この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました
それは一夏の思い出
「本当に帰られるのですね咲田」
「ああ」
朝八時。俺と四人は、いつの間にか用意されていた怪しげな門の目の前に立っていた。ここを通れば元の世界らしい。そして残されている時間は後五分。
「咲田〜、やっぱり妾はお主と別れるのは嫌じゃぁ」
と泣きついてきたのは意外にもムウナだった。女の子にこうして抱きつかれるとなんか恥ずかしい。
「ああもう! ムウナ、勝手に何やっているのよ!」
「だって、前来た時はちゃんとお別れしていなかったからのう。今回くらいくらい妾だってこんな事したい」
「っ! た、確かに前はそうだったけど……」
「でもそれって咲田君が勝手に帰るから悪いんですよね」
「えぇ! まさかの俺に原因ありなの?!」
「昨晩、グリアラさんと密談していたおしおきですよ、咲田君」
そう言いながらいたずらっぽく片目を閉じるシャイニー。どうやらあの会話を聞かれていたらしい。
「というか、そんなキャラだったかお前」
「四年で人は変わるもんですよ」
「そ、そうか?」
最後の会話とは思えない会話が繰り広げられる中で、残された時間はもうなくなってしまう。
「咲田、そろそろ時間ですよ」
「ああ、そうだな」
ムウナを体から離し、俺は門と向き合う。
「本当にこれでお別れなんだな、セリーナ」
「はい。もう恐らく、二度とここへ呼ぶ事はないですから」
「でも俺は信じているよ。また会えるって」
「流石、咲田……様……です」
徐々に涙声になっていくセリーナ。しかしその顔を俺は見る事ができない。
「馬鹿咲田! 昨日の返事、次帰ってきたら聞かせてもらうわよ!」
「咲田君、お元気で!」
「咲田ぁ、絶対帰ってくるのじゃぞ」
後ろからも見送りの声が聞こえる。けど、振り向けない。こんな……こんな……。
「絶対……絶対……また……帰ってくるからな……」
こんなに涙に濡れた男の顔を見せられない。
「じゃあな、皆!」
最後に俺はそう言って、後ろに手を振ると門をくぐっていった。
(またいつか、必ず……)
こうして俺の夏の三日間の思い出は、新しい思い出と共に幕を閉じたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「という事があってさ」
「なるほど、よく分かった。けどな咲田」
「本当にすいませんでした!」
異世界から無事帰ってきた翌日、俺は土下座をして謝っていた。三日とはいえ、また前回みたいに二人に心配をかけてしまったので、事情を説明しながらも何度も向日葵と 雄一に謝罪した。
「もう、咲ちゃんはいつも身勝手なんだか。心配する私達の気持ちにもなってよ」
「本当に悪かったって」
「でもまあ、無事に帰ってこれたならいいんだけどさ」
締めに雄一が珍しくまともな事を言う。そう、四年前は死んだようなものだったのだから、こうしてまた帰ってこれたのは幸運とすら思える。
「それでどうだったの。久しぶの異世界は」
「どうも何も」
あまりに野暮な質問だったので、俺は当然のごとくこう答えた。
「最高の夏の三日間になったに決まっているだろ」
あれから二年後。
俺の元にこんな手紙が届いた。
『拝啓咲田様
あれから二年が経ちますが、お元気にしているでしょうか? 私達は相変わらず元気です。グリアラさんとかは咲田はまだなのかと嘆いてばかりですが、いつも通りの日々を過ごしています』
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「何書いているんですか、セリーナさん」
咲田と別れて二年の月日が経った。あれからウォルティアは更に発展を遂げ、今では大きな都市国家の一つに名を連ねている。
(とはいっっても、国自体が少ないのですが)
「門が開くそうですので、これをきっかけに咲田に手紙を書こうと思いまして」
「あー、それ私も書きたかったんですよ!」
「私がその内容を入れますので、ここに書いてください」
『今隣ではシャイニーさんが手紙を書きたかったと嘆いていたので、内容をここに書きますね。
咲田君、好きです
絶対必ず帰ってきてください』
「って、これだとラブレターみたいになっているじゃないですか」
「折角の機会にって思ったんですよ」
二年越しの告白に驚かされながらも、私は更に書き続ける。
『あ、それでですね今日こうして手紙を咲田様にお出し致したのは、実は理由がありましてですね』
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「という訳だから、明日から二日間三人で異世界行くぞ」
『えー!』
セリーナから届いた手紙は近況報告と、また俺に会いたいのできてほしいとのことだった。しかも今度は向日葵達を連れての事。
なので、急遽二人を招集して、その内容を話した。
「ま、マジで行けるのかそれ」
「ああ。折角また集まったんだから今度は三人で行こうぜ」
「何が何でも急すぎるよ咲ちゃん」
こうして翌日、本当にウォルティアへとまた行く事になるのだが、それはまた別のお話という事で。
ここまで六年、俺はたくさんの物語に出会ってきたわけだけどね、決してそれらは悪い思い出ではなかったと思う。むしろその経験が全て夏の間の経験でもあるので、一夏の思い出とも言えるだろう。
あの事故がキッカケで、今日までに色々な事が起きて、今も苦労しているのだが、それまでの経験をまとめて言える事が一つある。
やっぱり俺は夏が一番大好きだ。
「ああ」
朝八時。俺と四人は、いつの間にか用意されていた怪しげな門の目の前に立っていた。ここを通れば元の世界らしい。そして残されている時間は後五分。
「咲田〜、やっぱり妾はお主と別れるのは嫌じゃぁ」
と泣きついてきたのは意外にもムウナだった。女の子にこうして抱きつかれるとなんか恥ずかしい。
「ああもう! ムウナ、勝手に何やっているのよ!」
「だって、前来た時はちゃんとお別れしていなかったからのう。今回くらいくらい妾だってこんな事したい」
「っ! た、確かに前はそうだったけど……」
「でもそれって咲田君が勝手に帰るから悪いんですよね」
「えぇ! まさかの俺に原因ありなの?!」
「昨晩、グリアラさんと密談していたおしおきですよ、咲田君」
そう言いながらいたずらっぽく片目を閉じるシャイニー。どうやらあの会話を聞かれていたらしい。
「というか、そんなキャラだったかお前」
「四年で人は変わるもんですよ」
「そ、そうか?」
最後の会話とは思えない会話が繰り広げられる中で、残された時間はもうなくなってしまう。
「咲田、そろそろ時間ですよ」
「ああ、そうだな」
ムウナを体から離し、俺は門と向き合う。
「本当にこれでお別れなんだな、セリーナ」
「はい。もう恐らく、二度とここへ呼ぶ事はないですから」
「でも俺は信じているよ。また会えるって」
「流石、咲田……様……です」
徐々に涙声になっていくセリーナ。しかしその顔を俺は見る事ができない。
「馬鹿咲田! 昨日の返事、次帰ってきたら聞かせてもらうわよ!」
「咲田君、お元気で!」
「咲田ぁ、絶対帰ってくるのじゃぞ」
後ろからも見送りの声が聞こえる。けど、振り向けない。こんな……こんな……。
「絶対……絶対……また……帰ってくるからな……」
こんなに涙に濡れた男の顔を見せられない。
「じゃあな、皆!」
最後に俺はそう言って、後ろに手を振ると門をくぐっていった。
(またいつか、必ず……)
こうして俺の夏の三日間の思い出は、新しい思い出と共に幕を閉じたのであった。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「という事があってさ」
「なるほど、よく分かった。けどな咲田」
「本当にすいませんでした!」
異世界から無事帰ってきた翌日、俺は土下座をして謝っていた。三日とはいえ、また前回みたいに二人に心配をかけてしまったので、事情を説明しながらも何度も向日葵と 雄一に謝罪した。
「もう、咲ちゃんはいつも身勝手なんだか。心配する私達の気持ちにもなってよ」
「本当に悪かったって」
「でもまあ、無事に帰ってこれたならいいんだけどさ」
締めに雄一が珍しくまともな事を言う。そう、四年前は死んだようなものだったのだから、こうしてまた帰ってこれたのは幸運とすら思える。
「それでどうだったの。久しぶの異世界は」
「どうも何も」
あまりに野暮な質問だったので、俺は当然のごとくこう答えた。
「最高の夏の三日間になったに決まっているだろ」
あれから二年後。
俺の元にこんな手紙が届いた。
『拝啓咲田様
あれから二年が経ちますが、お元気にしているでしょうか? 私達は相変わらず元気です。グリアラさんとかは咲田はまだなのかと嘆いてばかりですが、いつも通りの日々を過ごしています』
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「何書いているんですか、セリーナさん」
咲田と別れて二年の月日が経った。あれからウォルティアは更に発展を遂げ、今では大きな都市国家の一つに名を連ねている。
(とはいっっても、国自体が少ないのですが)
「門が開くそうですので、これをきっかけに咲田に手紙を書こうと思いまして」
「あー、それ私も書きたかったんですよ!」
「私がその内容を入れますので、ここに書いてください」
『今隣ではシャイニーさんが手紙を書きたかったと嘆いていたので、内容をここに書きますね。
咲田君、好きです
絶対必ず帰ってきてください』
「って、これだとラブレターみたいになっているじゃないですか」
「折角の機会にって思ったんですよ」
二年越しの告白に驚かされながらも、私は更に書き続ける。
『あ、それでですね今日こうして手紙を咲田様にお出し致したのは、実は理由がありましてですね』
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「という訳だから、明日から二日間三人で異世界行くぞ」
『えー!』
セリーナから届いた手紙は近況報告と、また俺に会いたいのできてほしいとのことだった。しかも今度は向日葵達を連れての事。
なので、急遽二人を招集して、その内容を話した。
「ま、マジで行けるのかそれ」
「ああ。折角また集まったんだから今度は三人で行こうぜ」
「何が何でも急すぎるよ咲ちゃん」
こうして翌日、本当にウォルティアへとまた行く事になるのだが、それはまた別のお話という事で。
ここまで六年、俺はたくさんの物語に出会ってきたわけだけどね、決してそれらは悪い思い出ではなかったと思う。むしろその経験が全て夏の間の経験でもあるので、一夏の思い出とも言えるだろう。
あの事故がキッカケで、今日までに色々な事が起きて、今も苦労しているのだが、それまでの経験をまとめて言える事が一つある。
やっぱり俺は夏が一番大好きだ。
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