話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました

りょう

第31話大地の姫巫女

 噂をすれば影と言うべきか、何と目の前に現れたちびっ子は大地の姫巫女だった。

「何じゃその予想外みたいな反応は」

「だ、だって、ねえ?」

「か、可愛い」

「ぐ、グリアラさん?!」

 グリアラさんから思いがけない言葉が出て来て驚く。そして彼女は、間もなくして大地の姫巫女を抱きしめていたのであった。


「く、苦しいからやめるのじゃ! 妾はこんなのの為に来たわけではない!」

「つべこべ言わずに、私に抱かれないよー」

「やめてほしいのじゃー」

 先程までの少し重たい空気から、のほほんとした空気がその場に流れる。でも話が途切れてしまうので、俺は一旦二人を止めに入った。

「あのお二人共、その辺にしてさっきの話の続きを……」

「きゃー、きゃー」

「もういい加減にするのじゃー」

「……」

 五分後。

「そ、それで何の話でしたって大地の姫巫女さん」

「わ、わ、妾の先代の姫巫女についてのは、話じゃよ森の姫巫女さん」

 あまりに長かったので、半強制的に終了させ、話を戻すことにする。

 え? 二人に何をしたかって?

 何もしてないさ。ちょっとそこの木の棒を折っただけだから気にすることはない。

「それで話を戻すんですけど、やはり私の言っていることは正しいのでしょうか?」

「そうじゃ。妾の先代ノワール様は百五十年ほど前に行方不明になっておる。民が総出になって探したのじゃが結局見つからずじまいで、今はこうして妾が大地の姫巫女をやっておる」

「じゃあ私が聞いたあの声は本当に」

「お主の聞き間違いでなければ、恐らくノワール様の可能性が高いじゃろ」

「やっぱりそうだったんだ」

「そういえば二人の名前を聞いてなかったのう。妾は大地の姫巫女ムウナ。よろしくじゃ」

「私は水の姫巫女ミスティアです。よろしくお願いしますおチビちゃん」

「私は森の姫巫女グリアラよ。よろしくねおチビちゃん」

「二人とも妾をからかっているようにしか思えないのじゃが……」

「気のせいよ。それよりもこれで四人の姫巫女が初めて揃うみたいね」

「そういえば大地の姫巫女とこうして会うのは初めてですね。あとはシャイニーさんが来れば、ですね」

「おおー、ついに揃うのじゃな。妾は少し楽しみじゃ」

「まあ、揃ったところで何かあるわけじゃないけどね」

 水の姫巫女になって一ヶ月ちょい。初めて一つの場に四人の姫巫女が揃う。特別何か起きるわけではないが、世界でたった四人しかいない姫巫女達同士で話をできるのは少し嬉しい。同じ立場の人間同士、つもりに積もった話がたくさんある。

「さて、そろそろ行くかのう妾の泊まり宿に」

「その前にあなたにはやることがあるわよ。ムウナちゃん」

「何じゃ?」

「あなたが空けたこの大きな穴、ちゃんと戻しなさい」

「あ」

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
 ムウナが穴を元に戻すのを見届けた後、一度宿へと戻った俺は、セリーナにこの事を話した。

「え? 大地の姫巫女が来ているんですか?」

「はい。どうやら彼女も収穫祭に参加するみたいですよ」

「珍しいこともあるものですね」


「そんなに珍しい事なんですか?」

「大災害の後、トリガーの一人となった大地の姫巫女は大地の民と共に地下へとその住居を移したのは知っていますよね? それ以来ほとんど大地の民を見ることはなかったのですが、まさかこんなタイミングでお会いできるとは思いませんでした」

「言われてみれば、確かにそうかもしれませんね」

 セリーナが言っていたとおり大地の民は確かどこかの地下で暮らしているという話だ。その中心人物とも言うべき大地の姫巫女がこうしたイベントに参加するのは珍しいとも言える。それにあの小ささは……関係ないか。

「それで巫女様は、お話ししたんですよね彼女と」

「はい」

「いかがでしたか?」

「至って普通の姫巫女でしたよ。まあ、強いて言うなら……」

 身長くらいかな。

「強いて言うなら?」

「あ、いえ何でもありません。それより今日初めて揃うんですね。四人の姫巫女が」

「そういえばそうなりますね。今まで揃うことなんてほぼなかったのに、すごいですね。これは巫女様の力なんでしょうか?」

「そんな事ないですよ。偶然ですよきっと」

「そんなすごい偶然を起こせるのがすごいです」

 まあ、確かに偶然にしてはかなり確率が低い話なのかもしれない。滅多にお目にかかれない大地の姫巫女がこうしてやって来ているのだから、もしかしたら偶然ではなく、起こるべくして起きた必然的な出来事なのかもしれない。

(そうだとしたら、あいつも来るのか?)

 あり得ない話ではない。あいつの計画の内容からすると、今こうして俺達が集まっているのは絶好のチャンスだ。それに大地の姫巫女が来ていると聞いたら、コロナだってもしかしたら……。

「どうかされましたか? 巫女様」

「え、あ、ちょっと考え事していました。何か言いましたか?」

「いえ」

 もし二人がこの場に集まるとしたら、四人の姫巫女が揃う以上の事が起きる可能性がある。そしてそれが起きるということは、全ての決着がつく可能性がある。その時俺は……。

(その時俺は、どうすればいいんだ?)

 ラファエルを討てるチャンスではある。だけど、それは一種の世界の終わりを意味する。俺はその選択のどちらを選べばいい。

 世界の平和か、水の姫巫女の因縁を断つか。

 答えはすぐには出そうにない。

「この夏俺は世界を守る巫女に生まれ変わりました」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く