」

「上手くお互い無事なら今夜は奢りますよ。」

「ネロさんそれ、俺の元居た世界ではフラグを建てるって言ってあまり縁起良くないんですよね、はぁ。・・・いきます!"お金マネーあげるから真似・・させて!"」

 ゴオッ

 くだらないギャグがアキラの口から放たれると共にアキラの雰囲気が一変する。

「勇者様の雰囲気がっ!?」

「まさかネロ様と同格になるなんて!」

「それより直前に聞こえたのは・・・」

「やっぱりお前にも聞こえたか?」

「確かお金あげるから真似させてって・・・」

「なにかの呪文だったんじゃねぇのか?ほら、偶々そう聞こえたとか。」

「だ、だよな。まさか勇者様がつまらないギャグで強くなるわけ無いもんな。」

 背後から聞こえる密談にアキラはこの場を放り出して逃げたい衝動に刈られていた。

「・・・アキラ!初撃を放ちます。合わせて!」

「はいっ!」

「「"斬鉄・飛線"!!」

 シュパッ

 ネロとアキラから同時に他方向に放たれる斬撃。
 ネロの得意技"斬鉄"を飛ばす、奥義とも呼べるネロ以外誰も成し得なかった技。

 斬っ

 アキラの放つそれは魔王の首を一刀で断つネロの物と比べても遜色なく、魔物へと向かい最前列の魔物を両断、貫通し、更に後方へ。
 ネロの狙った部分と合わせると1000にも及ぶ魔物を一撃、いや、二撃で肉塊へと変える。

「魔物の勢いは止めた!進撃です!!」

「「「「「うぉぉおお!!!」」」」」

 ネロの檄に東門に集った兵士、冒険者たちは一斉に迎撃を開始する。

「アキラ!我々も行きますよ!狙いは強力な個体で!」

「はいっ!」

 冒険者たちに続いてネロとアキラも飛び出す。
 冒険者の間をすり抜け、不意を打とうとしている魔物を不意打ちで狩り、瞬く間に最前線へとたどり着く。

 だが、二人の足は止まらない。

「「"斬鉄"!」」

 ズババッ

 愚かな二人を殺そうと魔物が殺到する度に放たれる、そこそこ分厚い毛皮や拾った装備品程度で防ぐことのできない斬撃。
 これを見せられるだけで知能のある魔物の足はたたらを踏む。
 その間に更に二人は奥へ。
 冒険者たちでは苦戦を免れない高い討伐難度を持つ魔物を探す。

 ガロティス帝国が放った二本の矢は魔物程度には止められない。










 アノールドは困惑していた。

「クラトっ!俺に纏わりついて目の前のターミネーターに身の程を分からせてやれ!」

 目の前の男がそういい放つと同時に男に纏わりつく謎の青い物体。
 いや、謎ではない。
 アノールドにはそれがスライムだとすぐに分かった。
 問題は何故スライムが男の体を包んでいるのか、何故スライムが男の首に巻き付いていたのか、何故スライムが人の言うことを聞いているのか、である。

「ユウト君、君は一体・・・」

「お、おい、クラト、まて、ごばっ、がぼぉ、待てって!口まで覆ったら呼吸できないだろ!顔は覆わなくていいから。」


 ピコンッ

 「あ、そうなのー?ごめんね。」


「君は一体何してるんだ・・・」

「「(お)兄ちゃん・・・」」

 ユウトとスライムの一幕を見てアノールドの戦慄は霧散する。

「ま、待たせたな。さぁ、はじめようかっ!」

 ユウトはみっともないところを見られた腹いせのようにアノールドに向けて声を張り上げる。

 ゴォッ

 全身にクラトが纏わりきった途端にユウトから放たれるこの世界で最強と語り継がれる悪神マナシア、そしてマナシアを封じた旅人ユグドルと同質・・の魔力の奔流。
 初めて見る俺の本気にウルとニアちゃんときゃさりんとしょこらちゃんとアノールド、ってヴィエラさん以外全員か。が、あまりに濃密な魔力に目を見開く。

「なっ、なんて魔力・・・」

 ガヅッ、ビキッ

 そんな魔力を纏った一撃にアノールドが耐えられるはずもなく糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

 アノールドは決して弱くない。
 何故ならこの状態のユウトの一撃で死ななかったのだから。
 そう、一瞬でアノールドとの距離を詰めた男の一撃に。

「痛い痛い痛いって!クラトっ、人間の体はそっちに曲がらないから!」


 ピコンッ

 「そうなの?ごめんね、ご主人様。腕からビキッって音が・・・」


「ノォォォォォォ!」

「はぁ、ユウト。途中までは格好良かったのに。」

 ヴィエラさんの言葉にこの場の全員がブンブンと音が鳴りそうなほど頷く。

「うぉぉぉぉぉおお!ヴィエラさん!回復魔法をぉぉぉぉ!」

 ユウトは人生初の骨折に悶絶していた。

 この決闘は戦場に出ている、出ていないに関わらずガロティス帝国の人々、いや、生物たち・・・・に衝撃を与えたことに当人が気づかずに。





 ガロティス帝国、皇宮

 ゴォッ

「っ!
 ・・・ナダク。」

「・・・はっ。」

「そうか、お前も感じたか。」

「はい。魔物たちの物ではないでしょう。魔力の発生源はもっと近く、勇者の新たな力、あるいは冒険者の中に大物が混ざっていたのかと。
 一瞬で魔力が収まったところを見るに身体強化ではなく一掃型の魔法を使ったという線ですかね。それも破壊音が続かなかったことを考えるに怪しいですが、兎に角強敵ではないかと。」

「ふむ、ではナダク。アノールドの元へ言伝を頼む。」

「わかりました。すぐに戻ります。・・・お前たち、警戒を怠るな。」

「「「はっ!」」」

 ガロティス帝国の英雄級の一人、ナダクは同じく皇帝の守護を任されている騎士団の団長、あるいは副団長へと声をかけ霞のように姿を消す。

「勇者の新たな力という線は薄いな。あの者の魔力量は馬鹿げてはいるがあそこまでの純度はない。願わくば我がガロティス帝国の新たな戦力となれば良いが。」





 ガロティス帝国地下、聖人会せいとかい本部

「な、んだ。今の魔力は。」

「わからん!邪な物は感じなかったから人間の物ではあるはずだが・・・」

 ガタッ

 聖人会の幹部が集まっている一室、あまりの魔力純度に騒然とするが、そこの最高責任者が柄にもなく慌てて立ち上がることで静寂を取り戻す。

「ふ、副会長。どうされました?」

「あ、あぁ、サクラ大神オオカミ様以上の魔力、じゃと!?」

「まさかっ!サクラ大神様以上の魔力なんてこの世界に存在するはずがない!もしそうなのだとしたらそれこそ神話に出てくる悪神マナシアかユグドルクラスですぞ!」

「おぉ、なんと、なんと言うことじゃ。石碑の予言・・・・・は本物じゃったのか・・・」

「石碑!?何のことですか、副会長!」

「これはサクラ大神様亡き後、代々副会長の座に収まった者達にのみ継承されている"百科歴史書シュレディンガーの猫"と呼ばれるこの世の全ての未来を書いた石碑に関することじゃ。
 ここから先の事を聞けば逃れられなくなる。それでも良い者だけ残り、巻き込まれたくない者は去るがいい。」

 副会長の言葉に全員が息を飲む。

「私は逃げません!サクラ大神様からもたらされた運命、しかと受け止めましょう!」

 一人の言葉に全員が浮いた腰を落ち着ける。

「なら心して聞くが良い。といってもその名の通り"百科歴史書シュレディンガーの猫"にはすべての未来が書いてある。そんなものに目を通すことは不可能じゃ。なので私が目を通した聖人会の未来・・・・・についてのみ話そう。
 "百科歴史書シュレディンガーの猫"にはこうある。

 創設者、大神咲良おおがみさくらを越える魔力の持ち主現れし時、魔王を越える魔神、マナシアが呼応するかの如く出現し、世を混沌に陥れる。マナシア出現を知った聖人会の刃はマナシアに届かず"五星魔ペンタブル"の黒兎を前に消滅する。」

 その予言のあまりの衝撃にこの場の者全ての動きが止まる。
 これまで自分達が神と崇めていた存在の名が勇者と同じ構成である、つまり神ではなく人であったこと。
 聖人会という組織が近い内に消滅すること。
 その相手、魔女兎・・・を刺激する作戦を今正に実行中であること。

 予言の全てが的中する状況にあった。そして副会長が話す前に言った言葉、聞けば・・・逃れられなくなる・・・・・・・・。つまり、聞いてしまった自分達は既に予言の中ということだ。正に開けてはならない箱を開けたことになる。

「ひひっ、こんなところで。何の集会だぁ?ひっ。」

 許可された者以外誰も入ることができない部屋に突然響く不気味な声。
 この瞬間、聖人会幹部たちは黒兎・・によって消滅する。





 ガロティス帝国東門の外

「はぁ!"斬鉄・飛線"!」

 ズババッ

「あ、有難うございます。勇者様!」

「お礼は後に!次が向かってきてますよ!」

「うぉぉぉぉ!」

 ガロティス帝国東門から少し離れた場所で繰り広げられる死闘。
 そこに広がるのは無数の魔物と人間の死体。そして終わりなく追加される魔物たち。いくら一匹一匹が弱いとはいえ、数万を越える魔物たちにガロティス帝国を守る兵士と冒険者たちの士気は下がりつつあった。

「くっ、このままじゃまずいですね!"斬鉄"!
 流石に今ばかりは対多数技の訓練を怠った自分が恨めしいです!"斬鉄・飛線"」

「言っても仕方ないことです。それにこれだけの混線だと範囲攻撃は味方を巻き込む恐れがあります。なら、確実に減らせている今を維持することが大事です!"斬鉄・乱"!」

「そうは言いますがアキラにはリミットがあるでしょう!」

「「"斬鉄・飛線"!」」

「確かに魔物の追加される勢いが衰えない今、リミットが三時間では心許ないですね。せめて俺のこの魔力が生かすことが出来ればいいんですが。」

 ゴォッ

「「なんですか(だ)っ!?」」

 アキラとネロが倒しても倒しても尽きることの無い魔物の軍勢を前に奮闘していると街の中から感じるアキラ以上の魔力。
 魔力自体は一瞬で収まったがその衝撃は戦場に大きな爪痕を残した。

 気の弱い魔物たちは今の魔力に充てられ気絶し、倒れたところを別の魔物に踏み潰される。
 ある程度力のある魔物は戦意喪失し、散り散りに逃げ回り、敵味方関係なく混乱を巻き起こしていく。
 もはやまともに戦闘が出来る魔物は少なく兵士たちが上手く離脱できれば勝手に八割以上の魔物が自滅しそうな勢いである。

 いや、むしろその二割こそが真の強敵なのだが。

「アキラ!今の魔力。恐らく東門の近くからです。出来ればその者の力を借りてきてください!あの魔力だと私の力をトレースするより貴方の活躍の幅が広がります!出来ればその者自体も連れてきてください!」

「でも俺が抜けたらこの場の維持が!」

「周りを見なさいっ!今この場でまともな魔物は数えるほどしかいません。能力を変更するなら今こそがチャンスなんです!もし魔物たちにあまり被害が出ずに混乱が収まったらどうなるか考えなさいっ!」

 そう。このまま魔物たちが自滅してくれればいいが、もし何らかの方法で魔物の混乱が収まったとき、被害が少なければどうなるか。
 これまでのジリ貧がぶり返し、アキラはリミットと共に命を落とし、戦線の維持が難しくなりガロティス帝国まで少なくない被害を被るだろう。そうならないためにもアキラは能力をより、自分の魔力を生かせる物に変更する必要があり、今の魔力の発生源にその為の手段があるかもしれない。

「・・・すいません。ネロさん。すぐに戻ります!」

 魔王戦を経験したアキラの迷いは一瞬だけであった。
 ネロに一言残し、その身を翻す。

「皆さん!アキラが新たな力を得て戻ってくるまでここを保たせますよ!混乱に乗じて梃子ずりそうな魔物を仕留めなさいっ!」

「「「「「おぉぉぉぉ!」」」」」

 ネロの言葉に兵士、冒険者たちは士気を取り戻し、これまで苦戦していたレベルの魔物を次々と間引いていく。

 勝敗は魔物の混乱が解けるまでの間にアキラが新たな力を得ることに懸かっていた。


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