オレハ、スマホヲテニイレタ

舘伝斗

1-2 オレハ、サルニラチサレタ

  ウィンブルスから続く街道から少し離れた場所に街とは逆方向に進む集団がいた。
  その集団、11人のうち10人は同じ鎧を纏っており同じ所属だと一目で分かる。
  だが残りの一人の男は安い布でできた極々普通の服をまとい、首には水色の首巻きを巻いている。
  しかもその男は時折不可思議な音を発する道具を操作し何かブツブツと独り言を呟いていた。

  鎧を纏った者達は言葉を交わすことなく皆一様の思いを抱く。
 すなわち、

  この男は怪しい!と。

  そんな疑いをかけられていることに全く気が付かず男、根倉ねくら悠斗ゆうとは先ほど服従させた水色の首巻きスライムのクラトとスマートフォンを通じて会話していた。

「クラトは何食べんの?」


 ピコンッ

  「んーとね、何でも食べられるよ!」

「何でも?森では何食べてたんだ?」


 ピコンッ

  「魔物や動物の死骸とかー、木の実とか葉っぱとか!」

「魔物の肉って美味しいの?美味しかったらさっきの熊の肉ちょっと持って帰りたいな。」


 ピコンッ

  食べられるものは何でも美味しいよ?

「あー、了解。クラトの意見は人に対しては参考になら無いと理解した。・・・レグルスさん、この辺りでは魔物の肉とか食べたりするんですか?」

  突然独り言からこの集団のリーダーへの質問を発する俺に兵士は身構える。

「魔物の肉?」

「魔物の肉だと?」

「死にたいのかこいつは?」

「いや、誰かの飯に紛れ込ませるのかも。」

  兵士の囁きはレグルスの一睨みによって鎮圧する。

悠斗ゆうと君、君が元いた場所はどうだったのか知らないがこの辺りでは魔物の肉は人の物とは異なった魔力で構成されているとして基本的に毒と見なされている。弱い魔物の肉なら食べられないこともないだろうが先ほどのラスターグリズリーのようなC級の魔物の肉は食べるものはいないだろうな。」

「そうなんですか。だってさ。」


 ピコンッ

  「そうなの?美味しいのに。」

悠斗ゆうと君、先ほどから誰かに話しかけているようだが?」

  俺の独り言に見えるクラトとの会話にレグルスが突っ込む。

「あー、これですか?・・・その前に、この辺りでは従魔って珍しいですか?」

「従魔か?いや、珍しいには珍しいがウィンブルス王国のような大きい国ではそこそこいるな。ということは?」

  質問を質問で返す俺に怒るでもなくレグルスは答える。
  そして、レグルスは何故俺がこのような質問をしてきたのか悟る。

「まぁ、そういうことですね。さっきまでの俺の独り言は実は従魔との会話でして。クラト。」

  その言葉に首元の水色の首巻きがウゾゾッと蠢き俺の肩にその真の姿を現す。

「スライム?」

「スライムだと?」

「あんな雑魚を従魔に?」

「いや、誰かの飯に紛れ込ませるのかも。」

  再びざわつく兵士をレグルスはもう一度睨む。

(というかさっきから飯に紛れ込ませることしか考えてない奴はどいつだ?あいつか。顔を覚えたからなっ!)

「すまない悠斗ゆうと君。何しろウィンブルス王国でもスライムのようなF級の魔物を従魔にしている人を見たことがなくてね。それにスライム、というよりE級以下の魔物の知能は低すぎて契約できないと言うのが常識だがよく従魔に出来たね。」

  クラトとは契約したんじゃなくてスマホで服従させたんだけどね。

「そうなんですか?多分クラトの知能が飛び抜けていたんですよ。それよりそろそろ光の落下地点ですよ。」

  すぐボロを出しそうな俺はこの話をこれ以上続けたくないとばかりにレグルスの意識を本来の目的へと向ける。
  その狙い通りレグルスを始め先ほどまで頼りなかった兵士たちの顔に頼もしさが表れる。

「総員、周囲の警戒を怠るな!悠斗ゆうと君が襲われたようにラスターグリズリーや他の魔物が光の影響で街道近くまで出てきているかもしれないと思え!」

「「「「「「「「「イエッサー!」」」」」」」」」

  その迫力に俺は思わず後ずさる。

(怖ぇー。イエッサーってなんだよ。迫力すげぇな。)

「安心したまえ悠斗ゆうと君。なんていったってこの集団を率いるレグルス様はウィンブルス王国いや、世界最強と名高いのだからな。ドラゴンが来ても瞬殺さ。」

  俺の表情をラスターグリズリーのことを思い出したんだと勘違いしたご飯君(飯に紛れ込ませるのかもとばかり言っていた兵士)が俺の横を守りながら告げる。

  あ、それフラグ。とは言わない。
  だってドラゴンとか見てみたいからねっ!

「強いと思っていたけどまさか世界最強とか・・・」

  俺はそういいつつが落ちてきた辺りを調べ始めるレグルスさんたちを見る。
  すると不意にレグルスさんがこちらを見る。

悠斗ゆうと君、本当に光はこの辺りに落ちたのかい?いや、疑っているわけではないんだが、何処にもそんな形跡がないんでね。」

  レグルスさんの言葉に俺は焦る。
  形跡がないって?そりゃそうでしょう。何て言ったって俺が落ちてきたんだもの。

「いやー、何分俺もこの辺りに落ちたと言うことしかわからなくて。もしかすると少し街道から外れていたのかもしれませんね。」

「それもそうか。必ずしも街道に落ちているとは限ら、っ総員、戦闘準備ぃ!!」

  レグルスさんは言葉の途中で何かを感じたのか空を睨み兵士に抜剣を促す。

悠斗ゆうと君、少し下がっていて。」

  ご飯君の言葉に俺は街道の横に面する林の近くまで下がる。

「ドラゴンだとっ!」

「みんな、ドラゴンの集団だ!レグルスさんの正面には間違っても行くなよっ!」

  目の良い兵士の一人が空からドラゴンの集団が向かってくると告げた瞬間兵士たちはレグルスさんを先頭にV字の隊形をとる。

「初撃は任せろ!お前たちは身の安全を優先させろ!はぁぁぁあっ!」

  レグルスさんが力を込めると上段に構えた剣がラスターグリズリーを斬ったとき以上の光に覆われる。

「我が剣閃に呑まれろ!"天地覇・・・"」

「待ってください!」

  レグルスさんがまさに剣撃を放とうとした瞬間、目の良い兵士の一人が再び声をあげる。

「くぉっ!」

  その言葉にレグルスは咄嗟に剣筋を跳ね上げる。

 ブォォン

  レグルスさんの剣筋は唸りをあげ、剣から放たれた光は円を書くように向かってくるドラゴンの外周をなぞるように弧を描く。

「何故止めたっ!」

  レグルスさんは止めた兵士を非難しつつも剣を下げず、ドラゴンから視線を外さない。

「すいませんレグルスさん。どうやらあのドラゴンなんですが、従魔らしいんです!」

「なんだとっ!?あの数のドラゴンがすべて従魔だとっ!?本当なのか!」

  兵士の言葉にレグルスは信じられないと言ったように問い返す。

「はい。間違い、ありません。それに、その。」

  兵士が不意に言葉につまる。

「どうした?」

「いえ、その。あのドラゴンなんですが・・・従紋が"魔女兎"のものです!」

「"魔女兎"?」

「"魔女兎"だとっ?」

「どうしてこんなところに。」

「いや、誰かの飯に・・・」

「「「「「「「「お前は黙ってろ!」」」」」」」」

「間違いないんだな?」

「はい。」

「なんだってこんなところに。あの光があの人の興味を引いたのか?まぁいい。あのドラゴンがあの人の従魔軍なら気にせず調査を進めよう。悠斗ゆうと君、光の落下地点に他の心当たりはないか?・・・悠斗ゆうと君?おいっ、悠斗ゆうと君はどこいった!ライスボール!」

  ここでレグルスが悠斗ゆうとが居ないことに気がつき、悠斗ゆうとの近くにいたライスボールご飯君を探す。
  そして林の木の根本で眠っているライスボールご飯君を見つける。

「おいっ、ライスボール!起きろっ!悠斗ゆうと君はどこだっ!」

「ん、んぁ。はっ!何事ですか!?」

  レグルスに揺さぶられ目が覚めたご飯君はいきなりの事態を飲み込めずにいた。

「だから悠斗ゆうと君はどこだっ!」

悠斗ゆうと君・・・はっ!そうでした!レグルスさんが"天地覇断"を放った頃、林からカンフーモンキーとファンシーシープが現れまして、自分は何も出来ず何が何やら判らぬ間に眠らされて・・・」

  ご飯君の言葉にレグルスはこの騒動の犯人に見当がつく。

「全く、あの方は本当に唐突に動き出すな。よし、みんな国に戻るぞ!あの方が動いたと言うことはこの国に何か起こる証拠だ!」








「ぎゃぁぁーーーーー!」

  一方その頃俺はムキムキの猿にお姫様抱っこされ林の中を高速で移動していた。

「ぎゃーー無理無理、何でこんな猿なんかにお姫様抱っこされにゃならんのだ!速い速いっ、落ちるって!おい、強く抱き締めるな!吐く吐く!ぎゃーーー!」

「メェーー!」

 シポンッ

  あまりに騒いでいると猿に並走しているピンク色のファンシーな羊がその体から雲を飛ばしてくる。

「ギャァーー!あぁぁーー!あ、ゴガァー。グオォー。・・・はっ!てめっ、こらっ羊!それ止めろって言ってるだろ!うおっ!こらっ、くそ猿!強く抱き締めるな!」

「メェーー!」

 シポポポポンッ

「だからやめ、グオォー、ゴガァー。」

「うきっ!」

「メェー!」

  羊が大量の雲で悠斗ゆうとを(常人だと永遠に目が覚めない威力で)深い眠りにつかせた頃、2匹はようやく主の元へと辿り着く。

「うききっ!」

「メェーメェーー!」

「よしよし、カンキもメープルもよくやった。ネクラユウトが目を覚まさぬ内に小屋に戻るか。」

「メェッ!メェー!」

「何?メープルのスリープクラウドを食らっても数秒で目が覚めると?そうか。騒がれるのも面倒だな。確か数ヶ月後までは・・・・・・・私と接触すると固まっていたな。しょうがない、私が運ぶか。」

  ウサミミ・・・・オッドアイ・・・・・の女性はそういうと悠斗ゆうとを軽々とカンフーモンキーから受け取る。

「そろそろ皆も戻ってくる頃だろう。説明が済み次第ネクラユウトを連れて王城へと乗り込むか。各国巡りの準備も・・・・・・・・出来ているしな。」

  そうして当事者である悠斗ゆうとの知らぬ間に物語の歯車は回り出す。

「グオォー!ゴガァー!」

「それにしてもネクラユウトのイビキはどうにかならんのか。」

「うききぃ。」

「めぇぇ。」


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