この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第21話早寝は三文の損

 風呂から上がった後は、すぐに部屋へと戻り三人とも寝る態勢になった。

「ふわぁ、やっぱりお風呂に入ると眠くなるわね」

「もう一名、眠っていますけど」

「スー、スー」

 いつの間にかシャイニーは眠りについていて、起きているのは俺とグリアラだけになったが、俺も今日でかなり疲れている上に、明日も早く起きなければならないので、早い内に明かりを消した。

「おやすみなさい」

「おやすみー」

 明かりが消えた後、一言だけそう会話してすぐに眠りにつく。どうやら夜は何も起こらずに終わってくれそうだ。

(余計に意識しすぎただけだよな、きっと)

 先程まで考えていたことも消え、俺もすぐにやって来た睡魔に身を任せた。

 だがそれから二時間くらい経った後、俺は再び目を覚ますことになった。

(うう、暑苦しいな)


 この部屋はあまり暑くないというのに、何故か今ものすごく暑苦しくなり思わず目を覚ましてしまった。

(というか、何か体に柔らかい感触があるんだけど)

 だかそれ以上に、体に感じる柔らかいものが気になって、試しに横を見てみる。

(げっ!)

 何と俺を抱き枕か何かと勘違いしているのか、シャイニーが腕に掴んで眠っていた。

(こ、こ、これは……)

 男なら喜ぶべきシチュエーション。だから俺も当然嬉しいのだけど、それ以上の一線を越えられない。だから騒げないし、興奮することも出来ない。何とも悲しい。

「おねえ……ちゃん……」

 かなり近い距離で眠っているせいか、微かにシャイニーの寝言が聞こえる。

(お姉ちゃん?)

 どうやら彼女は俺をお姉ちゃんだと勘違いしているらしい。でも何故姉なのだろうか。彼女にお姉ちゃんと呼べる存在がいるのなら、何故その姉が姫巫女をせずに妹の彼女がしているのだろうか?

(って俺が踏み込むべき話じゃないよな)

 引き剥がすのは可哀想なので、そのままにしてあげて俺はもう一度眠りにつく。

(今度こそ眠ろう)

 俺は明日に備え、今度こそ眠りに着くのだった。

 ガタガタガタ

 だが次に目を覚ましたのは、それから一時間が経った頃だった。

(何だよこんな時間にも起きるのか地震は)

 突然の揺れでまた起きてしまう。今まではこんな時間に揺れなんて起きたことがなかったのに、どうして突然……。

(って)

「何をやっているんですか、グリアラさん」

「ん? 人はどれだけ揺らしたら起きるかの実験」

「で、その実験台が私と」

「うん。面白いでしょ?」

「遊んでないで寝てください。あとやるなら自分一人でしてください」

 どうやら先程感じた揺れは、グリアラによるイタズラだったらしく、俺はそれに釣られて起きてしまったらしい。ていうか寝ていなかったのかよ。

(やば、早く寝ないと)

 何度も言うが、明日も儀式がある為朝が早い。何度も何度も起きている場合ではないのだ。

(……)

 ようやく訪れる静粛。これで何も起きずに朝を迎えれれば、有る程度の時間は稼げる。

(今度こそおやすみ!)

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「それで結局寝れなかったんですね」

「はい。三度寝はできない体質なので」

 翌朝、眠い目を擦りながらセリーナと共にいつもの場所へ。結局あの後眠れなかった俺は、何とか眠いのを我慢して儀式を行った。正直途中で寝てしまうのではないかと思ったが、それだけは何とか避けることができた。

「でも巫女様、一つ残念なお知らせがあります」

「残念なお知らせ?」

「先程確認したのですが、今だにグリーンウッドとセイラーンはまだ異常気象が続いているらしく、今日も帰ることは不可能みたいです」

「つまり今日も地獄を見ろということですか」

「はい!」

 いや、そんな明るく言うことじゃないだろそれ。俺の睡眠にかなり影響を及ぼすのを分かっていないのだろうか彼女は。

「そんな心配しなくて大丈夫ですよ。ちゃんと睡眠が取れる時間を作りましたから」

「夜が変わらなきゃ意味ないんですよ……」

 いくら昼間とかに睡眠を取ろうが、肝心の夜に眠れなければ意味がない。しかも昼間とかに寝たら、かえって夜が眠れなくなるという逆効果を引き起こしてしまう。つまり、二人を何とかしないと俺には明日がない。

「しばらくの辛抱ですから、頑張ってくださいよ」

「これで体調崩したら責任とってくださいよね」


 儀式を終えた後再び部屋に戻った俺は、次の仕事まで仮眠だけでも取ろうとしたが、当然というべきか二人が寝かしてくれなかった。

「みみミスティアさん。私が昨日あなたに抱きついていたって話本当ですか?」

「抱きついたとまでは言いませんが、ほぼそんな感じでした」

「ねえねえ、今夜も実験台になって」

「嫌です!」

「お・ね・が・い」

「可愛く言っても嫌なものは嫌です!」

「もう失礼しちゃうなぁ」

「どっちが失礼だと思っているんですか!」

「あああの、私なんか変な事言っていましたか?」

「特に何も言っていなかったので、気にしなくて大丈夫ですよ」

「実験台にならないと言うなら、ここの王様に訴えてくるわ」

「どれだけ命を懸けるつもりなんですか!」

 両方からの言葉攻めにどんどんイライラする俺。そしてついには、

「もう二人とも、寝れないんで寝かしてください!」

 と大きな声で叫んでしまうのだった。

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