この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
第7話もう一度会いたくて
「のう咲田、本当にこれでよかったのか?」
「これでよかったんだよ」
あれから何時間かが過ぎて、俺達は残り少ない生誕祭を楽しんでいた。
「私もそれでよかったんだと思いますよ。そうでないと、後味の悪いままになってしまいますから」
「私もそう思う。それが咲田らしかったというか、誰も望んでいなかったことだと思うし、あのままだったら私は夜も眠れなかったと思う」
それぞれが先程まで起きていた出来事を振り返る。その俺達の目線の先には、姫として働くセリーナもとい初代大地の姫巫女の姿があった。
あの時、
「駄目だムウナ!」
俺はセリーナが斬られるほんの数秒前に、振り下ろすムウナの手を止めた。普通に止めたら間に合わないと思ったので、その剣を手で止めることになってしまったけど。
「そ、咲田。なにをやっておるんじゃお主。手から血が」
「やっぱり殺すなんて事はやめにしよう」
ムウナが慌てて剣を離す。受け止めた俺の手からは血が出ているが、明日にはこの体ではなくなるのだから気にしない。
「じゃ、邪魔をするでない。我は死を願っておるのじゃぞ」
「願っているなら、どうして泣いているんだよ」
「そ、それは……」
途端に声がいつものセリーナに戻る。長い間この声だったから、逆に作った声の方に慣れてしまったのだろう。
「セリーナさん、やっぱり私もあなたが死ぬなんて嫌ですよ」
シャイニーが声を出す。
「そうよこの馬鹿! 今更正体が分かってしまったからって死のうなんて私許さないわよ! それに言っておくけど、私も同じぐらいあなたと生きているのよ大地の姫巫女」
続いてのグリアは、なんとも彼女らしい言葉だった。そうだ彼女も不死が故に大地の姫巫女と同じくらいの経験をしてきている。だからその痛みは理解できるのかもしれない。
「わた……我は、セリーナとして生活して、お主達と出会い、しあわせではあった。しかし、いつまでも秘密を隠し続けるのは一番辛かったのじゃ」
「俺をもう一度この世界に呼んだんだな」
「それもある。けど、我はもう一度でよいからお主に会いたかった。その身が代わっていようとも、この世界を忘れいていようとも」
セリーナの口から次々と語られる今回の真実。やっぱり今回の出来事って、それぞれの思いがあったからこそ実現したんだろうな。
「俺も……まさかまた生まれ変われるとは思っていなかったし、また皆に会える事ができてよかったよ。だからさセリーナえ
そう思えたからこそ、俺は彼女にはまだ生きてほしいと思った。もう次はきっとないと思うけど、叶うのならばまた会えればいいと願って。
「まだ生きようぜ。折角一国の姫として今を生きているんだからさ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
そんな感じでこんかいのいちれんのじけんは無事終わりを告げた。あの後手の治療とかで時間がかかってしまい、祭はそんなに楽しむ事はできなかったけど、これもまたいい思い出なのかもしれない。
(今日で最後の夜か……)
そして迎えた最後の夜。昨日と同じように大部屋で皆で寝る事になったのだが、今日はそこにセリーナの姿があった。
「咲田と会えるのも、もう少ないですから」
「別に構わないんだけど、口調はセリーナに戻すんだな」
「こっちの方が身についてしまいまして」
「やっぱりか」
ともかく今日は皆疲れてしまっているので、早めの睡眠をとる事に。ちなみに俺の明日の出発時刻は朝。これでも結構ギリギリの時間らしい。
「じゃあ本当に短いんだな」
「この夜が最後の時間みたいなものなんじゃな」
「短すぎて私寂しいですよ咲田君」
「いっそこのままこのせかいに永住すればいいのに」
とは言ったものの、皆別れが辛いのかなかなか眠ろうとしない。今ここで目を瞑ってしまえば、もう起きたらお別れみたいなものだ。
「永住したいのは山々だけど、俺にも帰る場所があるからさ」
「そう、ですよね。私達にもウォルティアがあるように、咲田にも帰る場所がありますよね」
「本当ごめんなセリーナ、色々迷惑かけて」
「何を言っているんですか。むしろ迷惑かけたのは我の方なんじゃから」
「キャラが急に定まらなくなったなお、おい」
皆布団に入ってからなんやかんやで二時間近くその後話した。四年の間にあった思い出や、これからの事、そんな事を語り合っていた。
そして夜中の虹を過ぎた頃、
「皆寝ちゃったわね」
「そうだな」
気づけば起きているのは俺とグリアラだけになってしまった。
「俺 も早く寝ないと、下手をすれば間に合わない可能性がある」
「私達はそれが願いだけどね」
「無茶言うなよ」
でも冗談抜きで寝ないと、そろそろマズイので俺は目を瞑る事にする。
「ねえ 咲田」
「……ん?」
「咲田が私と出会ったときの事覚えてる?」
「覚えているよ。就任記念パーティーかなんかの時だよな」
「あの時既に私、咲田の事見破っていたんだっけ」
「シャイニーもいる時にそんな事を言っていた気がするな。確か魂が見えるとかなんとか」
「じゃあその時からだったのかな」
「その時って何が?」
しばらく沈黙が続き、先にグリアラが眠ってしまったのかと錯覚してしまう。けど、少しした後彼女は喋った。
「私あの時から咲田の事が好きになっていたのかも。でも相手は女みたいなものだから何も言えなかった」
「まあ見た目は水の姫巫女だからな。って、今好きって言わなかったか?」
「言ったわよ馬鹿!え
「え?」
唐突な告白に戸惑ってしまう俺。
「あ、いや、言っていない。とにかく今の事は忘れて! おやすみなさい」
「え、あお、お、おやすみ」
だが次には何も言わなかったかのように眠ってしまった。
(何だったんだ今の)
何とも微妙な感じが俺の中に残ったまま、そのまま眠りについた。
そして、二度目の異世界旅行記最後の朝を迎える。
「これでよかったんだよ」
あれから何時間かが過ぎて、俺達は残り少ない生誕祭を楽しんでいた。
「私もそれでよかったんだと思いますよ。そうでないと、後味の悪いままになってしまいますから」
「私もそう思う。それが咲田らしかったというか、誰も望んでいなかったことだと思うし、あのままだったら私は夜も眠れなかったと思う」
それぞれが先程まで起きていた出来事を振り返る。その俺達の目線の先には、姫として働くセリーナもとい初代大地の姫巫女の姿があった。
あの時、
「駄目だムウナ!」
俺はセリーナが斬られるほんの数秒前に、振り下ろすムウナの手を止めた。普通に止めたら間に合わないと思ったので、その剣を手で止めることになってしまったけど。
「そ、咲田。なにをやっておるんじゃお主。手から血が」
「やっぱり殺すなんて事はやめにしよう」
ムウナが慌てて剣を離す。受け止めた俺の手からは血が出ているが、明日にはこの体ではなくなるのだから気にしない。
「じゃ、邪魔をするでない。我は死を願っておるのじゃぞ」
「願っているなら、どうして泣いているんだよ」
「そ、それは……」
途端に声がいつものセリーナに戻る。長い間この声だったから、逆に作った声の方に慣れてしまったのだろう。
「セリーナさん、やっぱり私もあなたが死ぬなんて嫌ですよ」
シャイニーが声を出す。
「そうよこの馬鹿! 今更正体が分かってしまったからって死のうなんて私許さないわよ! それに言っておくけど、私も同じぐらいあなたと生きているのよ大地の姫巫女」
続いてのグリアは、なんとも彼女らしい言葉だった。そうだ彼女も不死が故に大地の姫巫女と同じくらいの経験をしてきている。だからその痛みは理解できるのかもしれない。
「わた……我は、セリーナとして生活して、お主達と出会い、しあわせではあった。しかし、いつまでも秘密を隠し続けるのは一番辛かったのじゃ」
「俺をもう一度この世界に呼んだんだな」
「それもある。けど、我はもう一度でよいからお主に会いたかった。その身が代わっていようとも、この世界を忘れいていようとも」
セリーナの口から次々と語られる今回の真実。やっぱり今回の出来事って、それぞれの思いがあったからこそ実現したんだろうな。
「俺も……まさかまた生まれ変われるとは思っていなかったし、また皆に会える事ができてよかったよ。だからさセリーナえ
そう思えたからこそ、俺は彼女にはまだ生きてほしいと思った。もう次はきっとないと思うけど、叶うのならばまた会えればいいと願って。
「まだ生きようぜ。折角一国の姫として今を生きているんだからさ」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
そんな感じでこんかいのいちれんのじけんは無事終わりを告げた。あの後手の治療とかで時間がかかってしまい、祭はそんなに楽しむ事はできなかったけど、これもまたいい思い出なのかもしれない。
(今日で最後の夜か……)
そして迎えた最後の夜。昨日と同じように大部屋で皆で寝る事になったのだが、今日はそこにセリーナの姿があった。
「咲田と会えるのも、もう少ないですから」
「別に構わないんだけど、口調はセリーナに戻すんだな」
「こっちの方が身についてしまいまして」
「やっぱりか」
ともかく今日は皆疲れてしまっているので、早めの睡眠をとる事に。ちなみに俺の明日の出発時刻は朝。これでも結構ギリギリの時間らしい。
「じゃあ本当に短いんだな」
「この夜が最後の時間みたいなものなんじゃな」
「短すぎて私寂しいですよ咲田君」
「いっそこのままこのせかいに永住すればいいのに」
とは言ったものの、皆別れが辛いのかなかなか眠ろうとしない。今ここで目を瞑ってしまえば、もう起きたらお別れみたいなものだ。
「永住したいのは山々だけど、俺にも帰る場所があるからさ」
「そう、ですよね。私達にもウォルティアがあるように、咲田にも帰る場所がありますよね」
「本当ごめんなセリーナ、色々迷惑かけて」
「何を言っているんですか。むしろ迷惑かけたのは我の方なんじゃから」
「キャラが急に定まらなくなったなお、おい」
皆布団に入ってからなんやかんやで二時間近くその後話した。四年の間にあった思い出や、これからの事、そんな事を語り合っていた。
そして夜中の虹を過ぎた頃、
「皆寝ちゃったわね」
「そうだな」
気づけば起きているのは俺とグリアラだけになってしまった。
「俺 も早く寝ないと、下手をすれば間に合わない可能性がある」
「私達はそれが願いだけどね」
「無茶言うなよ」
でも冗談抜きで寝ないと、そろそろマズイので俺は目を瞑る事にする。
「ねえ 咲田」
「……ん?」
「咲田が私と出会ったときの事覚えてる?」
「覚えているよ。就任記念パーティーかなんかの時だよな」
「あの時既に私、咲田の事見破っていたんだっけ」
「シャイニーもいる時にそんな事を言っていた気がするな。確か魂が見えるとかなんとか」
「じゃあその時からだったのかな」
「その時って何が?」
しばらく沈黙が続き、先にグリアラが眠ってしまったのかと錯覚してしまう。けど、少しした後彼女は喋った。
「私あの時から咲田の事が好きになっていたのかも。でも相手は女みたいなものだから何も言えなかった」
「まあ見た目は水の姫巫女だからな。って、今好きって言わなかったか?」
「言ったわよ馬鹿!え
「え?」
唐突な告白に戸惑ってしまう俺。
「あ、いや、言っていない。とにかく今の事は忘れて! おやすみなさい」
「え、あお、お、おやすみ」
だが次には何も言わなかったかのように眠ってしまった。
(何だったんだ今の)
何とも微妙な感じが俺の中に残ったまま、そのまま眠りについた。
そして、二度目の異世界旅行記最後の朝を迎える。
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