137話 銀の繭の中で 魔について

『まず、魔力という概念について理解してもらおう。知能魔王では知ることのできない情報だ』

「そりゃあ、俺が知らないからな」

　知ってたら厨二病を認める必要も無かった。くそっ、今まで隠してたのに。

『魔力とは、大まかに捉えるなら邪神によって生み出された力。邪神が生み出された理由は知っておるな？』

「もちろん」

　創世神が死にたいと思ったから、一般的な神と相対する存在、つまり神を殺せる存在として作られたんだよな。

『邪神の力の本質は、神とは全く違う物。つまり、邪神は神ではないのだ。では邪神とは何か？それは今は置いておく。魔力の話に戻るが、邪神に生み出された力ということは、神に相反する力という事だ。この力は、薄く広がり、この世界に満ちた。だが、地形によっては魔力が溜まり易い場所が有る。それが魔境と呼ばれる場所だ。魔境には、魔力を吸い寄せる物質の周辺や、窪みになっている場所が成りうる。この魔境のような魔力が溜まる場所や、何らかの影響で魔力が集まり、それが一定の量を越えると、そこに魔物が発生する。それが人間の体内であれば、魔人になり、獣であれば、魔獣となる。これらの魔物や、魔人の様に変質した者は、生きることに魔力を必要とする。大気中の魔力を常に吸うようになるのだが、それだけでは足りない。他の生き物が持つ魔力を奪うか、大気中の魔力が多い場所、つまり魔境で暮らさなければならないのだ。この様に、魔力を多く摂取した生き物や、体のほとんどが魔力で構築された生き物は、魔力無しでは生きて行けなくなる。なら、魔力を使い、魔法を使えるようになった人間はどうなのか？という疑問が出てくる。魔法を使う人間は、魔力と多く接し、体内に多くの魔力を持っているはずだからだ。それなのに、魔人にならず、普通に生きていける。これには、人間の遺伝子が関係してくる。かつて、邪神がこの世界に魔力を放ったとき、魔力の届く量が少ない場所に住む人々が居た。それが、現在の人間と言う存在だ。この人間は、微かに魔力が有る中、永くに渡って子孫を残してきた。そのため、子孫が持つ魔力は、少しずつ増えていった。この過程で、魔力に対する抗体が出来上がっていたのだ。この抗体のお陰で、魔力に依存する事無く生きることができるのだ。では、なぜ魔力を扱えるのか？人間は強い生き物だ。自分達の生活の中に溶け込んでいた魔力を、無意識の内に理解し、その想像力と潜在能力だけで、魔力をあらゆる物に変質し、利用できるようになったのだから。今となっては、魔法はそれに対応したスキルが無いと、使えないと思っているようだが、使い方さえ解れば誰だって使える物だ。と、ここまで魔と付くものについて説明してきたのだが、この魔とは何か？これは、先程の邪神とは何か？と同じ物だ。それぞれを一言で表すと分かる。魔力とは、邪神の本質と同じ。つまり、邪神の力。魔境とは、邪神の本質が集まりやすい場所。つまり、邪神の力が多い場所。魔物とは、邪神の力の塊。魔人や魔獣とは、生き物という器に邪神の力が集まった物。魔法とは、邪神の力を利用すること。つまり、邪神と魔は、全く同じ物なのだ。ここまで理解出来たか？』

「知能魔王が無いと死んでた」

　知能魔王が無かったら、死ぬまでは行かなくても脳がパンクしてたぞ。