この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第16話革命と崩壊の予兆
どれだけ眠ったか分からないが、俺が再び目を覚ました場所は見知らぬ部屋の一室だった。
(ここは?)
辺りを見回すが他には誰もいない。向日葵の姿もなく、俺は彼女を探そうと体を動かそうとするが、手足を縛り付けられている事に気がつく。
(このツタと部屋の作り、どこかで見た事があるような……)
その答えを出そうとしたと同時に、誰かが入ってくる。
「どうやら目を覚ましたようね、『元』水の姫巫女」
入ってきたのは見慣れた巫女装飾をした緑髪の女性。彼女はそう言葉を発しながら、俺の近くまで寄ってくる。
「どうして私がそれだと分かるの?」
俺は彼女を睨みながら言う。彼女がその単語を発した以上、俺は警戒心をマックスにする以外なかった。
「女性なのに男の声を出せるのは貴方くらいしかいないから、かしら」
「という事はさっきの森での声はあんたか」
「ええ。と言ってももう二日も前の話だけど」
「二日?」
俺はあの後そんなに眠っていたのか。いや、正確には眠らされていた方が近い。恐らく俺が考える彼女の状態から察するに、彼女はあの場で俺と向日葵をこの場所に連れてきた。
この森羅の国、グリーンウッドに。
「随分と手荒な真似をしてくれるな、もう一人の森の姫巫女は」
「もう一人? 何を言っているのかしら、森の姫巫女は私一人よ」
「違う、お前はグリアラの後に森の姫巫女になったんだろ? まだ本人が辞めていない内に」
「何も違わないわ。現にこのグリーンウッドに居ないような人が、森の姫巫女を名乗る事自体が間違っているの」
「それは……」
その意見に賛成するつもりはないが、間違っていないのは事実だった。姫巫女は国を支え守ってゆくもの。だからその場所にいない姫巫女など姫巫女ではないというのが彼女の意見だった。
「でも今は全部が一つになって大きな王国を築き上げたんだ。だったら、グリアラにだって名乗る権利はある」
「あなたはあくまで彼女の肩を持つのね。なら一つ、いい事教えてあげる」
「何だよ」
「私達新たな姫巫女は近い内に反旗を翻して、革命を起こすつもりよ」
「革命だと? ただでさえ今この世界のバランスは崩れ始めているというのにどうして」
「だからこそ、よ。そしてこれはその革命への一環」
彼女はそう言いながら指を鳴らす。すると俺を縛り付けていたツタの数が増え、先ほど手足だけを縛り付けていたものが、体全体を縛るつけるものに変わっていった。
「くそ、離せ」
「今からあなたと、あなたの友達をこちら側の人間にするわ。その為にまず」
森の姫巫女は動けない俺に対して、何の躊躇いもなく馬乗りになり、俺の腹の辺りに手を置いた。
「徹底的に痛めつけてあげる」
それと同時に彼女は何かの呪文を唱えるのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
世界を守る為に生まれてきた私達姫巫女。世界を守る為ならと思って、私はこの命を賭してまで光の姫巫女になった。
「シャイニーさんはこの世界を姫巫女が破壊していると思っているんですか?」
「だってそうじゃないんですか。同じ姫巫女が二人存在してしまった事によって、世界のバランスが崩れ始めているんですよね」
「確証ではありませんが、その可能性は高いです。それを証拠に闇の姫巫女がこの世界に生まれてしまったのですから」
「ならそう考えてしまうのは妥当だと私は思うんです」
もし私達姫巫女が居なければ、闇の姫巫女も生まれなかったし、今のようなことだって起きなかった。だから私はこう考えてしまう。
姫巫女は世界を守る存在から破壊する存在に変わり始めているのではないのかと。
「でも裏を返せば私達が居なければ、世界の平和は守られていなかったんですよ。なら存在を否定する必要なんてどこにもありません」
「それはそうかもしれませんけど……」
「だから姫巫女が消えれば解決するなんて考えははやめてください」
どうやら私の考えはお見通しだったらしく、フィオナ様はそう言ってのけた。
「そう……ですよ……シャイニーさん。居なくなるなんて言わないでください……」
それに乗じるように言葉を発したのは、ずっと眠っていたセリーナさんだった。
「セリーナさん! よかった、目を覚ましたんですね」
「心配をおかけしました……。それよりそこにいるのはもしかして……」
「一応お初にお目にかかりますね、セリーナ王女」
「どうして……原始の姫巫女様が……」
「それはまた後で説明します。それより今は安静にしていた方が」
「そういう訳には……いきません。早くラファエルへの対策を取らないと」
無理に体を起こすセリーナさん。けど体の痛みからか、顔をしかめる。
「駄目ですよセリーナさん、寝てないと」
「駄目なんですよ!」
「え……?」
突然声を張り上げるセリーナさん。私とフィオナ様は突然の事に言葉を失ってしまう。
「すいません……。でもずっと休んでいたら、世界が……」
「セリーナさん……」
「シャイニーさん、今この城にいる人達を全員集めてください。今後の為の対策会議を行います」
フラフラになりながらベッドから降りるセリーナさん。倒れそうになりながらも部屋を出て行ったセリーナさんを私は見送る事しかできない。
「どうやら彼女は、貴方とは別の方法で世界を救おうと考えているみたいですよ、シャイニーさん」
その後を追ってフィオナ様も部屋を出る。残された私は、すぐに動き出す事ができなかった。
どの選択が正しくて、間違っているのか。その答えは今の私には分からない。
「……」
光の巫女である私の心に、少しだけ陰りが出始めていた。
(ここは?)
辺りを見回すが他には誰もいない。向日葵の姿もなく、俺は彼女を探そうと体を動かそうとするが、手足を縛り付けられている事に気がつく。
(このツタと部屋の作り、どこかで見た事があるような……)
その答えを出そうとしたと同時に、誰かが入ってくる。
「どうやら目を覚ましたようね、『元』水の姫巫女」
入ってきたのは見慣れた巫女装飾をした緑髪の女性。彼女はそう言葉を発しながら、俺の近くまで寄ってくる。
「どうして私がそれだと分かるの?」
俺は彼女を睨みながら言う。彼女がその単語を発した以上、俺は警戒心をマックスにする以外なかった。
「女性なのに男の声を出せるのは貴方くらいしかいないから、かしら」
「という事はさっきの森での声はあんたか」
「ええ。と言ってももう二日も前の話だけど」
「二日?」
俺はあの後そんなに眠っていたのか。いや、正確には眠らされていた方が近い。恐らく俺が考える彼女の状態から察するに、彼女はあの場で俺と向日葵をこの場所に連れてきた。
この森羅の国、グリーンウッドに。
「随分と手荒な真似をしてくれるな、もう一人の森の姫巫女は」
「もう一人? 何を言っているのかしら、森の姫巫女は私一人よ」
「違う、お前はグリアラの後に森の姫巫女になったんだろ? まだ本人が辞めていない内に」
「何も違わないわ。現にこのグリーンウッドに居ないような人が、森の姫巫女を名乗る事自体が間違っているの」
「それは……」
その意見に賛成するつもりはないが、間違っていないのは事実だった。姫巫女は国を支え守ってゆくもの。だからその場所にいない姫巫女など姫巫女ではないというのが彼女の意見だった。
「でも今は全部が一つになって大きな王国を築き上げたんだ。だったら、グリアラにだって名乗る権利はある」
「あなたはあくまで彼女の肩を持つのね。なら一つ、いい事教えてあげる」
「何だよ」
「私達新たな姫巫女は近い内に反旗を翻して、革命を起こすつもりよ」
「革命だと? ただでさえ今この世界のバランスは崩れ始めているというのにどうして」
「だからこそ、よ。そしてこれはその革命への一環」
彼女はそう言いながら指を鳴らす。すると俺を縛り付けていたツタの数が増え、先ほど手足だけを縛り付けていたものが、体全体を縛るつけるものに変わっていった。
「くそ、離せ」
「今からあなたと、あなたの友達をこちら側の人間にするわ。その為にまず」
森の姫巫女は動けない俺に対して、何の躊躇いもなく馬乗りになり、俺の腹の辺りに手を置いた。
「徹底的に痛めつけてあげる」
それと同時に彼女は何かの呪文を唱えるのであった。
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世界を守る為に生まれてきた私達姫巫女。世界を守る為ならと思って、私はこの命を賭してまで光の姫巫女になった。
「シャイニーさんはこの世界を姫巫女が破壊していると思っているんですか?」
「だってそうじゃないんですか。同じ姫巫女が二人存在してしまった事によって、世界のバランスが崩れ始めているんですよね」
「確証ではありませんが、その可能性は高いです。それを証拠に闇の姫巫女がこの世界に生まれてしまったのですから」
「ならそう考えてしまうのは妥当だと私は思うんです」
もし私達姫巫女が居なければ、闇の姫巫女も生まれなかったし、今のようなことだって起きなかった。だから私はこう考えてしまう。
姫巫女は世界を守る存在から破壊する存在に変わり始めているのではないのかと。
「でも裏を返せば私達が居なければ、世界の平和は守られていなかったんですよ。なら存在を否定する必要なんてどこにもありません」
「それはそうかもしれませんけど……」
「だから姫巫女が消えれば解決するなんて考えははやめてください」
どうやら私の考えはお見通しだったらしく、フィオナ様はそう言ってのけた。
「そう……ですよ……シャイニーさん。居なくなるなんて言わないでください……」
それに乗じるように言葉を発したのは、ずっと眠っていたセリーナさんだった。
「セリーナさん! よかった、目を覚ましたんですね」
「心配をおかけしました……。それよりそこにいるのはもしかして……」
「一応お初にお目にかかりますね、セリーナ王女」
「どうして……原始の姫巫女様が……」
「それはまた後で説明します。それより今は安静にしていた方が」
「そういう訳には……いきません。早くラファエルへの対策を取らないと」
無理に体を起こすセリーナさん。けど体の痛みからか、顔をしかめる。
「駄目ですよセリーナさん、寝てないと」
「駄目なんですよ!」
「え……?」
突然声を張り上げるセリーナさん。私とフィオナ様は突然の事に言葉を失ってしまう。
「すいません……。でもずっと休んでいたら、世界が……」
「セリーナさん……」
「シャイニーさん、今この城にいる人達を全員集めてください。今後の為の対策会議を行います」
フラフラになりながらベッドから降りるセリーナさん。倒れそうになりながらも部屋を出て行ったセリーナさんを私は見送る事しかできない。
「どうやら彼女は、貴方とは別の方法で世界を救おうと考えているみたいですよ、シャイニーさん」
その後を追ってフィオナ様も部屋を出る。残された私は、すぐに動き出す事ができなかった。
どの選択が正しくて、間違っているのか。その答えは今の私には分からない。
「……」
光の巫女である私の心に、少しだけ陰りが出始めていた。
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