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この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

2.全ての始まり

 それから再びノワールさんがやって来たのは一週間後。今度は正式な形なものではなく、ほぼ密会に近い形になってしまった。そもそも話の内容が周りに聞いてもらいたくないものなので、使いにすらも今回の件は秘密にしておいた。

「それでどうじゃ? 調査の方は」

「それがイマイチ掴みにくくて」

「まあお主ですら知らなかった情報じゃ。知っている人物は、恐らくこの国で二人しかおらんじゃろ」

「もしかして国王と王妃ですか?」

「そうじゃ。だが聞いたところで、逆に危険な目に合わされかねない。だからここは一つ、手を打とうと思ってな」

 ノワールさんはそう言いながら巫女服の袂から何かを取り出す。見た感じ小さな機械の塊のようだが、

「人の話を影で盗み聞きして、それをデータとして残せる機械じゃ。まだ私も使ったことないから、上手に使えるか分からんけど、これで少しでも情報を引き出す」

「でもどうやって例の物についての話を出すんですか?」

「そこなんじゃが、少し鎌をかけようかと思って、こんなものを用意した」

 再び袂から何かを取り出す。出てきたのは何かが書かれている紙。そこにはこんな事が記されていた。

『我はこの国の地下に何があるか知っている。その情報を漏らされたくなければ、指定された時間に来たれし』

「何か軽い脅しみたいになっていますけど、大丈夫でしょうか?」

「なーに、心配することはない。まだ始まりに過ぎない。この先の方が大変なのじゃから」

 そんな風に自信満々に言うノワールさん。一国の王を脅すだなんて普通はあり得ない考え。でも世界を変えられるならと思った時には、既に後に引けないところまで来てしまっていた。そう、私はもう後には引けない。

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「ちょっ、ちょっと待ってください。今サラッと色々語っていましたけど、それ全てあなたの身に起きたことですか?」

 思わず彼女の語りに、聞き入ってしまっていた俺は、一旦現実に戻って来る。今彼女はサラッと色々凄いことを話していたが、その登場人物がこの声の本人だとしたら、俺は今……。

『はい。全て三百年前から始まった私の物語です』

「つまりあなたは、初代水の姫巫女ですか?」

『そうです。私は初代水の姫巫女マリアーナです』

 この世界で一番最初に誕生した水の姫巫女と話をしていることになる。しかも彼女は相当昔の人間で、惨劇を起こしてしまった張本人。こんな所で話をして大丈夫なのだろうか?

『あの、話を続けてもいいですか?』

「まだ聞きたいことが山ほどあるんですけど」

『それはこの話を終えてからにしてもらえませんか?』

「分かりました」


 再び話は二百五十年前に戻る。

「以上が私が調べた結果なんですけど、まだ足りないものとかありますか?」

「うん充分じゃ。お主がやはり鍵になっているのと、この国の地下深くにそれがあるのもはっきりした。あとは実行にうつすのみじゃ」

 ノワールさんからその話を出されてからもうすぐ一年。靄がかかっていたその物の正体も、明るみになりいよいよの時まで来ていた。

「私に世界を変える権利なんてあるのでしょうか?」

「今になって不安か?」

「まあ多少は。情報を聞いていく内に悪い部分も聞いたりしていたので」

「その失敗した時の場合というやつか?」

「はい。曖昧な情報ばかりだった分、確信的な情報がなかったので、自信があまりなくて」

「気持ちは分かるが、お主もいい加減飽きて来ているのであろう? この生活に」

「そうですけど、自分勝手かもしれないかなって思ったりしたりするんです」

「けどお主には世界を帰る権利がある。胸を張るのじゃ」

「はい……」

「実行は次の満月の日じゃ。しっかりするのじゃぞ」

 次の満月の日。大体あと二週間後くらいだろうか? その日に私はこの世界を変える。この先に一体何があるのかは私には分からない。

(私間違ってないよね、多分)

 他の人から見たら間違っているのかもしれない。だけれとど、もう後には引かない。たった一度のチャンスを無駄にはしたくない。

(私はこの世界を……変える)

 そして二週間後、私は運命の日を迎えることになった。

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「その後はあなたも知っていると思いますけど、私はそれの使い方を誤ってしまいました」

「そしてその結果、世界が滅びかけてしまったんですよね」

「はい。ただ、話はまだここで終わっていません」

「え? それはどういう事ですか?」

「実はそれが原因で、あるものを生み出してしまうことになったんです」

「あるもの?」

「今は闇の牢獄と呼ばれているようですが、それの原点が二百五十年前に存在しています」

「じゃあ闇の姫巫女の事も?」

「勿論です。彼女は全ての闇を統べる者であり、私達が生み出してしまった存在。それは紛れもない事実です」

「全ての闇の原点……ラファエルが」

「いいですか? ミスティアさん。ここから話すことは、今後のあなたの選択にも関わる話です。だから心して聞いてください。この世界の闇の始まりを」

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