オレハ、スマホヲテニイレタ

舘伝斗

2-5 ユウシャハ、エイユウトナル

「「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」

「おかえりなさいっ!ネロ様!勇者様!」

「流石ネロ様と勇者様だ!Sクラスの魔王を御二人で討ち取ったらしいぞ!」

「勇者様は独身なのかしら?」

「勇者様ー!!私を拐ってー!!」



  アキラとネロがガロティス帝国に帰ってくると、先触れが出ていたのか既に街の入り口前には沢山の住民が集まり、アキラたちに称賛の声を浴びせる。

  アキラとしては魔王に立ち向かえたのはネロの能力を借りただけであり、しかも詰めが甘く返り討ちに合いそうになったためその歓声から逃げ出したい気持ちで一杯だった。
  だが、隣に並んで歩くネロが逃走しようとするアキラの第一歩目の出足を鞘に収まった剣で押さえ、逃走を阻止していた。(勿論住民どころか兵士たちにも見えない早業で。)
  アキラは無駄だと早々に諦め、割れんばかりの歓声に突入していくのであった。

「よし、アキラ。すぐに皇帝のもとへ向かいましょう。恐らく今回の件で貴方も、晴れて私たちと同じ舞台。英雄級に認定されるでしょうから。」

「・・・はい。」

「そう嫌な顔をしないでください。今の自分に不満ならばこれからがんばって訓練を積んで自分の思う高みへと上り詰めればいいんです。始めから完璧な人なんて居ないんですから。」

「そう、ですよね。ネロさん、明日からも、よろしく指導お願いします。」

  アキラは複雑な心境で皇帝から英雄級と認められ、晴れてガロティス帝国4人目となるであった。














 -ガロティス帝国の新たな剣!英雄級となった勇者!!-

  新たな力を得たユウト(実際力を得たのはクラト)達は、乗り合い馬車の中でその情報を商人から聞かされた。

「へぇ、異世界から来たってことはこの前召喚された勇者か。も、もうそんなに力があるのか。」

「勇者様はすごいにゃー。き、きっと筋肉ゴツゴツの大男なのにゃ!」

  ウルとニアは商人の言葉に答える。
  その姿は何かの気を引こうとしているかのようだった。

「むむむ・・・ 」

  馬車の中、三畳ほどの狭い空間。
  その中で一人、いや、一人と一匹が異様な雰囲気を放っていた。
  その一人とは・・・



 ピコンッ

  「ご主人様、朝からヴィエラ・・・・がおかしいよー」


  そう。ヴィエラさんがどうもクラトの突然のランクアップに猜疑心を抱いているようだ。
  俺としてもクソ神のことを話すわけにはいかないから、どうにかはぐらかすしかない。
  朝からはぐらかしていたらヴィエラさんは遂にクラトと睨み合い(一方的な)を始めてしまい今に至る。

  っていうか、あれ?
  そういえばクソ神のことを言ったら駄目な理由って封印された神に見つかるからだよね?
  ん?
  もう見つかってね?
  これは言ってもいいんじゃ・・・

  そこまで思い至った俺の行動は迅速、かつ、的確であった。





 ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 ティトト、ティトト、ティトト、ティン

  お掛けになった電話番号は現在、電源が入っていないか電波の届かないところにあるため、お繋ぎできません。
  ふっふっふ。
  残念じゃったの。
  メッセージを忘れたのか?んん?
  一昨日来やがれじゃ!

 プツッ

 イラッ





  俺はスマホを地面に叩きつけたい衝動をなんとか抑え込む。
  俺の行動は、迅速ではあったが的確ではなかった。
  そう言えば夜明け前に文句言うために電話した後にメッセージが届いてたわ。



 "これから後輩たちとゲヘナの海までバカンスじゃから
 一週間ほど電波が届かんぞ(。・ω・。)ゞ
 全く、これだから地獄は敵わん( ☆∀☆)
 あ、それと呉々も邪神には注意するんじゃぞ?(*^3^)/~☆
 特に五星魔ペンタプルには本当に気を付けるんじゃぞ!
 あやつらは5人全員が魔王数体と渡り合える実力があるからの
(^_-)≡★"

  といった感じで、とてつもなく浮かれた文章が無性にイラついたため思いっきりスマホを地面に叩きつけてしまったのは痛恨のミスである。
  まぁ魔力で保護されてるからか、単純に俺の力が弱かったからかスマホには傷ひとつ付かなかったけど・・・



  そうだよな。
  既に目を付けられてるんだし言っちゃっていいよな?
  でもそのせいで即座に五星魔ペンタプルとかいうのが襲ってきたら死んじゃうか。
  俺が死ぬのはいいけどヴィエラさんはダメだ。
  というかもしかしてあれか?
  ヴィエラさんが知ってる自分の死に際って俺がクソのことを話したせいで五星魔ペンタプルに目を付けられたから、なのか?
  うぉー、もしそうなら俺はなんてことをしたんだ!
  いや、未来のことだから何てことをするんだっ!

  ・・・ふぅ、落ち着け、俺。
  頭はクールに、心はヒートに、だ。
  ひっひっふー。
  ひっひっふー。

  よし、落ち着いた。
  そうだな。何もかも話すのはクラトをもっと強化してからにしよう。
  ん?
  そういえばクラトって勇者・・になったんだよな?
  じゃあもし、俺の魔力が上がってスマホの容量が増えたら?
  ドラゴンも従魔に出来るよな?
  なら、ドラゴン勇者を作るのも夢じゃない?
  っていうかもしかして職業メーカーで勇者以上の職業もあるんじゃね?
  これは検証が必要だな。

  もし可能なら最強の従魔軍団も作れるな。
  そうなったら世界中の大きな国から関係を持とうと王女様とか送られてくるんじゃね?
  ぐふっ。

  取り敢えずもう一匹雑魚を従えるか。
  というか今俺のスマホの容量っていくらなんだ?

「ねぇ、ウル。ユウトさん、どうしたんだろうにゃ?」

「さ、さぁ?でも近づかない方がいいんじゃないかな?なんかゲヘゲヘ言ってるし。」

「あれ?もしかして私、とてつもなく危険な人と馬車を共にしているのでしょうか?」

「むむむ・・・」


 ピコンッ

  「ご主人様、帰ってきてよー。ヴィエラを説得してよー!! 」


  俺のトリップとクラトとヴィエラさんの睨み合い(一方的な)は、馬車が夜営に適した場所で停止するまで続いた。








 パチッ

  その日の晩。
  皆が寝静まった頃、ユウトとクラトは見張り兼火番であった。

「なぁ、クラト。お前って今どのくらい強くなったか分かるか?」


 ピコンッ

 「んー、動きは速くなったよー?力はー、よく分からないかなー。」


「まぁそれもそうか。元々クラトは相手を包み込んで、飲み込んで?倒してたもんな。でもメッセージに漢字は使えるようになったんだな。それに言葉使いも賢そうになってる。」


 ピコンッ

 「そりゃそうだよー。だってご主人様がくれたのって力だけじゃなくて知識もだもん。」


「ん?俺が弄ったのは職業メーカーでクラトの職業を勇者に変えただけだぞ?職業補正で知識も増えたのか?」


 ピコンッ

 「んーん。違うよー。なんかねー、頭の中でね、声がするの。僕がこれなんだろーって思うだけでその声が説明してくれるんだよー。 」


「おう?なんだ?俺そんなアプリをインストールした覚えはないぞ?」

  ユウトが新たにインストールしたアプリは"職業メーカー"、"鑑定カメラ"、"GodEarth"、"GodSearch"の4つのみ。
  その中にクラトが言うようなアプリは無い、筈だ。

「もしかしてクラトが勇者になって新しい力に目覚めた、とか?鑑定してみれば分かるかな?」

  そういって俺は"鑑定カメラ"起動してクラトを撮影してみる。

 ピロンッ

  何となしにクラトを撮影し、鑑定ボタンをタップする。





 個体名:クラト
 種族名:勇者ブレイブスライム(魔王喰いサタンイーター)
 ランク:S
 繋がり:根暗悠斗ねくらゆうとの下僕
 能力:吸収・消化・分裂・魔族特効
 分裂数:Max45、Now37(Aランク8体、Bランク18体、Cランク11体)
 吸収歴:
 SS・・・0体
 S・・・1体
 A・・・8体
 B・・・23体
 C・・・49体
 D・・・153体
 E・・・67体
 F・・・2976体
 使用可能アプリ:GodMap(任意)、GodSearch(常時)





  ふむ、各々が何を表すのかは何と無くしか分からないが、クラトの能力がぶっ飛んでいることは分かった。
  というかまだ調べてないから詳しくはわこらないけど、これさ、クラトが分裂出来るようになってからそれほど時間経ってないはずなのに既に3000匹以上魔物を吸収してるよね?
  なんなの?
  なんでそんなに働き者なの?
  社畜もビックリだよ!

  ま、まぁ気を取り直して。
  分からないことがあれば"GodSearch"の出番だな。
  まさか始めに調べるのがクラトの能力についてだなんてな。

  まぁ、個体名、繋がりは分かるから他を調べるか。



 種族名:魔物、魔族、精霊の種族を表す。人間、獣人の場合は職業。

 勇者:魔族を倒すための種族、職業。同族に道を示し、救いとなる存在。

 魔王喰いサタンイーター:魔王の血肉を摂取した存在。通常魔王の体は他種族には猛毒である魔王魔力に覆われているため、他の種族がその血肉を接種することはない。魔王は同族を喰らうことでその力を身に宿すことが出来る。

 吸収:包み込んだ相手の能力を自分の糧とする。

 消化:包み込んだ相手の血肉を自分の糧とする。

 分裂:自分の体の一部を切り取り、自我を与える。あくまで本体から切り取られたため、ランクは本体のランクより一段低くまでしか上がらない。

 分裂数:分裂可能な最大値=Max、現在の分裂数=Now

 吸収歴:これまで吸収した対象のランク一覧
  F・・・スライム、ガブリン等の知能を持たない魔物。特に害はない。

  E・・・オーク、コボルト等の三大欲求を満たすために考えて行動できるが、実力が低い魔物。年間数件の被害が出る。

  D・・・ガブリンリーダー、トロール等の力も知能もそこそこある魔物。中には○○リーダーのように群れを率いる。定期的に国で討伐隊が組まれる。一般人からすると驚異となり得る。

  C・・・ラスターグリズリー、カンフーモンキー、ファンシーシープ等の国の兵士でも一騎討ちで勝つことが難しい魔物。中には理性的で他種族を襲わない魔物もいる。

  B・・・亜種や突然変異種、下位のドラゴン等の危険な魔物。発生すると国から討伐隊が出される。

  A・・・ドラゴンや神殿で出現を予測される魔王等の魔物。国が滅んだ例がいくつもあり、出現が確認されるとすぐに騎士団が派遣される。単騎でA級の魔物を狩ると英雄級と呼ばれる。

  S・・・神殿で予測されない魔王や、神殿で出現を予測された魔王の中でも、何年も逃げ延びて知識、力を蓄えた魔王、五星魔ペンタプル等。英雄級が所属する100人近い集団。若しくは勇者でないと返り討ちに合う。発生が確認されると最寄りの町は全滅を覚悟するほど。

  S~・・・伝承や過去の勇者の伝記等で出てくるを冠するもの。竜神や死神が有名。最近では数百年前、ユグドルという旅人が悪神マナシアを果ての大陸に封印したという話がある。


 使用可能アプリ:下僕が使用できるアプリの一覧。
 任意=任意で操作可能。
 常時=常に下僕を補助するように使用される。
 強制=主の意思により、常に行使される。
 一時不可=何らかの要因により、一時的に使用不可。





「おぉ、何か、何て言っていいのかわからないけど、すごいことになったな。」


 ピコンッ

 「ご主人様、どうしたのー?」


「いや、うん。何て言うか、強くなったな、クラト。」


 ピコンッ

 「えへへー、そうでしょ?撫でて撫でてー!」


  そう言いつつピョコンッとクラトはユウトの膝へダイブする。
  ユウトはそんなクラトをグニグニと揉むように撫でる。


  はぁ、何かどんどんクラトが強くなっていくから俺、情けないなー。

  そんな自己嫌悪に陥りながら、夜も更け、無性に虚しくなった見張り番は終わりを告げる。
  ユウトは必ず強くなろうと心に決めた。

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