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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第18話三人の巫女

 
「グリアラさん、今思ったのですけど別に会場内で話してもよかったのじゃないですか?」

「丁度外の空気を吸いたかったのよ。それに他には聞かれたくないような話もしたかっからね」

「他には聞かれたくない話?」

 一体それな何なのか気になりながらも彼女の後をついていく。彼女が足を止めたのはそれから数分後、ウォルティア城内の上の階にある外付けのテラスだった。

「ここなら話をするには丁度いいかしらね」

 グリアラはそう言いながら手すりに寄りかかりながら、俺の方を見てくる。月明かりに照らされながらこちらを見る彼女は、まるで一枚の絵のようにすら見えてしまった。

「それで話したい事とは?」

「単刀直入に聞かせてもらうけど、あなた見た目は完全に女性だけど、中に入っている魂は完全に男よね」

 そして絵のような彼女が発した言葉は、俺の予想を越えるものだった。

「い、いきなり何を言い出すんですか。私は決して男ではないですよ。れっきとした女性です」

「誤魔化したって無駄よ。一週間以上前に起きた大きな地震と、それによって現れた異空間。そしてそこから現れた一人の男の遺体。更にその数日後に新たに誕生した水の姫巫女。巫女のシステムから考えると、これらは全て繋がっているのよ。あなたが男である事を」

「そんな幾ら何でも無茶苦茶です。全てが単なる偶然に過ぎないかもしれないのに、どうしてそんな事が言えるのですか?」

 確かに俺は男ではある。けどそれを彼女の前で認めるわけにはいかなかった。根拠があるならそれなりの論を通してほしかったし、それにそんな簡単にはこの秘密を他の人に話すことなんて出来なかった。

「まあ確かにこれだけだと、単なる憶測に過ぎないし、確かなる証拠はないわ。けどね、同じ立場の人間であるがゆえに、分かってしまうのよ。どんな魂が今体の中に入っているのかを」

「それこそ不確かなものじゃないですか。そんなのでどうやって論を通すんですか?」

「じゃあこれを見てでも、否定はできるかしら?」

 そう言うとグリアラは一枚の紙を取り出した。俺はそれを受け取り、中身を見る。そして俺はその内容を見て、思わず言葉を失ってしまった。

「一週間前の地震によって現れた異空間から送られてきたもう一つの物がそれよ。反応を見る限り何かを知っているようだけど、どうしてこの世界の人間と言うあなたが、異世界の物を知っているのかしら? しかも一週間前に送り出されたばかりのものを」

「そ、それは……」

 俺はこの紙に見覚えがあった。いや、ないはずがなかった。それが俺達の世界から流れ着いたもので、それを俺が知っているということになれば、彼女の論は全て通る。つまりは俺の負けということだ。

「でもどうしてこれが……」

「さあね。でもそれは、あなたにとって大切なものなのでしょ? だったら大切に取っておきなさい」

「そうさせてもらいます」

 俺は紙を懐にしまい、再び彼女と向き合う。

「さてと、あなたも認めた事だし、そろそろ出てきてもいいんじゃないかしら? もう一人の巫女様」

「え?」

(もう一人の巫女だと)

 グリアラの声と共に俺は思わず背後を振り返る。するとそこには、いつ出ようかオドオドしている一人の巫女服姿の少女が一人、柱に隠れていた。

「わわわ、私はその巫女とかではなくてですね、そそその、たまたま通りかかっだけの巫女服を着るのが趣味の人です」

「嘘言わなくていいのよ。あなたが何者かというくらい分かるから。そうよね光の姫巫女シャイニーさん」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「彼女が三人目の巫女?」

「そうよ。もしかしたら来ているかもしれないと思って釣っておいたんだけど、見事に引っかかってくれたわね」

 そんなグリアラの言葉とは裏腹に、未だに柱から出てこようとしないシャイニーと呼ばれた人物。あの様子から見る限りでは巫女のようには見えないが、何故かグリアラの言葉通りの予感がした。何か自分と同じものを彼女から感じる。もしかしたら先程彼女が言っていた『同じ立場の人間であるがゆえに分かってしまう』とは、この事だったのかもしれない。

「どうやらあなた自身も感じたみたいね」

「はい。少しだけ。でもあの様子を見ていると……」

「そうは見えないでしょ? 私も最初はそう思った」

 そう笑いながらグリアラは言った。彼女がこうして笑っている姿を見るのは初めてだ。

「どどどうして分かっちゃうんですか! 折角黙っているつもりだったのに……」

「黙って帰れると思ったら大間違いよ。ほら、出て来なさいよ」

「い、いじめたりしないでくださいよ」

 そう言うと、シャイニーは恥ずかしがりながらも柱から出てきた。見た目は結構小柄な女の子で、年でいうと十六歳とかそんな感じだろうか?

「残念。彼女はああ見えて二十歳を越えているわよ」

「え? 二十歳ですか? この体で?」

「こ、こんな体でって、失礼です! 私はこれでも巫女を五年やっているんですからね!」

「ご、五年?!」

「何を驚いているのよ。こんなの当たり前の事よ。私達は巫女になってからその半分以上の生涯を巫女として過ごさなければならない。それが私達の務めなのよ」

「巫女としての務め……」

 人生の半分とは果たしてどれくらいの年月をここで過ごさなければならないのだろうか? 三十年? 六十年? 先が思いやられる。

「あなたが新しい水の姫巫女ですよね? わ、私は光の姫巫女のシャイニーです。以後よろしくお願いしますねミスティアさん」

 そんな事を考えている俺を無視して、彼女は勝手に挨拶をする。何と言うかドジっ子なのか空気が読めない子なのか、イマイチ掴み所のない巫女と俺は出会ったのだった。

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