オレハ、スマホヲテニイレタ

舘伝斗

1-1オレノスマホハ、ヨウリョウブソク

  突如襲い来る浮遊感。
  俺はこれから足に来るであろう衝撃に身を固める。



  そんなこともありました。
  浮遊感開始から数分、俺の体を襲う浮遊感は未だに続いていた
  ねぇ、神様知ってる?
  浮遊感って長く感じすぎると気にならなくなるんだよ?



  落下開始から十分。
  流石にそろそろ暇になってきた俺はマナスで見たいケモミミ美女、美少女ランキングを考えることにした。

「ネコミミは外せないだろ?それからイヌミミとー、キツネミミもいいな。クマミミなんかも丸っとして可愛いな。あとはウサミミにー・・・」



  落下開始から十数分。
  未だに地に足つきません。
  おい、誰だ!元からだろって言った奴!
  断じてそういう意味じゃねぇよ!

  落下開始からずっと地上の光景は見えている。
  しかもそこへ向かって落ちていっている感覚もある。
  なのに何故か一向に地面との距離は近づかない。

  おい、神様!
  何かミスって俺は一生ここで浮遊感を感じて生きていくとか言わねぇよな?


 ティトト、ティトト、ティトト、ティン

  俺が神様への不信感を抱いていると唯一マナスに持ち込ませてもらった俺の最終兵器、スマーホが鳴り響く。

  お、これは着信だな。

 ピッ

  もしもし?

「おー、儂じゃ、儂じゃ。」

  あー俺の祖父はもう亡くなっているのでその手には引っ掛かりませんよ。

 ピッ


  ふー、全く。
  マナスでもおれおれ詐欺があるのか。
  これは注意しないとケモミミ詐欺とかあるかもしれん。
  俺は引っ掛かる自信しかないな。


 ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 ティトト、ティトト、ティトト、ティン

  ん?また着信か。

 ピッ

  もしもし?

「先程は何故切ったんじゃ。儂じゃよ。神じゃ。」

  あー、宗教の勧誘は結構です。

 ピッ


  こっちでも宗教の勧誘はあるのか。
  電話で勧誘するような宗教はどこの国でも厄介事しか起こさないからな。
  気を付けねば。
  そういえばこっちの世界では宗教ってどんな宗教なんだろ?
  ケモミミ教?良いな、入っちゃおうかな。
  巫女様もケモミミでピンチを救ったら私をあなたのもノにしてくださいって頼まれたりして!
  たっはっー。困っちゃうなー。


 ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 ティトト、ティトト、ティトト、ティン
 ティトト、ティトト、ティトト、ティン

  またか?全く、この世界はどうなってるんだ?
  あれ?今度はテレビ電話か。

 ピッ

  電話に出ると画面に写ったのは見たことある老人。
  俺のおじいちゃんってこんな感じだったっけ?

「お主何げに酷くね?神である儂からの電話を無視する?一応マナスでは儂の言葉は神託とされとるんじゃよ?儂偉いんじゃよ?泣いちゃうぞ?」

  あ、違うや。
  これ俺が長らく落下している原因な神様だわ。
  よく考えたら俺のじいちゃんまだ生きてピンピンしてたわ。
  武道の先生やってたわ。

  で、何のようです?
  やっぱり俺ってずっとこのままなんですか?

「儂の扱いが酷い、グスン。そんなことより、そろそろお主の体の再構成が終わるからそれも終わるぞ。」

  体の再構成?マナスは平和だから肉体の再構成は無いって言ってなかったっけ?

「そのつもりじゃったんじゃがな、地球の体からしたら魔力というのは毒でしかないということを忘れておっての。あのまま送ってしまうと着いて直ぐに謎の大量出血で死んでおったぞ。」

  何それ、怖っ!
  ってことはその再構成に時間が掛かったってことか。

「そうじゃ。普通なら二分と掛からんのじゃがスマホだけでは少し可愛そうだったからのう、お主の体には少し特殊な仕様を加えておいたからの。時間が掛かったんじゃ。」

  特殊な仕様?

「それは追々自分で感じていってくれ。ではそろそろマナスに送るぞい。あー、そう気張らんでも初めは街の近くの魔物のレベルが低い草原に送るつもりじゃ。寄り道せずに街へ行けば死ぬことはないじゃろ。」

  街の中じゃないんだ。

「阿呆。街の中に突然お主が現れたら大騒ぎになるじゃろ。最後に、スマホに残っている機能はすべて使えるようにしておいたからしっかり確認しとくんじゃぞ。」

  あ、ホントに?
  電話も使えるのはありがたいな。

「繋がるのは今のところ儂だけじゃがな。」

  充電は?

「お主の魔力を元にしとるからまず使えんくなることはないじゃろ。容量もお主の魔力を元にしとるから魔力の訓練を怠るでないぞ。」

  何から何までありがとう。

「ほっほっほっ、それが儂の仕事じゃて。」

  ん?体の再構成中俺は落下している必要なかったんじゃないのか?

「・・・では死なぬようにな。」

 ピッ



  あ、くそっ。切りやがった!

  電話を切って直ぐに俺の体を光が包み込む。
  光に包まれた体はここ数十分感じていた以上の重力を俺の体に与える。
  グングン落下速度が上がり、これまでの比にならないほどの速度で地面に近づく。

  えっ!ちょっ!この速度はまず・・・



 チュドーーン

  その日からマナス最大の国、ウィンブルス王国はこの光を"星墜ち"と名付け、後の光の子誕生秘話として語り継がれることになる。





 ウィンブルス謁見の間にて

「レグルス!」

「はっ!ここに。」

「直ぐに兵士数名を連れていき落下地点を調べて参れ。」

「御意に。」

  ウィンブルスの国王に命じられマナス最強と名高いレグルスは謎の攻撃の調査に向かう。





 ウィンブルス、スラムに佇む小屋にて

「ふむ、そろそろ彼が来る頃か。準備を進めておくか。長旅・・のな。」

  スラムに似つかわしくない小綺麗なウサミミ女性はそのオッドアイを光の着地点の方へ向け、一人呟く。





 ウィンブルス隣国、ガロティス帝国にて

「アノールドよ。今すぐ密偵に光の正体を調べさせろ。期間は3日だ。」

「わかりました。すぐに行動に移しましょう。」

「ふぅ、これが世界の破滅に繋がらなければよいが。ガロティスも手を打つか。・・・ナダク。例の準備を。」

「・・・はっ。」


  光を見た力ある者はそれぞれ行動を開始するのであった。





 ゴォォ

「ごほっごほっ。神様勘弁してくれよ。もっと穏便に送るとかできないのかよ。テレポートとかさ。」

  砂埃が収まった頃、俺は行動を開始する。・・・前に今いる街道の隣に見える林へと入っていく。

「やっぱり力を手に入れたら試したいよね!」

  俺はスマホを出し意気揚々と魔物を探すのだった。



  林を進むこと数分。
  目の前にみんなお馴染みのブヨブヨの奴がいた。
  そう、スライムだ。
  スライムは襲いかかってくることもなくこちらを見つめている。
  いや、目がないからこちらを見つめているのかわからないけど。

  俺はスマホを取りだしスライムに向ける。

 カシャッ

 ビクッ

  シャッター音でスライムは驚き跳び跳ねる。
  気づいてなかったのか。

  スライムは半回転するとこちらに飛びかかってくる。
  そっちが前だったのか。

「って危なっ!」

  くそっ、こいつめ、間抜けの癖に。
  そんな奴にはこうだ!
  俺はスマホを操作し、スライムの画像を開くとメニューから服従を選ぶ。

 ピッ

  ボタンを押すとスライムは行動をやめる。

「ふぅ、全く。行きなり襲いかかってきやがって。」


 ピコンッ

「ん?メッセージ?」


  「ごめんね。ごしゅじんさま。ビックリしておそいかかっちゃった。」


「おぉ、言葉がわかるのか。凄いな。」


 ピコンッ

  「そう?えへへ。そんなにほめられるとてれるよー。」


「よし、えーと。名前なんて呼ぼうかな。」


 ピコンッ

  「なまえ?」


「そうそう。何て呼ばれたい?」


 ピコンッ

  「にんげんにはスライムってよばれてるよ?」


「それはお前の名前じゃなくて種族の名前だろ?」


 ピコンッ

  「んーとね、ごしゅじんさまはなんていうなまえなの?」


「ん?俺の名前か?根倉悠斗ねくらゆうとだ。」


 ピコンッ

  「ねくらゆうと?じゃあねークラトがいい。」


「クラトか?」


 ピコンッ

  「えへへー、ごしゅじんさまのなまえからもらったんだよぉー。」


「お、おぉう。カワイイやつだな。まぁいいや、クラト。それじゃあ俺の目的も達成したし街へ行こうか。」


 ピコンッ

  「ぼくもまちにいけるの?」


「まぁ俺の従魔ってことでいけるんじゃないかな。まぁダメならダメで他の方法を探すか。」

  そういうとクラトは俺の肩の上に飛び乗りマフラーのように首に巻き付く。


 ピコンッ

  「ぼく、いどうおそいからここにいていい?」


「あぁ、構わないよ。」

  俺はそういいつつ首に巻き付いたクラトを撫でる。
  ひんやりして気持ちいいな。
  おっ?ここを触るとブルッとしたな。
  ここがええのんかー??


 ピコンッ

  「くすぐったいよー。」


  そうしてクラトと戯れながら林を街道の方へと進んでいるとそれほど遠くない場所で俺は見覚えのある影を見つける。
  茶色い毛に鋭い爪、立ち上がると2メートルはありそえな巨躯。

「熊か。強そうだな。魔物と熊ってマナスではどっちが強いんだ?」

  そう思いつつも俺はスマホを熊に向ける。


 ピコンッ

  「ごしゅじんさま、あぶないよー!」


「大丈夫だって。そこで見てな。」

  そういって少し固くなったクラトを撫でる。

「あれ?そういえば熊ってここまで近づいても気がつかないほど鈍かったっけ?」

  俺は疑問に思いつつもそんな疑問は頭の隅に追いやりシャッターボタンを押す。

 カシャッ

  スマホから出るシャッター音で熊がようやく俺の存在に気がつく。

 グオォォ!

  熊はこんなに近づかれたことにプライドを刺激されたのか大声で威嚇する。

「ひぅっ!」

  俺はあまりの迫力に足がすくむ。
  こいつ、熊なんかじゃない!目が赤いし、魔物か?
  後ずさろうとするがうまく足が動かず尻餅をついてしまう。

 ガサッ

  その時地面にスマホが落下したことで我に帰る。

「そ、そ、そうだ。お、俺にはスマホがあ、あるじゃないか。ビビらせやがって。」

  俺はスマホを素早く拾い上げると震える手で熊の写真を開き、メニューから服従を選ぶ。

「さぁ、言うことを聞け!」

 ピッ

 ピピピッ

「ん?」

 グゴォァ!

「えい!」

 ピッ

 ピピピッ

  熊の様子が変わらないことに不安を覚え画面を見るとひとつの警告文が出ていた。




 警告!
  ラクターグリズリーを服従させるには容量が足りません。




「ひぃぃー!!」


 ピコンッ

  「ごしゅじんさま、にげてー!!」


 グゴォァ!

  俺はその文章を理解すると即座に逃げ出す。
  後ろからラクターグリズリーが追ってくるがすぐに追い付かれることはないであろう。
  とにかく死にたくなければ、

「走れ俺っ!!」

  俺は走る。それはもう必死に。
  後ろは振り返らない。
  たまにグゴォァ!とかグガッ!とか聞こえるが気にしない。

「はっ、はっ、見えた。街道だ!」

 グゴォァ!

「くそっ、しつこい。街まで逃げるか?でももし、ラクターグリズリーが街を守っている兵士より強かったら?くそっ、考えてる暇ねぇ!クラト、いきなりだがこのまま街へ向かうぞ!」


 ピコンッ

  「いいの?」


「あぁ、俺より強いやつがいるはずだ。勿論ラクターグリズリーよりな。居なくても俺一人よりは遥かに有利に戦える。」


 ピコンッ

  「ごしゅじんさま、まえからひとがくるよ!すごいキラキラしたひとたち!」


「キラキラ?なんだろ?なんにせよ助かった!そこまで絶対に追い付かれないように行くぞ!」

  俺はクラトの言葉を信じ街道を走り続ける。



「見えた!兵士が10人!助かった!おーい、ラクターグリズリーだ!助けてくれ!」

  俺は全速力で兵士へ向かっていく。
  兵士は突然のことにも動じず一人だけ剣を抜きつつ進み出る。

「俺はレグルスだ!少年、もう少し頑張れ!」

  レグルスと名乗った金髪をライオンのたてがみのように逆立てたイケメンがこちらへ向かってくる。

「一人で大丈夫ですか?」

「あぁ、まかせとけ!」

  俺はすれ違い様に訪ねるとレグルスは一言、そう言った。

  俺はレグルスとすれ違い少し進んだところで足を止め振り返る。

 グゴォァ!

「ふん、魔物風情が俺に楯突くか!すべてを切り裂け"覇断"!」

  レグルスが剣を構えると同時に剣に光が宿りそのままラクターグリズリーをバターでも切るかのようにあっさりと切り裂く。


 ピコンッ

  「あのひとつよいね!」


「あぁ、まさかこの世界の人たちはみんなあのレベルなのかな?」

  俺とクラトが話しているとレグルスが戻ってくる。

「やぁ、旅人かな?こんなところでラクターグリズリーに襲われるなんて災難だったね。奴らは普段林の奥で眠っていて滅多に街道に出てこないんだけどね。」

  あ、それ俺が林に入ったからです。とは言わない。
  俺は世渡り上手なのだ。

「そうなんですか。レグルスさん達が偶々通りかかってくれて助かりました!」

  俺がそういうとレグルス達は少し表情を引き締める。

「実は偶々ではないんだよ。この辺りを歩いていたってことは君も見たんじゃないか?あの光を。」

  あ、それ俺です。とは言わない。
  俺は世渡り上手なのだ。

「アー、アレデスカ。いきなり何かが降ってきたと思ったら凄い砂埃で何も見えなくなって驚きましたよ。」

「砂埃が晴れたら何かいなかったか?」

「いえ、何もなかったですね。クレーターも出来てませんでしたし。」

  そういうと兵士達は顔を見合わせる。

「詳しい場所まで案内してもらってもいいかな?勿論そのあとは街まで護衛を受けよう。」

「んー、そうですね。兵士さんのお仕事を手伝うのも国民の勤めですしね。」

  俺は少し考える振りをして答える

「すまない。では案内してもらえるかな。」

  俺はそうして兵士を俺の落下地点へと案内することになった。


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